マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

フィドルとバイオリンのはざま

2011-01-05 10:15:16 | 音楽


     


ストラディバリウス、高価な楽器として世に知られるが、ご本人2千丁ものバイオリンを作った多作の人だ。
古くは辻久子が家一軒分を費やして買った・・・と聴いて驚いたが、今となれば彼女が住むリーガロイヤルホテルの家賃の方が気になってしまう。

二回だけ教わった野田の師匠(プロのバイオリニスト)は、これに匹敵する名器を無造作にその辺にポンと置いていて、おおらかというか、ぞっとさせられた。弓だけで500万円というから、本体の方は推して知るべしだろう。過去に200万円の弓を勧められたが、どちらを弾かせてもらっても私のような技術なしにはよう解りませんでした。値段ばかり言うようではシロートもはなはだしい。そんな俗な人間にはバイオリンより、フィドル(Fiddle)と呼んだ方がピタッとくる。





まず、フィドルはフォークミュージックに登場する。アイルランド系の移民たちが持ち込んだ楽器で父祖伝来のジグやリールを奏でた。バックポーチの長椅子に座って、のんびりと週末の夕刻音楽を楽しむ文化。今から30年以上前、米国南部を旅して、こういう世界がまだ田舎に残っていることに感銘を受けた。




Bill Monroe And The Blue Grass Boys
左から二人目のビルモンローという男が、それまでの兄貴とやってたゆったりしたギター&マンドリンに決別し、1945年、楽器アンサンブルに重きをおいたブルーグラスという音楽を作り出す。モンローひとりで完成させたのではなく、そこにはレスターフラットのリズムギターや、アールスクラッグスのバンジョーが大きい役割を果たすことになるのだが。

BreakdownやHornpipeというアップテンポのダンスミュージックを奏でるフィドルは格別。
Orange Brossom Specialなんぞを弾く Richard GreenやScotty Stonemanにはただただ憧れた。だが、取っ付きの悪いフィドルはおいそれと何の授業料も払っていない素人を寄せ付けてくれない。


30年以上前、ナッシュヴィル郊外のバディスパイカーのフェスティバルで出会ったのが、右のフィドラー、Johnny Gimbleである。 バディ・スパイカー、デイル・ポッターのトリプルフィドルに完全にやられた。特にGimbleおじさんのフィドルのトーンとタイミング、スインギーなリックに舌を巻いた。GimbleがBob WillsのTexas Playboysにもいたことを知り、ウエスタンスイングのフィドルにズブズブと魅せられていったというわけ。
だけど、僕がやってたのはマンドリン。チューニングが一緒だったのでやれるか?と安いバイオリンを手にしたが、まぁさっきも言ったが手に負えるものでなく。今だって非常に怪しいが・・・。

ということで、ウエスタンスイングの蜂に刺されたまま、微熱は今年も続行中である。




フィドルといえば、この連中にも大いに度肝を抜かされた。




タラフ・ドゥ・ハイデュークス 
ルーマニアの地方都市から、「おい、日本で仕事の口があるらしいぞ、いいから、乗れ乗れ!」と言ったかどうか。総勢20人ばかしのロマ軍団である。ジプシー音楽はハイテンポでしょっぱなから客席の背もたれに体を押し付けられるような圧力とショーゲキを感じた。これこそがフィドル!学問として学んでくるバイオリンとは対局悪魔の楽器、ペテン師の意味も含むフィドルのある種の頂点がここにあった。
クレズマーをやっていた友人はアコーディオンを持ったままコンサートに行き、タラフの一員に「これステージで使わせて」と言われ、貸したが最後、危うく持ち逃げされるところを必死で取り返しに行った。さすがはホンマもん。掛け値なしにヤバイ連中である。

かくして、バイオリンはフィドルと呼ばれ(響きとしてはドラムスが太鼓みたいなもんでしょうか)
民衆の中に入って行った。そんな柔軟で強靭で無学だろうがへこたれないフィドルという楽器が大好きである。

日本人はどこでどう間違ったか、バイオリンを提げているのを見たら金持ちのボンボンと思う傾向にある。誤解されるのは勝手だが、大間違いだと言っておこう。あんなものは楽器の一つ、道具の一つに過ぎない。
そしてもうひとつ、バイオリンは弾き手が美女でシナを作って弾かないとCDが売れない、なんていう現代日本のリスナーの貧しさも、ああ・・・本当に気持ちが悪い。



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3 コメント

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What a day for a daydream (ボブ浅野)
2011-01-05 23:34:24
~あんなものは楽器の一つ、道具の一つに過ぎない~と言いながら、あごの下でうれしそうに操っている姿はカッコイイですね。ディランが詩を楽しく操っているように、、、バンマスはお茶碗と箸で音楽しますよね、多分、、、すごいです。
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ジョセフ・クーデルカ (ボブ浅野)
2011-01-08 09:49:18
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの写真はジョセフ・クーデルカですか。2009年ディランのアルバム「Together Through Life」の裏ジャケはジョセフ・クーデルカです。
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本年もよろしゅ (管理人)
2011-01-08 11:28:33
個人名は誰ひとり解りません。お茶碗と箸だって十分音楽になります。原始、手をたたいたり足を踏むことから音楽って始まってるのです。そいつを楽しめるかどうかですよね。
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