マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

06.4.21   おもろい女・ふたたび

2006-04-21 16:47:38 | 芸能
またまた梅田芸術劇場の客席へ。千秋楽まであと少し、森光子さん保つかな…と思ってたが、そんなもの杞憂でしかなかった。まぁ元気である。

それまで低級と見られていた漫才をどうにかして世間に認めさせたい、という情熱で、革新的な漫才の実践者となったミスワカナ・玉松一郎。同時代のエンタツアチャコの影に隠れてしまっているが、ワカナは速射砲のように喋り歌い、タップを踏み、ボーッとした一郎に鋭く突っ込んだ。それは戦後の一時期の雲間の青空のような存在だったに違いない。芝居の幕切れと同じく昭和21年、僅か36歳の若さで西宮球場の舞台の直後倒れる。ミスワカナ、織田作之助…彼らの命を縮めたのはヒロポン(覚せい剤)だった。戦時中、新聞紙上に「睡気と倦怠除去に~大日本製薬ヒロポン錠」などと広告が出るほどで、戦後も薬局で普通に売られ、織田作とワカナが競って買い集め、市内のヒロポンは底をついたと伝わる。ワカナという存在も、戦後無頼派だった。

森光子・段田安則はよく本人の漫才を再現していた。しかし、見れば見るほど段田さんにゃ悪いが前任、故芦屋雁之助の一郎を観たいと思った。まず本人にソックリである。劇中、上海で病身をはかなんで兵児帯を鴨居にかけて自殺に及ぶシーンがあるが、こういう一人芝居はさぞ雁之助の独壇場だったろう。雁之助は漫才の経験もあり、師である芦ノ家雁玉はワカナと一緒にわらわし隊で戦地へも赴き、同時代の舞台の埃を吸ってきた人物だ。そういう笑芸の只中から出てきた人(森光子さんもそう)ならではの可笑しみは、そうは役者には出せるもんではない。

長年共演者を務める大映の二枚目俳優、青山良彦さんに(三幕目に色悪で登場)かく洩らすと、「雁ちゃんの時は見た目の印象もまったく違うので対比的でやりやすかったね」と仰る。だから演技に工夫をされている。確かにインテリに見えてしまう段田さんより太っちょで人のよさそうな一郎の方が、ワカナに取り残される哀しみはよく伝わる。段田さん肥えてください。
青山さんの楽屋を辞すると、廊下で舞台へ向かう森さんと赤木春江さんにバッタリ。お二人、手を繋いでよちよちと歩きながら、歌声が聴こえてきた。

     可愛い蕾よ  きれいな夢よ
     乙女ごころに  よく似た花よ
     咲けよ咲け咲け  朝つゆ夜つゆ
     咲いたらあげましょ  あの人に

    (花言葉の歌 西條八十・池田不二男)

女学生のようねぇ…などと言い合っている、大女優二人。
それが、これから舞台という修羅場に出る前には見えず、
なんだか日向ぼっこしてるようで、微笑ましかった。



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