(原題:Moneyball)
----これって、これまでの野球映画とはまったく違うって聞いたけど…?
「う~ん。
それほど違うとは思わなかったな。
基本は同じという気がする。
野球やアメフトなどのチームで戦うスポーツ・ムービーって、
コーチが弱いチームを一つ見まとめて建て直す、
あるいは、一人のプレイヤーの成長の記録。
このふたつに分けられることが多い。
そのいずれも、物語の流れは、
弱小球団が紆余曲折ありながらも
最後は強い球団に生まれ変わるというもの。
で、この映画の場合は、
そのコーチがゼネラルマネージャーに代わっただけ」
----じゃあ、どこが新しいと言われているの?
「そのチームの立て直しに
“マネーボール理論”というのがあるから。
お金持ちの球団相手に、いい戦いを繰り広げても
結果的に、その選手は高額で相手球団に奪われてしまう。
この繰り返しだったら、
いつまでたっても弱小球団は勝てない。
ならば、どうするか?」
----ほんとだ。
それって打開策はなさそうに見えるニャ。
「そう思えてもしかたないよね。
じゃあ、
映画のストーリーを…。
かつては、鳴り物入りでニューヨーク・メッツに入団したものの、
予想に反し、低迷の日々を送り、
ついにプロ生活に終止符を打ったビリー・ビーン(ブラッド・ピット)が
この映画の主人公。
以後、スカウトマンに転身した彼は、
オークランド・アスレチックスの若きGMに。
その年も、スター選手を競合軍団、及びその巨額の年棒に奪われた彼は、
野球界の外に目を向け、
イェール大学経済学部の秀才ピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)を引き抜く。
ふたりは、これまで無視されてきたコンピュータによる統計分析を武器に、
後に“マネーボール理論”と呼ばれる
“低予算でいかに強いチームを作り上げるか”という独自の理論を展開。
“年棒が高い”“故障を抱えている”“トラブルメーカーである”といった理由で
他球団から解雇されたり、評価されていなかった選手たちを次々に集める。
分かりやすい例で言えば、出塁率の高い選手を起用。
なにはともあれ、出塁しなければ点には繋がらないわけだからね。
物語は、その前代未聞の手法に、
古いスカウトマンたちやメディア、ファンにバカにされながらも、
次第に勝ちを収めていくビリーとピーター、
そしてアスレチックスの姿を描く」
----それって、現場でも反発買うんじゃニャいの?
特に監督とか…。
「そう、そこも見どころの一つ。
アート・ハウ監督との衝突は、
フィリップ・シーモア・ホフマンの好演もあって
観る者を楽しませてくれる。
ホフマンは、この映画の監督ベネット・ミラーと『カポーティ』で組み、
お互いをよく知りつくした仲。
アカデミー賞を始め、数々の男優賞を獲得している。
さて、映画のクライマックスは、
このアスレチックスが奇跡とも思える連勝を重ね、
ついに前人未到の20連勝へと王手をかける。
だが、その最後の一戦が、
これで夢はついえたかとも思えるほどの大苦戦。
事実は小説より…というけど、
このハラハラドキドキ感は、
やはり野球映画の伝統。
9回裏まで観客を引っ張っていく。
ここも、これまでの映画とはあまり違わないと感じたところ。
でも、もちろん、ぼくはそれを悪い意味で言っているんじゃない」
----うん、分かる。
野球理論は新しくても、
野球映画の作り方はオーソドックスで
逆に安心して楽しめたってことだね。
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「最後は興奮しそうだニャ」
※若き日のロバート・レッドフォード『ナチュラル』を思い出した度
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このGM、来年あたり広島で陣頭指揮を取ってくれませんかね?
彼らが最後にワールドチャンピオンになった試合も良く覚えています。
一時期ボロボロになって、また少し勝てるようになったくらいで日本に帰って来ちゃいましたが、こんなドラマが繰り広げられていたとは。
野球物の枠を越えて、破壊と創造のプロセスを描いた傑作でした。
なるほど、広島ですか!?
これって、おそらく自分が育った時代に
それぞれに弱かったチームが思い浮かぶんでしょうね。
ぼくは、今でこそ常勝チームのようになった南海ホークスのファンだったので、
チームがダイエーに身売りされた時のことを思い出しました。
杉浦監督、「行ってきます」と言ったんだったよな。
これ、これが野球ファンにはたまらない。
自分は、弱い頃、ダイエーに身売りされた頃の南海ホークスのファン。
強く人気が出ちゃうと、
弱い頃に、それでも自分が愛していたという誇りもあってか、
逆に愛着が薄れてしまいます。
>破壊と創造のプロセスを描いた傑作
なるほど。
この考えは、現代社会にピッタリあてはまりますね。