ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』

2005-03-16 23:07:06 | 新作映画
-----これまたズバリのタイトルだね。
ニクソンってウォーターゲート事件で失脚した大統領だよね。
彼、命を狙われていたの?
「うん。ニクソンはベトナム戦争を泥沼化させた張本人とも言われていたし、
当時アメリカ国民の間では
けっこうフラストレーションがたまっていたと思う。
この映画はそんな時代背景の中、
妻子と別居しているひとりの男サムが
事務器具のセールスマンの仕事に就くことで再生を図ろうとしながらも、
自らの信条への誠実さが仇となって、挫折していく姿が描かれる」

-----そうか、もっとポリティカルな映画かと思った。
「いやいや、たとえて言えば『JFK』よりはむしろ『タクシードライバー』だ。
サムはニクソン暗殺のため飛行機を乗っ取り、
ホワイトハウスに突っ込もうとするわけだけど、
その理由と言うのが、職場のボスから
『ニクソンは世界一の商売人』ということを吹き込まれたから。
ニクソンという男は、体のいい営業文句(約束)で国民に自分を売りつけ、
それを履行しなかったにもかかわらず、
また同じ営業文句を掲げて出馬し、再選した…と、こういうわけだ」

-----それと自分の生きざまがリンクするってスゴい。
「そうなんだね。先ほど“自らの信条に誠実”と言ったけど、
サムはすごく真面目で、たとえば嘘をついてまでモノを売ろうとしない。
商売に駆け引きなんかは必要なく
正直に、仕入れ値と自分のもうけを客に語ればいいと言う考え方。
でもそれじゃ商売人としては失格だ。
そんな彼から見れば、ニクソンなんて極悪人。
自分がうまくいかないことの“象徴”となってくる。
でも、それ以前にサムの失敗は社会の仕組みや常識に無知だったから。
このあたりが観ていて辛いところだね」

-----主演はショーン・ペン。
「サムがハイジャックの予行演習をしているところなんか
さっき話した『タクシードライバー』のトラヴィスを
思い出したけど、やはりあの映画の方が好きだな」

-----それってなぜ?
「うん。あの映画はここまでドキュメンタリー・タッチじゃない。
同じく救いようのないドラマでありながら
イリュージョンとも言えなくない蠱惑の映像が
観る者の目を最後までスクリーンに釘付けにした。
このダイナミズムは、やはりスコセッシならではだ。
もちろん、この映画にも主人公サムの目に映るテレビ画像が
すべてニクソンの演説といった、
彼のオブセッションを具現化したような象徴的映像も出てくるけど、
どうしても『タクシードライバー』のような映画的興奮に欠けるな」

      (byえいwithフォーン)

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2 コメント

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こんばんは (カヌ)
2005-06-22 21:31:58
ここまで善人だったら幸せになって欲しいと思うのだけど、自分でクビを締めていく姿が哀れでなりませんでした。結局誰一人、味方になってくれる人がいない寂しさが伝わってきました。それにしてもショーン・ペンは凄いですね。
Unknown (えい)
2005-06-22 23:12:59
カヌさん。こんばんは。



自分でクビを絞めていく姿が、痛すぎて観るのがつらい映画でした。

カヌさんのところにも書きましたが、

どうしてこのような映画をいま作ろうとしたのか、

製作側の意図があまり見えなかったです。

ここから何かが生まれ、社会が変わっていくとはとても思えない。

とすれば、彼の運のなさ、頭の悪さ、

あるいは生きる弱さが、この愚かな行為に直結したという

なんとも救いようのない結論が導き出されることとなり、

(実際にブログではそのような意見も見受けられました)

後味のいい映画とはとても言えなかったです。

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