ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

『天空の草原のナンサ』

2005-10-11 23:14:07 | 新作映画
※結末に触れる部分もあります。ご覧になってから読まれることをおススメします。

----このタイトル、宮崎駿のアニメそっくりだよね。
ファンタジーかなにかなの? 
「原題は『The Cave of the Yellow Dog』。
あの驚愕のドキュメンタリー『らくだの涙』を手がけた
女性監督ビャンバスレン・ダバー監督の新作だ」

----驚愕のドキュメンタリーってどういうこと?
「難産の母らくだがその後遺症から子育てを拒否。
そこでらくだの飼い主は音楽家を呼んで、
らくだの前で演奏をしてもらう。
馬頭琴から流れるその音色を聞いた母らくだの目には涙が…。
そして彼女は子らくだにやさしくなる」

----うわあ、信じられない話だね。でも今度はドラマだよね。
「そうなんだけど、タッチがほとんど前作と同じ。
この映画を観ていると、
いままでの概念のドラマ、ドキュメンタリーの壁が取り払われてゆく」

----物語はどういうものなの?
「これと言った物語はないんだ。
羊の放牧をする父親と母親、そして娘ふたり、小さな男の子の4人家族。
ある日、6歳になる長女ナンサはお手伝いの途中、
寄り道をしたほら穴で子犬のツォーホルと出会う。
犬を飼うことを許してくれない父親に隠れて、ナンサはツォーホルを飼う。
この話の中に、おばあさんが語る<黄色い犬の伝説>が挟み込まれる」

----ほんと、なんてことない話だ。
「ところが、この家族がぼくらの日常感覚からはあまりに遠く離れている。
一番下の1歳の息子なんて、
母親がこんなに目を離していいのかなという感じで、見ていてハラハラ。
監督によれば、モンゴルではあまり甘やかせて育てるとガラスの子供になると、
小さい頃から危険なことをしても決して反対しないらしい。
この映画は、その放任が一つの<スリル>を生み、
ぼくらの目をスクリーンに強く引きつける」

----そうか、珍しい風物が見られるというだけじゃないんだ。
「もちろん、それはたくさん出てくるけどね。
牛のフンで肉が燻され、同じそのフンで子供たちは遊ぶ。
そのときの子供の無邪気な笑顔。
こんなすてきな笑顔を僕はいままで見たことない。
また一方では、お父さんが羊の皮を剥ぎ、
その残った肉はハゲワシがつつくなんて、
ショッキングな映像もあれば、
羊の乳からチーズができるまでや、
草原を移動するためにゲルを解体する過程も見られる」

----ゲルって?
「中国語読みの<パオ>のことだよ」
---あっ、昨年、瀬戸内海の直島で泊まったあれだね。
パオ ※直島のパオ
「そう。実際に泊まったことがあるだけに親近感が沸いたね。
それはともかくとして、そんな彼らにも文明が入り込んでくる。
町に皮を売りにいったお父さんがお土産に
緑のプラスチック容器やピンクのぬいぐるみを買ってくる。
この<文明>がモンゴルの自然やゲルの中に入ってきたときに感じる
一種の違和感もこの映画の特徴だ。
それまでに徐々に慣れ親しんできたこのすばらしい風景が
汚されてしまったように感じるんだね」

----でも、それって文明先進国に住む人の勝手な思いじゃ?
「うん。そこがこの映画の重要なポイントだろうね。
安息や無垢など、
<よその>ぼくたちが残しておきたいと思う伝統的な価値観。
便利さや教育など、
<そこの>遊牧民たちが取り入れることに利点を見出す近代的価値観」

----う~ん、分かるような分からないような。
物語の方は、このあとどうなるの?
「移動の途中、一番下の子が車から落ちてしまうんだ。
馬で探しに戻るお父さん。
彼が目にしたのは、ハゲワシからその子を守った犬のツォーホル。
これで一件落着と、次の放牧地に向かう家族と羊たちの前に
突然、選挙広報車が現れ、スピーカーで叫ぶ。
「正しい決断をしよう」。
群れていた羊たちは車に道を譲り、またひとつになる。
雄大な緑の草原を背景としたこのエンディングに、
なぜか涙があふれて止まらなくなった。
あとで、その理由を考えてもよく分からない。
プレスで絵本作家の佐野洋子さんのコラム
『空と草原と風だけなのに』を読んで、またまた涙」

----佐野洋子さんなら僕も知っているよ。
「100万回生きたねこ」を書いた人でしょ?
「うん。
そこには、自分がこの映画に涙した理由を解く鍵が隠されていたんだ。
オフィシャルに載ったらリンクを張るけど
おそらくこの佐野さんのコラムを超えるレビューは誰にも書けないと思うね」

      (byえいwithフォーン)


※笑顔がすてきだ度

※ドイツでのこの映画のサイト(予告編も観られます)
人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (10)   トラックバック (21)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『妖怪大戦争』 | トップ | 『カーテンコール』 »
最近の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素朴だけど力強い (bakabros)
2005-12-07 18:09:16
遊牧民の暮らしぶりに強く感銘を受けました。

近代化との関わり、変化していく生活の描かれ方がとても自然で、それが言葉にならない深い想い、問題を心に残すような気がします。緑の草原、青い空と白い雲と共に、プラスチックやぬいぐるみの人工的な色が強烈に印象に残りました。観て良かったです!
TBさせていただきます☆ (Ren)
2005-12-07 23:25:59
草原の空がとてもきれいでした。

ず~っと続く緑の海に、羊と人がぽつぽつ。

モンゴルってすごいところですね。
コメントありがとうございました。 (えい)
2005-12-08 00:44:24
■bakabrosさん



この監督は前作『らくだの涙』がフロックではなかったことを

見事に証明してくれました。

ラストはなぜだか涙が流れてなりませんでした。



■Renさん



私の知人に、ここ15年ほど毎年モンゴルに行っている人がいます。

星空など、ほんとうに筆舌につくしがたいようです。

この自然、いつまでも残ってほしいものですね。
Unknown (batako)
2005-12-08 15:28:12
TBありがとうございました。



この映画、すごく良かったですね。

まずキャストが「モンゴルで暮らす遊牧民の家族と子犬」

と書いてあったところに強く惹かれました。笑



モンゴルだからこうな訳ではなくて、昔はどこの国も

似たような生活を送っていたのでしょうね。

“文明”は確かにすごいインパクトでした。



いつか彼らも今の私たちのような生活を送る日が

来るのでしょうか。。。



コメント、面白かったです☆

また来ます!
■batakoさん (えい)
2005-12-08 23:16:43
こんばんは。



この映画のすてきなところは、

アート、アートしていないところです。

全然お高く止まっていない。

ある家族の生活を写しただけでこれだけ感動できると言うのは、

やはりその生活がシンプルにも関わらず

中身がとても豊穣だからでしょうね。
確かに (batako)
2005-12-09 14:18:32
そうですね。

芸術性を求めすぎた作品は、一般にはウケないのの

逆で、自然さを求めた作品は観客の心に

自然と入ってくるのでしょうね。
TBさせてくださいね。 (わか)
2006-01-30 21:09:09
先日、この映画を見ました。

この監督の「生活観」の描き方が好きです。

私は、あまりTBやコメント残しなどしないのですが、

次のGWに、直島か小豆島で一泊しようと思っているのです。

実家が香川なんですが、身近なようで遠い、その島に泊まってみようかと。

安藤忠雄さんの作品もあるとか聞きますし。(まだ調べてないけど)

私も、あのゲルがいつも不思議だったので、そういう風景を見れて嬉しかったです。
■わかさん (えい)
2006-01-31 00:12:15
こんばんは。



コメントありがとうございます。

直島は、画家の知人から聞いていったのですが、

ぜひもう一度行きたいと思っています。

行った時の日記が出てきましたので、

恥ずかしながらURLを記しておきます。

また、来てくださいね。



http://plaza.rakuten.co.jp/durhum/diary/200411140000/
佐野さん (kimion20002000)
2006-09-05 07:53:50
TBありがとう。

僕も、佐野よう子さんの感想には、この人らしいたしかな視点だなあ、と思わせられました。パオ(ゲル)を、近頃は、子供部屋とか、遊び部屋に、買い求める人が、日本でも、増えてきつつあるみたいですね。
■kimion20002000さん (えい)
2006-09-05 23:56:26
こんばんは。



パオを子供部屋にですか?

それは敷地が相当ないと難しいですね。

うらやましい話ではあります。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

新作映画」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

21 トラックバック

『天空の草原のナンサ』 (Past Light)
 まだ未公開の映画。そんな映画を縁あって、関係者がまわし見るのだろうサンプルビデオで観た。  これはもう、広い広い大地と空と地平線の好きな人にはたまらない。  いや自然な子供の姿( かわいいの絶頂です ! )と、日本ではもう懐かしいと言うしかないような素朴な
「天空の草原のナンサ」 (試写会帰りに)
九段会館にて「天空の草原のナンサ」試写会。 「らくだの涙」(ルイジ・ファロルニ監督と共同監督)のビャンバスレン・ダバー監督の最新作。 モンゴルの遊牧民一家の暮らしを丁寧に追った、ハーフドキュメンタリーのような映像に強く心動かされる。 6歳のナンサは、やった事.
天空の草原のナンサ/試写会 (如意宝珠)
天空の草原のナンサ  公式HP→http://www.tenku-nansaa.com/ 監督: ビャンバスレン・ダヴァー/ドイツ 製作: シュテファン・シェシュ  脚本: ビャンバスレン・ダヴァー  撮影: ダニエル・シェーンアウアー  編集: ザラ・クララ・ヴェーバー 音楽: ペーテ・
映画: 天空の草原のナンサ (Pocket Warmer)
邦題:天空の草原のナンサ 原題:Cave of the Yellow Dog 監
天空の草原のナンサ (週末に!この映画!)
期待値:78%  単館系のモンゴル(ドイツ?)映画。 3人の子供が主役のほのぼの
「天空の草原のナンサ」 (てんびんthe LIFE)
「天空の草原のナンサ」 九段会館で鑑賞 モンゴルの遊牧民の生活を見せてくれる作品。ナンサちゃんと両親、妹、弟、5人家族で知っているようで知らないモンゴルの生活を映しています。それに加えてナンサちゃんが拾ってきた1匹の犬のエピソードをくわえてお話は進みます
天空の草原のナンサ (日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~)
どこまでも続く、モンゴルの大草原。その中に張られたゲル(モンゴルの遊牧民のテント)に、ナンサと両親、妹、弟の五人家族が生活しています。ナンサと捨て犬だったツォーホルの出会い、ナンサが出合ったおばあさんに聞かされる黄色い犬の伝説などがストーリーの中心になり
試写会「天空の草原のナンサ」 (こまったちゃん。のきまぐれ感想記)
試写会「天空の草原のナンサ」開映19:00@九段会館 「天空の草原のナンサ」 the cave of the yellow dog 2005年 ドイツ 配給:東芝エンタテインメント 監督・脚本:ビャンバスレン・ダバー プロデューサー:シュテファン・シュシュ エグゼグティブ・プロデュー
「天空の草原のナンサ」見てきました (ワーキングマザースタイル[wmstyle.jp])
娘を実家に預けて、旦那とデート。わたしのリクエストで映画を見てきました。 「天空の草原のナンサ」 とにかく本当に素敵な1時間半でした。自分が優しくとけていくような時間でした。 100人の人に会ったら、...
天空の草原のナンサ ★★★★ (結局映画かよ)
天空の草原のナンサ (THE CAVE OF THE YELLOW DOG) 製作: 2005年、ドイツ、Schesch Filmproduktion 配給: 東芝エンタテイメント 監督: ビャンバスレン・ダヴァー 脚本: ビャンバスレン・ダヴァー 出演: ナンサル・バットチュルーン、ウルジンドルジ・バ.
天空の草原のナンサ (日々徒然ゆ~だけ)
 派手さも盛り上がりもないが,後からじわじわと効いて来る,陳腐な言い回しだがヒーリング効果抜群の掌編。当然モンゴルのロケーションも大いに関係してくるが,おかあさんや,道に迷って出逢ったおばあちゃんの言葉がねぇ,非常に含蓄のある,魂からほとばしるような言霊.
映画『天空の草原のナンサ』を観て (KINTYRE’SPARADISE)
原題:TheCaveOfTheYellowDog(ドイツ)公式HP上映時間:93分監督:ビャンバスレン・ダバー出演:ナンサル・バットチュルーン(長女ナンサ)、ウルジンドルジ・バットチュルーン(父)、バヤンドラム・ダラムダッディ・バットチュルーン(母)、ナンサルマー・バットチュ...
『天空の草原のナンサ』 (サミームービーストック)
 特に観たかったわけでもないんですけど、何の期待もなく日比谷シャンテシネで鑑賞。なんか超お年寄りばっかりで引き気味です。  ビャンバスレン・ダバー監督のモンゴル映画。モンゴルに関してはほとんどなんの知識も無い。知ってるのは朝青龍とモンゴル相撲とモンゴ...
天空の草原のナンサ*The Cave of the Yellow Dog (Pets by Pets piccolo)
ビャンバスレン・ダバー監督が、祖母から聞いた昔話とモンゴルで語り継がれる「黄色い...
天空の草原のナンサ (泥海ニ爆ゼル)
「天空の草原のナンサ」 モンゴルの草原で生活するバットチュルーン一家の生活を映した作品。ある日、ナンサは背にブチのある犬を洞窟で見つける。オオカミを警戒する父親に反対されながらも、ナンサは内緒でその犬を飼うことにした… なんと子供たちの愛くるしい
「天空の草原のナンサ」@九段会館 (ワンダーあーちゃん(*´∇`*))
今日もこまったちゃんと一緒です。今日は開場が18:30と遅め。開場してすぐはわりとガラガラって感じだったので、「やっぱり今日はヤクルトホールの『フライトプラン』をセレクトした人が多かったのかしら?」と話していましたが開映前になると空席がほとんどなくなりほぼ満
天空の草原のナンサ (いつか深夜特急に乗って)
「天空の草原のナンサ」★★★★ (盛岡フォーラム2)2005
NO.168「天空の草原のナンサ」(ドイツ/ビャンバスレン・ダバー監督) (サーカスな日々)
「私には撮りたい映画がある」と、 ダバー監督はなんの迷いもない。 ダバー監督の前作「らくだの涙」は、多くの人に新鮮な感動を与えた。 モンゴルの砂漠地帯の遊牧民族の一家。そこの母らくだが産んだ赤ちゃんは、白い子らくだ。母らくだは育児拒否をする。白い ...
天空の草原のナンサ ( m e r c i *)
モンゴルの草原で暮らす遊牧民の一家の長女ナンサは6歳。 かわいい小犬を連れて帰るが、父親に飼うことを反対されてしまう。 しかし、父が出稼ぎに行っている間、こっそり飼うことに。 ところがある日、放牧中に小犬とはぐれてしまう。 捜し回ってやっと見つ ...
天空の草原のナンサ (39☆SMASH)
『天空の草原のナンサ』 あらすじ 『6歳の少女ナンサは、たくましい父親と優しい母親、小さな弟妹たちと共に、果てしなく広がるモンゴルの草原で暮らしていた。そんなある日、家事を手伝う途中で寄り道をしたナンサは、賢い子犬と出会う。ナンサは、そ ...
『天空の草原のナンサ』 (・*・ etoile ・*・)
『天空の草原のナンサ』DVD鑑賞 公開時少し気になっていたけど、なんとなくタイトルで食わず嫌いに。どうして邦題っていまひとつのものが多いんだろう・・・。実際のタイトルは「THE CAVE OF THE YELLOW DOG」で、映画の中で登場する犬にまつわる伝説とストーリー自体...