ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『抱きしめたい―真実の物語―』

2014-01-23 23:31:31 | 新作映画

----あれっ。昨日はこの映画のほかに
実写版の『魔女と宅急便』、それに話題の『映画 愛の渦』を観たんだよね。
よりによってなぜこの映画?
確か、観る前はあまり気乗りしていなかったのでは…。
「そうだね。
他の二本も、よくできているしけっこう楽しめた。
でも、それはいずれも観る前から抱いていた想像の範囲内。
この映画はおそらくこんな感じなんだろうな…という。
まあ、『魔女の宅急便』に関しては、
ジジがCGだったということの気づきはあったけど…。
ところがこの映画は、ほんと驚き。
最初は
また、“泣かせ”の純愛映画かと…。
監督が塩田明彦じゃなかったら、
もしかしたら観なかったかも…」

----ということは、
その“驚き”がポイントということだニャ。
「うん。
この映画が<事実>に基づいていることもね。
北川慶子演じる、主人公つかさは
高校時代に交通事故に遭い、
以後、車椅子で生活を送っている。
しかもこの映画の始まり、2014年においては
すでにこの世を去っている…」

----えっ、それってネタバレでは?
「いやいや。
そのことは早くも冒頭に明かされるんだ。
そして物語は、そこからの回想形式で紡がれていく。
回想するのは錦戸亮演じる夫の雅己。
本来ならば、それは伏せておき、
その死別の瞬(とき)間で感情を大きく揺さぶるのが
“泣かせ”映画の常道。
それを破ったということは、
塩田監督の
この映画を安易な“泣かせ”映画にはしないという強い決意の表れでもあるんだ」

----う~ん。
それは分るけど、
じゃあ、監督はどこを観てほしいと思っているの?
「それは
ある“重要なできごと”に直面した人々それぞれの考え方、生き方。
彼らは、それぞれ
自分の過去の積み重ねの上に<現在>を生きている。
これは、そんな彼らが
つかさという<現実>と出会ったことで、
それぞれの内なる<声>と向かい合う

そういう映画なんだ。
だからここには、
表面的な、生ぬるいセンチメントはない。
雅己の父・武雄(國村隼)は、息子が障害者と結婚することで
自分は孫の顔も見られないのかと、
雅己とののしり合いの大喧嘩をするし、
つかさの母・清美(風吹ジュン)は、
雅己の甘さに、その顔を平手打ちする。
そんな清美に対し、つかさは
私はわがままに生きる』と宣言。
映画の最初の方でも彼女は
気の強い、とっつきにくい女の子にしか見えない」

----ニャんだか、ひねくれた見かたしていない?
「まあ、そう思う人もいるかもね。
でも、ぼくはほんとうにそう思ったんだ。
この映画は、
一つひとつのできごとが
ほんとうに丁寧に描かれていると…。
それはとりもなおさず、、
登場人物、一人ひとりが
それぞれの生をビビッドに生きているからなんだ」

----ニャるほど。
だからツイッターで
これまでの日本の難病映画の壁を破った”と言っていたんだニャ。
ところでそのツイッターでも言っていた“回転木馬のキス”というのは?
「そのシーンも、塩田監督の技が冴える。
上下に動く回転木馬にあわせて
側で付きそう雅己は馬上のつかさにキスしようとするんだけど、
なかなか上手くいかない…そのもどかしさ。
これも“映画として魅せる”ための演出。
あと、やはり特筆すべきは北川景子の演技だね。
劇中、清美はつかさのリハビリ映像を雅己に見せるんだけど、
その中のつかさ、つまり北川景子の演技が言葉を失うほどに凄絶。
これは、おそらく北川景子自身が本人のドキュメント映像を観て、
ある覚悟を決めたからに違いない。
女優が賭けた、あるいは勝負に出た瞬間という気がしたね。
と同時に、
ここで写される映像が
最後まで、
すべてテレビモニターの中というのも注目。
つまり、塩田監督はあくまで
劇中ドキュメンタリーの形を貫くんだ」

----どういうこと?
「これまで、
このようなケースでは、
中の映像がスクリーンいっぱいにブロウアップされるのが常。
その方が観客は見やすいからね。
でも、ここではそんな観客の立場よりも、
これは雅己たちが見ているものであるという<事実>の方に重きを置く。
塩田明彦監督の作家としての個性がにじみ出たシーン。
ぼくはそう思ったな」



フォーンの一言「『余命1カ月の花嫁』とはだいぶ違いそうだニャ」身を乗り出す

※“お姫様抱っこ”が自然に増えることも計算のうちだ度

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