ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『東京難民』

2014-01-11 15:20:20 | 新作映画

----『東京難民』
スゴいタイトルだニャあ…。
ベトナム難民なんてのは聞いたことあるけど。
「そうだね。
正直、ぼくも最初は観るのが怖かった。
いま、行くところまで行ってしまった日本の格差社会、
その現実を突きつけられる気がして、
どちらかというと、
映画に夢を見たいほうの自分に
果たしてこれは正視できるだろうかって…」

----あっ、それは分るニャ。
だから、観てからもずっと喋らなかったんだ。
「うん。
あまりお屠蘇気分でめでたい
年始には向いていないような…。
でも、今日は11日。
鏡開きも終ったことだし、
都知事選も近づいている。
ここで振り返ってみようかと…」

----都知事選って関係あるの(笑)?
「あるある。
今回なんて、
一方では、
権力者、富裕層がこの国を牽引していて、
そのおこぼれに預かっているのが弱者で、
救済の必要なんぞはない、などと、
弱者切り捨てを公言する人まで立候補しているしね。
で、なぜかそういう声が
一部で喝采を浴びたりもする。
そんな人たちにこそ、この映画は観てほしい、
切実にそう思うね。
というのも、ここで描かれている主人公、
大学生の時枝修(中村蒼)は、
どこにでもいるような普通の大学生。
もちろん授業をさぼったりもするし、
合コンで盛り上がったりもする。
でもだからと言って、
彼の“地獄めぐり”が始まるのは、
そんなことが理由ではない」

----いわゆる“自己責任”とは違うってこと?
「そういうこと。
彼は、ある日突然、
大学から、なんの通知もなしに、
授業料の未払いを理由に、大学を除籍される。
生活費全般の面倒を見てくれていた父親が、
借金を抱えて失踪してしまったんだね。
当然に家賃の支払いもなく、
アパートを追い出された彼は、
ネットカフェに止まりながら
チラシ配りのバイトで糊口をしのぐ。
新薬検査のバイトで
ようやくまとまったお金を手にするものの、
それも言い寄ってきた女に騙され、
巻き上げられてしまう」

----ニャんだ。
結局、彼も悪いんじゃニャい。
「うん。
それは確かに彼の“油断、気の緩み”。
この映画は、少し運が向いてきたとしても
常に気を引き締めてなくてはいけないということも教えてくれる。
ただ、さっきも言ったように、
そのきっかけとなるのは、
彼にとっては“事故”。
このことはしつこいようだけど、
繰り返し言っておきたい。
いまは、自分の社会的立場がしっかりしていたとしても、
障がい、交通事故、さらには介護など、
いつ、どこで自分やその家族が
そのような弱い立場になるかは分からない。
そのとき、社会に福祉制度が整っていないことを知っても、
もう既に遅し…」

----ちょ、ちょっと。
映画から離れてきているよ。
「あっ、ゴメンゴメン。
この映画では、その後、
修は、ホストクラブで売れっ子になり、
そこで茜(大塚千弘)という顧客もつくようになるものの、
ある事件が起こったとき、
生来のやさしさが仇となり、
結局はホームレスにまで転落していく」

----うわあ、キツイ話。
「でもね。
これが映画として見ごたえ十分。
というのも、
彼の彷徨する“地獄”が一つひとつ、
くっきりとあぶり出されるんだ。
ホストクラブ時代、荷役労働者時代、そしてホームレス生活…。
そこで修が出会う人たちは、
みんなただ流されて、
いまを生きているわけではない。
それぞれに自らの考え、
つまり人生観を持って生きている。
その集合体として、それらの“社会”がある。
そう、この映画が描くのは、
観念として決めつけたホストクラブ、ホームレスではないんだ。
どこまで監督がリサーチしたのかは分らないけど、
その空気感が見事で、
まるでいくつもの映画を観ているような気になるんだ

----ニャるほど、監督って誰だっけ?
「佐々部清監督。
これまで、さまざまなジャンルの映画を撮ってきたことが
ここに生かされているような気がしたね。
映画の中にはストーリー上の必然性として
“男と女”のパートも。
しかもこれが実にいい。
小説の『永遠の仔』以来、使われすぎの感もあった
『生きててもいいですか?』のセリフが
こんなに泣けたのも初めて。
これを観て、人生は死ぬまで終っていないんだと、
そう思って明日に希望を持ってくれる人が増えたら嬉しいな」




フォーンの一言「公開は2月22日…。
都知事選の後ってのは痛いニャあ」身を乗り出す

※試写会があったら応募してほしい度

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