柚木裕子著"最後の証人"を読みました。
"検事の本懐"のシリーズの1冊です。
佐方貞人は検事の本懐では検事でした。
この話では検事を辞めて弁護士になっています。
期待されていた検事だったのになぜ辞めたのだろうと
気になりました。
徐々にその理由は明かされていきます。
同僚だった男の犯罪を隠蔽するのを当然とする上司達の
考え方に異議を感じたからです。
東京に事務所を構えていますが今回の事件は検事だった
時の勤務地の米崎です。
依頼者は誰からも犯人だと思われていますが無罪を
主張しています。
犯人とされているのは島津邦明、建築会社社長です。
殺されたのは高瀬美津子です。夫の光治は開業医です。
島津と美津子は不倫の関係にあり男女関係のもつれで
ホテルでルームサービスで供されたナイフで美津子を
刺し殺したとされています。
高瀬夫婦の息子の卓は小学生だった七年前に塾帰りに
車に撥ねられて亡くなっています。
当時島津は公安委員をしていました。
直後を走っていた卓の友達は卓が信号を守っており、
島津が酒臭かったと証言しています。
しかし警察はこの事件を卓に原因があると握りつぶしました。
両親は必死に島津の罪を暴こうとしましたができませんでした。
美津子は病気で長くないことを知ります。
島津に復讐することを考えます。
近所や島津が開いている陶芸教室のメンバーにあたかも
美津子と島津が関係があるかのように振舞います。
ナイフでどのように突いたらいいか夫に聞きます。
公判は一日目、二日目と過ぎていきます。
公判では事故のことは取り上げられていません。
本を読んでいる者には美津子は返り討ちにあったのだと
思わせられています。
最後の日に弁護側の意外な証人が登場します。
やっと佐方の説得に応じて自分の人生をかけてやって来て
くれました。
島津の過去の罪が暴かれます。
そして事件の様相ががらっとひっくり返ります。
あぁ、こういうことだったのかと読者もだまされた
ことに気づきます。
佐方は最初から事件がどんなものだったのかはっきり
知っていたのです。
最後の証人が来てくれなかったらこの裁判はどうなった
のでしょう。
佐方は弁護士としてしっかり仕事をしますが依頼人の
島津を軽蔑している様で好意は持っていません。
それでも弁護します。弁護士とはへんな仕事ですね。
警察内部の犯罪者をかばう慣習がここでも描かれています。
現実でもこういうことはありますが、威信にかかわるとか
いいますがぜんぜんその意味がわかりません。
どんどん公表すればいいことで隠すことに何の意味も
ありません。
ひとつごまかせば次から次へと連鎖していって収拾が
つかなることは想像できます。
佐方の態度がなんか悪くってかっこ良さが失われています。
もうちょっと素敵だといえる人物だといいのですけど。
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