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石井紫郎・水林彪氏「国家」(『国史大辞典』)

2014-01-31 | 丸島和洋『戦国大名の「外交」』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 1月31日(金)12時56分56秒

国家論に興味を持った人のために基礎的な資料を紹介しておくと、出発点として一番良いのは『国史大辞典』ですね。
「国家」の項目の執筆者は石井紫郎・水林彪氏です。

まず最初に「国家の意義は、史料上の意義と学問上の意義との二つの面において考える必要があるが、前者の歴史については、現在の研究水準では断片的に諸事実が知られるのみで・・・」とさらっと触れた後で、「学問上の国家概念については、社会科学上の概念が一般的にそうであるように、西ヨーロッパ的概念の影響が大きい。西ヨーロッパ各国語の国家という言葉(state(英)・état(仏)・Staat(独)・stado(伊)・estado(西)など)はラテン語のstatusが派生したものである。それぞれの土着の言語には、王国、大公国、公国、伯邦などといった下位概念を包括する上位概念としての国家を指す言葉はなかった。ヨーロッパ中世の一般人は抽象的に国家を表象することをしなかったのである。・・・」という具合にヨーロッパでの議論が紹介されています。

ついで、「これに対して、わが国の歴史学においてはほとんどの場合マルクス・エンゲルスの影響を多かれ少なかれ受けた国家概念を用いて、各時代について多様な国家論が展開されてきた。マルクス・エンゲルスの国家論は、西ヨーロッパにおいて、官僚制・常備軍という支配機構とこれによって統治される客体としての領土・領民が国家という概念で表象されるに至った段階に即して、このような支配の形態が成立した歴史的必然性を、統治される側の人々の社会関係の基幹部分たる生産関係のあり方から説き明かそうという問題意識から生まれたものであり、終局的には、エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』において、古典古代をモデルに、発達した機構としての国家は、社会における商品経済の全面的展開を基礎として成立する、というように定式化されるに至るが、わが国の学界ではこれが多少異なった形で理解され、商品生産の未発達な時代にも適用される、いわば歴史貫通的な国家論として受けとめられてきた。すなわちわが国では・・・」という具合に、古代は石母田正説、中世は石母田・黒田俊雄・永原慶二・佐藤進一・石井進説等を簡潔に紹介して行きます。

近世は安良城盛昭・佐々木潤之介・石井紫郎・水林彪・山口啓二説等の紹介、近代は紙幅が足りなかったのか講座派・労農派の紹介以外は少なくて、いささか物足りないですね。
ま、以上のような感じで、1980年代までの議論を紹介してくれています。
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