書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「ドルチェ」誉田哲也

2015年10月04日 11時35分50秒 | 読書
「ドルチェ」誉田哲也



魚住久江(うおずみひさえ)巡査部長。42歳。独身。
練馬警察署に勤める刑事さんである。
彼女が主人公の警察小説の短編集だが、他の警察小説とは一味も二味も違う。

まず、殺人が起きない。
そして犯人が皆とても善人である。

しかし、事件を追っていくと、何か違和感がある。
その違和感が久江を突き動かし、真実を追い求める原動力となる。

基本的にはミステリーである。
一見何気ない単なる傷害事件の裏に、心の闇がかくれている。
事件の動機が謎の中心である。
なぜ、犯人はそんなことをしたのか?
そこには、現代社会が抱える、人々の心の問題がある。
DV、ニート、性的マイノリティ、、、、

久江の優秀さは警察幹部の知るところなので、毎年のように警視庁捜査1課への移動を打診される。
しかし、彼女の断わりのセリフがとても良い。
「起きてしまった殺人事件の犯人を挙げるより、殺人事件になりそうな事件を解決することで、殺人を防ぐ仕事がしたい。」

実に渋い味わいのある刑事小説であり、大人の読者に受けるだろうなと思う。
あと、久江の恋(?)の行方も気になる。
続編があるなら読んでみたいね。