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「天地明察」冲方丁

2010年07月24日 13時53分34秒 | 読書
「天地明察」冲方丁




作者名は「うぶかた とう」と読む.

小説だけど,人生の指南書.
人の価値は生き方で決まる,ということを明確に示してくれる.
しかも,めちゃくちゃ面白い.

主人公は,碁打ちを職業とする安井家の長男,安井算哲.
時は,徳川4代将軍家綱の頃.

当時,宣明暦という中国古来の暦が使われていたが,種々の誤差が指摘されていた.
日食・月食などもことごとく予測を外していた.
しかし,時の朝廷や陰陽師達がこの宣明暦に頼った占いをしており,改暦には反対であった.
そのような情勢の中で,算哲は保科正之の命を受け,天下の改暦事業に乗り出す.

さまざまな試練があり,改暦事業にも2度も失敗することになる.

しかし,...

という物語.

何度失敗しても,常に新たな目標を見いだし,次の一歩を踏み出す算哲.
彼の心の中には,『算術』に対する情熱が常に燃え続けている.

暦の数理面からのサポートをする人物として,あの関孝和が登場する.
関は我々から見ると,和算の大家であり,彼自身が改暦事業の指揮をとってもいいんじゃないかと思うが,実はそれにはある事情があり,できないのです.
この辺の物語も,「オトナの事情」をわかりやすく書いており,一筋縄ではいかない人生の指南書としての面目躍如である.

我々読者の生き方から考えると,別にそれが,算術である必要はなく,人が自分の一生をかけるに値すると思ったものなら何でもいいわけです.

この小説,いろいろなことを教えてくれる.

◇失敗は結果ではなく,その時点における経過である.
◇「逃げる」ことの先には決して幸せは待っていない.
◇本当に大事なことは言葉では説明できない.
◇妻を(夫を)愛し続けることのすばらしさ

指南書としてだけでなく,人生に対するおおいなる応援歌ともなっている小説だ.
この本を読めば,『結果を恐れて身がすくむ』,ということが無くなるような気がする.
大事なことは結果ではなく,その結果に対する対処の仕方ということ.
これは心強いフォローです.

夫婦愛の描き方も本当にすばらしい.
若くして亡くなった妻「こと」が算哲に向かって言うせりふ「ことは幸せ者でございます.」には多くの読者が涙するに違いない.

是非若い人に読んでほしい1冊.いやいや,年配になってからでも遅くないです.
今,この本を読んで,心の若さと健康を取り戻しましょう.


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