主人公,真介はリストラを専門に請け負う会社の面接官という仕事をしています.
皆さんご存知でしょうが,指名解雇は違法です.
つまり,会社側が,正当な理由無く「君はクビだ!」と宣言することは法律上許されていないわけですね.
しかし,辞めてほしい社員が,自分の方から,辞めますと言ってくれば,会社側としては,こんな都合のいい話はない.
そう,彼の仕事は面接を通じて,相手に「じゃあ私辞めます」と言わせる仕事なのです.
当然ながら,最初は,相手はリストラされるのは嫌がりますから,泣いたりすがったり,あらゆる方法で,逃れようとする.
しかし,真介は緻密なデータに基づく巧みな話術で相手の心境そのものをチェンジさせ,いつの間にか,高確率で「落として」しまうのです.
たぶん,わが身に降りかかれば笑っている場合ではないのでしょうが,第三者として見ている分は,面接のシーンは面白いというほかない.
刑事コロンボが犯人を追い詰めるのをワクワクしながら見ている心境に近い.
そして,許せないことに,真介はかつて面接対象であった陽子と恋人関係になっている.
これって,セクハラとちゃうか?と思わせますが,実は陽子の方も真介を気に入っていて話がややこしい.
物語の根底を流れる垣根氏のスタンスは,大事なのは,「会社に残れるか」否かではなくて,「会社に残って何をするか」なのだということなんですね.
解雇される方の社員を決して暖かい目で見てはいない.
むしろ,その人がどういう想いで仕事を生きがいにしていくかを問い詰めるようなセリフが多く出てきて,ハッとさせられることが多い.
ま,フィクションですから,派遣切りなどの現実の切実な問題とは一線を画する話ではあります.
しかし,「仕事」というものに対する考え方を鋭く問われるお話には,間違いなくなっていると思います.
真介と陽子のラブロマンスは,う~ん,そうですねえ.
やっぱり,非現実的かな?