書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「硝子の葦」桜木紫乃

2014年07月02日 10時24分19秒 | 読書
「硝子の葦」桜木紫乃





ホテルローヤルで直木賞を取った桜木紫乃さんの長編小説.

全体的にはミステリーなんですが,小説のテイストは完全に純文学.

逆に謎解きの要素がなければ,そのまま芥川賞の候補になれそう.

捻じれた男女の関係が縦糸,愛憎交わる親子の関係が横糸となり,複雑に編み込まれた物語を形成している.

トリックそのものは単純で,裏表紙の解説短文にある「驚愕の結末を迎える傑作ミステリー」は大ウソ.ミステリーファンを馬鹿にしている?

アホな編集者は無視するとして,この小説そのものは非常に優れた文学作品だと思うのです.
文章の味わいは深く,極めて薫り高い.

再三,男女のシーンが出てくるが,官能とは程遠い,非常に乾燥した哀しみにあふれた描写となっている.こんなに乾いた男女関係がありうるのかとも思う.

幼少期に虐待を受けた子が,何とか自分の気持ちに折り合いを付けながら,世の中を生きていくには,ねじ曲がった心の容器に合うように,自分の人生を歪めながら生きていくしかないのかと思わせる.
さらに言うと,生きることと死ぬことは実は同じことではないかとも.

こうなったら,「ホテルローヤル」も,読むしかないね.