書く仕事

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「富豪刑事」筒井康隆

2010年05月01日 10時12分22秒 | 読書
「富豪刑事」筒井康隆




私は筒井康隆は天才だと思うのです.
しかし,世の中はそうは見ていないようで,「鬼才」とか「異才」とかいう.
まあ,いいですけど.

いずれにしろ,彼にとって作品を書きづらい世の中なんだろうなあとは想像しています.
なぜかというと,彼の初期の作品群は,皆,鬼気迫る緊迫感にあふれていた.
彼のライフワークが「狂気の文学的表現」にあるのではないかと,密かに思っているcoollifeですが,この狂気を書かせたらこの人の右に出るものはいない.

しかし,障害者に対する差別的表現にまつわるいざこざから断筆宣言をしたことは有名な話.
断筆解除後は,やはり断筆の際の教訓があるのか,なんとなくつまらないんだなあ.
もちろん,差別的表現をしてほしいとは決して思わないけど,筆の勢いが,ちょっと鈍っている気はしてならない.

この富豪刑事は,断筆前の作品で,さすが筒井,発想が奇想天外.

刑事ものというと,地道な聞き込みでコツコツと証拠を集めていくお話か,天才的な推理で犯人をずばりと当てるかの2種類でしたよね.
でも,この富豪刑事は全然違う.
金ですカネ.
例えば,誘拐事件で身代金が用意できない被害者に,ポンと身代金相当のお金を貸しちゃう.あげても良いと思っている.

お話はどちらかというと,ミステリーと言うより,ドタバタものです.
ただし,筒井氏お得意のスプラッターではないです.

安心して子供にも見せられる.

暇つぶしには最適な一冊.