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歩くことが唯一の趣味ですから。

クリムゾン・キングの宮殿

2018-12-01 | Weblog
サインを求めたら、ロバート・フリップはアルバムジャケットの左下に小さく署名したあと、「自分はいつもメガネを
かけているから……」と笑ってメガネの絵を描いた。「甘いものが好きだから……」と笑って、歯を1本黒く塗った。
気難しいかと思ったら、目の奥に笑みをたたえたユーモアのある人だった。笑いながらCDの盤面に、このような
バツ印を書いて、


「このレコード会社は嫌いだ。悪いレコード会社」

とつぶやいた。やっぱり気難しいかも。キング・クリムゾンがアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』を世に問うて
30年になる、1999年のこと。雑誌のインタビューで会って話をしてから、かれこれ20年近い月日が過ぎた。
2012年だったかに引退宣言をして、音楽活動をやめたはずなのに、2015年だったかに活動を再開している。
宮崎駿か。「キング・クリムゾン結成49周年になる2018年は、50周年より意義深い」と、ややこしいコメントを
発表してツアーを回り、11月27日から日本公演が始まった。さっそく行ってきた。


トリプル・ドラムの8人編成バンドになっていた

ステージの前列にドラムセットが3台ならび、後列にその他の5人がならぶ。ロバート・フリップは向かって右端。
90年代にライブをみたときは、ダブル・トリオの6人編成で、ドラムセット2台をドカドカやっていたけれど、いまは
ドラムセット3台でバカスカやっている。この、2階席でもS席16000円でけっこういいお値段がする。8人もいる
から、それぐらい取らないと成り立たないのか? 8人もいるのに、誰も何もしゃべらない(MCなし!)でひたすら
演奏し続ける。20分の休憩をはさんでトータル3時間。


それにしてもお客さんの年齢層がすごく高い!


写真撮影はすべての演奏が終了したあと、ベーシストのトニー・レヴィンがカメラで客席を撮影しているあいだ
だけ許される。ステージの上も高齢者ばかりだけど、客席も高齢者ばかりだ。20分間の休憩のとき、トイレに
長蛇の列ができていた。女子トイレはがらがら。普通は逆なんだけど、さすがクリムゾン・キングの宮殿。


ロバート・フリップすっかりおじいさんになってた


髪も真っ白だし、ずっと座ってるし……ずっと座ってるのは90年代のダブル・トリオのころもそうだったけど、
あのときは真ん中に座っていた。いまはステージの隅っこ。座ってギターや、サウンドスケープ、キーボード
を操作している。他のメンバーも8人中、5人が座りっぱなし。お客さんも3時間ずっと座りっぱなし。


1999年は髪が黒かった

こっちも若気のいたりで金髪だった。当時ロバート・フリップは、キング・クリムゾンのライブのお客さんたちが
「みんな座って難しい顔をしている」といって笑い、「間違って連れてこられた若い女性はキョトンとしている」
と笑っていたけれども、あれから20年。若い女性がいなくなって、おやじばかりが難しい顔をして座っていた。
おとなしくカラダを揺すりながら感動していた。


札幌、仙台、金沢、大阪、福岡…

1か月ほどかけて全国を巡回する。ドラムセット3台もあるから移動が大変だろうと思う半面、映像設備などが
まったくないから身軽かもしれない。過去の名曲もたくさん聴けて、いちどは満足したんだけど、2日、3日目の
演奏曲がぜんぜん違う(セットリストが変わる)と聞いて、追加公演の当日券の列に並んでみたのが11月30日。
平日に勤め人の行列をみて仕事は大丈夫なのかと心配になったが、自分もその一部なのだった。しかも前から
2人目。


当日券のほうが千円高い

A席でいいのに、S席しか売ってない。1階12列目の中央が買えてしまった。予約よりいい場所じゃないか。
なんだこれは……会場を見回すと、追加公演は2階席・3階席がないようだった。


ファインダーのぞくスキンヘッドがトニー・レヴィン

トリプル・ドラムは迫力あるけど、70年代や80年代の曲はドラム1台でたたけるから、ゆずりあってたたく場面
もあったように思う。気がつくと真ん中のドラマーが横を向いてキーボード弾いてたり。


何もしゃべらないけど深々とおじぎするフリップ

もうひとりのギターがときどき歌うんだけど、その声はグレッグ・レイクでもないし、ジョン・ウェットンでもないし、
エイドリアン・ブリューでもないから、演奏はいいのにボーカルが入るとコピーバンドっぽくなる。8人の編成は、
後列右から
ROBERT FRIPP ギター、サウンドスケープ、キーボード
JAKKO JAKSZYK ギター、ヴォーカル
BILL RIEFLIN キーボード
TONY LEVIN ベース、スティック、バッキングヴォーカル
MEL COLLINS サックス、フルート
前列右から
GEVIN HARRISON ドラムス
JEREMY STACEY ドラムス、キーボード
PAT MASTELOTTO ドラムス



初日も追加公演も「クリムゾン・キングの宮殿」はお客さんが喜んでいた。追加公演だけ「21世紀の精神異常者」
をやって、最年少らしいGEVIN HARRISONの長い長いドラムソロがあり、他の7人がみんな座ってその熱演ぶりを
眺め、「すごいね」「やるじゃん」といった感じで顔を見合わせたり、笑ったりしてるのが微笑ましかった。

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