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歩くことが唯一の趣味ですから。

上高地の河童

2023-10-20 | Weblog

芥川龍之介の『河童』は上高地にいる河童だった。ちゃんとそう書いてある。長野の上高地に行くと河童橋に人が群がり、河童橋の河童が芥川の河童と知ってか知らずか記念写真など撮っている。橋のたもとの売店には、河童にちなんだ土産物がいろいろ販売されている。芥川龍之介が上高地を舞台に『河童』を書いた結果だ。

100年ほど前の小説だから、『河童』の内容のハイカラぶりが今では風化してわかりにくい。缶詰も、腕時計も、精神病も、牧場も、『河童』に出てくる文物はどれもこれも時代の先端を行く舶来品ばかりで、いまとなっては古びてしまったが100年前はハイカラそのもの。いずれも小説の小道具になるくらい新しかった。

100年あれば時代は変わる。当時、上高地には牧場があり牛が飼われていたが、いまはもうない。当時、上高地には河童が出没していたのかどうか定かではないが、いまは出没していない。100年の長さを思いながら歩いていたら、インド人の家族が水辺で遊んでいた。そこだけ切り取ると、ヒマラヤ山中の湖畔にしか見えない。

三年前の夏のことです。僕は人並みにリュック・サックを背負い、あの上高地の温泉宿から穂高山へ登ろうとしました。穂高山へ登るのには御承知の通り梓川をさかのぼるよりほかはありません。僕は前に穂高山はもちろん、槍ヶ岳にも登っていましたから、朝霧の下りた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました……こうして河童に遭遇するのが芥川の『河童』で、この秋もういちど上高地を訪ねて『河童』を読んで散策しようと宿を予約していたんだけど、うっかり足の確保が後手に回ったもんだから……後手に回っても列車とバスを乗り継げば辿りつけるとはいえ、なんとなく面倒になってキャンセルした。つまり行きもしないでブログを書いたのがこれです。

 

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