散 歩 B L O G

歩くことが唯一の趣味ですから。

雑色から生麦

2021-10-03 | Weblog
道草を食うことにした。横浜に用があって乗った京浜急行の鈍行列車を、雑色で下車して道草を食う。というのも用があるのは午後なのに、いまは午前中。しかも土曜日で自由の身だから、見知らぬ土地のアーケードを物珍しく眺めて通り抜け、東海道本線と京浜東北線の線路を渡ると、そこから鉄道沿いに200mでタイヤ公園があるという杭があった。



なんだタイヤ公園って。民家の軒先と金網の間の路地をゆく。横浜の用というのは、みなとみらい線の馬車道駅に直結している新しい施設、ビルボードライブ横浜(2020年7月というからコロナ禍のまっただ中オープン)で、古内東子の歌を聴くこと。ニセO Lのおひとりさま土曜日の過ごし方のようなもの。ニセお局さまの休日みたいなもの。



幸せそうなお父さん、お母さんが、楽しそうな子供たちを見守る公園についた。タイヤ公園というだけあって、建設用の大型車両のタイヤから自家用車、2輪車のタイヤまで大小さまざまなタイヤに子供たちが戯れている。これはお子さまが喜ぶだろう。ニセO Lのおひとりさま=ニセお局さまは、休日のタイヤ公園をみてそんな風に感じたんだ。



やはりお子さまには建設用の大型車両のタイヤが人気あるみたいだと、ニセO Lのおひとりさま=ニセお局さまはタイヤの遊具を眺めながら、ひどく客観的なスタンスで考察するのだった。午後からライブを鑑賞する予定の古内東子の歌だったら、親子連れで楽しむあなたを昔からずっと奥さんより私のほうが好きだった的なおしゃれソングかな。



もう何も言えないけど好きよ大好きよ、ずっと…きっと彼女より的な情念の炎かしら。いつかきっと振り向いてくれる……そう信じてるとか、ずっと待ってるとか何とかストーカーっぽい気持ちに寄り添うみたいな巨大怪獣がタイヤを積み重ねて公園の中に黒く聳え立つ。この公園はおよそ3000個の黒いタイヤに取り囲まれているらしい。



なんというアイロニーかしら、タイヤの巨大怪獣までこの公園では親子で存在している。唯一の救いは父子家庭、または母子家庭のように大小2体のタイヤ怪獣しか存在していないこと。休日のライブハウスに古内東子を聴きにいくニセO Lのおひとりさま=ニセお局さまは、タイヤ怪獣が3体あったら何だかつらい思いをしそうだから。



建設用の大型車両のタイヤにすっぽり隠れてる、これがあなたと彼女の子なのね。彼女がいなくなったら私、きっとうまくやれる。そんな気がする。そんな気しかしない。彼女さえいなくなればなんて、こんなに人を好きになると自分がどうなるか最近わかったの。これ以上は危険だと思ったから、雑色駅に戻ってまた京急に乗車した。



京急鶴見で下車して、お昼ごはんをサンドウィッチだけで済ませて(ピチカートファイヴみたい……そうよ私は90年代入社組のニセおひとりさまO L=ニセお局さま)野宮真貴のように駅前の總持寺を見物しにいく。駅前と思ってなめてたら、けっこうな坂を上らないと總持寺にアクセスできなくて、秋なのに気温30℃もあって大変。



總持寺ってどこかで聞いたことあると思ったら、永平寺と並ぶ曹洞宗の大本山らしい。福井の永平寺は行ったことあるけど、總持寺はこれが初めて。どうして本山が2つあるのか。石川にあった總持寺は明治31年に焼失して、明治44年に上京してきた。道元がせっかく権力から距離を置いたのに。この建物で検温を求められるので、検温してまでみる価値なし。然り、無なり空なりと観じて引き返した。



そしてまた京急に乗って、こんどは生麦で下車した。生麦といえば生麦生米生卵じゃなくて、幕末に生麦事件があった場所。イギリス人が馬で通るのを見た薩摩藩士が、けしからんと斬りつけて4人を死傷させた。その生麦事件碑があるところを探して訪ね歩いたら、なんとキリンビールの横浜工場の敷地にそれが食い込んでいた。



石碑の向こうの白い建物がキリンビール横浜工場で、もしかしたらビール工場の観光目的でここに生麦事件碑を誘致したのかなと思った。そういうわけでもないらしい。攘夷派がイギリス人に斬りつけた現場はここではなく、むしろ生麦駅に近い。かの地で傷を負ったイギリス人の何某が落命した場所にこの碑が建てられたとなん。



それでもやっぱり、遭難の地に碑を建てたほうが何かと理に叶うのではないか。そっちへ行っても何もなさそうだし、ビール工場の見学は新型コロナウイルス対策でずっと休みだし、いつか工場見学できるようになったら改めて事件現場といっしょに尋ねてみよう。いつになるかわからないけど、と思って横浜の馬車道に向かった。



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