特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

格差社会

2024-05-11 04:31:25 | 遺品整理
きれいに晴れ渡った青空が広がる気持ちのいいある日の午前。
現場は都内某所の高級住宅地。そこに建つ高級マンション。
そのマンションに住人達は、どの人も裕福そうで、私の単なる先入観かもしれないが、どことなく品の良さを感じる人達ばかりだった。駐車場の車も高級車ばかり。
それを当たり前のように乗っている。


依頼された仕事とは言え、私ごときが出入りするのも申し訳ないような気分がする程であった。

そのマンションの高層階の一室で独り暮らしの年配女性が腐乱状態で発見された。キッチンで倒れて、そのまま亡くなったらしい。
依頼者は、故人の息子。

「始めから、施行できる装備できてくれ」

とのことだったので、電話で聞いた現場状況から判断して、それに合わせた作業仕様で出向いた。

見積りのため部屋入ったら、いつもの悪臭はするものの、間取りは広々していて窓から見える景色もよく、置いてある物も高そうな物ばかりだった。

とりあえず、見積書を書いて、内容の説明に入ろうとしたら、依頼者は

「全てお任せしますから、そのまま作業に入って下さい」

と金額や作業内容を詳しく聞こうともしない。

「せめて料金だけでも了承もらわないと」

と金額を伝えたら、

「いくらかかってもいい」

「こんな仕事をお願いするのだから、高めにしても構いませんよ」

と寛容かつ丁寧な対応。好意に甘えて、少し高めに見積書を書き直して、作業を開始した。

「一体、どんな仕事をして、どのくらいの収入があればこんな高級マンションに住めるのだろうか・・・。」

と羨ましいやら感心するやら。自分の暮らしとの格差に複雑な思いを抱えながら作業を進めて無事完了。

帰り際も、依頼者男性は

「ありがとうございました」

と丁寧に礼を言ってくれた。礼儀正しく、感じのいい依頼者だった。



・・・同じ日の午後、千葉県某所の市営団地で見積依頼があった。
大規模な老朽団地で、間取りも2DKと狭い。こちらは特殊清掃の依頼ではなく、遺品回収(ゴミ処分)の依頼(家主は病院で死去)。

部屋の中は汚れて散らかり、生活用品とゴミの区別がつかないくらいだった。
遺族は部屋にある物の買い取りを強く希望していたが、どれもこれも、とても買い取れるような価値がある物ではなく、買い取りは全て断った。

しかし、執拗に

「これはまだ使える。これはまだ新しい。これは欲しがる人がいるはず。」

等と言ってしつこかった。しかも、私を業者扱いして横柄な物言いで。

更に、実際の遺品回収費用を見積もったら、細かい値引き交渉に入ってきて、どうにも話が進まなかった。少々の値引きは仕方がないが、遺族の希望する価格と私の提示した料金にあまりに格差があったし、その態度も気に入らなかったので、その場は私の方から断って引き上げた。


問題発言に発展する前に締めるが、その日は一日のうちに午前と午後に分けて二軒の集合住宅に訪問し、二つの遺族と接した訳だが、この大きな格差に思うこと感じることが多い私であった。


トラックバック 2006/06/10 08:49:22投稿分より


日本初の特殊清掃専門会社
ヒューマンケア株式会社
0120-74-4949


コメント (67)
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