特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

2006-12-28 14:48:16 | Weblog
朝夕の通勤電車に乗ると思うことがある。
みんな、疲れているように見える。
ひょっとして、疲れを通り越して病んでいるのかも。
特に、休み明けの月曜日にはブルーになる人が多いのではないだろうか。
電車への飛び込みも、月曜が一番多いらしいし。
そう考えると、正月休暇の後の仕事も、かなりキツそうだね。
年末年始休暇がない私は、その点では救われてるかも。

自殺・引きこもり・過労死etc
この社会には心を病んでいる人が多そうだ。
そう言う私も、その中の一人であることを自覚している。
自殺や引きこもりが当たり前になっている社会に寒々しさを感じるているのは私だけではないだろう。

時折、過労死のネタがニュースに取り上げられる。
労災認定がおりたとか、裁判で勝ったとか。
労災が適用されようが裁判で勝とうが、本人が死んでしまっていては後の祭だ。
社会的な意義が残るのかもかもしれないけど。

「人生って一回きりなんだなぁ」としみじみ思うことがある。
二度ない人生なら悔いのないように生きていきたい。
しかし、現実には悔いだらけ。
悔いのない人生を私は既に諦めているけど、それでもわずかな抵抗を持っている。

今現在、私の両親は健在。
ただ、私とはかなり疎遠。
以前は、2~3年も音信不通だったことが何度かある。
かつては、「もう、生きているうちに会うことがなくてもいいや」とさえ思っていた。
今でも、年に一度、顔を合わせるか合わせないかの付き合いでしかない。
そんな冷え切った関係だ。

これは、つい何年か前の自分の誕生日のこと。
仕事を通じて独自の死生感が養われている私は、あることに気づいた。
「過去に何があったとしても、どんな関係だろうと、どんな感情を持っていようと、親が産んで育ててくれたから、今の自分が生きていられるんだよな」
自分が歳を重ねるにあたってそう思った私は、自分の誕生日に親に電話をかけた。
そして、一方的に話した。

「産んでくれてありがとう」
「育ててくれてありがとう」
「お互い生きているうちに、これだけは言っておきたくて・・・」
私は、そう言って短い電話を切った。
考えようによってはくさいセリフなのに、不思議と照れ臭さはなく、真剣に伝えることができた。

ただの自己満足に過ぎないかもしれないけど、心の荷が軽くなったような気がした。
そして、気持ちが暖かくなった。
ズルズル引きずっていたたくさんの悔いのうちの、重い一つが消えた瞬間だった。

今でも親密な親子関係とは言えないけど、「あの時、生の感謝を伝えられてよかった」と、ずっと思っている。
特掃魂を育んでいくと、金には恵まれなくてもそんな恩恵に与れることがあるんだよね。

話はガラリと変わる。
私は、腐乱死体現場の清掃片付けを「特殊清掃」と称している。
それを略して「特掃」と言っている次第。
全くのオリジナル造語だ。
造語は他にもある。
「腐敗液」「腐敗脂」「腐敗粘度」「汚宝」「デスワーク」「未確認歩行物体」etc
その最たるものは、やはり「汚腐団」「汚妖服」「汚腐呂」だろうか。
それらを造語と知らないで、辞書で調べた人も何人かいたらしい。
それでも意味が判明せず、過去ブログに遡る。
失礼ながら、その様はちょっとオカシイ。

ブログの色合いも暗い。
さすがに腐乱臭まではしないまでも、陰気臭さは否めない。
寒々しくもある。
黒地に青文字だからねぇ。
これは、管理人が選定したものだけど、特掃に妙にマッチしていると思っている。
ただ、こんな画面でこんなネタばかり読んでちゃ、ますます気分はブルーになる?

また、私のブログは恐ろしく地味。野暮野暮。
画面上に動くモノはおろか絵文字もない。
その逆に、誤字脱字はある。
デジタルなのに、すごくアナログっぽい。
これも趣があっていい?

二重人格?一人二役?と勘違いされやすいみたいなので、あらためて案内しておく。
私と管理人は全くの別人であり、全くの分業で本ブログを運営している。
管理人とは、私が死体業を初めて一年後くらいから一緒に仕事をしているので、もう十何年の付き合いになる。
これも一種の腐れ縁だろうか。

そんな本ブログも初めての年越しを迎える。
過ぎる年の終わりも、新しい年の始まりも、ブルーなスタンスを変えようがない。
だだ、それを通じて人の暖を分けてもらいたいと思っている。
そして、いつかは人に暖を分け与えられるくらいの人間になりたいとも思っている。

今年は暖冬と言われているけど、みんなもっと心に暖をとった方がいいね。



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