雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

いたましく言葉しまひて胸に置けば陶器のように触れる夜の風

2010-08-24 19:19:40 | Weblog


 『Itと呼ばれた子』を、ここ数日で何冊か読んだ。



 一冊読み終えるたび、皮膚がすうっとつめたくなるような気がした。こわい。


 正直、おびえた。





 作者の自己省察と自己認識の確かさ、ただしさ。

 いくたびの挫折にくじけない強さ。





 書かれている出来事の多くは、読んでいて、目をつぶってしまいたくなるほどのものだった。


 でも、作者の誠意と読者への励まし、情愛が、文章から目を離せなくする。




 これは幼児虐待という領域だけでなく、もっと広く深く、人の心のありかた、東洋的な言い方だけれど、因果とでも表現するしかないような世代間の「悪しき鎖」、連鎖についても、ごくおだやかな表現で指摘されている。


 これほどの無惨を抑制のとれた文体で書き抜いた精神力に目をみはる。


 だから生き延びられたんだろう。



 作者のオフィシャルホームページで、写真を拝見したら、落ち着いた知的な風貌のひとだった。

 自然な笑顔が明るくさわやかだ。





 一冊ごとに、どきどきしながら読んだ。





 いまも、まだすこし。





 とてもすばらしい読書体験だった。


 
 
 傷ついているひと……たとえば虐待だけでなく、いろんな人生のさまざまに、立ち往生しているようなひとたちにとっても、すばらしい本と思う。


 
 







 秋の気配含んで、もう夜風はすずしい。







コメント
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