『花と虫の記憶』読了。
大庭みな子、という女流を読んだのは、初めて。終わりまでいっきに読み通せた。
時代性というのか、倉橋由美子さんや、すこしずれるけれど、森茉莉さんに通う絢爛とした魅惑。
日本がまだとても豊かだった、70年代後半の作品だから、ぜんたいにデカダンスなエロティシズム漂う。理非も善悪もなく、ヒロインは寓話か、神話の主人公めいて、さまざまな遍歴を重ねる。
極彩色の森。
昨日書き留めた「It……」との相違は当然で、脳みそが違った意味で覚醒する。
大庭さんは、読者と自分との間に、きらびやかな言語空間を配して、わたしたちを遠くから眺めている、という印象だった。
デイブ・ペルザー氏は、わたしたちの心に切実な熱い訴求をする。こちらがわにぴったり寄り添ってくる。
わたしの感じ方が的を射ているかどうかわからないけれど、作家それぞれの資質によって、その世界の感触は、ほんとに違う。
しばらく、目にとまった本をランダムに漁ってみようと思う。