雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

かなしみも光の束とおほらかにいのちほぐして時を渡らむ

2014-09-14 21:15:39 | Weblog



またラジオから流れる音楽を聴きながらうたう。


チェリストはまだ若い〈いとうゆうき〉さん、と聴いた。いいチェリストと思う。力があるなあ。たっぷりした弓使いを想像する。




曲はブラームスとラフマニノフ。どちらもすてきだった。ことにラフマニノフは、サンサーンスと同じくらい好き。




ゆったりしたスケールの大きい演奏に、目の前を流れる光の河が見えた。








それをそのまま。


悲喜こもごも、いっさいを集めて時間は宇宙へ還元されてゆく。時間と空間の果ては、膨大なエネルギーを収斂し、ふたたびプレアデス星団のような姿に戻るんだろう、と思っている。


何億年か先のことだけれど。こういうことを考えるのは楽しい。脳内クリーニング。みんな。(NO無掃除




今日も丁寧に過ごせたと思う。焦らず、師走の催し目指して、左手の三指と四指をゆっくり調えてゆく。


明日は、今日よりも少しだけいい日にしよう。
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『日時計』  沙羅みなみ歌集

2014-09-14 10:59:45 | Weblog


この一年くらい、何冊かの歌集をいただいた。秋から冬にかけて、ひまひまに読み、心にとまった歌を掲載させていただく。


沙羅みなみさんは「未来」の歌人。精神科の女医さんという。

初め、岡井隆先生の選歌欄で知り、女性の歌にしても皮膚感覚から遠く繊細で、周囲に離れて心のありかをぽつんとたたずませているような口語の歌い方が印象的だった。

歌の中で、ときどき「僕」という一人称を使う。この「僕」は成熟した男ではなく、まだ手足の細い少年の柔らかさに思える。

彼女の歌から感じる寂しさはゆとりがある。自分の世界をしっかりと保ちながら、みずから向こう側に距離を置いている「選択的孤独感」とでも言おうか。向こう側のひとびとは、たぶん彼女(僕)に対して丁重なのだろう。

ふっと、これでは辞世の歌めくと感じる世界が仄見えるが、この忌避感覚を切迫せずにうたうことで、きっと猥雑な現世をきちんと彼女は処理しているのに違いないとも考える。

べったりした深刻な情感とは常に無縁な心象なので、読後感は快適だった。何歳くらいの方なのか存じ上げない。歌の行間にただよう空気に親近感があるから、わたしと文化的同世代かもしれない。

歌のキャリアはこちらよりずっと長いが、これが第一歌集とのこと。手作りかと思うほどきれいな装丁を画像で御覧ください。

歌の色彩は淡色。歌われるのは菜の花の黄色、空の青、雪の無彩色。ことに青が多い。水の歌も。それで透明感が全体に漂う。

透明感は、現世から顔をそむけて、稀薄と紙一重な精神の姿と疑ってもよい。だが希死念慮ではない。雑事の煩わしさがいやなのだ。そして歌の透明性のゆえに、欲望が低いということもない。むしろ純化されて、日々の流れから歌をすくいあげるフィルターの目はこまかくなり、したがって、歌言葉はもしかしたら狭く選ばれる。

医師として女性として、心にざわめくさまざまな騒音を静めるには、なめらかな水の感触や浮世離れした青い彩りに心を寄せるのかしらと眺めた。

感想は主観的なものなので、歌人の意図や、他の読者とは異なる損ないなどあるかもしれない。お許しください。


 沈まない月のあかるさてのひらを水はやさしく流れていった

 垂直におちる言葉をつかまえてみたけれど飼うすべを知らない

 さまざまの青を歩いてきたけれどここより先に出口はなくて

 もうずっと前に花火は尽きていた 僕は自分を燃やし続けた

 時の輪の廻りはるかにその手より失われゆく青のしずけさ

 この青はやがて立ち去る色だから望まれたならさしだしていい

 あおざめたひかりの中にこれまでの全てをひとり忘れゆくこと

 あなたを 連れてゆきたいまだ誰も歩いていない雪の岸辺へ


 



  
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