「未来」9月号が届いた。
紙面の都合で画面には載っていない歌を、ここにもう一首あげておく。
柔らかき花を踏むごとうつそみのなかみ探れば絵のない絵本
今月号のなかで、心に触れた詠草。
人の足よぎれるごとく大根を軒端に吊りて黙深く生く
人も魚も眠れる頃か天心の朱の半月闇深くする
冨田豊子
咲きふえて十薬の花占めゆくをまなぶたをもてへだてゐるなり
肌粗き壷ほのぬくしてのひらはてのひらにのみ思(も)ふことやある
そびら追ふさびしさなどは問はずして旅人算は解かれゆきたり
藻をわけて鳴き砂踏みて出で入れる夢の水際も夏とはなりぬ
岩岡詩帆
ぼこぼこにされて敗れしブラジルをわがひとつ夜にたぐへてはかな
大辻隆弘
歌は…
……こころごころをそれぞれこまやかに映し、いずれも、優艶な気品ある調べと思います。