沈丁花おぼろ一滴したたらす匂ひ湿りぬミツコの弥生

　香水Ｍｉｔｓｏｕｋｏと沈丁花。

　フローラル・ノートでも、ぜんぜん違う香りなんだけれど、どこか似ている。

　季節感かな？　ミツコの香りはやさしくて、春に似合う。

　風はまだつめたいのに、もう沈丁花がひなたで咲き出す季節になって。



　復活祭……春の祭典がもうすぐ。

　

色身（しきしん）は月光の下（もと）あをざめて玲瓏さんたまりあとならむ

　４００年前に、九州かくれキリシタンの共同体には、助け合いの組織があったそうだ。

　たとえば「サンタマリアの組」「ミゼリコルディアの組」

　ミゼリコルディア……慈悲。

　「慈悲の組」のなすべき所作をまとめた七つの教えの中に、色身、という言葉がありました。

　しきしん。色の身。肉体のこと、と。

　一時、椿さんに勧められて「徒然草」を読みふけった時期があり、そのなかの言葉を思い出す。

　耐ウベクモアラヌ業に耐ウルハタダ色ヲ思フユヱナリ……

　こころはいろいろ、からだもいろいろ。

　奥深い単語と思いました。


　色々さまざまに思い乱れる色身も、蒼白な月光のなかでは、半透明な天女に見えるかもしれない。

　あるいは、サンタマリアか。




　

　

黎明のかがやきひらくガブリエルの髪筋青き境界知らせ

　朝に。

　今日は四旬節黙想会。

　天使とフォーレ。

　彼のレクイエムが聴きたい。


　　……記憶のなかでは聴こえる。