作者はスウェーデンミステリ界の重鎮という。主人公は元スウェーデンの国家犯罪局の長官、「角の向こう側を見通せる」と畏怖されていた。第一部が2010/7/5、第六部が2010/10頃までの物語。元凄腕長官ラーシュ・マッティン・ヨハンソンはお気に入りのソーセージを食べようとして倒れる。入院先の女医から、かつてのおぞましい犯罪の話を聞かされる。9歳の少女が暴行殺人の被害者となったその事件は時効となっていた。それでもラーシュは昔の同僚で親友ヤーネブリングらの力を借りて捜査を開始する。一種の安楽椅子探偵型のミステリとして始まる。このラーシュというのが実に魅力的な人物なのだ。ぶつぶつ文句を言って、実に人間味がある。親友のヤーネブリング、この事件の捜査担当であったというベックストレームという無能な警官。兄や妻、介護士や兄から派遣された付き添い。それぞれがとても魅力的。これは金脈発見と思ったら、どうもこの作がラーシュとヤーネブリングを主人公としたシリーズの最後の作のようです。この作者、作中にスウェーデンミステリファンならニヤリとしそうな小ネタを所々。巻末の解説によれば無能な警官ベックトトレームを主人公とするシリーズもなかなかとか。ただ、本作が現在唯一の日本語翻訳。是非、翻訳していって欲しいもの。☆☆☆☆☆。