元ジャイアンツ球団社長であの「清武の乱」でナベツネに反逆した清武英利の本。読売新聞で記者だっただけのことはある。週刊文春の書評で知り、読む。バブル崩壊の時に大手証券会社であった山一證券の倒産。この時に、しんがりを務め、その破綻の原因追及と清算事業をやり遂げた12人の物語。詳しい調査をもとに、ひとつの企業がいかに道を誤り、壊れていくか。そこで人はどう動くか。そうした中にあって、人間として生きる人間がいること。それらの人のその後と追う。読み応え満点。☆☆☆☆☆。
ようやく直木賞受賞作品が文庫となった。日本の国産ロケットの打ち上げ。そこに研究員の佃がいた。軌道を外れていくロケット。舞台が変わり、中小企業のエンジンメーカーの社長となっている佃がいた。大企業からの突然の取引停止。資金繰りの悪化。倫理を無視し、順法なら何をしてもという大企業というハゲタカの襲来。さらにプライドの高い大企業との勝負と会社内での葛藤。これらが幾人もの登場人物によって繰り広げられていく。それぞれに明確な個性を与えられた登場人物がいい。単なる勧善懲悪ではなく、そこに人間臭さが見える。怒れてきたり、思わず応援したり、一緒に声をあげたくなる小説。☆☆☆☆。