団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

サマープレゼント

2011年08月04日 | Weblog

 電話の声「○○○○さんですか?」私「はい、そうですが」怪しい電話かな、と内心思った。とうとう私にもオレオレ詐欺の順番が回ってきたか、と相手をやり込める算段を考え始めた。電話の声「おめでとうございます」私はほら来たぞと思った。よくある手らしい。何かに当たったと告げ、それにつきましては、手続きに○万円が必要ですので、お手数ですが振り込んでいただけるでしょうか、となるという。だいたい私のように根がおめでたい人間は、「おめでとうございます」にからきし弱い。すぐ有頂天になって我を忘れてしまう。図星だと思ったが、さにあらず。電話の女性の声は「○○○サマープレゼントキャンペーンでハワイ・オワフ島4泊6日の旅当選のお知らせです。おめでとうございます。ただいま抽選が終わり、電話でのお知らせです。後日正式なご当選証書をお送りいたします」と弾むような声でかなり興奮して様子で続けた。

 よく駅ビルで買い物をする。多くの店があり、便利だ。駅ビルでは、テナントと共催していろいろな売り出しをやる。先月、飲み続けている補助栄養剤が少なくなってきたので3ヶ月分まとめて買った。その時サマープレゼント応募用紙をもらった。5千円で応募用紙が一枚ということで3枚もらった。そこに「当たればいいな」という気持でなく「こんなのに当たるはずがない」という強い気持ちで5つある選択肢から一枚は「ハワイの旅」、もう一枚を「箱根のレストラン食事券」最後の一枚を「3千円買い物券」と選んで、出口の応募箱に入れてきた。その一枚が当たったのだ。3枚しか応募していないから、補助栄養剤を買ってもらった応募券で当たったことは明白である。

 妻にメールしようとした。しかし待てよと考えた。招待は二人ではない。当たったのは、一人である。詳細は、書類が届くまでわからない。ネットを使ってハワイ旅行4泊6日で幾らくらいか調べてみた。安いものは4万円くらいからある。どうせ夫婦や家族と行きたいと言い出す当選者のために。参加者負担の方法もあるだろうし、せいぜい7,8万円であろうと高を括って、妻と一緒にハワイへ行くことを前提に妻に報告メールを送信した。

電話から3日後封書便が届いた。あらためて当選証書の“ご当選おめでとうございます”の文字ひとつひとつが目に沁みた。それも束の間、同伴参加者お一人につき295,000円の数字を見つけた。すでに私たち夫婦の頭では4,5万円から高くて7,8万円という数字が入ってしまっていた。桁が違う。私は当選をあきらめることにした。

その夜帰宅した妻に私の結論を話した。妻は怒って「あきらめることないじゃない。行ってきなさいよ。モッタイナイ。私が一緒に行くとしても、こんなに急では、私の休暇はとても取れないわ」と言う。「あなたが当たったんだから、行くべきよ。あなたがあきらめれば、儲かるのは主催者だけよ。それにしても同伴者の30万円は高いわね。ビジネスクラスかな」


 
そんなわけで一度はあきらめた当選だったが、私は一人で参加することにした。30日に説明会があって出席した。不参加にしてもそれだけの費用が賞金として授与されるわけではない。親戚なら代理参加可能と言われたが、一人で参加できる親戚がいない。知人ならたくさんいるのに。残念だ。私の代わりに繰り上げ当選者がでるわけでもない。ただただ当選辞退ということで終わりになることを確認できた。腑に落ちない“おめでとう”である。降って湧いたような“おめでとう”に振り回されて、いくつもの決断をせまられた。このところ他にも疲れることがたくさんあった。疲れをとりに休みにいくことに発想を転換した。グダグダ言うのをやめて、素直にこの当選に感謝しよう。もう時差の生じる旅行は、しないと決心してから2度目の旅になる。


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