(このブログのポリシーとして、御存命の方の実名は出しませんが、このような機会を得られた事に大変感謝しております)
さてさて、随分前にこの話をお伺いした瞬間に「お客さんでなくともスタッフとしてでも……なんとかして潜り込みたい!」と切望した企画。
とある美術館の『友の会』のイベントである。
企画のメインは日本を代表する名人による蕎麦の出張料理。「もうコレを食べたらOKでしょうよ」ってな蕎麦です。
しかも以前、山梨でお店をされていた時に伺って悶絶して以来なので期待値MAXです。
名人は既に引退を宣言されていて、恐らく相見える事は今後無いのでは……。その総本山にお参りみたいな状況が備前で実現。これは是非ものの企画である。
スタッフの名乗りを上げてスケジュール帳にしっかりと予定を書き込み、この日は「あらゆるお誘いも全て却下」の体制で待ちわびていた。
当日、早めに会場入りして蕎麦打ちを見学させて頂く。「あぁ~~」と溜息が出る程の美しく無駄のない動き。もう眼福。
お仕事は設営・撤収・備前牛の焼き方主任を拝命した。全体で15キロほどある肉をひたすら焼いて提供するポジション。(ほぼ過不足なくお客様へ渡り一安心)
お蕎麦以外も豪華でした。ワイン、ビール、日本酒、チーズ4種、カキフライ、巨大マッシュルーム、牛、海苔……。
日本を否、世界レベルの『岡山のチーズの作り手』と『広島の牡蠣養殖家』の名人お二方に挟まれて肉を焼く。
その合間に直接、御本人からチーズとカキフライを試食させて頂きました。当然、お客様向けのものは口に入りませんが「今、これが美味い」の状態を直接生産者から頂く幸せ。これは間違いない美味しさです。
カキフライの上手な揚げ方も解説付きで拝見できたのも収穫でした。
この規模のイベントって、20年前なら富裕層向け雑誌の『婦人○報』や『家庭○報』の取材が来るレベルの素敵セレブパーティーじゃないかなぁ。
お客様も全国レベルで一方的に見知った方々も。過日お世話になった某雑誌の編集長とも御挨拶。(その時の記事)
全ての肉を焼き、あとは「スタッフさんもお蕎麦をどうぞ~~の声を聞き漏らすまじ」とスタンバイする。
そして、時は来た。
これが最後の記念写真か。
汁も良し、ワサビも良し。一日経った今も鼻から香りが抜けるよう。しっかりと記憶に刷り込み済み。
蕎麦を頂いていると、仕事終わりの牡蠣養殖家の社長が「こんなのどう?」と持って来られたものが、当日最高の余禄でした。
カクレガニ(隠れ蟹)の素揚げ。
これは参った。この発想はなかったな。お伺いすると「牡蠣打ちしながら少しずつ溜めていた」との事。これは現場の人しか口にする事が出来ない貴重品。
いままで頂いたカニの中で最も軽い食感。カニ風味の薄いパリパリ感が最高に笑える。この日の為に仕込みをしていた洒落に脱帽。
しかも「旬とかもあるんよ」って言われてしまったし。
見ていた蕎麦名人も数匹口へ。暫くすると戻って来られて掌一杯に盛る。ニコニコしながら口へ。
そこにチーズの名人も登場。皆が、この洒落に笑ってカニを摘む構図。
最高の作り手がお互いに共鳴するような現場に居合わせた事が幸せ。
蕎麦湯の余韻を感じつつ撤収して終了。
名人の蕎麦に関しては惜別の念もあるけれど、お弟子さんが多く巣立っているのが素晴らしいなぁ。
個人的には大阪高裁の裏にあるお店がお気に入り。そういえば、牡蠣蕎麦が出てる頃なんじゃ……。
これは、しばらく思い返すだろうなぁ……。
感謝。m(_ _)m