
普段の夕餉の準備は、冷蔵庫を開けて食材をチェックしつつ、ビールを一本手に取るところから始まる。そしてビールグラスを片手に食材の組み合わせから出来上がりをイメージする。
直感のように決まる日もあるし、アレコレと言い訳がましい屁理屈を積み重ねて決まる日もある。
イメージが決まった後は、一気呵成に。
「おりゃ~~、どりゃ~~、うりゃ~~」などの合いの手を入れながら、ライブというかアドリブ感ある作業が展開される。
最終的には、「オレ、天才……」と、持ったグラスをばったと落とし小膝叩いてニッコリ……自画自賛することも稀にあるが、客観的判断では謎である。
傍目からみると、一人で騒ぐお祭り馬鹿キッチンドランカーであるな。
さて、本日の冷蔵庫チェックによると『生鮭のハラス』がご在宅である。いや、確認するまでもなく、今日一緒に帰宅したんだけど。
魚屋さんでひと目惚れであった。ハラスだけの集合体。
一瞬で「炊きたて白ご飯にON~~~」とのイメージが降りてきた。湯気のあがるピカピカなご飯、ブシュブシュ音を立てながら脂を滴らせる鮭。
『なにも足さない、なにも引かない』の名コピーさながら……のビジュアル。
という事で、本日のメインは『炊きたての白ご飯と焼ハラス』である。
今日はこれだけでも良いなぁ。いや、日本酒は要るかなぁ……。ウキウキしっぱなしだわ。
ちなみに拙宅の子供達も大好物であるが「わかりやすい脂の旨味じゃないのかよぅ? 子供舌なんじゃないのかよぉ」と偏見の眼差しを送っている。
あくまでも「俺は判ってるからさ、君たちお子様とは違うのだよ」と経験知の違いを大人の沽券として持つのである。
しかし、素材も作業工程もシンプルなので、今日はお祭り騒ぎではなく丁寧に真摯に事に当りたい所存である。まずは落ち着け、自分。
炊飯器さんから炊き上がりのお知らせを受けてから、ハラスに取り掛かる予定である。斯くも本日は全てが湯気立つシビアなタイミングで食卓に並べたい。
そうだ、先に大根おろしとカボスの準備をしておこうか。これは大事な段取りだな。
程なくしてご飯はOK。
おもむろに、ハラスの登場である。

むむむ、常温で溶けそうで溶けないしっとりとした脂。鮮度の良さが伺える艶。解凍品のようなドリップも匂いもない。素晴しいぞ~~。VIVA! ( ← だから、落ち着けって)
フライパンを取り出す。「I have a frypa~~~n」と何故か妙な節回しが口をつく。まずは極薄く油を引こうか。
ハラスを丁重に取り出す。セリフは勿論「I have a HARASU~~~」である。油が温まったのを確認。
続くセリフは、ご想像通り。「ON!」
ハラスは皮側から焼く。
油で皮が焼かれるチリチリとした音が高くなるにつれ、皮と身の間の脂がジンワリと溶けてくる。
この後は、自身の脂によって揚げるように焼かれていく。皮目が好みの色になったら身側を焼こう。ここは和菓子の『きんつば』を焼くが如く一面づつ慎重に。さながら窯焚き終盤の集中力である。焼き加減の見極めに味の全てが掛かっている。
己の経験と知識を総動員して全感覚で観察せよっ!
身の表面がさらっと焼き固まると内部が蒸し焼きになる。全体がやや膨らみつつ柔らかく、ふっくら焼きあがるのである。これ大事。
皮目パリパリ。
脂ジュワジュワ。
身フンワリ。

これが白いご飯へ「ON~~~~」
そのまま口の中へGo!
香りの華が開く。はんなり~~。
機関銃を持っていたなら「カ・イ・カ・ン」とでも言う場面じゃないのか。( ← 古っ)
その後は、時々、大根おろしで口の中をサッパリとしつつ。いやはや旨し。ご飯もおかわり。
あ~~~っ、お酒忘れてた。まぁ、問題ないか。
シンプルな素材をしみじみとシラフで堪能する夜。たまにはこんな日も良い。
やっぱり脂の旨味やねぇ。 (ん~~~、子供と同じだったな……)
時節のものを丁寧に扱うことで引き出される美味しさ。日頃の『お祭り馬鹿料理』を反省しました。(まっ、反省するも改善なし……なんだけどね)
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