備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

他所の窯焚き

2011-07-08 22:29:41 | 陶芸
先日、他所の窯を焚く機会があった。いわゆる登窯。

備前焼の登窯は、昭和の時代にかなり研究が進み、ヤキモノ屋の共有ノウハウの蓄積が比較的高い。先達の知識伝達に感謝である。

ヤキモノ屋同士で窯の構造について話す場合、見なくてもその特徴や差異を感じることが出来る。オーソドックスな見解が共通してある故。
ただし、備前焼の場合、1000年の無釉焼締めの歴史が今となっては『陶芸界におけるガラパゴス化』を生み出していて、他所の産地と話が噛み合わないという局面もある。「へぇ~、備前ってそうなんだ」と言われる事も多い。
更には『窖窯(あながま)使い』は備前の中においても少数イケイケ派であるし。(イケイケとは限らんか…)

備前焼の窖窯は一度、歴史から消えた経緯があるのでノウハウの伝達が途切れている。それを模索しつつ歩んでこられたのが小生の師匠世代。我々はその第2世代にあたる。随分、学ばせて頂いた。そして最近、独立する若い人々に『窖窯使い』が増えている。
ただね、窖窯の経験無しで初窯を焚いちゃう方もいて、「登窯の経験だけですると失敗するよ」と言ってあげたいけれど、「何が失敗か?」は人によって違うので……なんとも。

むしろ、登窯で窖窯風に仕上げる技術もかなり確立しつつあり、景色のバリエーションが幅広くなっている。これも登窯ノウハウの蓄積。
窖窯を取り巻く環境も随分、変わってきていているし……。かくして進化する。


窯自体はそのオーナーの想い・経験・道具によって、構造・寸法・バランスが異なる。それが結果(景色)となって現れる。
並んで、窯焚きも重要。そして、湿気、引き(空気流入量と速度)、窯詰め、粘土の耐火度……。兎角あらゆる要素が絡んでくる。


つまり、ヤキモノ屋にとって、モノを生み出すにあたって最低限必要なものは、
・窯
・材料
・技術
・想い
である。(順不同)

入り口はこれだけ。だけど奥深い。シンプルに、これらをひとつずつ丹念に研究する事でしか前に進めない。

「特別な『何か』を求めなくても自ずと『自分自身』が現れる。その上で志向性が必要になってくる。」と判ったのはヤキモノ初めて暫く経ってから。若い時にはアクロバティックな造形に目が向きがち。今はもうちょっと引いて考えられるようになったかも。
でも、やっぱり『挑戦心』は持ってないとな。

その組み合わせが楽しい……んだけれどね。なかなか。


さてさて、久しぶりに初めての窯を焚いたんだけれど、オーナーのキャラクターもあって未経験の事多し。「えっ、それでエエのん?」のオンパレード。
直接、自分の窯にはフィードバック出来ないけど、翻って自分の原点みたいなところを再確認する良いチャンスだったかも。

結局、自分なんだよね。


さて、「8月にチビ窯を焚くぞ」と宣言しておこう。
過酷スケジュールに加えて過酷なシーズン。でも、やる!(……予定。一応。たぶん。)

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