備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

塩豚

2011-09-28 10:41:02 | 料理・食材


中高生の男子というのは、ちょっとオトナの真似事をしてみたくなる時期で、良い事もちょっと良くない事も混ぜこぜにして背伸びする時期。周りの友達連中がアレコレ体験してきては情報交換する。
繁華街に出向いては、個人個人の趣味趣向を探求するけれど、共通して外せないのが『食』である。主に昼ご飯。
健全な男子諸君の胃袋は、チャラいファストフードには目もくれず、「安い旨い大量」というキーワードで店舗開拓に向かう。特にラーメンについて薀蓄を語り出す世代。

小生の育った神戸という街は、クロスオーバーな食に馴染み深い環境である。
低価格ならアジア系。韓国・中国・台湾・ベトナム……。
長じてバイトでもしていて一代決心で異性絡みで格好をつけないといけない時はヨーロッパ系。一軒屋・ホテル・クルージングまでイロイロ。
で、今もって馴染み深くかつ愛着があり、なお行きたいのは間違いなくアジア系である。特に、路地裏、下町、高架下の中華料理屋さんは外せない。

中高生の主食、ラーメンにしても神戸正当派『鶏ガラ醤油・細麺まっすぐ』から中華料理屋の白湯スープのものまで幅広い。
今や、中高生でなく中高年の世代としては中華系のアッサリがホッとするかな。

子供がまだ幼稚園児の頃に、高架下の日本語が通じない中華料理店に連れて行った時は、体を硬くして目をパチクリ白黒バシバシ瞬きしていたな。
プチ・カルチャーショックだったらしい。安い海外体験だ。
こういうところで楽しく美味しいものが頂ける人とは、良いお友達になれる気がします。


さて、SNSというのは罪作りな機能で、知り合いが何処で何を食べたかまでわかってしまう。

そのうちの一軒で、JR元町駅高架下の台湾料理店が出てきた。つい先日、この前を通ったところだ。駅を出て東に30秒ぐらいの老舗である。
ここは楽器屋さんに出向く時には、ほぼ確実に立ち寄っていた店。懐かしすぎる~~。PC前で悶絶しました。

あんかけ玉子のヤワヤワ平麺の『ローメン(老麺・撈麺)』。
硬くてスパイシーなドライソーセージの『腸詰』。
トロトロの濃厚な『豚足』。
……最高じゃ。ビールが進む。
ちなみに餃子はありません。餃子は最寄りの信号を渡ってすぐの路地入った別のお店へGO。

で、この店はメニュー表が無い。一見さんは店頭サンプルで決めなければならない。これが超絶マズそうな蝋細工。きっとこれが原因で入らない人も多いと思うな。
先日も何年か振りに見たけれど全く変わっていなかった。
その不味そうなサンプルのうち最大の謎の物体が『ロバ』である。

頼めばサンプルとは全く別ヴィジュアルのものが出てくる。サンプルは黒、出てくるのは白。
「ロバの肉って豚みたいやねぇ~」となる事、間違いなし。それぐらいこのサンプルは当てにならない。

ロバは『豚の3枚肉(バラ肉)の塊』をボイルしたもの。メッチャ濃い味噌につけて香菜と食べる。ビールと抜群に合う。
しかし、何故『ロバ』なのかは未だに不明。訊けば良いんだろうけれど、ここのオネエサン達は全員、笑えるぐらい愛想がないので……。
店頭サンプルにないメニューもあるので、常連客らしい人が食べているものを指差して「アレ!」と言うのも間違いの無いオーダー方法です。(ここは日本かっ!)


さて、それを懐かしんでという訳でもないけれど、『塩豚』を細君が作りました。
特にインスパイアされた訳でなく偶然だけど。

豚バラの塊に塩を摺りこんで、ローズマリーの枝と一緒にラップして冷蔵庫で寝かせておく。数日経って忘れかけた頃が出来上がり。割と長期保存も可能。
あとはハムのように使えば、肉の時とは異なる味わい。簡単かつ旨し。
ちょっと変化球のある味で、塩・スパイスの組み合わせを変えれば楽しい。スパイス次第でアジア系からヨーロッパ系まで自由にクロスしていく。
こういうリミックスされた味って妙に懐かしさもある。育った場所が、異文化との出会いが日常的な土地柄のせいかもなぁ。


再来月、『グループ展@神戸』の時に、あの店に『腸詰』がモールの如く壁に掛かっていたら入ってみよっと。

 ※ お店の名前は、『丸玉食堂』といいます。