雨は朝から本降りであった。
午後からは、少し降り方が穏やかになったが、時折勢いを回復して激しく降ることもあった。
午後の2時過ぎに高円寺にある顧問先の会社での打ち合わせを終えた。
高円寺の駅へ徒歩で向かう途中にあるジャズ喫茶「Rummy」の前に来て、少し店に立ち寄った。
ジャズ喫茶といっても「昭和」の香りを色濃く残す老舗の店ではなく、比較的最近にオープンしたジャズ喫茶である。「Rummy」の開店は2013年である。11年前のことである。
店内は、ブルーグレーに塗られた壁が落ち着いた雰囲気を醸しだしていて、天井からは真鍮製の吊り下げ照明器具が淡い光を放っていた。とても落ちつた雰囲気を有していて、清潔感もある。
床はコンクリートがそのまま使われていて、椅子やテーブルはアンティークな木製のもので、どれもがセンスの良さを感じさせる。カウンター席には椅子が5つ並び、4人掛けのテーブル席が三つ並んでいた。
「ジャズ喫茶」なので、当然店内にはジャズが大きめの音量でかかっている。CDプレーヤーはなく、かかる音源のすべてはレコードである。
レコードプレーヤーは、Michell EngineeringのGyro SEである。
カートリッジは、アナログリラックスのEX300。アナログリラックスは、高級なカートリッジを設計・製造している日本のメーカーである。
カートリッジのラインナップは現在四つあり、EX300の上にEX500、EX1000、EX2000とある。アナログリラックスのラインナップにおいてはエントリークラスであるEX300であるが、その価格は一般的なエントリークラスのカートリッジのそれではない。
店に入り、珈琲を注文した。
現在かかっているレコードのジャケットは、オーディオ装置の脇に置かれた木製のスタンドに立てかけられている。そのジャケットを確認してみると、Eddie Higginsのレコードであった。
1960年代初頭の録音である。都会的で軽妙、明るく粋な演奏は、店の外の梅雨空とは対照的である。その音楽は、ひと時の解放感を私の心にもたらしてくれた。