AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

5253:7シリーズ

2020年07月26日 | ノンジャンル
 まずはROKSAN XERXES Ⅹで聴いた。XERXES Ⅹには純正組み合わせとなるArtemizが装着されている。最新型のトーンアームと違い調整手法が厄介な代物であるが、その見た目は硬派な感じでとてもかっこいい。

 カートリッジはORTOFON MC-20である。MC-20は1977年に発売された。ラインコンタクト針の採用によりトレーシンク能力が向上し、発売とともに音の良さが話題になった。その当時のオーディオ雑誌で新商品やレコードの試聴に使われていた銘器である。

 MC-20で音溝から掬い上げられた信号は同じくORTOFON製の昇圧トランスで昇圧されて、LEAK製のプリアンプに送られる。

 その音の質感は自然で純朴である。LEAKのプリアンプとパワーアンプを通してユニットを振動させるまでに充分な出力を得て、Spendor SP1/2から放たれる音は、「田園」にふさわしく、風に草木が揺れる様が眼前に浮かぶような牧歌的な雰囲気を纏っている。

 それはまさに英国的な田園風景である。色彩感が豊かで目を細めたくなるほどに華やぐということはなく、穏やかに網膜に浸透してくる質感で統一されている。空は晴れていても雲一つないという晴れ渡り方では決してない。

 ベートーベンの交響曲第6番の第1楽章を聴き終えた。ここで一旦MC-20の針先をレコードから引き上げた。

 LEAK POINT ONE STEREOの小さなセレクターを少し回し、次は同じレコードをドイツ製の豪華で高級感が否応なく漂い出すBRINKMANN OASISで聴いてみることとなった。

 こちらにはSMEのSeriesⅤが装着されていて、その先端にはZYX Airyが半透明のボディをきらきらと輝かせていた。

 OASISの横幅は50cm以上ありかなり大きい。そのキャビネットは光沢感溢れる塗装が素晴らしく、横にあるXERXES Ⅹの質素な質感とは好対照である。

 同じく第1楽章を聴いた。その音の質感は細身の音ではなく、しっかりとした中音が出て、重心が低く力感のあるサウンドであった。

 「エンジンの排気量が上がった感じであろうか・・・」今どきのエンジンは排気量を小さくし、高能率なターボを装着することにより高出力と低燃費を両立させようとしているが、このOASISからは3.0L 直列6気筒エンジンのようなゆとりを持った質感を感じた。

 現代においては3.0L 直列6気筒エンジンは相当に高級な部類のエンジンとなっている。2.OL 直列4気筒エンジン+直噴ターボでも十分に高い質感をキープできているが、それが3.0L 直列6気筒エンジンになると、「やはり6気筒エンジンは良いな・・・」と思わせるゆとり感と精度の高さを感じさせる。

 「OASISはBMW 7シリーズみたいなものか・・・」そんなことを思いながら、また別の趣の「田園風景」を思い描いていた。

 XERXES Ⅹが田園風景が広がる田舎道を自分の足で歩いている感じとするならば、OASISは同じく田園風景が広がる田舎道ではあるが、その道をBMW 740iのステアリングを握りながら颯爽と駆け抜けていくような感じと例えても良いのかもしれない。

 田園の風の息吹や草花の香りなどを肌で直接感じられるのはXERXES Ⅹである。OASISでは745iの優れたサスペンションや豪華な本革シートの質感とともに田園の雰囲気を味わえる。田園の息吹は開け放たれたウィンドウから流れ込んでくる。

 指揮者であるCARLO MARIA GIULINIなら、どちらの選択をするであろうか・・・淡いグレーのスーツを着た彼は、きっと7シリーズの本革製のシートにゆったりと身を任せる方を選ぶのかもしれない。そしてその足元にはイタリア製の革靴が・・・ピカピカに磨かれた彼の靴の光沢は、OASISのキャビネットのそれのようかもしれない・・・

 そんな空想に浸りながら、英国とドイツのレコードプレーヤーの聴き比べで、しばしの時間を過ごした。 
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