サッカー評論を見ていると、選手個人に焦点が当たった論評ばかりが多過ぎるように見える。メッシ、ロナウドはともかく、本田、久保君。かつて一時期の宇佐美、宮市らは、ロシア大会前の乾、原口、柴崎を遙かに超えるような扱いではなかったか。マスコミはまー売れる人物を作ってなんぼなのだから、それに踊らされる人々が結構存在するということだろう。
さて、野球と違ってサッカーの強さは、総合的に優れた個人を集めるだけでは作れないもの、組織第一の競技である。
サッカーには、野球のエースや4番バッターはいない。1人で相手を1得点に抑えられる選手とか、同じく一人で1得点を稼ぎ出す打者とかのことだ。ロナウドだって、良いパッサーが居なければ今の4分の1の得点も稼げないだろうし、ベルギーのGKクルトワでも独力で平均1失点以内などは到底不可能である。
ちなみに、あれだけ弱かった代表が同じメンバーで本大会1ゲーム前から急に強くなったのは、選手個人を見ていては全く説明がつかないはずだ。組織が変わったから急に強くなった、これである。どう強くなったのか。ブラジル大会とロシア大会の代表を比べれば、強くなった理由は明白である。一言で言えば、カウンター得点を挙げられるようになった。そういう布陣を敷けるようになった。
さて、2010年過ぎから世界のカウンターはどんどん新しいものになってきた。典型ゲームは、今回の2強と言える準決勝のフランス・ベルギー戦。守ったフランスが、攻めたベルギーの倍以上のシュートを放っていた、あのカウンターである。
普通のカウンターでは、あれだけ守ったチームのシュート数が攻めたチームの2倍以上なんてことは起こらない。フランスのどこが普通のカウンターと違ったか。要は積極的なボールの取り方が違う。
①何よりもワントップが前に残らなくて、FWラインを下げている。ベルギーに言わせると「ジルーが30メートルも下がったアンチサッカー」と批判が出たほどだ。そして、DFラインも単にどん引きではなく、比較的前に出て来る。つまり、これが「前後を詰めた」、コンパクトと呼ばれるものだ。多くの化粧品を一つの小さな入れ物に入れるあのコンパクトである。
②そのコンパクトで、「コレクティブ(相互協力的)」に相手ボールに激しく突っかける。因みに、フランスのその要・カンテは奇跡のレスター・プレミア優勝の立役者。インターセプトもスライディングタックルでも世界有数の名手。彼が突っかけに失敗したように見えても、そのボールがなるべく身方に流れるように突っかけることが多いのだ。そこがゲーゲン・プレスの組織的ボー奪取という意味である。敵ボールを今はどうしても良い位置で獲りたいという局面で、敵のボール受け手らに必ず身方マークがぴったりとついている。しかも、苦し紛れのボールが来たらすぐにかっさらえる位置に。
③この二つがあって初めて、強敵ベルギー相手にあれだけ引いてシュート数が倍以上にできたのである。普通のカンターは、「ボールが取れたらカウンター」。ゲーゲンは「良いカウンター狙いのためにこうやってボールを取る」と、まーこんな違いがある。
④ブラジル大会から急に得点が増え、ロシア大会で結構弱者も点を取ったのはこうして、ゲーゲンプレス的得点法が広がったから。ちなみに、W杯大会の1ゲームあたり得点変遷を見ると、98年フランス大会で2・67であったものが、その後最少2・30まで下がり、14年ブラジル大会から前に戻っている。最近2大会とも番狂わせが多かった理由も、最近の選手らの合い言葉もこれ、「コンパクト」「コレクティブ」「デュエル」「攻守の速い切替」「攻への切替ではとにかく縦に速く」「攻から守への速い切り替えのためには、あらかじめのDFラインアップが不可欠」などなどである。全て弱者の得点法、ゲーゲンプレスの広がりがもたらしたものだ。ちなみに、この得点法の元祖、ドイツ・ドルトムントがCL決勝に飛び出てきたのは、2013年のことであった。
さて、今期日本で大躍進の広島は、まさにこういうコンパクト布陣のカウンターをやっている。城福監督の言葉を上げてみよう。これがまさに、ゲーゲンプレスの考え方である。
『例えば、トランジション(攻守の切替)の速さというのは高いレベルのベーシックなんだけれど、敵陣でボールを奪われて、ボール周辺の選手がプレスやスペースを埋める方法を間違えて、全員が自陣に50メートル帰る羽目になったシーンを映像で見せる。逆に、奪われた選手の切り替えやディフェンスラインの事前の押し上げによって奪い返して、ショートカウンターを繰り出したシーンも見せる。それで、「どちらがチームにとって有益だと思う? ここで3秒頑張ったり、事前に準備をしておくことで、帰陣に使っていたエネルギーを攻撃に使おうよ」と』
この全体がゲーゲンプレスの考え方だが、中でもここが重要だと愚考した。
『ここで3秒頑張ったり、事前に準備をしておくことで、帰陣に使っていたエネルギーを攻撃に使おうよ』
さて、野球と違ってサッカーの強さは、総合的に優れた個人を集めるだけでは作れないもの、組織第一の競技である。
サッカーには、野球のエースや4番バッターはいない。1人で相手を1得点に抑えられる選手とか、同じく一人で1得点を稼ぎ出す打者とかのことだ。ロナウドだって、良いパッサーが居なければ今の4分の1の得点も稼げないだろうし、ベルギーのGKクルトワでも独力で平均1失点以内などは到底不可能である。
ちなみに、あれだけ弱かった代表が同じメンバーで本大会1ゲーム前から急に強くなったのは、選手個人を見ていては全く説明がつかないはずだ。組織が変わったから急に強くなった、これである。どう強くなったのか。ブラジル大会とロシア大会の代表を比べれば、強くなった理由は明白である。一言で言えば、カウンター得点を挙げられるようになった。そういう布陣を敷けるようになった。
さて、2010年過ぎから世界のカウンターはどんどん新しいものになってきた。典型ゲームは、今回の2強と言える準決勝のフランス・ベルギー戦。守ったフランスが、攻めたベルギーの倍以上のシュートを放っていた、あのカウンターである。
普通のカウンターでは、あれだけ守ったチームのシュート数が攻めたチームの2倍以上なんてことは起こらない。フランスのどこが普通のカウンターと違ったか。要は積極的なボールの取り方が違う。
①何よりもワントップが前に残らなくて、FWラインを下げている。ベルギーに言わせると「ジルーが30メートルも下がったアンチサッカー」と批判が出たほどだ。そして、DFラインも単にどん引きではなく、比較的前に出て来る。つまり、これが「前後を詰めた」、コンパクトと呼ばれるものだ。多くの化粧品を一つの小さな入れ物に入れるあのコンパクトである。
②そのコンパクトで、「コレクティブ(相互協力的)」に相手ボールに激しく突っかける。因みに、フランスのその要・カンテは奇跡のレスター・プレミア優勝の立役者。インターセプトもスライディングタックルでも世界有数の名手。彼が突っかけに失敗したように見えても、そのボールがなるべく身方に流れるように突っかけることが多いのだ。そこがゲーゲン・プレスの組織的ボー奪取という意味である。敵ボールを今はどうしても良い位置で獲りたいという局面で、敵のボール受け手らに必ず身方マークがぴったりとついている。しかも、苦し紛れのボールが来たらすぐにかっさらえる位置に。
③この二つがあって初めて、強敵ベルギー相手にあれだけ引いてシュート数が倍以上にできたのである。普通のカンターは、「ボールが取れたらカウンター」。ゲーゲンは「良いカウンター狙いのためにこうやってボールを取る」と、まーこんな違いがある。
④ブラジル大会から急に得点が増え、ロシア大会で結構弱者も点を取ったのはこうして、ゲーゲンプレス的得点法が広がったから。ちなみに、W杯大会の1ゲームあたり得点変遷を見ると、98年フランス大会で2・67であったものが、その後最少2・30まで下がり、14年ブラジル大会から前に戻っている。最近2大会とも番狂わせが多かった理由も、最近の選手らの合い言葉もこれ、「コンパクト」「コレクティブ」「デュエル」「攻守の速い切替」「攻への切替ではとにかく縦に速く」「攻から守への速い切り替えのためには、あらかじめのDFラインアップが不可欠」などなどである。全て弱者の得点法、ゲーゲンプレスの広がりがもたらしたものだ。ちなみに、この得点法の元祖、ドイツ・ドルトムントがCL決勝に飛び出てきたのは、2013年のことであった。
さて、今期日本で大躍進の広島は、まさにこういうコンパクト布陣のカウンターをやっている。城福監督の言葉を上げてみよう。これがまさに、ゲーゲンプレスの考え方である。
『例えば、トランジション(攻守の切替)の速さというのは高いレベルのベーシックなんだけれど、敵陣でボールを奪われて、ボール周辺の選手がプレスやスペースを埋める方法を間違えて、全員が自陣に50メートル帰る羽目になったシーンを映像で見せる。逆に、奪われた選手の切り替えやディフェンスラインの事前の押し上げによって奪い返して、ショートカウンターを繰り出したシーンも見せる。それで、「どちらがチームにとって有益だと思う? ここで3秒頑張ったり、事前に準備をしておくことで、帰陣に使っていたエネルギーを攻撃に使おうよ」と』
この全体がゲーゲンプレスの考え方だが、中でもここが重要だと愚考した。
『ここで3秒頑張ったり、事前に準備をしておくことで、帰陣に使っていたエネルギーを攻撃に使おうよ』