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書評 「シリア情勢」(2)  文科系

2018年05月15日 20時13分33秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 先回も見たように、米政権がこのままであれば、イラン問題含みでシリアとベネズエラ現政権との転覆に関わる何かが、必ず起こると観る。そしてそのことはまた、世界的な格差の2極分化がさらに進んでいく道であるとも思う。原油の世界独占価格化とは、米英大金融が世界中の普通の民からお金を奪い取る一大方法なのだ。ガソリン代が上がるだけではなく、輸送費絡みで全ての物価も上がるということも含めて。トランプが「北朝鮮との融和・イラン敵視」を西欧の反対を押し切ってまで強行したのは、そういうことだと観てきた。イラン核合意からアメリカが抜けた途端に原油価格が上がり、アメリカの株が高騰したことも、その証拠になる。過去も常に、イラン問題が起こる度にこうなってきた。
 ちなみに、トランプ政権の国務長官レックス・ティラーソンは、エクソンモービルの前会長である。3月1日まで合衆国国家経済会議委員長と経済担当大統領補佐官とを務めたゲーリー・コーンは、ゴールドマンサックスの社長であった。彼がこの職を退いたのは、鉄鋼、アルミなどの関税問題。この問題では、物と金融とそれぞれの米経済界が、トランプ政権の下で一部矛盾をはらんでいるということなのであろう。
 ちなみに今は、資源大国ロシアが、イラン転覆でアメリカと蔭の取引をしていなければ良いのだがと、願うばかりだ。
 シリアとイランを潰せば、サウジアラビアなどアラブの王制、貴族制国家が米英大金融とともに世界の民主主義発展の足をますます引っ張っていくことになるだろう。サウジの新しい皇太子がトランプ一家を大歓迎した去年の出来事が、鮮やかに思い出されるのである。


【 書評 「シリア情勢」(2)  文科系 2017年07月17日

 今回は「第2章『独裁政権』の素顔」、「第3章『人権』からの逸脱」、「第4章『反体制派』のスペクトラ」の要約をする。

 アサドの父ハーフィズはバース党の若手士官として政権を掌握し、長く共和制首長として君臨してきた。その次男がこれを世襲したから、シリア政体は世襲共和制と呼ばれる。アサドはイギリスで学んだ眼科医で、その妻も英国生まれの元JPモルガン銀行幹部行員である。父の時代のいわば強権安定政権に対して、37歳で世襲後は一定の政治自由化に努めた。政治犯を認めて恩赦をなし、メディア規制を緩和したなどである。
 政体を支える組織は強力で、このようなものがある。政権の蔭の金庫役「ビジネスマン」。数万人の武装部隊にも成り代わることが出来る「シャッビーア」と呼ばれる裏組織。及び、国防隊などの予備軍事組織である。つまり、血族を中心に大きな参加型独裁ともいうべき政体ということだ。

 これに対する「人権派」諸組織はシリアの友グループと呼ばれる外国勢力によって支えられていた。米英、サウジ、カタール、トルコである。彼らは、アサド政権の背後にいたイラン、ロシア、レバノン・ヒズブッラーをも、人権抑圧派として当然批判した。

 シリアの友グループのデモなどが過剰弾圧されたというのは事実である。樽爆弾やクラスター爆弾などが、解放区などにも使用されているからだ。ただし、両勢力のどちらがこれを使ったかは、判明していないものが多い。シリア人権ネットワークの発表は解放区のみの映像などであって明らかに偏向があるし、シリア人権監視団も「民間人」というのはまやかしの側面がある。
 また、アサド政権が難民を作ったというのも、おかしい。難民が急増した時期がイスラム国やヌスラ戦線などの台頭によってアルカーイダ化が進み、国民の命が脅かされる事態が進んだ時期と重なるからである。

 初め、英米はシリアに経済制裁をしようとしたが、国連ではすべてロ中の拒否権にあって有志国としてやっている。ただし、欧米は初め「政権崩壊」を楽観視していて、アルカーイダ化が進み、テロが激化して国際問題になるにつれて、アサド政権の「化学兵器使用」を強調し始め、オバマによる制裁戦争寸前の地点まで行った。が、政権側の化学兵器全廃、引き渡しがロシア・国連の努力で成功すると、戦争は遠のいた。シリア国民連合はこれに反対したが、他二つの反体制派政治団体はこれを歓迎した。
 なお、2014年のマスタードガス使用がイスラム国によってなされたことは、はっきりと分かっている。

 いわゆる「反体制派」「自由・民主派」がいかにも強大なように語るのは、実力で政権を挫いたイスラム国やヌスラ戦線の拡大、残酷な仕業を隠すやり方でもある。それこそ無数の「穏健派」武装勢力が、イスラム国やアルカーイダと、外国人も含めた戦闘員の相互流出入を絶えず繰り返していたことでもあるし。欧米などシリアの友グループは、シリアのアルカーイダなら、政権抵抗勢力として支持していたと言って良い。現に、イラクで14年6月にカリフを名乗ったバグダーティーと、シリア・イスラーム国のジャウラーニーとは、仲違いをしている。イラクとシリアのイスラム国は別組織になったとも言えるのである。米英サウジなどシリアの友グループは当初、シリアのイスラム国を「民主化闘争勢力」と扱っていたことさえとも言える。

 ホワイト・ヘルメットとよばれ、ノーベル賞候補にも上がった「中立、不偏、人道」の救助・救命・治療団体が存在した。2016年には8県にまたがる114のセンターを有し、2850人を擁する大きな組織だ。が、これが不偏というのは偽りであろう。「解放区」でしか活動していないから、イスラム国、アルカーイダ、その他諸団体のいずれからも認められてきた一方で、政府軍地区ではなにもやっていないのだから。この組織を作ったのは、英国人ジェームズ・ルムジュリアー、元NATOの諜報員であり、国連英国代表部にも在籍し、2000年代半ばからはUAEの危機管理会社に移っている。このルムジュリアーが、2013年にトルコのイスタンブールでシリア人の教練を始めたのがホワイト・ヘルメットの発足であった。この組織には、米英独日の資金が流れ込んでいる。アメリカは13年に2300万ドル、イギリスも12~15年で1500万ポンドをここに支出している。】
コメント (1)
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