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随筆紹介 「老いの日に」   文科系

2016年12月26日 08時21分54秒 | 文芸作品
 老いの日に  H・Tさんの作品です

“人の事はよくわかるのに、自分の事はわからない”というけど、私は自分が老いたとは思わないのに、後期高齢者医療健康診査のご案内が届くし、災害のニュースのたびに“ご高齢の方は早めに避難を”と繰り返される中で、「七十歳ですので早く……」などと言っている人をテレビで見る。“えっ、七十歳、私よりうんと若いのに。そうか、私は高齢者”と、どきり。

区の福祉課からは時々、
“お変わりありませんか? お困り事は?”と。また、数年前から、老人介護などを主目的として作られた“生き生きセンター”からも三か月毎に訪問電話で様子を尋ねられる。余生という言葉に抵抗がある私は、今を精一杯とだけ、人と比べることなく私は私として日々楽しく、忙しい。
水泳も、泳ぐというよりも水の中で手足を動かして、ばたばた。編み物教室でも、最高年齢。一枚の作品を仕上げるのに、驚く程の時間が……。また、昔々に学んだ漢詩を吟じて楽しんでいる。白居易、李白。杜甫などの詩を大声で吟じている時、漢詩の楽しみ方を新発見できたりして、嬉しくなる。あれもこれもと、カレンダーは予定記入でびっしり。
 “二兎を追う者は一兎をも得ず”というが、三兎も四兎追っている。どれも中途半端だが、出会う人に教えられることが多いから、続けている。
ある日わざわざ来られたセンターの方が、「デイサービスに行かれませんか。その手続きを。」と言われた。
“身体を鍛えること主力です”
“カラオケなどを楽しんでいます”
“手先を動かして物作りを楽しんでいます”
などなどいろんな特色のあるデイサービスを紹介してくださった。お好きな施設をお選び下さい。送り迎えも、入浴も、少しの費用で食事もありますよと、説明された。気がつけば私は四捨五入で九十歳の、一人暮らし。デイサービスのお勧めも納得だ。でも、行きたくないとお断りした。

数か月前、ある会で指導者の方から「あなたにもしものことがあったら、どうしたら……どこへお知らせしたら……」と聞かれた。その数日後に他の師から、「あなたに万一のことがあった時、私にできることを教えて欲しい」と、少し長い手紙をいただいた。“あとは野となれ山となれ”などと勝手なことを言ったり、書いたりしていることを知って下さってのことであろうと感謝したが、私なりの対処はできている。年を重ねること、そして逝くことは命ある者すべての宿命。どうにもならないこと。

 若い時は地球が回るから老いるのは自然と思っていたが、老いの現実は厳しい。

コメント (1)
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