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随筆 「音楽感動疲れ、かな?!」  文科系

2014年03月19日 02時04分53秒 | Weblog
 オーボエの音が、こんなに複雑で、大きく、重厚なものだとは思わなかった。その独特の「振動感」でもって二間続き二十畳ほどの客間を、その障子や襖までも振るわせているようだ。後で聞けば、倍音が最も多い部類に属し、しかも弱音では鳴らせない楽器なのだそうだ。昔は、今のトランペット代わりに使われた木管楽器とのこと。そう振り返ってみればなるほど、あの重厚な感じが納得できるという、そんな音質なのである。
 また、これと競うように、ギターの音。こちらはオーボエと対照すると一種鋭い透明感となって、やはり部屋の隅々にまで迫ってくる。意識して最も遠くの南障子際までこの時だけ席を移した僕には、きちんとそう聞こえた。まさに、競演、協奏。「アランフェス協奏曲」の第2楽章である。スペインの作曲家ロドリーゴが1939年に作った、音楽好きならば誰でも聞き覚えがある「哀愁」の名旋律だ。マドリッド近くの古城、その歴史を回想するのが第2楽章だと聞いている。

 今日は、我が家の「ギター遊びの会」。僕の家を中心に、春夏秋冬3周りを繰り返してきた同門友人がギターで遊ぶ宴会、確かその14回目である。普通はギターだけで、独奏、重奏、合奏など、各人が準備してきたものを、順番も決めずに、気分が乗った順にてんでにやっていく。が、今日は、特別なゲストがあった。娘の友人に大学音楽科を卒業したオーボエ吹きがいて、僕らの先生と彼女のこの共演となったのである。彼女は、この大都市で名の知れたあるアマチュア市民オーケストラで、パートリーダーをやっている。とはいえこの共演は、予め先生から彼女に楽譜が渡されていて、電話打ち合わせはあったものの、合わせるのは全くのぶっつけ本番だ。単音楽器であるオーボエはともかく、複雑な和音奏法があって読譜が難しいギター名曲で、しかもぶっつけ本番って、先生にはホントに失礼してしまった。が、その分、この圧倒的なボリューム感が僕らの心を揺さぶったこと! この協奏の音とともに、この情景を後で思い出すほどに、先生の決断にどれだけ感謝してもしたりないという気分に、今も浸っている感じである。

 先生のご家族3人も参加されたし、僕の連れ合いも娘も、1歳になったばかりのハーちゃんもこの共演には同席させていただいた。驚いたことに、1歳のハーちゃんが最後まで娘の膝の上で、おとなしくしていたのである。冬でもよく出かける散歩などでいろんなものを黙ってきょろきょろと見続けるのが好きな子だけど、最後まで演奏者をじっと見つめて身じろぎしない体だったのである。演奏時間の間は「いろんな感じ」の中に浸っておれたに違いないのである。先生のお子さんお二人は、小学5年と年長さんほど、ハーちゃんに対する以上にこういう雰囲気がためになったと思いたい。人生への期待感を育てる教育になればなーなどと、これは大事なことのような気がしている。

 計画して、買い物して、料理も4つ作って、かなり疲れたけど、今は充実感いっぱいだ。参加のみんなにも感謝いっぱいだ。

(2011年10月16日当ブログ掲載、再掲)
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