OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ホーキンス&ウェブスターの最高タッグ

2009-03-28 12:23:17 | Jazz

Coleman Hawkins Encounters Ben Webster (Verve)

昨日はトロンボーンの素敵な協調盤を取り上げましたが、その後、私は自分で刺激され、こんなアルバムまで聴いてしまったです。

コールマン・ホーキンスとベン・ウェブスターは、ジャズが本当にジャズらしくなった1930年代からの大御所テナーサックス奏者として、何時の時代に聴いても最高のプレイヤーでしょう。モダンだ、モードだ、というジャンルなんて、この2人がひとつの音を出した瞬間に虚しいものへ変わり果てるのですから!

で、このアルバムは、その2人が共演しての熱いジャズ魂が、最高の形で記録された人気盤♪♪~♪

録音は1957年10月16日、メンバーはコールマン・ホーキンス(ts)、ベン・ウェブスター(ts)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、アルヴィン・ストラー(ds) という極上のバンドです。

A-1 Blues For Yolande
 オスカー・ピーターソンがリードするリズム隊がニューオリンズ風のR&Bグルーヴを設定した後、巨匠2人のテナーサックスが堂々のブルースリフを吹いてくれる、ただそれだけで大満足してしまう演奏です。あぁ、このゆったりとして懐の深い、これぞっ、ジャズ本来の魅力に酔わされますねぇ~♪
 そしてコールマン・ホーキンスの力んだ節回しに続いては、ベン・ウェブスターのマイルドなシビレ節! このアドリブの似て非なる個性の饗宴にはテナーサックスの真髄が、間違いなく潜んでいると感じます。

A-2 It Never Entered My Mind
 モダンジャズではマイルス・デイビスの名演が決定版して良く知られたメロディも、ベン・ウェブスターがこの曲の真相を明かしたような最高のメロディフェイクを聴いてしまえば、尚更に感銘するほかはありません。
 実際、ここでのソフトな情感の溢れる泉の如きインスピレーションは極上♪♪~♪ それに続くコールマン・ホーキンスの男気の吹奏にも、ハードボイルドな感傷がたっぷりと表現されていますから、あぁ、こういう生き様は男の憧れでしょうか……。
 こういう人に、私はなりたい!
 ラストテーマの消え入りそうな心情吐露も、ベン・ウェブスターの十八番にして余人の真似出来る境地ではないでしょうね。リズム隊のシブイ助演も全篇で味わい深いと思います。

A-3 La Rosita
 キャバレームードのラテン曲ですが、ここまでソフト&ディープに演奏されたのも、この2人ならではの幸せな結末でしょう。とにかくリズム隊の全て分かっているサポートも素晴らしく、テーマアンサンブルからコールマン・ホーキンスのメロディフェイクの雰囲気の良さは畢生です。硬質なサブトーンが冴えまくりですよっ♪♪~♪
 そして、そこに寄り添ってくるベン・ウェブスターの存在感も流石の一言! もうここだけで全てが最高としか言えません。
 またアドリブパートでの4ビートの力強さは、グルーヴィなミディアムテンポのお手本ですから、ここも侮れませんねぇ。 

B-1 You'd Be So Nice To Come Home
 モダンジャズの演奏ではアート・ペッパーが最高とされる有名スタンダードですが、どっこい、このベン・ウェブスターのメロディフェイクには完全に脱帽させられるでしょう。
 オスカー・ピーターソンが作りだす小気味良いイントロから続くテーマ演奏こそが、この曲の最も美味しい部分を見事に抽出したものだと思います。じっくりと弾んだリズム隊のスイング感も抜群ですから、御大のアドリブも流石の素晴らしさですよ♪♪~♪
 そしてオスカー・ピーターソンの思わずニヤリのアドリブから、いよいよ登場するコールマン・ホーキンスが、何時もの力みを控え目にしつつも、実にハートウォームな存在感♪♪~♪
 それゆえにラストテーマのアンサンブルでは、ますます心がジンワリと温まってくる大名演だと思います。
 
B-2 Prisoner Of Love
 これがまたテナーサックスによるジャズの魔法に酔わされるという、決定的な名演です。意図的にスイングビートを強調したリズム隊も分かっていますし、御大両巨匠がサブトーンと歌心、任侠と男気の共演という、まさに昭和残侠伝! いやいやそんな泥クサイもんじゃないですね。スマートでジェントルな良さもたっぷりという、ハードボイルドのジャズ的な展開とでも申しましょうか、最高です。
 ちなみに先発でテーマメロディをリードしていくのがコールマン・ホーキンス、ラストテーマをしぶとくフェイクするのがベン・ウェブスターだと思いますが、そんな些細なことは、演奏全体の大きな魅力の前に関係ないでしょう。

B-3 Tangerine
 通常はアップテンポでの演奏というスタンダード曲も、この両巨頭にかかってはスローテンポの歌心優先主義というムードがたまりません。オスカー・ピーターソンの伴奏も最高に味の世界ですよ♪♪~♪
 コールマン・ホーキンスが抑えた気味に感傷的なメロディを綴れば、ベン・ウェブスターは十八番のマイルドなサブトーンが魅力全開♪♪~♪ このたっぶりとした表現は、まさにベテランの貫禄とは一概に決めつけられない奥深さが凄いと思います。
 ふふすすすぅ~、というテナーサックスの魅力が、ここに極まっていますね。
 
B-4 Shine On, Hervest Moon

 この大らかなノリこそが、アルバムの締め括りに相応しいという、素敵なスタンダード曲の大人の解釈♪♪~♪
 少しずつ強いグルーヴを作りだしていくリズム隊に気持ち良く乗っかってしまう2人の巨匠という、実に憎めない展開が楽しいですねぇ~♪ 穏やかさと力みのバランスも秀逸だと思います。

ということで、キャリア的にはコールマン・ホーキンスが先輩という位置付けではありますが、お互いの尊敬の念が滲み出たハートウォームな雰囲気は最高! ベン・ウェブスターにしても決して二番煎じでは無い、堂々の個性を見事に発揮していますから、慣れ合いなんてこともありません。

大物対決にありがちな肩透かしも全く無いですし、セッション全体の凄味や緊張感が見事にリラックスした良い感じに収斂しているのです。

ちなみにこの時のレコーディングには他にも凄い演奏が残されていて、それは他アルバムやSP盤等々に分散収録されいますので、要注意でしょう。そこには一人舞台のワンホーン演奏もあるのですが、おそらく最近の復刻CDならば上手く纏められているんじゃないでしょうか?

とすれば、これはぜひとも聴いていただきたい名盤の中の大名盤♪♪~♪

実は告白すると、このアルバムの存在を知った当時の私は、ギンギンのガチンコバトル盤だと思い込んでいたのですが、一聴して、このシブイ男の世界にKOされた過去があります。 ぜひ、どうぞ!

コメント
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