OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

上目づかいのハンプトン・ホーズ

2009-03-06 12:40:53 | Jazz

Hampton Hawes, Vol.2 (Contemporary)

ハンプトン・ホーズの全盛期は、例えばアート・ペッパー(as) と共演していた1953年頃かと、個人的には思いますが、やはり1955~1958年頃のコンテンポラリー時代の諸作は、その録音の素晴らしさもあって、非常に魅力的です。

そこにはメリハリが気持ち良い、ハンプトン・ホーズ特有のピアノタッチと自然体に濃いブルースフィーリングが見事に記録されていますし、ピアノトリオ物にしても、当時のレギュラーだと思われますから、その纏まって前向きな姿勢は永遠に不滅です。

代表作としては、1955年6月のセッションから作られた「Vol.1」が圧倒的でしょう。そして続くセッションをメインに構成されたのが本日ご紹介の1枚で、選曲も実にジャズ者の琴線に触れるのですねぇ~♪

録音は1955年6月と12月、さらに翌年の1月と3回に渡っていますが、メンバーはハンプトン・ホーズ(p)、レッド・ミッチェル(b)、チャック・トンプソン(ds) という不動の The Trio です。

A-1 You And The Night And The Music (1956年1月25日録音)
 邦題「貴方と夜と音楽と」は、特にビル・エバンスの名演がジャズ者の心を捕らえて放さないスタンダード曲ですが、それ以前に残されていたハンプトン・ホーズのバージョンも侮れません。
 如何にもハードバップなイントロから個性的に飛び跳ねるテーマの解釈、そして躍動的なアドリブには、あの「ホーズ節」がテンコ盛り♪♪~♪ 随所にキメとして使われるブルース味の強いフレーズが実に快感です。
 またレッド・ミッチェルのペースソロ、健実なチャック・トンプソンのドラミングが、スッキリした録音で味わえるのも高得点でしょうね。
 正直言えば、前述したビル・エバンスのバージョンが耳に馴染んでいるので、少~し違和感もあるんですが、それは別の楽しみとして……。

A-2 Stella By Starlight (1955年12月3日録音)
 良く知られたメロディを最初はスローに装飾し、ついでグイノリの4ビートで演じるという、ハンプトン・ホーズ十八番の展開が楽しめます。
 それを支えながら、実はリードしていくようなレッド・ミッチェルのウォーキングベースも素晴らしく、トリオが一体となってノビノビとした演奏は唯一無二! ハンプトン・ホーズも得意技を出し惜しみしていません。

A-3 Blues For Jacque (1956年1月25日録音)
 そしていよいよ十八番のブルースを弾きまくるハンプトン・ホーズの潔さ! ミディアムテンポでグルーヴィに、そして明快なブルースフィーリングを撒き散らします。
 あぁ、このテキパキとした表現は、まさに西海岸ハードバップでなければ生まれなかったものかもしれませんね。しかしそれは白人っぽいというわけではなく、ドロドロした陰湿さが無いというところでしょうか。それでいて、ブルース衝動は天下逸品なんですよっ!
 このあたりは確かに聴いて感じるものだと思います。

A-4 Yesterdays (1955年12月3日録音)
 これも有名スタンダードのハンプトン・ホーズ的解釈の典型で、前述した「Stella By Starlight」と同じ手法が用いられていますが、幾分、陰鬱な原曲の味わいからハードな雰囲気が強く滲む快演になっています。
 特にチャック・トンプソンのドラミングが積極的ですし、レッド・ミッチェルもエグイ事をやらかしていますが、ハンプトン・ホーズのツッコミも相当に鋭いと思います。
 このトリオにすれば常套手段とリスナーは安心感を抱くのですが、実はスリル満点ですよ。

A-5 Steeplechase (1955年12月3日録音)
 アップテンポでバリバリにブッ飛ばした演奏で、歯切れ良くドライヴするハンプトン・ホーズのピアノが、もう最高! 得意技を全て出しきったサービス精神には、シビレが止まりませんよ。
 モロにビバップなチャック・トンプソンのドラミングも、この聖典曲にはジャストミートだと思います。 

B-1 'Round Midnight (1956年1月25日録音)
 さて、これまたモダンジャズの人気曲ですから、多くのファンが待ち望んだ演奏かもしれません。なにしろ原曲の持つミステリアスなムードが、ハンプトン・ホーズのブルースフィーリングで絶妙に味付けされていくのですから♪♪~♪
 しかし個人的には、ここで聞かれるテンポは些か早すぎるような……。
 まあ、レッド・ミッチェルのペースソロが素晴らしすぎますから、結果オーライかもしれませんが、白夜の街を彷徨うようなムードですね。

B-2 Just Squeeze Me (1955年6月18日録音)
 これは冒頭に述べた「Vol.1」のセッション当時に残された演奏ということで、尚更に粘っこくてグルーヴィな雰囲気が強く出ています。
 あくまでも個人的な感想ですが、「Vol.1」が何故に素晴らしいかは、ハンプトン・ホーズの黒人感覚が、西海岸派特有の明快な表現と絶妙に化学変化を起こしたからだと思っています。
 それが、このアルバムではメインとなっている約半年後の演奏では、当たり前の表現として定着してしまったような……。つまり新鮮な衝撃度が薄れてしまった気がするのです。
 そういう流れの中で、この原点を知らしめるような演奏に接すると、ハッとさせられるほほど良い感じ! あきらに「Vol.1」の傑出を確認出来るといえば、贔屓の引き倒しではありますが、正直な気持ちも大切ということで、ご理解願います。
 この素晴らしさに乾杯!

B-3 Autumn In New York (1955年12月3日録音)
 これも有名スタンダードの嬉しい選曲ではありますが、ここでのアレンジは???
 なんだかアラビア~中近東のモードに陥っているような……、
 しかし途中から目が覚めたのでしょうねぇ、ハンプトン・ホーズがスローなメロディフェイクで得意技を披露してくれます。この当たり前に原曲を弾いていくのは、ちょっとカクテル系なんでしょうが、ハンプトン・ホーズの資質からして、自然に別の道へ迷い込んだような不思議な感覚が……。
 う~ん、華麗なテクニックも、ねぇ……。

B-4 Section Blues (1955年12月3日録音)
 という前曲の煮え切らなさをブッ飛ばしてくれるのが、このブルース!
 レッド・ミッチェルとチャック・トンプソンが書いたことになっているので、トリオ3者の活躍も均等割りですから、まさにアルバムの締め括りにはジャストミートの快演だと思います。短いのが勿体無い!

ということで、ジャケ写ではグッと上目づかいのハンプトン・ホーズが強い印象を残す人気盤だと思います。

こういうアルバムこそが、ジャズ者の日常かもしれませんね。理屈抜きに楽しむのが正解♪♪~♪

コメント
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