OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

本日も対決盤♪

2006-06-30 17:20:37 | Weblog

本日も蒸し暑いですねぇ……、ちょっと気を抜くとグッタリしそうなほど……。

ということで、本日も昨日に引き続き、面白企画のバトル盤を――

Sonny Meets Hawk ! / Sonny Rollins & Cloeman Hawkis (RCA)

モダンジャズの偉大なテナーサックス奏者であるソニー・ロリンズが、それ以前のスタイル、つまりスイング時代にジャズ・サックスの基礎を完成させたコールマン・ホーキンスの影響下にあることは、明白です。

その骨太な音色、狂熱的でありながら柔らかさも兼ね備えたノリは、どんなリズムやビートを用いた演奏スタイルでも揺るぐことは無く、実際、コールマン・ホーキンスはモダンジャズ創成期に、誰よりも早くビバップのイディオムを取り入れた録音を残したとされていますし、ソニー・ロリンズはハードバップを乗り越えてモードやフリー、はたまたフュージョンまでもボロを出さずに演奏しています。

そんな2人が堂々と競演したのがこのアルバムですが、実はこのセッションに先立つ数日前のニューポート・ジャズ祭のライブで既に、大評判となった演奏が実現していたのです。

そしてその成功を再現するべく企画されたのが、この作品というわけです。

録音は1963年7月15&18日、メンバーはコールマン・ホーキンス(ts)、ソニー・ロリンズ(ts)、ポール・ブレイ(p)、ロイ・マッカーディ(ds) が不動、録音日によってベーシストが替わり、7月15日がボブ・クランショウ、7月18日がヘンリー・グライムスの参加になっています。

その演目は最後の1曲を除いて、全てが有名スタンダード曲という、これも昨日紹介した「Getz Meets Mulligan」と似た企画になっているのでした――

A-1 Yesterdays (1963年7月15日録音)
 いきなり右チャンネルから烈しい露払いを務めるのがソニー・ロリンズです。そして左チャンネルで悠然とテーマを奏でるのが、コールマン・ホーキンス!
 う~ん、巧みにテーマを変奏しつつ、かなり強烈なツッコミをいれるコールマン・ホーキンスの貫禄には圧倒されますね♪ もう、こうなるとソニー・ロリンズに残された道はフリーしか無いという雰囲気で、本当に自爆のフレーズを吹いてしまうのですから、いやはや、なんともです。
 するとコールマン・ホーキンスは、お前ねぇ、ジャズはこうやるんじゃないの? と諭しの吹奏! そしてこれが相当に過激なんですから、スローテンポで演じられる内部は、完全に異次元空間になってしまったというオチがついています。

A-2 All The Things You Are (1963年7月15日録音)
 で、ここでようやく王道のモダンジャズに入ります。
 演目はコールマン・ホーキンスが十八番にしているスタンダードで、初っ端からグイノリでテーマを吹奏、続けて揺ぎ無い自信に満ちたアドリブを聴かせてくれますが、ちっとも古いスタイルに聴こえないのは流石です。
 そして次に登場するのがビル・エバンス色が濃厚なポール・ブレイのピアノです。ただしセロニアス・モンクのノリとフレーズを上手く織り交ぜ、個性にしているのは反則です。
 しかしそれをぶっ飛ばすのがソニー・ロリンズの勘違いノリです。徹底的に楽しいフレーズを排除していこうという苦し紛ればかりなのは何故だっ!? それは時代が時代だし、大先輩の前で素直になれないのは理解出来ますが……。
 まあ、それでも後半にはロリンズ節がそれなりに飛び出してきますし、リズムに対する厳しい対処は楽しくもあります。
 するとコールマン・ホーキンスが突如、怒りの参入というか、ソニー・ロリンズとの絡み合いに演奏を持ち込んで、どうにか収集をつけるのですが、良いところでフェードアウトが残念無念……。

A-3 Summertime (1963年7月18日録音)
 いきなり右チャンネルで暗く蠢くソニー・ロリンズが、演奏の全てを決定しています。それは私のような凡人には理解不能な展開だと思いが……。
 ただしリズム隊が過激に対処しているので、どうにか纏まりがついているようです。
 そして流石のコールマン・ホーキンスも、これには保守的傾向を守るのが精一杯というか、結局、安心感を求めるジャズファンは左チャンネル中心に聴いてしまうはずです。
 演奏はこの後、ヘンリー・グライムスの強靭なベースソロが聴き物になるのでした。

B-1 Just Friends (1963年7月18日録音)
 スタートから快適なノリがあるので、安心感があります。
 アドリブ先発のソニー・ロリンズが新しいフレーズやノリを交えつつも、往年の豪放な展開を聴かせてくれますし、コールマン・ホーキンスは全く自分のジャズに専念していますから、素直に楽しめる演奏になっています。
 ただし、それゆえに物足りないのも事実ですが、まあ、贅沢というもんでしょう。

B-2 Lover Man (1963年7月15日録音)
 左右のチャンネルに陣取った両巨匠が魂の掛け合いを聴かせてくれます。
 ポール・ブレイのセンスの良いイントロから、まず左チャンネルからコールマン・ホーキンスがグリグリと登場し、続くソニー・ロリンズは右チャンネルで堂々と受けて立ちます。
 そういう対決というか、会話が全篇を貫くのですから、これはもうハードバップだとか前衛だとか区分するよりも、ジャズの真髄として楽しんで差し支えないと思います。
 またリズム隊が地味に素晴らしく、2人の対決を盛り上げつつも、しっかりと自己主張しているという、それだけ聴いて満足することも……♪
 あぁ、本当に素晴らしい演奏です!

B-3 At McKies' (1963年7月18日録音)
 これだけがソニー・ロリンズのオリジナルで、曲調はズバリ、作者の十八番「セント・トーマス」の焼き直しですから、快演は約束されたようなものです。
 ただし全体が高速4ビートになっているので、快楽的なフレーズは出ません。あくまでも硬派なノリは、ソニー・ロリンズよりも、実はコールマン・ホーキンスに有利に働いてしまったというオチがあります。
 実際、ここでのコールマン・ホーキンスは鬼神のアドリブとでも申しましょうか、貫禄と過激さがたっぷりの、押出しの強いものです。
 もちろんソニー・ロリンズも負けじと奮闘! 得意技のモールス信号にジョン・コルトレーン風のスケール練習フレーズを混ぜ込んで突進、後半にはドラムスと烈しく対峙して大団円を迎えるのでした♪

ということで、A面は才気が走りすぎたような雰囲気でしたが、B面は文句無く熱く、感動する場面さえあります。

このRCA時代のソニー・ロリンズは、イマイチ評価が低いというか、ジャズファンからは好まれていないようですが、私は好きです。それはジョン・コルトレーンという周囲から神様に祀り上げられようとしていた偉大な個性に対し、烈しい闘志を燃やしつつも、現実にはイジケてしまいそうな天才という、羨ましい存在のソニー・ロリンズに親近感があるからでしょうか……?

少なくとも、1980年代以降のソニー・ロリンズよりは、遥かに聴きたいなります。

あぁ、こうしている間にも、今年が半分、終わってしまいます。

時の流れの速さと残酷さを感じつつ、ジャズで浮世を忘れたいものです。

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こんな対決も!?

2006-06-29 18:57:26 | Weblog

梅雨の合間の晴とは、こんなに暑かったのか……。

仕事でバタついて、身も心も熱くなっている所為か……。

そこで本日はクールに熱い、この1枚を――

Getz Meets Mulligan In Hi-Fi / Stan Getz & Gerry Mulligan (Verve)

現場でのノリ、この良し悪しが仕事の成否を決めてしまうことは、どんな業界にもあることだと思います。

特にジャズの場合、その瞬間芸的な特質から、セッションの現場で、ふっと思いついた気まぐれが、ファンにとっては聴く前からの過大な期待に繋がるのです。

このアルバムはその最たるもので、スタン・ゲッツとジェリー・マリガンの対決セッション的な興味に加えて、お互いの楽器を交換して演奏に臨むという一幕が用意されています。

もちろんそれは、お互いに良く似た資質があればこその企画です。つまり白人のサックス奏者としてテナーとバリトンの違いはあっても、そのスタイルはあくまでも歌心優先のなめらかなフレーズ、それとは裏腹の強烈なドライブ感、そしてリーダとして演奏全体を支配してしまう優れたセンスの持ち主という部分です。

録音は1957年10月12日、メンバーはスタン・ゲッツ(ts,bs)、ジェリー・マリガン(bs,ts)、ルー・レヴィ(p)、レイ・ブラウン(b)、スタン・リーヴィ(ds) という、一見、西海岸派のセッションのようでいて、如何にもヴァーヴ・レーベルらしい布陣です。もちろんプロデュースは大物対決が得意技のノーマン・グランツ♪ 演目もジャズでは定番のスタンダート曲を中心にしていますので、心置きなく両者のアドリブ合戦を楽しんでもらおうという企画ですが、そこでジェリー・マリガンが、お互いの楽器を交換して演奏するという提案をっ!

そしてそれが実行されたのが、A面の3曲です――

A-1 Let's Fall In Love
 ルー・レヴィの小粋なイントロに続いて、まずバリトンに持ち替えたスタン・ゲッツがテーマをリード、そこへジェリー・マリガンのテナーが絡むというスタートです。
 そしてアドリブパートではジェリー・マリガンが先発でクールな歌心を披露すれば、スタン・ゲッツは悠々自適なノリで対抗します。もちろん以降、2人の絡み合いで曲が進行するのは、お約束です。
 しかし、やはりと言うか、不慣れなバリトンを吹くスタン・ゲッツがイマイチ、調子が出ておらず、それが後半にはジェリー・マリガンに感染してしまったような……。
 またリズム隊が、なかなか黒いフィーリングなんですが、ソロパートも与えらず、全体に勿体無い雰囲気が濃厚です。

A-2 Anything Goes
 一転してアップテンポの溌剌とした演奏で、スタン・ゲッツとジェリー・マリガンは魅惑のテーマを裏になり、表になりつつ仲良く吹奏し、ジェリー・マリガンが烈しいブレイクから猛烈なドライブ感に満ちたアドリブに突入します。
 もちろん続くスタン・ゲッツも負けじと奮闘! 出だしこそ戸惑い気味ですが徐々にペースをつかみ、耳に馴染んだゲッツ節をバリトンで吹きまくってくれますが、これがなかなかのハードドライブなんですねぇ♪
 ちなみにここでもリズム隊が完全にハードバップしていますから、気分が高揚してきます。 

A-3 Too Close For Comfort
 ゆるやかなテンポで主役の2人が歌心の共演を聴かせてくれます。
 先発はバリトンを悠々と操るスタン・ゲッツが、何時もと少しばかり異なった黒いフレーズを聴かせてくれますが、これはハードバッブ感覚のリズム隊の影響でしょうか? もちろん不慣れなバリトンという部分も否定できませんが、なかなか興味深い演奏になっています。
 そこへ行くとジェリー・マリガンは余裕満点というか、それゆえに決まりきったフレーズしか吹かないというマイナス面が出てしまったようです。 
 2人の絡みでは意地になって重低音を鳴らすスタン・ゲッツが憎めません♪

B-1 That Old Feeling
 ここからは通常どおりの楽器編成に戻ったセッションになりますので、聴き手も安心感があります。もちろん演奏もリラックスしつつ、スリル満点な展開です。
 アドリブ先発のジェリー・マリガンは十八番のグイノリと変幻自在な空中回転風のフレーズを組合せつつ、独自の歌心を披露しています。
 そしてスタン・ゲッツ! あぁ、ここで聴かれる十八番のゲッツ節は唯一無二の物凄さです。それは黒人演奏者に負けないドライブ感、狡さギリギリの歌心というか、まるで考えて作り上げたかのようなキメのフレーズと自然発生するグルーヴの対比♪ 全く、この人は天才です。
 演奏はこの後、ルー・レヴィの素晴らしいピアノソロを経て、サックス対決の場となり、盛り上がっていきます。

B-2 This Can't Be Love
 これも楽しい演奏で、アップテンポで快適に演奏されるテーマの絡みと変奏が、まず痛快です。
 もちろんアドリブパートでも絶好調のスタン・ゲッツがぶっ飛ばせば、ジェリー・マリガンは淀みの無い流れの中に毒々しいフレーズを織込んで烈しく対峙していますから、もう、たまりません♪ また当然、お互いのソロパートの背後では蠢きの絡み合いが、必定のお約束です。
 さらに完全にハードバッブのリズム隊が、ここでも大好演! ルー・レヴィは大爆発で、それに触発されたスタン・ゲッツとジェリー・マリガンが入魂のバトルを繰り広げるのでした♪
  
B-3 A Ballad
 この曲だけがジェリー・マリガンのオリジナルで、タイトルどおり、柔らかな曲調のスローな演奏です。そしてこうなると、スタン・ゲッツが持ち前のクールな感覚を全開させ、聴き手を夢の世界に誘うのです。
 しかし一転、ジェリー・マリガンは硬派な部分も感じさせてくれます。
 そのどちらが好きか嫌いかは十人十色の世界ですが、お互いに尊重・協調しあった絡み合いが全てを解き明かしてくれるような、魅惑の仕上がりになっています。

ということで、結論としては、この興味深い楽器交換セッションはイマイチの出来でしょう。しかし本来の姿に戻った演奏は素晴らしいの一言です♪ 一風変わったバトル物という趣もありますが、対決というよりは協調という部分が強いと思います。

ただし優れたリズム隊にそれほど出番が無かったのが残念……。演出によっては強力なハードバップ盤になった可能性が秘められていると思うのですが……。

したがって、これは名盤というよりは話題盤♪ こういうブツがコレクションに加わり始めると、泥沼のジャズ地獄に落ちていくのではないでしょうか……?

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新しいブツも聴く

2006-06-28 17:49:45 | Weblog

いつも古い録音ばかり聴いている私ですが、たまには新しいものも♪

ということで、本日はこれです。――

Easy / Pietro Condorelli (Red)

イタリアで製作されたCDで、主役の Pietro Condorelli は写真で見ると、これが拘りの強そうな中年おやじです。

そして実際に聴いてみると、確かにそのギターは白人系の正統派ながら、要所ではオクターブ奏法や変則コード弾きも交えて、新しい感覚も備えています。

実は私はこの人の演奏を、これで初めて聴いたんですが、そのきっかけは、参加メンバーと収録曲の魅力に惹かれたのです。

録音は2004年、メンバーは Fabrizio Bosso (tp), Roberto Schiano(tb), Daniele Scannapieco (as,ts), Jerry Popolo (as,ts), Pietro Condorelli (g), Francesco Nastro (p), Pietro Ciancaglini (b), Pietro Iodice (ds) となっていますが、それにしてもイタリア人は名前の読み方が正確にわからないので、今回はこのまんまでいきます――

01 Full House
 ジャズギターの王様=ウェス・モンゴメリーの自作自演に果敢にも挑戦した演奏です。とはいえ真っ向勝負ではなく、ここに参加している複数のホーン隊を自在に使いこなしたアレンジで逃げている部分が否めません。
 演奏そのものも軽く、ハードバップというよりは西海岸風の展開ですが、それでもアドリブパートでは先発のサックス奏者がモードを使って熱く盛り上げています。
 そしてホーン・アンサンブルを経て、いよいよ Pietro Condorelli のギターが登場し、ウェス・モンゴメリーのフレーズを借用しつつも、それなりに独自性が感じられるアドリブを聴かせてくれるのですが……。
 正直、曲の良さに助けられている演奏です。

02 Del Sasser
 キャノンボール・アダレイ(as) のバンドでは定番の最高にカッコ良いハードバップ曲を、Pietro Condorelli はいきなりバリバリと弾きまくり、スカッとしたホーン隊のテーマ吹奏に繋げています。
 おまけにサビのメロディの背後では Francesco Nastro のピアノが暴れたり、先発のサックスが熱血ぶりを発揮してくれるので、もう、ウキウキ・ワクワクしてきます。
 そして Pietro Condorelli は流麗なフレーズを積み重ね、Fabrizio Bosso は最高にイキの良いトランペットで対抗するのです。あぁ、最高ですねっ♪
 これも全体に軽さが目立つ出来ではありますが、それが逆に爽快なのでした。

03 Search For A New Land
 これもリー・モーガン(tp) が同名タイトルのアルバムで披露していた大仰なモード曲でした。ここではホーン隊を中心として、そのテーマを忠実に再現、いよいよという時に終わってしまう物足りなさです……???

04 M.L. Samba
 一転して Pietro Condorelli が書いた情熱のジャズサンパです。う~ん、実は前曲は、このイントロというか、前奏曲になっていたことに気づかされます。
 そしてこれが、ハードバップの美味しい部分を巧みに取り入れた名曲なんですねぇ♪ カッコ良いホーン隊のリフやリズムアレンジもキマッています。
 アドリブ先発は、もちろん Pietro Condorelli の流麗なギター! まるっきりジミー・レイニー(g) になっている部分も憎めませんし、モード解釈も上手く取り入れての早弾き、極力ごまかしをしないように力演するあたりも好感が持てます。
 さらにここでも、Fabrizio Bosso が柔らかな歌心と爽快なノリで楽しませてくれますね♪ この人は日本では無名に近いですが、間違いなく若手では世界最高峰の実力者だと思います。

05 Finjang
 Pietro Condorelli が書いた不思議な情熱曲です。
 ただし、ここでの演奏は落ち着かないリズムアレンジというか、場当たり的なテンポチェンジが??? です。しかし、かなり硬派な演奏を目指しているようで、Pietro Condorelli のギターは正統派一直線! Francesco Nastro のピアノもそれに追従していますが、それゆえにイマイチ熱くならない演奏では……?

06 Y Todavea La Quiero
 黒人テナー奏者の巨匠=ジョー・ヘンダーソンの作曲になっている情念のモード曲です。
 Pietro Condorelli は、どうやらこの手の雰囲気が得意らしく、持ち前の流麗なフレーズを暗い方向に展開させていきますが、ここでは Francesco Nastro のキース・ジャレット系のピアノが圧倒的に素敵です。
 そしてそれに触発されたか、再度登場する Pietro Condorelli はロック系のフレーズまでも弾きこんで、プログレ風味の演奏に昇華させる裏ワザを披露するのでした♪

07 Red Apple Jam
 ロックビートを内包したポリリズムが嫌味ですが、演奏はプログレ風味のモダンジャスという、ちょっとソフトマシーンみたいに展開していきます。
 ただし、それが面白いかといえば、私は否と答えます。
 全く意味不明の演奏というか、煮えきりません! CDの利点はこういう部分を簡単にスキップ出来るところですね。

08 Bedouin
 初っ端からギターとドラムスの一騎打ちが痛快です。
 そして自然に突入していくアフロなテーマは、知る人ぞ知る名ピアニストのデューク・ピアソンが作曲したものです。
 アドリブ先発は Francesco Nastro のモード全開ピアノ♪ 全くジャズ喫茶全盛期のフレーズばっかり弾いてくれますねぇ。それはもちろんハービー・ハンコックあたりの影響が大きいわけですが、何となく嬉しくて、素直にノセラれてしまう私です。
 また、ここでは Pietro Iodice のドラムスがビシバシとキメまくりですが、やや軽いのが好き嫌いの分かれるところかもしれません。
 そして、いよいよ登場する Fabrizio Bosso は、やっぱり最高ですね♪ 私はこの人のコンプリートを目指すかもしれない覚悟になっています。欲を言えば、もう少し「汚れ」が欲しいのですが、まあ、若手ということで……。
 肝心のリーダー、Pietro Condorelli はモダンジャズの美味しい部分を拡大解釈したようなモードフレーズの大嵐! それが嫌味になっていないのはベテランの味というところでしょうか、ちょっと一貫性が足りないのが難点です。

09 Ask Me Why
 いきなりギターとピアノが2人だけの会話、そこへリズム隊と Fabrizio Bosso が重苦しく参入して始まるスロー曲です。
 これは一応、Pietro Condorelli のオリジナルになっていますが、題名から容易に推察出きるように、セロニアス・モンクの名曲「Ask Me Now」の雰囲気が漂っています。
 アドリブパートでは、ここでも Fabrizio Bosso のワザとらしい下世話さ満点のミュート・トランペットが微笑ましく、Pietro Condorelli の余裕のギターが逆に必死に聴こえたりします。
 まあ、このあたりは全員の真摯な演奏姿勢が裏目に出たのかもしれませんが、こういう律儀な部分は個人的に嫌いではありません。

ということで、モダンジャズ全盛期の作品に比べれば満足出来ない演奏集ではありますが、 Fabrizio Bosso が聴ければ、それで満足の私でした。

惜しむらくはリズム隊が軽いということで、これは録音の所為かもしれません。

やっぱり新しいものは、私には合わないのか……? なんて事を思ったりもします。

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楽しくて何故悪い?

2006-06-27 18:20:15 | Weblog

本日はオークション関連で運良くというか、偶然に欲しかったブツが、愕くほど安く入手出来ました。

正直、こういう日は、申し訳なくも浮かれてしまいますね♪

そこで楽しさ満載のアルバムを――

The "In" Crowd / The Ramsey Lewis Trio (Argo)

ジャズに興味を持ったら行くところがジャズ喫茶です。なにしろどの店にも膨大なコレクションがありますから、知らない盤を聴きつつ、気になるレコードをリクエストするという楽しみがあるのです。

しかし、ジャズ喫茶というは案外名盤が鳴らないのですね。そして名盤とか人気盤をリクエストするのが、妙に気が引けるというか、「そんなの、今頃、聴いてんの」という暗黙の非難が店内に漂うのです。

このアルバムはラムゼイ・ルイスの出世作で、非常に楽しく充実した内容なのですが、ジャズ喫茶全盛時には、それほど鳴らしている店があったは思えません。

実際、私自身、有名な人気盤だとは知っていても、タイトル曲以外は全く聴いたことがありませんでした。

しかし、偶然というか、たまたまジャズ喫茶でA面を聴いて驚愕歓喜しましたですねっ♪ この楽しさ、この凄さ、このウキウキ・フィーリング♪ もちろん店を出た私はレコード屋へ一直線でした。

録音は1965年5月13~15日、ボストンの「ボヘミア・キャバーンズ」という店でのライブセッションで、メンバーはラムゼイ・ルイス(p)、エルディ・ヤング(b,cello)、レッド・ホルト(ds) という黄金のトリオです――

A-1 The "In" Crowd
 オリジナルは黒人R&B歌手のドビー・グレイが1965年初頭に放ったヒット曲ですが、今では、このラムゼイ・ルイスのバージョンが有名になっていますね♪
 ところがトリオでの演奏は、このセッション直前にジュークボックスから流れていたのを聴いて急遽、演目に加えた間に合わせという伝説があるようです。
 しかし、それにしてもこの演奏は最高です♪ 曲終わりのブレイクからベースがキメのフレーズをやってくれるあたりで、もう聴き手は盛り上がりきってしまいますし、ラムゼイ・ルイスの深いジャズ魂と黒~い感覚は、これ以上無いほどです。
 リズムは変形ジャズロックですが、ビートを増幅させる手拍子がキモになっていて、これはライブの観客によるものでしょうか? 分かっているノリとしか言えません♪
 そしてラムゼイ・ルイス以下、トリオのメンバーはイナセなグループを聴かせてくれるのですが、この大ヒットを一番不思議に思ったのは主役の3人で、今までも同じことをやってきたのに、何故、この曲だけが大ヒットしたのか? と理解不能だったようです。
 そう、確かにラムゼイ・ルイス・トリオは1956年の結成以来、当に苦節10年、この間に何枚もレコードを出していたのです。もちろんその中には、かなりコマーシャルな作品もあったのですから、完全に???だったんでしょう。
 ただしファンにとっては、そんなことはお構いなし! これ以降、続々と出されるラムゼイ・ルイスの作品はヒットしていくのでした。

A-2 Since I Fell For You
 前曲で盛り上がった観客の拍手の中を、一転してスローな展開でR&Bの名曲が演奏されます。
 オリジナルはバディ・ジョンソンの自作自演ですが、ダイナ・ワシントンの熱唱がジャズファンにはお馴染みでしょう。個人的にも大好きな曲ですので、ラムゼイ・ルイスの解釈が気になりますが、これが最高に素晴らしく、原曲に含まれる泣きが見事に表現されています。
 あぁ、この雰囲気、このグルーヴ! 完全に虜です♪

A-3 Tennessee Waltz
 これもアルバム中では人気のトラックで、お馴染みのメロディがエルディ・ヤングのセロを主役にして、楽しく華麗に演奏されます。
 しかもライブの場を意識してか、エルディ・ヤングが初っ端ではフラメンコ調のお遊びを入れ、観客を和ませてから、いきなり楽しいテーマを奏でるのです。
 もちろんラムゼイ・ルイスとレッド・ホルトも、それは充分に分かっているサポートですから、名演になるのもムベなるかな! 一度聴いたら忘れられない快楽がまっています。さあ、皆様、ご一緒に歌いましょう♪

A-4 You Been Talkin' `Bout Me Baby
 こうして盛り上がったA面の締めくくりが、またまた黒くて楽しい演奏です。リズムはドドンパ寸前ですが、トリオとしてのビートが真っ黒ですから、その場はゴスペル色に染まっていくのでした。
 ちなみにラムゼイ・ルイスは難しいフレーズこそ弾きませんが、そのテクニックは物凄く、歯切れの良いタッチと破壊的なブロックコードは、聴くほどに怖ろしくなります。
 とはいえ、それをあまり気づかせないところが、ラムゼイ・ルイスの凄さ・上手さかもしれません。

B-1 Love Theme From Spartacus
 ビル・エバンスも十八番にしている美メロの名曲を、ここでは定番のスロー物として聴かせてくれます。
 あぁ、この素直なテーマ解釈♪ これがラムゼイ・ルイス・トリオの魅力です。したがってアドリブパートでは、テーマよりも素敵なメロディを出さないと聴き手が納得しないのですが、それは全く心配ご無用!
 トリオは一丸となってゴスペル大会に突入するという、超裏ワザで歌心を発散させるのでした。う~ん、あまりにも素晴らしい演奏です。ただし、途中で一箇所、テープ編集の痕跡が……。 

B-2 Felicidade
 ボサノバの名曲を怖ろしい解釈で聴かせてくれます。
 テーマ部分はもちろん、アップテンポのボサビートになっており、レッド・ホルトのスカッとしたドラムスが爽快ですが、アドリブパートでは徐々にロックビートに変奏されていき、なんと途中では「山寺の~、おしょうさんが~」という、例の歌のリフまで飛び出す始末です。
 そして演奏は強烈なゴスペル的な盛り上がりで、観客は思わず叫び声! さらに一転、静謐なボサノバに戻って、再びゴスペルに帰るという、個人的には大好きな演奏になっています。

B-3 Come Sunday
 最後を飾る大名曲を、ラムゼイ・ルイスはしなやかな歌心で綴っていきます。もちろん超絶技巧派の一面を垣間見せつつ聴き手の気持ちを揺さぶり、思わせぶりに煌いているのです。
 まあ、ちょっと嫌味な演奏に近い気もしますが、大盛り上がりが続いたアルバムの最後には相応しいかもしれません。

ということで、これは快楽的な作品ですから、コルトレーンという神様を奉った当時の暗いジャズ喫茶では敬遠気味というのが、真相でしょう。

でも、楽しいよなぁ、これはっ♪

そしてラムゼイ・ルイス・トリオは、同様に楽しいアルバムを何枚も作っていきますが、後にエルディ・ヤングとレッド・ホルトが独立して新グループを結成したあたりから、ラムゼイ・ルイスはファンキー色を強めた混濁期に入ります。もちろん残念ながら、そのあたりで4ビート至上主義者、特に日本のファンからは愛想をつかされたようです。

それでもフュージョンプームの頃には、リアルタイムの新作アルバムで人気が復活するわけですが、どうなんでしょう? このアルバムが実際にどの程度、日本で認識されているのかは不明です。

結局は評論家の先生方が持ち上げてくれなければ名盤にはなれないという、日本の事情を良く現した作品なんでしょうねぇ……。

私はジャズ者には必要不可欠のアルバムだと思うのですが……。

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楽しいバランス

2006-06-26 17:25:47 | Weblog

今日は美味いと評判のラーメン屋に連れられていかれましたけど、正直言って、ちっとも美味くなかったという1日でした。お客さんは満員だったんですけどねぇ……。

本当に美味いのか、尋ねてみたくなりました。

まあ、連れて行ってくれた人が「美味かったでしょう♪」とキメつけるので、曖昧な相槌だけは打っておきましたけど、それが私のイケナイところですね。

はっきり物が言いたいなぁ……。

ということで、本日は常に厳しく大衆的なこの人のアルバムを――

Smackwater Jack / Quincy Jones (A&M)

ポビュラー音楽界のドン、クインシー・ジョーンズが1971年に発表した名作中の大名作です。

クインシー・ジョーンズといえば、当時からあらゆる音楽に精通した稀代のアレンジャーとして有名でしたが、同時に音楽の大衆性を大切にした製作志向も業界では大いに評価されていました。

なにしろジャズでは自らビックバンドを率いていましたし、プロデューサーとしては白人アイドルのレスリー・ゴーアを売り出し、ブラック・ミュージックではレイ・チャールズの盟友として素晴らしい共同作業を残しているのは、氷山の一角にすぎません。

さらに映画音楽の分野でも秀逸な作品を多数手がけ、そうして培った人脈を次の仕事に活かしていく手腕と人望は、本当に大したものだと思います。

この作品のレコーディング・セッションにも、そうした人脈から多くの優れた人材が参集しており、まずリズム隊だけでもグラディ・テイト(ds)、ポール・ハンフリー(ds)、レイ・ブラウン(b)、チャック・レイニー(elb)、キャロル・ケイ(elb)、ボブ・ジェームス(key)、ジョー・サンプル(key)、ジミー・スミス(org)、エリック・ゲイル(g)、ジム・ホール(g)、ジョー・ベック(g) 等々、書ききれないほどです。

またメインゲストにはフレディ・ハバード(tp)、ミルト・ジャクソン(vib)、トゥーツ・シールマンス(g,hca)、ヒューバート・ロウズ(fl)、ハリー・ルーコフスキー(vln)といった超大物が顔を揃えています。

そしてもちろん、ブラス&リード、木管隊、さらにコーラス隊にも、当時のスタジオ系ミュージシャンの一流どころが集められているのですから、クインシー・ジョーンズの緻密なアレンジが完璧に表現されているのです―― 

A-1 Smackwater Jack
 私の大好きなキャロル・キングの名曲を、クインシー・ジョーンズはメチャ、ソウルフルに料理してくれました。
 まずイントロは擬似チョッパー・ベース! そしてソウル魂全開の女性コーラスとブル~ス満開のハーモニカ♪ 黒くてソフトなリードボーカルは、何とクインシー・ジョーンズです!
 あぁ、自然と腰が浮いてしまいますねぇ♪ 浮遊感のあるキーボードも素敵ですが、元々、原曲にはソウル味が秘められていましたから、それをクインシー・ジョーンズは最高に美味しく引き出してしまったというわけです。

A-2 Cast Your Fate To The Wind
 一転してゴスペル風味が漂うテーマが、複数のキーボードによって柔らかく演奏されていきます。もちろんリズム隊はタイトでルーズという、矛盾したビートを打ち出しているんですが、それが当時のニューソウルの決め技でした♪
 ギターソロはエリック・ゲイル、生ピアノはボビー・スコットだとライナーにはありますが、私はリズム隊中心に聴いてゴキゲンです♪

A-3 Ironside
 出ました! 「ウィークエンダー」のテーマじゃありませんよ! ハリウッド産の警察テレビドラマ「鬼警部アイアンサイド」のテーマです。
 う~ん、それにしてもインパクトのあるイントロですねっ♪ 皆様、一度は聴いたことがあるはずですよ。
 またテーマを奏でるヒューバート・ロウズのフルートがハードボイルドですし、シャープなブラス隊と暖かい隠し味になっている木管群の対比も鮮やかです。
 アドリブパートはジェローム・リチャードソンのソプラノサックスに続き、一転して4ピートでフレディ・ハバードが十八番のフレーズを吹きまくり、16ビートに戻してヒューバート・ロウズが締めくくりのフルートソロという鮮やかさです♪
 全体に打楽器が効果的に使われていますし、なによりもオーケストラ編曲が最高という、当にクインシー・ジョーンズの魔法が全開した名演です。

A-4 What's Going On
 ギョエ~! マービン・ゲイ畢生の名作をクインシー・ジョーンズが素晴らしく焼き直してしまいました。
 なにしろエレピとフルートが絡むイントロからテーマが、ソフト&メローの極致! もちろんリズム隊も素晴らしく、ジワ~ッとくる女性コーラスも最高です。
 そしてリードボーカルは、ここでもクインシー・ジョーンズがソフトにキメてくれますが、この人は子供の頃からゴスペル合唱隊で活躍していましたし、何よりも音楽を良く知っているので、妙な力みが無く、好感が持てます。
 さらに凄いのがアドリブパートで、まずは4ビートでフレディ・ハバードが白熱のトランッペットソロ! 一転して16ビートに戻してトゥーツ・シールマンスの口笛からミルト・ジャクソンのヴァイブラフォン、そしてまたまた4ビートでジム・ホールの神業ギターが飛び出すのですから、もう、たまりません♪
 もちろん背後ではソウルフルなコーラスと膨らみのあるブラスが躍動し、タイトなリズム隊も秀逸です。ジャズとソウル、ロックはこう交じるべきというお手本のような演奏ですが、クライマックスではハリー・ルーコフスキーの超絶バイオリンがエキセントリックに登場して、不安と緊張の一幕を演出していきます。
 こうして盛り上がった大団円を彩るのがトゥーツ・シールマンスのハーモニカ! 全く最後まで息がつけない濃密さです。

B-1 Them From The Anderson Tapes
 クインシー・ジョーンズが音楽を担当した映画「盗聴作戦」のテーマを、ここでは西海岸の名アレンジャーであるマーティ・ペイチの手を借りて再構築、ミステリアスな哀愁のテーマがさらに膨らみ、緊張感と安らぎが交錯した素晴らしい仕上がりになっています。
 もちろんジャズとしての主題も大切にされ、ミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが素晴らしい味♪ 背後を彩るギターやシンセサイザーも素晴らしく、最後にはトゥーツ・シールマンスのハーモニカが激情を吐露するのでした。

B-2 Brown Ballad
 このアルバムではリズム隊の要として大活躍する名人ベーシストのレイ・ブラウンが作った哀愁曲です。
 もちろんクインシー・ジョーンズのアレンジは深みのある音使いに加えて、ソロイストとしてトゥーツ・シールマンスのハーモニカをメインに起用、またジム・ホールのギターも良い感じです。
 う~ん、このスローな展開は、最高の心地良さ♪

B-3 Hikky-Burr
 アルバムのライナーによれば、アメリカの人気黒人芸人=ビル・コスビーが司会をするテレビショウのテーマらしいです。
 なかなか躍動的&ファンキーな演奏で、素っ頓狂なボーカルというか掛声はビル・コスビー本人によるものですが、とにかく動きまくりのエレキベースはチャック・レイニーか? 最高です♪ ちなみに口笛とギターのユニゾンはトゥーツ・シールマンスの十八番芸、ツボを押さえたオルガンはジミー・スミスでしょう。
 するとタイトなドラムスはポール・ハンフリー? 何せ、このファンキー節には腰が浮きまくりです♪

B-4 Guitar Blues Odyssey From Roots To Furits
 さて、これが問題の演奏です。
 内容はギターを通じてアメリカ音楽史を描いたもののようで、まずは素朴なカントリーブルースに始まって4ビートのスイングジャズ、ビバップからハードバップに流れは続き、それらが折り重なるようにギターの饗宴が続くのです。
 しかしこれがタイトルどおりにブルースの感覚があるかといえば、私は否としか答えられません。なんとなく様式美に落ちこんでしまったかのような……。
 おまけにブルースロックの世界までも描きだしたのは、???ですし、続けてハードロック~サイケロックにまで突っ込んでいくのです。
 もちろん演じるギタリストはジム・ホール、エリック・ゲイル、ジョー・ベック、トゥーツ・シールマンスという名人揃いなんですが……。
 そして最後は収拾がつかなくなったという雰囲気で、音のコラージュが展開され、またまた???です……。
 まあ、最後には一応、正統派ブルースの世界に舞い戻るのですが、クインシー・ジョーンズの才気が空回りしたとしか、私には思えません。ただし妙な説得力があるのは確かです。

ということで、全曲、最高に面白く聴いて納得の演奏ばかりです。そしてもちろん、フュージョンの原点ともいうべき仕上がりになっているのですが、クインシー・ジョーンズは、あくまでもジャズと言う視点を蔑ろにしていません。

いや、拘ったというべきでしょうか。

しかしそういう部分が4ビートとして現れた時、それが本当に必要なのか? という疑問がつきまとうのも、また事実でした。

その所為か、クインシー・ジョーンズはこの後、ますます大衆路線を追求しつつ、4ビートを捨てていくのですが、ジャズ魂は失うことがありませんでした。それ故に仕上がりが散漫な作品もあるのですが、このアルバムはその分岐点にあって、最高にバランスのとれた1枚だと思います。

楽しく聴いて、聴くほどに味が出る作品です。

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混濁した爽快さ!

2006-06-25 18:32:15 | Weblog

やれやれ、明日からまた仕事か……。なんか煮え切らない休日でした。

そこで爽快さを求めて、この1枚を――

Harlem Blues / Phineas Newborn Jr. (Contemporary)

ジャズ界には天才、神様と呼ばれる人が案外大勢いますが、「真の」というミュージシャンは少ないはずです。

その隔たりは、やはり紙一重! この部分が有るか、否かだと思います

本日の主役、フィニアス・ニューボーンという黒人ピアニストは、当にそういう人で、まず超絶テクニックの持ち主であり、強靭なリズム感と破天荒なアドリブ展開には、異次元の恐ろしさが秘められています。

ですから共演者は、よほど気心が知れているか、あるいは同等の実力者でなければ務まりませんし、フィニアス・ニューボーンその人に協調していこうという姿勢があったのか? という疑問がいつも付きまとう演奏ばかりが名演になっています。

もちろん、時期によっては精神に異常! その事実は言わずもがなです。

このアルバムはそんな天才の極端な部分がたっぷりと味わえる作品で、録音は1969年2月12&13日、メンバーはフィニアス・ニューボーン(p)、レイ・ブラウン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という超強力トリオになっています。

そして実を言うと、このセッションからはアルバム1枚だけがリアルタイムで発売されていたのですが、この作品は1975年に日本先行で突如発売された、所謂「おくら盤」です。

しかし内容は全く強烈で、自我が強いメンバー故に破綻するギリギリの鬩ぎ合い、ドッカ~ンと炸裂して急速に消滅していく異次元エネルギーに満ちた演奏が、ぎっしり収められています――

A-1 Harlem Blues
 ファニアス・ニューボーンのオリジナルということになっていますが、元ネタは民間伝承のゴスペル曲という楽しい演奏です。
 しかしファニアス・ニューボーンのピアノは両手ユニゾン弾き、炸裂ブロックコード、グイグイ突進する豪快なピアノ・タッチが怖ろしいばかり!
 ですからエルビン・ジョーンズはビシビシ対抗していきますが、レイ・ブラウンは演奏が破綻しないように手綱を引き締めているようです。強烈!

A-2 Sweet And Lovely
 有名スタンダードをブルース・フィーリングたっぶりに料理していくファニアス・ニューボーンが、あまりにも鮮やかです。
 サポートの2人もネバリの対応、特にレイ・ブラウンが大技・小技で流石です。
 そして、こういう雰囲気だと、どうしてもオスカー・ピータソンと比較されるわけですが、ファニアス・ニューボーンにはトリオとしての纏まりをつける意志が稀薄ではないでしょうか? あくまでも唯我独尊、そこにエルビン・ジョーンズが鋭いツッコミを入れることで、演奏が固まっていくようです。
 う~ん、それにしてもファニアス・ニューボーンの強烈なタッチには、何度聴いても圧倒されます。

A-3 Little Girl Blue
 これも有名スタンダードを気軽にスイングさせようとした意図が見え隠れしていますが、このメンバーですから、ただでは済みません。
 まずエルビン・ジョーンズが少しでもスキが出来ると暴れますし、レイ・ブラウンも執拗に自己主張するのです。
 しかし、それでちょうど良いというか、ファニアス・ニューボーンも両手バラバラ弾き、ユニゾン弾き、爆裂コード弾きを織り交ぜながら山場を作っていくのでした。

B-1 Ray's Idea
 モダンジャズ創成期から演奏されているレイ・ブラウンのオリジナルが、ここでは重量感&スピード感満点に再構築されています。
 ファニアス・ニューボーンは、もちろん十八番の両手ユニゾン弾きを初っ端から全開させていますし、エルビン・ジョーンズはステックで鬼の叩きまくり! レイ・ブラウンは土台作りに腐心するのですが、ソロ・パートではエルビン・ジョーンズと結託して反抗心を見せています。
 そしてクライマックスはエルビン・ジョーンズとファニアス・ニューボーンの潰し合い的なソロ交換! 怖ろしくも痛快な演奏で、ついついボリュームを上げてしまうのでした。

B-2 Stella By Starlight
 これも幾多の名演が残されている人気スタンダードですが、ここでのファニアス・ニューボーンの解釈は、両手をフル稼働させた超絶技巧の無伴奏ソロで魅惑のテーマを変奏し、リズム隊を呼び込んでからは十八番の両手ユニゾン弾きを、これでもかと炸裂させるのです。
 しかしエルビン・ジョーンズも負けていません。途中からはヤケクソ気味のシンバルと暴動寸前のツッコミで大暴れです。
 あぁ、こんなピアノ・トリオがあるでしょうか!?
 同様に超絶技巧のオスカー・ピーターソン・トリオのような、ある種の予定調和を否定した演奏に、そこでレギュラーだったレイ・ブラウンが参加しているところが、ジャズの味わい深いところ♪ 名演です!

B-3 Tenderly
 これまた人気スタンダード曲が素材ですが、ここではレイ・ブラウンのベースが主役♪ 冒頭からマイペースで自己主張しています。
 そして後半になってようやく、ファニアス・ニューボーンが余裕のテーマ変奏で参入し、忽ち超絶技巧大会です。もちろん、その背後にはエルビン・ジョーンズのネバリのブラシが!
 短い演奏ですが、最後には怖ろしいピアノ地獄が待ち構えています。

B-4 Cookin' At The Continental
 そして最後は、ホレス・シルバーが作ったハードバップの名曲をバリバリに演奏するトリオの凄みが堪能出来ます。
 とにかくファニアス・ニューボーンの猛烈なエネルギーには、流石のエルビン・ジョーンズもタジタジですし、レイ・ブラウンは演奏を纏めるのに必死です。
 まったく何処へ飛んで行くかわからない痛快さがありますねっ! これがジャズの面白さのひとつだと思います。

ということで、これはお蔵入りするのも頷ける演奏ばかりです。それは和めないということで、ジャズ喫茶の大きなスピーカーでガンガン鳴らしてこそ、真価が出るという演奏ではないでしょうか?

もちろん、どんな環境で聴いてもファニアス・ニューボーン以下、トリオの演奏は凄いのですが……。

機会があれば、ぜひともジャズ喫茶とか、大きな音量が出せるところで聴いて下さいませ。正直、かなりグシャグシャな混濁した演奏ですが、ガッツ~ンと爽快です♪

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黒い説教

2006-06-24 19:05:44 | Weblog

今日は休日だというのに、野暮用に追い回されました。まあ、仕方ないか……。

まずは気分を高揚させるために、これを――

The Sermon ! / Jimmy Smith (Blue Note)

昨日に続き、本日もジャム・セッション盤でいってみます♪

仕切りはブルーノート・レーベル、もちろん参加メンバーは超オールスタアですが、主役はあくまでもジミー・スミスという、黒人天才オルガン奏者というのがミソで、中身はどこまでも真っ黒いフィーリングが追求されているのでした――

A-1 The Sermon (1958年2月25日録音)
 まず初っ端から大ゴスペル大会のウルトラ・ハードバップが展開されます。
 参加メンバーはリー・モーガン(tp)、ルー・ドナルドソン(as)、ティナ・ブルックス(ts)、ジミー・スミス(org)、ケニー・バレル(g)、そしてアート・ブレイキー(ds) という、これで白かったら地球が転覆してしまいます!
 曲はジミー・スミスのオリジナル・ブルースで、アート・ブレイキーの強烈なバックビートに煽られ、ミディアム・テンポの快調な演奏がスタートします。もちろん先発はジミー・スミス! 強烈なネバリとスタッカートのコンビネーションで彩るフレーズがゴキゲンです。特に58秒目辺りから、いきなり聴き手をグリグリ刺激するのですから、うへぇ♪ 最高です♪
 アドリブ全体も難しいフレーズよりは、お約束のリフに近いノリで勝負していくジミー・スミスは、明らかにオルガンのチャーリー・パーカー(as) と称されていたビバップ王道の演奏スタイルからは逸脱していますが、時代的にファンキー&グルーヴィンな黒人感覚がウケていたことからの回答だと思います。
 そして続くケニー・バレルが、これまた最高♪ 同じくシンプルなフレーズを積み重ねる手法で真っ黒に行くかと思えば、一転、リズムに対して自在のノリと早弾きフレーズの妙♪ バックを彩るジミー・スミスのオルガンも聞きものです。
 しかし、いよいよ登場するホーン隊のティナ・ブルックスがいまひとつ調子が出ていません。この人はR&B色の強い演奏が得意なはずですが、う~ん、何故だ!? 妙にコルトレーンみたいになっているぞっ?
 と思う次の瞬間、リー・モーガンが破天荒に登場! 忽ち周囲を自分色に染めていくのです。このタメとぶっ飛びのフレーズには、アート・ブレイキーも自分の子分ながらツッコミを入れることが出来ませんし、ジミー・スミスもタジタジになっている様子が覗えます。
 ただし流石はジミー・スミスです。クライマックスに向けてコード弾きで応戦し、アート・ブレイキーもビシッとシンバルでキメていくのでした。
 こうしてトリはルー・ドナルドソンが余裕の吹奏でその場は真っ黒! 特に16分50秒目あたりから、バックが煽るほどに猛烈なフレーズを繰り出していくところが痛快です!
 ということで、LP片面全部を使った20分を越える演奏ですが、全体にジミー・スミスのバッキング、特にフットペダルとコード弾きでベースの役割を果す低音部だけ聴いていても、アート・ブレイキーとのコンビネーションが快感に繋がります。そしてこういうリズム隊があれば、演奏は自然と白熱し、聴き手はゴスペル感覚真っ只中に放り込まれるのでした。

B-1 J.O.S. (1957年8月25日録音)
 この曲はA面と録音日&メンツが異なっており、リー・モーガン(tp)、ジョージ・コールマン(as)、ジミー・スミス(org)、エディ・マクファーデン(g)、ドナルド・ベイリー(ds) という布陣で、ちなみにリズム隊は当時のジミー・スミスのレギュラー・トリオ!
 曲はジミー・スミスのオリジナルで、アップテンポのハードバップです。
 まずオルガントリオでテーマが演奏され、最初に登場するのがジョージ・コールマンですが、ご存知のように、この人はマイルス・デイビスのバンド・レギュラーとして有名♪ ただしそれは後年の事で、このセッション当時はメンフィスからニューヨークに出てきたばかりの新進気鋭として、スピード感満点の見事なアルトサックスを聞かせてくれます。
 するとリー・モーガンも負けられないという雰囲気で烈しく突進してくれます。あぁ、この勢い、この爆発力! 当に昇り調子の恐ろしさが存分に楽しめます♪
 こうなるとリズム隊も熱くなり、まずエディ・マクファーデンが小型ケニー・バレルという雰囲気で奮闘、主役のジミー・スミスはハードバップの枠を飛越えた物凄いフレーズを連発しています! これって、もうプログレ? フリー・ロック? いやいや、ジャズなんですねぇ、これがっ♪
 う~ん、バックで地味に燃えているドナルド・ベイリーのドラムスも最高です。

B-2 Flamingo (1958年2月25日録音)
 再び「A-1」と同じセッションから、メンバーはリー・モーガン(tp)、ジミー・スミス(org)、ケニー・バレル(g)、アート・ブレイキー(ds) というワンホーン編成で、スタンダード曲がジンワリと演奏されます。
 まずテーマを吹奏するリー・モーガンの「味」は、やはり天才の証明です。また、こういう雰囲気が十八番のケニー・バレルが素晴らしいですね♪
 そしてアドリブパートに入っては、リー・モーガンがファンキー味を滲ませながらも暖かい歌心を披露♪ 続くケニー・バレルはムード優先で実力を発揮しています。
 肝心のジミー・スミスはアート・ブレイキーと黒子に撤するサポートですが、それあってこその名演というべきかもしれません。ズバリ、和みます♪

ということで、これは素敵な名盤に偽りなし! 冒頭から熱く高揚し、最後で和むというプログラムが絶妙です。あぁ、ジャズってこういうもんなんでしょうねぇ。妙に納得させられるアルバムです。

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若獅子!

2006-06-23 17:55:01 | Weblog

さてさて、日本中が早起きした今日、淡い夢を見せてくれたブラジルに最敬礼です。中田ヒデの涙も美しく、宮本の何も出来ない悲壮な表情、川口の鬼神のセーブも届かず……。

全く日本人向けの悲壮な一幕だったのでしょうか……。

これからの若手育成にブラスになるのでしょうか……。

ということで、本日は若手の修練を記録したアルバムを――

The Young Lions (Vee Jay)

ジャズは皆でワイワイガヤガヤと作り上げることが出来る音楽です。その象徴が、所謂ジャム・セッションという寄り合いの腕比べ♪ これは演目のテーマは素材に過ぎず、参加メンバーのアドリブの競い合いがメインです。

したがって、その場には気心の知れた者同士の連帯、あるいは全く知らない者が入っていることの緊張感、その両方の鬩ぎ合いが、聴いているファンにとっては魅力になります。

さて、このアルバムは、当時のジャズ界で売出中の若手を集めたジャム・セッション盤で、録音は1960年4月25日のニューヨーク、メンバーはジャズ・メッセンジャーズのレギュラーからリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p) の3人、キャノンボール・アダレイのバンドからルイ・ヘイズ(ds) 、ベニー・ゴルソンのジャズテットからアルバート・ヒース(ds) 、そして製作レコード会社の地元シカゴではスタアのフランク・ストロジャー(as) とボブ・クランショウ(b) が集められています。

ちなみに人選はプロデューサーのシド・マッコイによるものですが、当時の人気バンドから有望株を選りすぐった時点で、このセッションは興味深いものになっています。それにしてもドラマーが2人いるのは何故? 一応、演奏曲毎にどちらが叩いているか、推察しておきますが――

A-1 Seeds Of sin
 ウェイン・ショーターが作った迫力のファンキー・モード曲です。3管によるグイノリのテーマ吹奏から、いきなりウェイン・ショーターが掟破りフレーズを連発すれば、リー・モーガンは溌剌と対抗して、このあたりは、ほとんどジャズ・メッセンジャーズそのものです♪
 そして続くフランク・ストロジャーは泣きのアルトと見せかけて、かなり無機質なアドリブに終始しています。ちなみにこの人は白人で、ウネリよりもツッコミで勝負するタイプです。
 演奏はこの後、ボビー・ティモンズが押さえたファンキー味を披露するのですが、気になるドラマーは、オカズの力強さからルイ・ヘイズでは?

A-2 Scourn'
 これまたウェイン・ショーター作曲、スピード感に満ちたモード演奏になっています。
 アドリブ先発はチャーリー・パーカー(as) 直系のフレーズを出しまくるフランク・ストロジャーですが、続くリー・モーガンの輝きには敵いません。
 そこでウェイン・ショーターは、十八番の変態ノリというか、ウラから責めるようなギクシャクしたフレーズを連発し、全く新鮮な展開を聴かせてくれるのです。
 しかし最後はボビー・ティモンズの保守本流のピアノという、安心感も用意されているのでした。
 ちなみにここでのドラマーも、烈しいオカズの入れ方から、ルイ・ヘイズでしょう。

A-3 Fat Lady
 ボビー・ティモンズが作った楽しくも新鮮なハードバップ曲です。
 とは言っても、アドリブ先発のウェイン・ショーターは全く唯我独尊のフレーズを吹きまくって場を混乱させるのです。しかし続くリー・モーガンがファンキーなキメを連発し、演奏を軌道修正♪ ですからフランク・ストロジャーも安心して冒険する展開を聴かせてくれます。
 さらにボビー・ティモンズのピアノからドラムスとホーン陣の対決が興奮度、大! ここでのドラムスは繊細なシンバルからアルバート・ヒースと断じますが……。

B-1 Peaches And Cream
 ドラムスとベースの安定したノリでペースが設定され、ミョウチキリンなテーマが始まります。もちろん作曲はウェイン・ショーターで、本当に不思議な高揚感に満ちた、魅惑のテーマと言っていいでしょう。
 もちろんアドリブ先発のウェイン・ショーターのフレーズは一筋縄ではありません。聴いているうちに異次元に飛ばされそうなフォースがあるのです。
 それはリー・モーガンにも感染し、何時もと違う無機質なノリは逆に新鮮♪ ただしフランク・ストロジャーは迷い道です……。
 そして最後はドラムスの一人舞台が用意されていますが、誰でしょう? おそらくアルバート・ヒースか? 小型のフィリー・ジョーという雰囲気です。
 こうして吹奏されるラストテーマの迫力は、全く意想外の迫力がありますよ♪

B-2 Blues
 オーラスはリー・モーガン作曲のブルースで大ファンキー大会♪
 いきなりボビー・ティモンズがゴスペル風味を撒き散らせば、続けて吹奏されるテーマが真っ黒という仕掛けです。
 そしてまたまたボビー・ティモンズが十八番の展開を披露、そのバックで躍動するボブ・クランショウのベースもツボをしっかりと押えています。
 さらに続くフランク・ストロジャーも必死で黒さに挑戦しますが、やや苦戦か……。しかし次に登場するリー・モーガンのミュートで全ては帳消しです。あぁ、なんて凄いんでしょう、このツッコミとタメ♪ マイルス・デイビス(tp) とは完全に異なるミュート・トランペットの世界が現出しています。
 するとウェイン・ショーターは全く意味不明のフレーズを入れ込んで、ミステリアスに対抗していきます。このあたりが当時としては新しかったんでしょうねぇ、否、現代でも新鮮です! アドリブのフレーズが不思議系でありながら、琴線にグサリとくる美メロというか印象的なメロディが出るんですねぇ♪
 そしてリズム隊の素晴らしさにもワクワクさせられます。特にボブ・クランショウは本領発揮のネバリ節♪ ちなみにドラムスは、ここもアルバート・ヒースでしょう。

ということで、これは楽しいも充実したジャズが聴けるアルバムです。ハードバップに一途な人には大団円の「Blues」が絶対のオススメですし、モード中毒者にはウェイン・ショーター作曲の妙味が楽しめます。

全体としての纏まりも良く、それでいて奔放な雰囲気も横溢しているのは、若き血潮の滾りとでも申しましょうか、なかなかツウ好みの作品かもしれません。そのあたりを鑑みて、ジャズ喫茶でリクエストするには最適だと思います♪

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リーダーはつらいよ

2006-06-22 18:05:28 | Weblog

いよいよ明日は奇跡が起こるか? もちろんW杯のブラジル戦です。

今回の大会での日本チーム、なんだかんだといっても、こう成績が上がらないと、内部もギクシャクしていると思うんですが、とにかく頑張ってもらうしかありません。勝敗よりも、応援している国民を納得させる生き様を示してほしいもんです。

ということで、本日は人望について様々に思う、この1枚を――

Six Pieces Of Silver / Horace Silver (Blue Note)

仕事の能力が抜群で人望もある、こういう人は幸せです。

もちろん私なんか、及ぶべく範疇ではないし、現実に、こういう人には、なかなか出会えないものです。

ジャズ界ではホレス・シルバーが、そういう人かもしれません。

なにしろ、アート・ブレイキー(ds) と共同運営のような形だったジャズ・メッセンジャーズから独立する際に、アート・ブレイキー以外のバンド・メンバーを全員引き連れていくという、物凄いことをやっています。

もちろん、プロの世界ですから、ギャラの絡みもあったかもしれませんが、私はホレス・シルバーの人望が大きく関与しているんじゃなかろうか……、と妄想しています。

このアルバムは、そうした当時、改めてブルーノート・レベールと契約して発売された最初の作品で、録音は1956年11月10日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ホレス・シルバー(p)、ダグ・ワトキンス(b)、ルイ・ヘイズ(ds) という、つまりドラマーがアート・ブレイキーではないジャズ・メッセンジャーズ!

 収録曲は最後の1曲を除いて全てホレス・シルバーのオリジナルで固めています――

A-1 Cool Eyes
 如何にもホレス・シルバーらしい勢いのハードバップです。それはビバップ本流のギクシャクしたメロディラインに拘りながも、ちゃんとホレス・シルバーの「節」があるので、テーマだけで楽しくなるというわけです♪
 肝心のアドリブパートでは、まず先発のハンク・モブレーが持ち味のタメのあるノリと温かくて黒~いフレーズを積み重ね、聴き手をゴキゲンにさせてくれます♪
 そしてセカンドリフを挟んで登場するのが、当時、昇り調子の若手だったドナルド・バードの溌剌としたトランペット! これが、また、最高です♪
 さらに本当の聴きどころが、いよいよ登場するホレス・シルバーのピアノです。当時の主流だったバド・パウエル(p) でもセロニアス・モンク(p) でもない、まったく独自の跳ねるようなシンコペーションが強烈に印象的! それはリズム的な興奮に他なりません。
 こうして演奏はモダンジャズ的な快感に溢れたラストテーマに突入するのですが、最後はゴスペル味の大サービスがついています♪

A-2 Shirl
 ホーン陣が抜けたピアノ・トリオの演奏で、一抹の寂しさが漂うスロー曲です。こういうテンポのものは、あまり評価されないホレス・シルバーですが、私は聴いているうちに不思議と虚無的な悲しみに包まれるような、ネクラ気分に浸ってしまうので、嫌いではありません。 

A-3 Camouflage
 ゴスペル味全開のファンキー・ハードバップですが、仄かなラテン味が絶妙のスパイスになっているようです。
 アドリブパートではハンク・モブレーが随所に仕掛けられたブレイクを活かしつつ、マイペースでソロを展開して飽きさせません。もちろん続くホレス・シルバーは十八番のリズミックな部分を強く打ち出していますし、ドナルド・バードは歌心優先に撤しているのですから、素晴らしい演奏なのは言わずもがなです。

A-4 Enchantment
 変則ラテンビートに彩られた魅惑の名曲です。全篇を貫くエキゾチックな雰囲気は本当に最高ですが、ハンク・モブレーはそれに浸りきることなく、あくまでもハードバップで行こうとする、その鬩ぎ合いが静かな熱気になっています。
 それはドナルド・バードも同様で、仕掛けられたハーモニーの罠に陥ることなく、じっくりと勝負しているようです。
 おまけに曲の展開には魅力的なセカンドリフ、ルス・ヘイズのマレットによるドラムスのアクセントが用意されており、いよいよ登場するホレス・シルバーは全てを読みきったアドリブで演奏を完遂させるのでした。
 もちろんラストテーマはハーモニーが拡大され、素敵なテーマがますます魅力を増していくという、魔法のような演奏です。ズバリ、名曲・名演!

B-1 Senor Blues
 お待たせしました、シングル盤としてもヒットしたバンドの代名詞ともいうべき人気曲です。
 もちろんタイトルから推察出来るとおり、ラテンビートを使った哀愁のブルースですが、本音を言うと、私はあまり好きではありません。ちょっとヌルイというか……。
 ドナルド・バードは思わせぶりばかりですし、ハンク・モブレーもイマイチ、煮えきりません。しかしリズム隊がなかなかグルーヴィなのでダレないというところでしょうか……。
 主役のホレス・シルバーはブルースではお約束のフレーズを用いてシンプルに盛り上げていますが、それが正解の解釈かもしれません。つまり考えすぎてはダメということ?

B-2 Vergo
 おぉ、これぞホレス・シルバーというカッコ良いハードバップです♪
 このスピート感とグルーヴィなリズム隊の煽り! ドナルド・バードが素直にノセられた大ハッスルすれば、ハンク・モブレーは俺に任せろっ! という白熱のモブレー節を大盤振る舞いです♪
 こうなるとホレス・シルバーも飛んだり跳ねたりという得意技の出しまくり! ドラムスとのコンビネーションも良く、何処までも突進していく演奏になっています。
 そして最後はルイ・ヘイズのドラムスが見せ場を作り、ビバップ本流のテーマに戻るあたりは、ゾクゾクするのでした。

B-3 For Heaven's Sake
 アルバムの締めくくりは、唯一のスタンダード曲がピアノ・トリオで演奏されています。
 ここではダク・ワトキンスのベースが全体を引き締めているので、ホレス・シルバーも甘さに流れることが許されていません。そして最後には、ちょいとしたお遊びがあって、如何にもという余韻が残るのでした。

ということで、これは気心の知れたメンバーで作られた楽しく、和みのあるアルバムです。名盤ガイド本にも紹介されることが多いのですが、それにしてもジャケットに写るホレス・シルバーの寂寥感はどうしたもんでしょうか? 内容的には、もっと楽しそうなジャケットでも良かったと思うのですが、やはりアート・ブレイキーと別れた際のゴタゴタを気にしていたのでしょうか……。リーダーのつらさ、みたいなものが感じられます。

ホレス・シルバーはこのセッションから「Senor Blues」という、後にはボーカル・バージョンまで作るヒットを出して、ブルーノートの看板スタアになっていきます。もちろんバンド・メンバーも少しずつ変わっていくのですが、ジャズがロックに押されてしまう時代になっても、バンドを維持していけたのは、音楽的才能に加えてリーダーとしての資質や人望が大きかったと思われます。

一方、アート・ブレイキーは一緒に旗揚げした仲間に去られた後、若手中心でジャズ・メッセンジャーズを再編成し、自分の人生の最後までリーダーであり続けました。ですから、この人もまた、リーダーの資質は充分にあったわけですが、それならば何故、お家騒動とも受け取れるバンド分裂騒ぎでメンバー全員が出て行ってしまったのか、今となっては永遠の謎です。

ちなみにハンク・モブレーだけは、後にジャズ・メッセンジャーズに一時復帰していますが、そこがまた、ハンク・モブレーの愛すべきところだと思います♪

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歪みと軋みの楽しみ

2006-06-21 18:29:59 | Weblog

またまた最近、物欲を刺激されるブツが大量に発売されていますね。嬉しい反面、当然お金の心配が……。

あぁ、もう、これ以上、私にお金を使わせないでくれっ!

という悲痛な叫びを胸に、本日聴いたのが――

Bags Meets Wes / Milt Jackson & Wes Montgomery (Riverside)

ジャズはある意味、個人芸なので、アルバムを買うファンの気持ちとしては、好きなミュージシャンが入っていればそれで良しとする傾向が強く、ましてや、そこに参加しているメンバー全員がお気に入りならば、それだけで満足してしまうのが、ジャズ者のサガです。

私にとっては、このアルバムこそが、そうした1枚でした。

なにしろメンバーが、ミルト・ジャクソン(vib)、ウェス・モンゴメリー(g)、ウイントン・ケリー(p)、サム・ジョーンズ(b)、そしてフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、黒~いハードバップ一直線の強面が揃っているのです。ちなみに録音は1961年12月18&19日です――

A-1 S.K.J (1961年12月19日録音)
 ミルト・ジャクソン作曲のオリジナル・ブルースを、まずはサム・ジョーンズの強靭なベースがリード、そしてタメの効いたテーマ・リフが流れてきた瞬間、あたりはブル~ス一色です。
 アドリブ先発はウェス・モンゴメリーが初っ端からオクターブ奏法とコード弾きのコンビネーションを使って熱く盛り上げていきます。あぁ、このギターの歪んだ響きがたまりません。
 そして続くウイントン・ケリーも持ち前の粘っこいフィーリングを発揮、さらに主役のミルト・ジャクソンがブルースのお手本を示すのです♪
 ここで気づくのが、このセッションの音の硬さです。これは当時の主流だったルディ・ヴァン・ゲルダーの録音では無く、Ray Fowler という録音技師の仕事ですが、これが適度な歪みと力感あるベース&ドラムスの響きが上手くミックスされていて、好みです。
 で、ここでもサム・ジョーンズ&フィリー・ジョーのコンビが最高の存在感! ギスギスと豪胆にスイングしていくサム・ジョーンズにビシバシとビートを極めるフィリー・ジョー♪ これぞリバーサイドの音だと思います。
 ちなみにこの頃のジャズ専門レーベルには、それを特徴づけるリズム・コンビが存在しており、例えばブルーノートではダグ・ワトキンス(b) &アート・ブレイキー(ds)、ブレスティッジではポール・チェンバース(b) &アート・テイラー(ds)、サボイではウェンデル・マーシャル(b) &ケニー・クラーク(ds) といったところでしょうか、もちろんリバーサイドではサム・ジョーンズ&フィリー・ジョーです♪

A-2 Stablemates (1961年12月18日録音)
 フィリー・ジョーのグイグイいくドラムスにメンバー全員がノセられてしまう、快適な演奏です。曲はもちろんベニー・ゴルソン作曲によるモダンジャズの定番メロディ♪
 まずはウェス・モンゴメリーがバリバリと単音弾きで斬り込めば、ミルト・ジャクソンはビバップ伝来のフレーズでスマートに対応します。
 もちろんリズム隊も絶好調で、サム・ジョーンズの我が道を行くウォーキング・ベースは最高ですし、ウイントン・ケリーの颯爽としたアドリブ、そして絶妙の叩きまくりというフィリー・ジョーは痛快です。

A-3 Stairway To The Stars / 星へのきざはし (1961年12月18日録音)
 ミルト・ジャクソンが十八番のスタンダードで、スロー物における天才的な歌物解釈がじっくりと楽しめます。もちろんそういう部分ではウェス・モンゴメリーも負けていません。テーマの変奏ではオクターブ奏法を駆使してムードたっぷりに盛り上げていますし、リズム隊も控えめながら絶妙のサポートという、出色の演奏です。

A-4 Blue Roz (1961年12月18日録音)
 ウェス・モンゴメリー作曲によるハードバップなブルースです。
 そしてこういう曲調になるとゴスペル感覚を撒き散らすリズム隊が強力ですし、ミルト・ジャクソンも素直にノセられてブルース衝動を吐露、ウェス・モンゴメリーもハードボイルドに迫ってきます。
 あぁ、全員の弾き出す音に無駄がありません! あるべきところにキチッと収まったジクゾーパズルの完成品のような、それでいて自然体のグルーヴが満喫出来る名演だと思います。

B-1 Sam Sack (1961年12月19日録音)
 さあ、お待ちかね、サム・ジョーンズ&フィリー・ジョーのリズム・コンビが大暴れするブルースです。
 特にフィリー・ジョーは初っ端から快適なクッションに重いビートという得意技の出しまくり♪ この曲の作者であるサム・ジョーンズの豪胆なウォーキングも最高です。
 ですからミルト・ジャクソン、ウェス・モンゴメリーともに演奏していて自らが楽しい雰囲気ですね。もちろんウイントン・ケリーも爽快にスイングしています。
 そしてクライマックスはフィリー・ジョーのドラムソロとサム・ジョーンズのベースの掛け合いというリズム隊の大爆発が用意されていますが、まったく自然発生的に炸裂するグルーヴは本当に強烈です!

B-2 Jingles (1961年12月18日録音)
 出ました! ウェス・モンゴメリーが十八番のハードバップ曲です。しかしこれが良く聴くと、リズムに対するアプローチが相当に難しい雰囲気です。
 しかし、そこは名人達の寄り集まりということで、アドリブパートでは美味しい個人芸が存分に披露されていきます。
 それはミルト・ジャクソンのスピート感満点のステック捌き、ウェス・モンゴメリーの間然することの無い構成力、そしてシャープなフィリー・ジョー、プンブン突き進むサム・ジョーンズ、さらに調子が出ずに苦しむウイントン・ケリーまでもが一丸となったハードバップ全盛期の底力なのでした。

B-3 Deulah (1961年12月19日録音)
 エキゾチックな雰囲気のスタンダード曲で、モダンジャズではクリフォード・ブラウン(tp) の超名演があまりにも有名ですが、この演奏も素晴らしい♪
 それはリズム隊の好演、特にフィリー・ジョーのメリハリが効いたブラシ、そのハッスルぶりが最高です。
 そしてアドリブパートでは、まずミルト・ジャクソンが完璧なソロを披露、続くウェス・モンゴメリーは、いきなりのコード弾きからオクターブ奏法を全開させる豪快さです! あぁ、この歪みが入った音! 好きです♪
 またサム・ジョーンズのベースも独特の軋みが録音されていますし、ウイントン・ケリーのネバリ、そのピアノタッチの魅力にもグッとくるという、これも名演の中の大名演だと思います。

ということで、これは「リバーサイド」というレーベルの特色が色濃く出た名盤だと思います。その要因は前述したように、ルディ・ヴァン・ゲルダーでは無い録音でしょう。当時のブルーノートあたりの音に親しんでいる人には、ここで聞かれる音には違和感があろうかと思います。

実際、私も最初はそうでした。しかし聴き込んでいくうちに、このメンツでの、この演奏ならば、この音しか無い! と思えるようになりました。それは歪みと軋み、ドラムスとベースが突出して炸裂するバランス! そのあたりが私には非常に魅力なのです。

音楽鑑賞には虚心坦懐が必須ではありますが、こういう聴き方もあるという、そのあたりもご理解いただきとうございます。

ちなみに現在、最新リマスターの紙ジャケ仕様CD、輸入盤CD等々、いろいろと発売中ですが、この歪みと軋みは存分に楽しめるはずです。

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