OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

アート・ペッパーの意気揚々

2008-04-30 17:28:49 | Weblog

やっぱり歳です。昨日は爆眠したはずなのに、今日は疲れが残って……。

そんなときは、やっぱり――

The Complete Surf Ride Plus / Art Pepper (Savoy / キング)

「人生の99%はクズだ、でも、がっかりすることはない。残りの1%があるからね」と書いた作家がいたけれど、アート・ペッパーの場合、その最良の時期は1951~1952年頃だったんじゃないでしょうか?

その頃のアート・ペッパーはスタン・ケントン楽団のスタアとして人気急上昇、独立して自分のバンドを率いて勇躍していた時期で、もちろん残されたレコーディングセッションの素晴らしさは言わずがな♪

このアルバムは Discovery というマイナーレーベルを主体に残された、その時期の現存する音源を極力纏めたCDセット♪ 我国のキングレコードによる力作で、リマスターも大変に良好です――

☆1952年3月4日録音
 Disc 1 01 Brown Gold (Discovery 157)
           02 These Foolish Things (Discovery 157)
            03 Surf Ride (Discovery 158)
            04 Holiday Flight (Discovery 158)
 アート・ぺッパーの初リーダーセッションで、メンバーはアート・ペッパー(as) 以下、ハンプトン・ホーズ(p)、ジョー・モンドラゴン(b)、ラリー・バンカー(ds) という当時のレギュラーカルテット♪ ここから作られた2枚のSP及びEPの4曲は、勿体無いほどの初々しさとピュアなジャズ魂に満ちています。
 奇蹟のような「Brown Gold」のノリと泣き、ブルースの「Surf Ride」と「Holiday Flight」では緩急自在な飛翔と独特のウネリ! もちろんチャーリー・パーカーの影響下にあるモダンジャズのスタイルではありますが、そのパーカーフレーズがほとんど出てこない独創的なアドリブは凄いですねぇ~。まさに天才の証明だと思います。
 そして歌物スタンダード「These Foolish Things」では歌心が極限にまで達して、なおかつ自然体が感じられる決定的な名演でしょう。
 全4曲、バンドとしての纏まりも最高ながら、自伝によれば、この当時からアート・ペッパーは悪いクスリにどっぷりと浸りきっていたそうです。しかしこれだけの演奏が出来てしまえば、恐らくは後の陰惨な人生など、本人には全く関係の無い世界だったのでしょうねぇ。あるのは洋々とした未来だけで、それはリアルタイムのファンも同じ気持ちだったはずですから、後追いのジャズ者、少なくとも私は聴くたびに全ての意味で涙が滲むのでした。

☆1952年10月8日録音
 Disc 1 05 Chili Pepper (take 1)
            06 Chili Pepper (take 2)
            07 Chili Pepper (take 3)
            08 Chili Pepper (take 4 / Discovery 171)
            09 Chili Pepper (take 6)
            10 Suzy The Poodle (take 1 / Discovery 170)
            11 Suzy The Poodle (take 3)
            12 Suzy The Poodle (take 5)
            13 Suzy The Poodle (take 6)
            14 Everything Happens To Me (take 1)
            15 Everything Happens To Me (take 2)
            16 Everything Happens To Me (take 3)
            17 Everything Happens To Me (take 4 / Discovery 171)
            18 Everything Happens To Me (take 5)
            19 Tickle To Toe (take 4 / Discovery 170)
            20 Tickle To Toe (take 9)
 前回同様の趣向によるワンホーンセッションで、メンバーはアート・ペッパー(as) 以下、ラス・フリーマン(p)、ボブ・ホワイトロック(b)、ボビー・ホワイト(ds) となっていますが、バンドの纏まりとインスピレーションの鮮やかさは勝るとも劣らない演奏が楽しめます。
 しかもこのセットでは別テイクも網羅されていますし、その中の「Chili Pepper (take 1)」は公式には初CD化だったはずです。そしてこれが実に最高♪ 個人的にはマスターテイクよりも好きなほどです。
 というように、演奏はどの曲も素晴らしすぎるアート・ペッパーの真髄を記録していますし、こうした別テイク入りの音源集は未完の演奏も含まれるのが慣例になっていますが、ここにあるのは、ほとんど全てが完奏された「お宝」ばかり♪ 特にスローバラードで歌心の満点という「Everything Happens To Me」の5連発には天国へ持っていかれる心持ですし、眩暈がしそうなほどに強烈なスリルが楽しめる「Suzy The Poodle」や「Tickle To Toe」でのジャズフィーリングの深さ! もはや天才の妙技に心を奪われるのみです。
 しかしこの直後から、アート・ペッパーは当局に監視され、翌年には逮捕されてしまうのでした……。
 
☆1954年8月25日録音
 Disc 1 21 Nutmeg (take 3 / Discovery DL3023)
            22 Nutmeg (take 4)
            23 Nutmeg (take 6)
            24 Nutmeg (take 7)
 Disc 2 01 Deep Purple (Discovery DL3023)
            02 Cinnamon (take 2)
            03 Cinnamon (take 3)
            04 Cinnamon (take 5 / Discovery DL3023)
            05 What's New (take 1)
            06 What's New (take 2)
            07 What's New (take 3 / Discovery DL3023)
            08 Thyme Time (take 1)
            09 Thyme Time (take 2 / Discovery DL3023)
            10 Thyme Time (take 3)
            11 Striaght Life (take 1)
            12 Striaght Life (take 2 / Discovery DL3023)
            13 Striaght Life (take 3)
            14 Art's Oregano (take 1)
            15 Art's Oregano (take 2)
            16 Art's Oregano (take 5 / Discovery DL3023)
            17 The Way You Look Tonight (take 2)
            18 The Way You Look Tonight (take 5 / Discovery DL3023)
 逮捕・拘留中だったアート・ペッパーが一時的に保釈された時に行われたセッションで、メンバーはアート・ペッパー(as)、ジャック・モントローズ(ts)、クロード・ウィリアムソン(p)、モンティ・バドウィック(b)、ラリー・バンカー(ds)、Paul Ballerina (ds) というクインテットですから当然、西海岸派特有のサックスアンサンブルや軽快なノリが表出しています。
 しかしアート・ペッパーのアドリブからは若干ですが、後年顕著になる陰影や蠢くようなウネリという黒っぽい部分が感じられるようです。またジャック・モントローズのテナーサックスは、そんな影響を受けてしまったのか、アート・ペッパー的なフレーズとノリが出ていますよ。これが実に味わい深いです♪
 そして演奏は全てが必聴という素晴らしさで、「Nutmeg (take 7)」なんかボツったのが不思議なほどにアート・ペッパーが最高ですし、和みの「Deep Purple」は永遠不滅♪ 本気で泣けますよ。
 さらにジャズ史的にも決定的な名演とされる「What's New」の3連発ではシビレて胸キュン♪ 陶酔して夢の世界で忍び泣くしかありません。
 また猛スピードでブッ飛ばした「Striaght Life」はアート・ペッパーに限って、神の領域でしょう。ついていけない他のメンバーが哀れなほどですが、バンドの纏まりは保たれていますから、これもマスターテイクは文句なし! 破天荒なアンサンブルはアナーキーでさえありますし、個人的には「take 3」が大好きなのですが……。
 同系の「The Way You Look Tonight」もヤバ過ぎるほどにアブナイ演奏ですし、全曲がモダンジャズ最良の瞬間でしょうね。気になるドラマーは前半の「Thyme Time」までが Paul Ballerina、以降の後半がラリー・バンカーと言われています。
 ちなみにここでのマスターテイク8曲は10吋LPが初出でしょうか? 後にはサボイにレーベルごと買い取られ、12吋盤に纏められています。
 しかしアート・ペッパーは、この後、またまた逮捕され、法の裁きを受けるのでした……。

☆1951年11月12日録音
 Disc 2 19 Pooch McGooch
            20 All Of Me
            21 Back In Your Own Backyard
            22 The Count On Rush Stree
 これはオマケ的な収録で、シェリー・マンがリーダーとなった演奏です。メンバーはコンテ・カンドリ(tp)、ビル・ラッソ(tb)、アート・ペッパー(as)、ボブ・クーパー(ts)、Gene Esposito(p)、Don Bagley(b)、シェリー・マン(ds,vo)、Shelby Davis (vo) という西海岸系の面々♪ もちろん演奏は、モロにウエストコーストしています。
 そしてアート・ペッパーは既にして鮮烈! 鋭いアドリブと翳りを含んだ音色、ドライブ感に満ちたノリは絶品ですねぇ~~♪
 ちなみにこのセッションは同じくサボイ系の Dee Gee というマイナーレーベルに吹き込まれたもので、後にシェリー・マン名義のLPとしても纏められています。

ということで、アナログ盤時代から名演集として名盤ガイド本にも必ず載っているアルバムですが、やはりCDならではの長時間収録を活かした編集として、このブツは最高! 2002年頃に発売されていますから、発見したら即ゲットをオススメ致します。

もちろんマスターテイクだけ集めたCDでもOKですよ♪ とにかくアート・ペッパーが意気揚々としていた時期の素敵な演奏が、楽しめるですから♪ ただし自伝を読んでしまうと……。

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ホサれ時代のリー・モーガン

2008-04-29 16:08:06 | Weblog

全国的に快晴のようですね♪ こういう気持ちの良い日は、なんと「昭和の日」という休日になったのねぇ~♪ 「昭和」万歳!

ということで、本日は如何にも「昭和」な、この1枚――

The Sixth Sense / Lee Morgan (Blue Note)

ジャズミュージャンには早世した天才が特に多いと感じていますが、デビュー当時からスタアであったリー・モーガンも、その短い生涯の中で活動停止というか、シーンから消えていた時期が何度からありました。

それは悪いクスリの所為というのが定説とはいえ、個人的に不思議なのがレコードリリースの間隔の問題で、契約していたブルーノートから発売されたアルバムのカタログ番号をみると、1966年後半から1968年末頃まで、リーダー盤が途絶えています。

ところが今となって分かることなんですが、レコーディングはその間もしっかりと行われていたんですねぇ……。それらの記録は後年になって発表されていくのですが、う~ん、リアルタイムのリー・モーガンは決して人気が落ちていたわけではないはずで……。

このアルバムも1970年初頭に発売されたものですが、録音は1967年秋頃と言われています。

メンバーはリー・モーガン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、フランク・ミッチェル(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ヴィクター・スプロールズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、なかなか味わい深い人選です――

A-1 The Sixth Sense
 いきなりビリー・ヒギンズの快適ドラミングが冴えわたる哀愁のボサロック♪ ちょっと脱力したアフリカ系のメロディは、最初、ちょっと違和感があるのですが、聞くほどにクセになりますねぇ~。
 リー・モーガンのアドリブは何時もより若干、肩の力が抜けた感じながら、ビリー・ヒギンズとは相性バッチリ! 続くフランク・ミッチェルはジョー・ヘンダーソンとハンク・モブレーの中間みたいなスタイルで、なかなかの好演ですし、ジャッキー・マクリーンの太い音色と泣き節も健在です。
 しかし、ここはやっぱりビリー・ヒギンズ! クライマックスではリー・モーガンと本気度の高いやりとりがあって、しかもジコチュウになっていない楽しさ♪ もちろん痛快なドラミングは全篇で痛快ですよっ♪

A-2 Short Count
 如何にもモードでございます、というアップテンポの演奏なんですが、このテーマメロディの手抜きさ加減が??? リー・モーガンの作曲なんですが……。
 しかしアドリブパートは熱血&情熱の全力疾走で、こうゆうのを聴いているとジャズはやっぱりアドリブだぁ~! とか言い放ってしまいそうです。
 直情のジャッキー・マクリーン、トリッキーなリー・モーガン、真摯なフランク・ミッチェル、俺に任せろのシダー・ウォルトン、それを煽りまくるビリー・ヒギンズのドラミングが痛快至極です。
 ビシバシのビリー・ヒギンズが完全に主役かもしれませんよ。最高!

A-3 Psychedelic
 タイトルとは全く違う、これもたまらない雰囲気のユルユルなジャズロック♪ シダー・ウォルトンの味わい深いイントロから弛緩したテーマ合奏をビシッと引き締めるリズム隊、ここでも特にビリー・ヒギンズが目立ちます。
 ですからリー・モーガンも安心して十八番のフレーズを吹きまくり、ホーン隊のキメのリフも良い感じ♪ フランク・ミッチェルもシンプルな好演です。ちなみにこの人はハンク・モブレーに私淑していたそうですが、さもありなんですねぇ~。
 しかしジャッキー・マクリーンは、ひとり浮き上がったような雰囲気で、すぐにアドリブを止めてしまう消化不良……。まあ、それを救うのがシダー・ウォルトンの物分りの良さでしょうか。
 全体にユルフンの気持ち良さがあると思います。

B-1 Afreaka
 この時期だけのアフリカ色が強いモード曲! というよりも作者のシダー・ウォルトンの趣味が良く出たような、ある種の偏執的な面白みが何とも言えません。
 その所為でしょう、リー・モーガンのアドリブには慎重な姿勢が濃厚ですし、ジャッキー・マクリーンは暗中模索でヤケッパチ! これが実に最高ですよっ♪
 しかしフランク・ミッチェルはキャリア不足を露呈かもしれません。
 気になるシダー・ウォルトンはツボを押えた名演なのは言わずもがな、ビリー・ヒギンズが素晴らしすぎるシンバルワークとバランスの良いスティック捌きで快感なのでした。

B-2 Anti Climax
 リー・モーガンの人気盤「ランプローラ(Blue Note)」に入っていた「月の砂漠」を堂々とリメイクした、つまりミエミエのセルフパロディながら非常に素敵な名曲・名演です。もちろんリー・モーガン以下、バンドが一丸となってブッ飛ばす爽快感は唯一無二! このメンバーなればこそでしょうねぇ~~~♪
 特にジャッキー・マクリーンは得意技の連発♪ 息継ぎでの唸り声にもニヤリとさせられますし、フランク・ミッチェルはスピード感溢れる新世代のフレーズでアドリブを綴ります。
 そしてシダー・ウォルトンが中心のピアノトリオのパートに入っては、ベースとドラムスの息もぴったりで、背後から襲い掛かってくるテンションの高いリフを上手く吸収しています。
 う~ん、それにしても素敵なハードバップ! ついつい、音量を上げてしまいます。

B-3 The Cry Of My People
 オーラスはリー・モーガンのミュートが冴える哀切のスローバラード♪ まるっきり長谷部安春が監督するニューアクション映画にピッタリという、ハードボイルドな雰囲気が流れ出してきます。シダー・ウォルトンの伴奏も実に良いですねぇ~♪
 中盤からはテンポアップしてアドリブに入るという「お約束」の構成もイヤミ無く、フレーズの1音、ひとつの音がジンワリと胸に染入る、リー・モーガンの隠れ名演じゃないでしょうか。

という、このアルバムのプロデュースはフランシス・ウルフ!

実はアルフレッド・ライオンが1966年中頃にブルーノートの権利をリバティに売却して引退という経緯があったようです。とすると、リー・モーガンの冷遇化も何からの関係があるのでしょうか……。

それはそれとして、実質的にはオクラ入りしていたこのアルバムの快楽性は捨てがたく、ビリー・ヒギンズのリーダー盤という聞き方さえ出来るのは私の屈折性の表れかもしれません。

ちなみに私有盤はステレオ仕様ですが、モノラル盤はあるのでしょうか?

ジャケ写のリー・モーガンでは、日野晧正みたいなサングラスも気になるのでした♪

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またまた、旅の空

2008-04-28 19:33:19 | Weblog
ということで、緊急の出張中ですので、本日は休載ご容赦願います。

それにしても世間は行楽の真っ只中、家族連れやカップルの楽しそうな姿には、羨ましい気持ちがいっぱいです。

そういえば遠い昔、自分にも、そういう時期があったのかなぁ……。

なんて儚い感傷に浸るのでした。

明日は、通常モードで頑張りますっ!
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フィリー・ジョーのカルテット!?

2008-04-27 17:10:12 | Weblog

今日は束の間の休日ということで、未見のDVDを鑑賞したり、サイトの更新作業が出来ました。

とはいえ、連休明けには大仕事が控えているので……。

ということで、本日は――

Newk's Time / Sonny Rollins (Blue Note)

ただでさえ豪放磊落な吹奏をウリにしているソニー・ロリンズが、何時も以上にワイルドに吹きまくったアルバム! というのは全くの個人的感想に過ぎませんが、中身は豪快無比なハードバップの傑作じゃないでしょうか。

録音は1958年9月28日、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ダグ・ワトキンス(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という凄いカルテットです――

A-1 Tune Up
 マイルス・デイビスのオリジナルとされていますから、そのバンドレギュラーを務めていたフィリー・ジョーにとっても慣れきった演奏かと思いきや、ソニー・ロリンズの緩急自在な吹奏に翻弄されるリズム隊の必死さが素晴らしい緊張感を生み出した名演です。
 初っ端からキレの良いシンバルワーク、絶妙のスネアを活かしたフィリー・ジョーのドラミングが炸裂しますが、ソニー・ロリンズは決して妥協しません。アップテンポでの豪快なウネリ、モールス信号と呼ばれた同一短音の連続吹き、リズムを好き放題に引っぱる独特のノリは痛快至極!
 もちろんリズム隊も負けずに突進し、特にフィリー・ジョーは堂々と対決姿勢を鮮明していますし、飛び跳ねるウィントン・ケリーにどっしり構えたダグ・ワトキンスという布陣ですから、流石のソニー・ロリンズも勝負無しというところで――

A-2 Asiatic Raes
 ケニー・ドームスが書いた有名なメロディは、まさにソニー・ロリンズが泰然自若の吹奏にはピッタリ♪ ラテンビートも混ぜ込んだ真性モダンジャズのグルーヴの中で暴れるテナーサックスの魅力は絶大で、そこから正統派4ビートに持っていくバンド全体の意思統一も流石だと思います。
 いゃ~、何度聴いてもシビレます!
 もちろん要はフィリー・ジョーが最高のドラミングなのでした。

A-3 Wonderful! Wonderful!
 ソニー・ロリンズのオリジナルですが、前曲のムードをそのまま引き継いだような曲展開がたまりません♪ つまり悠然としたテナーサックスにイケイケのリズム隊という対決姿勢が鮮明なのです。しかし決して悪い関係ではないという意気込みが見事ですねぇ~~。
 ソニー・ロリンズのテナーサックスからは十八番のフレーズとリズム的な興奮が溢れ出し、快適にスイングするウィントン・ケリー、ビシバシにキメまくるフィリー・ジョー、さらにグイノリのダグ・ワトキンスという、ハードバップが最良の瞬間が楽しめると思います。

B-1 The Surrey With The Fringe On Top / 飾りのついた四輪馬車
 これもマイルス・デイビスの名演が残されているスタンダード曲ですから、ソニー・ロリンズの演奏は如何に!? と興味津々のファン心理を逆手をとったかのような、フィリー・ジョーとデュオで好き放題に吹きまくった大名演がこれです。
 ご存知のように、ソニー・ロリンズはこのセッションから1年を経ずして自分の演奏に疑問を感じたようで、一時的に活動を停止してしまうのですが、ここでの暴れっぷりを聴く限り、そんなことは微塵も感じないのがファンの偽り無い心情だと思います。
 それはただ豪放に吹きまくるのではなく、ちゃんと原曲メロディを大切にした歌心のあるアドリブであり、独自のリズム感に基づいた強烈なウネリ、フィリー・ジョーの必死のドラミングに花を持たせつつも、決して安易に妥協しない頑固さが、良い方向に作用しているのでしょう。本当にそう思います。
 もちろんフィリー・ジョーは畢生の名演!

B-2 Blues For Fhilly Joe
 その名ドラマーに敬意を表した楽しいブルース♪ ウキウキするようなテーマ演奏から旨味がいっぱいのアドリブを展開していくソニー・ロリンズ以下の面々は、自分達でプレイする事を楽しんでいるのでしょうねぇ。そういう、実に良い雰囲気です。
 リズム隊はソニー・ロリンズのアドリブを先読みしてキメを入れたり、それに呼応してさらにノリまくるソニー・ロリンズの姿勢も潔く、どこまでもグルーヴィな演奏が続くのでした。

B-3 Namely You
 オーラスはスタンダード曲を素材にソニー・ロリンズが己の本質を披露した名演で、朗々とした歌心が唯一無二の魅力です。
 またウィントン・ケリーが短いながらも「泣き」の入った素敵なアドリブを聞かせてくれますよ♪ もちろんブラシで快演のフィリー・ジョー、強いビートを弾き出すダグ・ワトキンスと、やっぱり役者が揃っていますから、これが当たり前なのが恐いほどです。

ということで、これはモダンジャズ全盛期に残された普通に凄いアルバムです。ソニー・ロリンズに限っても「サキソフォン・コロッサス(Prestige)」や「ウェイ・アウト・ウェスト(Contemporary)」という2大名盤の後に隠れている感はありますが、実は真の裏人気盤でしょう。まあ、この時期のソニー・ロリンズには名盤・人気盤が有り過ぎるのですね。

天邪鬼の私なんか、それゆえにフィリー・ジョーを中心に、このアルバムを聴いているほどで、フィリー・ジョー・ジョーンズのカルテット! こう分類してレコード棚に収めているのですが……。

結末はやっぱりソニー・ロリンズの天才性にKOされるのでした。

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裸足の彼女

2008-04-26 17:10:40 | Weblog

どうも気分が晴れませんね、いろいろとあり過ぎて……。一喜一憂です。

ということで、本日は――

My Favorite Things / Dave Brubeck (Columbia)

モダンジャズ全盛期に最高の人気バンドだったデイヴ・ブルーベック・カルテットが十八番にしていたスタンダード作曲家シリーズの1枚♪ 発売されたのは、おそらく1965年頃でしょう。如何にも当時というジャケットデザインと美人のモデルさんも魅力です。

今回の取上げられた作曲家はリチャード・ロジャースで、いまではアメリカンスタンダードの典型と言える曲調も、実はユダヤ人モードでしょう。実際、リチャード・ロジャースはユダヤ人の御曹司だったそうです。

それはそれとして、このアルバムでの選曲&演奏は素敵な世界に違いなく、録音は1962年と1965年に離れていますが、流石はレギュラーバンドの強みというか、違和感はありません。ちなみにそのメンバーはデイヴ・ブルーベック(p)、ポール・デスモンド(as)、ジーン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds) という黄金期の面々です――

A-1 My Favoritet Things (1965年9月22日録音)
 今となってはジョン・コルトレーンの代名詞と成り果てていますから、どうしても、あの怒濤のモード節が連想されてしまうのですが、ここでのデイヴ・ブルーベックはポール・デスモンド抜きのピアノトリオで、原曲が本来持っている味わいを活かしきった愛らしい演奏を聞かせてくれます。
 ちなみに原曲は1959年に発表され、1965年に映画化された「サウンド・オブ・ミュージック」からの出典ですから、デイヴ・ブルーベックの思惑も深遠だと思います。
 そして演奏はジョー・モレロの天才的なワルツビートに支えられて軽やかにスイングし、生硬なブルーベックピアノがダイナミックに響くのでした。アルバムの幕開けに相応しい、短いながらも絶妙のツカミでしょうね。

A-2 Over And Over Again (1962年10月25日録音)
 ドリス・ディが映画で歌っていた小品で、ジャズバージョンが他にあるか、私は知りません。
 この曲もワルツタイムなんですが、ポール・デスモンドのソフトに爽やかなアルトサックスが最高♪ メロディフェイクの上手さ、歌心の表現、そして音色の魅力と流れるような魔法の吹奏♪ たまらん世界です。
 もちろんジョー・モレロのドラミングも完璧ですから、これは秘密の花園です。

A-3 Why Can't I ? (1962年7月19日録音)
 これもあまりモダンジャズ化されていない隠れ名曲かもしれませんが、とにかくボール・デスモンドのアルトサックスが絶品のスローな演奏です。その前段ともいうべき、デイヴ・ブルーベックの思わせぶりに撤したピアノも良い感じ♪
 何度聞いても感動が湧きあがる名演だと思います。必聴!

A-4 Little Girl Blue (1962年10月25日録音)
 様々な名演バージョンが残されている有名曲ですから、どうしてもそれら過去の演奏と比べられる運命にある演目ながら、デイヴ・ブルーベックのカルテットは極めて自然体で、その難関を乗り越えています。
 まずデイヴ・ブルーベックがピアノソロでテーマを変奏し、ポール・デスモンドが甘い音色のアルトサックスでアドリブを綴りながらリスナーを桃源郷に誘うという、このバンドが十八番の演出なわけですが、分かっているけどやめられない世界にどっぷりです。
 控えめながら力強くスイングするベースとドラムスも存在感が強いので、デイヴ・ブルーベックのピアノも地味な歌心が良い方向に作用しているようです。

B-1 This Can't Be Love (1965年9月22日録音)
 これも多くの名演が残されているリチャード・ロジャースの代表曲ですから、デイヴ・ブルーベックも過去に何度か吹き込んで十八番にしていますが、今回のバージョンはちょっと黒っぽい感覚が滲み出た演奏になっています。
 そのミソはジーン・ライトのベースかもしれません。実際、伴奏の4ビートは何時もより粘っこく、ミディアムテンポのグルーヴが非常に気持ちよいところ♪ それを背景にアドリブを展開するポール・デスモンドも快調ですし、ジョー・モレロのブラシも粘りながら歯切れ良く、デイヴ・ブルーベックの些か迷い道のアドリブも逆に新鮮です。
 そして素晴らしいのがジーン・ライトのベースソロ♪ 短いながら歌心とジャズ魂に満ちていると思います。

B-2 My Romance (1962年録音)
 これも有名曲ですねっ♪ ビル・エバンスの十八番でもありますから、初っ端のデイヴ・ブルーベックの無伴奏ピアノも、なんとなく、それ風に聞こえてきます……。
 しかしテーマメロディの提示が終わった次の瞬間、ポール・デスモンドがリズム隊を呼び込みながら、素晴らしいアルトサックスを聞かせてくれます。あぁ、極楽、極楽♪ 本当にフワフワと気持ち良い限りなんですねぇ~♪

B-3 The Circus On Parade (1962年7月19日録音)
 いきなり景気の良いジョー・モレロのマーチングドラムから、快調にブッ飛ばしたディブ・ブルーベックの硬質ピアノ、スイングしまくってツッコミ鋭いポール・デスモンドのアルトサックスという仕掛けですから、楽しさは保証付き!
 アナーキーなスイング感で疾走するデイヴ・ブルベックのピアノは、些かのあざとさもありますが、ポール・デスモンドは流石の魅力ですし、ジョー・モレロのビート感は天才の証でしょうねぇ~♪ 実に爽快です。

B-4 The Most Beautiful Girl In The World (1962年7月12日録音)
 これまた魅惑のワルツ曲♪ デイヴ・ブルーベックのピアノはそれを自分の好きなように弄んでいる感があって、なかなか痛快です。つまり暗黙の了解でワルツも4ビートもゴッタ煮とした演奏なんですが、イヤミではありません。
 逆にポール・デスモンドは正統派に撤して最高のアドリブを聞かせてくれますし、ドラムスとベースは頑固なほどにワルツビートに拘っていますから、デイヴ・ブルーベックの目論見が見事に成功したというところでしょうか。
 つまり普通に聞いて充分に納得させられる、楽しい仕上がりというわけでした。

ということで、非常に楽しく爽やかなアルバムです。ただし、そういう分かり易さがリアルタイムでは仇になったのかもしれず、特にジャズ喫茶という独自の文化がある我国では、些か軽く扱われている作品でしょう。

ポップなジャケットも、言わずもがなの……。

しかし私は所謂ジャケ買いしてから愛聴し続けている1枚で、ジャケットは壁、中身はプレイヤーの傍にあるというほどです。裸足の彼女が美しい♪

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ジミー・スミスのイケイケファンク

2008-04-25 16:12:24 | Weblog

あぁ、最近はというか、今年に入ってからの私には、ロクなことがありません。これも日頃の行いが悪い所為なんでしょうねぇ……。

と反省してみても、どうもそれが神様にはヘタな芝居と見透かされているようです。

ということで、本日は――

Root Down Jimmy Smith Live 拡大版 (Verve)

オリジナルは1972年にMGMを通して発売された1枚物のアナログ盤LPでしたが、その白熱したライブ演奏の充実度に反して、無残無理解な編集が施されていたため、ジャズ喫茶では困り者の存在であり、フュージョン時代にも無視されていた作品です。

ところが前世紀末に復刻CD化された時にはノーカット編集が基本となり、さらに未発表演奏までもが追加されたことで、ようやく当時のイケイケファンキー路線を押し進めていたジミー・スミスの凄さが、ストレートに楽しめるようになりました。

録音は1972年2月のロス、メンバーはジミー・スミス(org)、アーサー・アダムス(g)、ウェルトン・フェルダー(el-b)、ポール・ハンフリー(ds)、バック・クラーク(per)、スティーヴ・ウィリアムス(hca) という心底黒いグルーヴィな面々です――

01 Sagg Shootin' His Arrow (unedited performance)
 いきなりポール・ハンフリーがイケイケのドラミング、そしてウェルトン・フェルダーのファンクなエレキベースとアーサー・アダムスのワウワウなリズムギターが最高の露払いとなって、ジミー・スミスのオルガンが呻くという本当にたまらないオープニングです。
 アドリブの先発はアーサー・アダムスのニューソウルなギターソロですが、バックで炸裂するポール・ハンフリーのシャープなドラミングは最高! ちなみにこの人は西海岸を中心に活躍するスタジオ系のドラマーですが、ファンクビートも4ビートも両方上手いという達人で、この曲でも絶妙の4ビートを混ぜ込んでバンドを鋭く煽っています。
 ですからウェルトン・フェルダーもうねりまくって、強烈なグルーヴを生み出せば、ジミー・スミスは刺激的なカウンターコードで応戦し、アドリブパートではもちろん強烈な天国と地獄を披露しています。特に4ビートのパートでは本領発揮なんですが、16ビートの伴奏も強い印象を残していますねぇ~。
 そのミソはやっぱりエレキベースの加入だと思います。つまり当時の流行から16ビートの演奏に深入りすれば、これまでのオルガンフットペダルの低音表現では、流石のジミー・スミスですら無理も出てきていたはずですから、ここは堂々とエレキベースを入れて大正解という演奏を聞かせているのでした。
 終盤のドロドロした展開には、絶句です! 

02 For Everone Under The Sun
 メロウな歌物のファンク的な展開で、けっこう泣きが入った演奏がたまりません♪ もちろんここでもポール・ハンフリーとウェルトン・フェルだーのリズムコンビは最強のグルーヴを演出し、アーサー・アダムスのギターソロは我国のニューミュージックに大きな影響を与えることになる名演です。
 そしてジミー・スミスは終始、オルガンの魅力を堪能させてくれる、これもツボを外さない名演だと思います。とにかく歌心、メロディを大切にしがらも、決して黒いフィーリングを失わない心意気♪
 本当に心に滲みてくる気持ち良さ♪ 最高ですねっ♪
 
03 After Hours
 これはモダンジャズでもお馴染みのブルース曲、というかモダンジャズにも応用されているブルースインストですから、素直にジミー・スミスの魔法のようなオルガンを堪能出来ます。
 それは粘っこく、ストレートな黒っぽさとケレンが大きな魅力♪ この曲だけにゲスト参加しているスティーヴ・ウイリアムスのハーモニカも雰囲気を盛り上げています。
 もちろんリズム隊の重心の低い伴奏も素晴らしく、アーサー・アダムスのギターも歌いまくり♪ ちなみにこの人も西海岸のファンク租界では名人のひとりですが、同時に元祖AORというリーダー盤を幾枚か出している隠れ人気者ですから、要注意です。
 お客さんのイェ~の掛声も、全く共感の演奏ですよ♪

04 Root Down (unedited performance)
 ウェルトン・フェルダーの蠢くエレキベースからビシバシにカッコ良いポール・ハンフリーのファンキードラム、そしてワウワウなアーサー・アダムスという、お約束の導入部からジミー・スミスのオルガンが鳴り出せば、もうあたりはジャズファンクがいっぱいです。
 そしてここでもアーサー・アダムスが良い味出しまくり♪ バック・クラークのパーカッションも効いていますし、こういう粘っこい演奏はフュージョン期には自然消滅していきますから、この時期だけの味わいとして存分に楽しみたいところです。
 ちなみにウェルトン・フェルダーはクルセダーズの一員としてサックスを吹くことが多いのですが、スタジオセッション等ではエレキベース奏者としても活躍していましたから、ここでの名演もムベなるかな♪ 安定感があって、私は大好きです。
 もちろんジミー・スミスはブルース魂が満点の名人芸ですが、ここではボール・ハンフリーのドラミングを筆頭に、共演者が凄すぎますねっ!

05 Let's Stay Together
 メンフィスソウルの大物歌手=アル・グリーンの代表曲で、ディープで優しいメロディが最高のヒット曲を、このメンツで演奏してくれるのですから、たまりません♪
 もうジンワリと心に染入るテーマメロディが出た瞬間、イェ~~、と歓声が飛び交うのも無理からんところ♪ あぁ、このメロウファンクな雰囲気こそが、1970年代前半の空気かもしれません。
 ジミー・スミスのオルガンは狂おしいばかりに泣き、グルーヴィなバックの演奏が、これまたエクスタシーを呼ぶのですねぇ~♪ アーサー・アダムスのギターソロと伴奏が、些かラフなところも逆に効果的で、狙ったんでしょうか。だとしたら裏ワザというところですね。

06 Slow Down Sagg (unedited performance)
 ド頭で演奏された「Sagg Shootin' His Arrow」のアップテンポバージョンという趣で、熱血ファンクが展開されています。いゃ~、気分は最高ですねぇ~♪ 聴いていて思わず一緒にリズムギターを弾いてしまうのが私です。エアギターでもいいんじゃないでしょうか。
 実際、アーサー・アダムスの熱演は物凄く、ワウワウチャカポコが良い感じ! ジミー・スミスもド派手なフレーズを多用してストレートな分かり易さに撤していますし、ポール・ハンフリーのドラミングなんか手がつけられないほどです。
 あぁ、本当に熱くなります!

07 Root Down (alternative / unedited performance)
 トラック「04」の別テイクですが、これも負けずに真っ黒な演奏です。まあ、このあたりになると、アルバム編集にはどのテイクを選んでもOKという充実度なんでしょうか。ここで公にされたことを素直に喜ぶ私ではありますが♪
 う~ん、それにしても気持ちの良いシンコペーション、キメのリズムがビシバシに決まっていますねぇ~♪ 身体が揺れっ放しなのでした。

ということで、リマスターによって音質も向上していますから、このCDを聴いたらオリジナルアルバムは完全に物足りないと感じます。

しかしジミー・スミスは、何故かこの路線からフェードアウトして、中途半端に正統派なジャズに回帰してみたり、はたまたシンセを大胆に導入した大袈裟フュージョンを演じてみたりして、この後はしばらく精彩を欠いてしまったようです。

それでも1980年代からは往年のブルーノート時代のような、真っ黒な4ビート物に専念してみせるのですが、私的にはここで聴かれたようなソウルファンクな演奏が一番好きなのでした。

あまり一般向きの作品ではありませんが、一度は聴いていただきたいと思います。

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今日は謹慎

2008-04-24 16:47:27 | Weblog

恥ずかしながら、今日は生まれて初めて車で事故ってしまったです。

停車中の車に追突したわけですが、完全なる私のわき見運転で弁解の余地無し!

双方とも特に怪我も無く、車はそれなりに壊れましたが……。

問題なのは相手の車に子供が乗っていたのにもチャイルドシートを使っていなかったのが、警察にバレバレで……。

なんか罰則になりそうなんで、重ねて申し訳ない気持ちです。

あぁ、自分が情けないというか、どしゃぶりの雨の中とはいえ、猛反省中であります。

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意味深タイトルな裏名盤♪

2008-04-23 18:58:10 | Weblog

いくら劇中とはいえ、新作ウルトラマン映画でセブン=ダンとアンヌ隊員が結婚していたという設定には、些か心の動揺が隠せません。

オリジナルストーリーでは禁断の恋を捨て、好きな女の気持ちも振り切ってハードボイルドに行動したモロボシダンに、男の生き様を教えられた少年期の私ですから……。

どうせなら別れた後にダンの子供を宿しいてる事に気がつくアンヌというのが、自然じゃなかろうか……。

等と年甲斐もなく心が揺れる私には――

Guys And Dolls Like Vibes / Eddie Costa (Coral)

エディ・コスタは硬質なスイング感とアナーキーな破壊力が特徴的なピアニストですが、また同時に洒脱なスイング感が大きな魅力のヴァイブラフォン奏者でもあります。

その実力は例えばタル・ファーロゥ(g) と組んだ一連のレコーディングが特に有名でしょうが、楽しさと新鮮では、このアルバムが代表作かと思います。

録音は1958年1月15~17日、メンバーはエディ・コスタ(vib)、ビル・エバンス(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ポール・モチアン(ds) という精鋭揃い! 特にビル・エバンスはマイルス・デイビスのバンドレギュラーに抜擢される直前の時期ですから、興味深々です。

ちなみに演目は全てフランク・レッサーが書いたアルバムタイトルと同じミュージカルからの楽曲で構成されています――

A-1 Guys And Dolls (1958年1月15日録音)
 如何にもビル・エバンスが入っている雰囲気が滲み出たリズムアレンジとテーマの合奏から、ビル・エバンスが会心のアリドプに突入した瞬間、このアルバムを聞く喜びに震えてしまいます。実際、このピアノトリオの部分は完全にビル・エバンス・トリオといって過言ではありません。ポール・モチアンの協調性も満点ですからねぇ♪
 するとエディ・コスタが持ち前の洒脱なフィーリングを全開させ、絶妙の歌心を聞かせてくれます。
 このあたりはバンドの編成から、どうしてもMJQとの比較は避けられないのですが、明らかに異なった楽しい演奏は決定的で、それはやはりビル・エバンスの存在感が強烈だと思います。 

A-2 Adelaide (1958年1月17日録音)
 なかなか美しいテーマメロディをビル・エバンスがリードし、次いでリズム隊を呼び込みながらエディ・コスタが入ってくるあたりから、グッとシビレます♪
 スローな展開ながら強いビート感を打ち出すバンドの一体感、ポール・モチアンのブラシと重いビートのウェンデル・マーシャルのプレイが地味ながら素晴らしく、ビル・エバンスも十八番の「節」と歌心を遺憾なく発揮しています。
 あぁ、今聴いてもビル・エバンスは完全に個性を確立して最高なんですから、当時はこれが想等に斬新に聴こえたのでしょうねぇ~♪
 肝心のエディ・コスタも後半でじっくりとアドリブを展開し、ジンワリとした暖かい世界を構築していますが、ここは全くビル・エバンスの存在感がピカイチだと思います。

A-3 If I Were A Bell (1958年1月17日録音)
 マイルス・デイビスの大名演が残されているがゆえに知られている曲と言っていいでしょう。もちろんビル・エバンスが入ったマイルス・デイビスのライブバージョンも残されているわけですが、ここでの快適でテンションの高い演奏も隠れ名演じゃないでしょうか?
 軽いアレンジが入ったテーマ演奏からアップテンポでスイングしまくるバンドの勢い、そしてエディ・コスタが本領発揮のアドリブパートからして楽しく、ジャズを聴く喜びに満ちています。ポール・モチアンのブラシも気持ち良すぎます♪
 またビル・エバンスもマイルス・デイビスとやっている時よりはノビノビとしたスイング感が素晴らしく、もちろん独特のノリも楽しめるのですから、たまりません。

B-1 Luck Be A Lady (1958年1月16日録音)
 ラテンビートを入れた熱い演奏ですが、ビル・エバンスの個性は存分に発揮されていますし、エディ・コスタのアナーキーな魅力も滲み出ています。ラテンリズムと高速4ビートが交錯するアレンジは、さもありなん!
 それにしてもこういう仕掛けになるとポール・モチアンのドラミングは冴えますねぇ。エディ・コスタのヴァイブラフォンはハードドライヴィング! ビル・エバンスも妥協せず、硬派に迫っていますから、楽しいというよりは恐い感じさえもしています。

B-2 I've Never Been In Love Before (1958年1月16日録音)
 一転してグッと和みが広がる名演♪ まずビル・エバンスの無伴奏ピアノソロによるテーマメロディの変奏が印象的ですし、リズム隊が入ってからの静謐な展開も最高です。
 もちろんエディ・コスタのヴァイブラフォンからは歌心が止まらない雰囲気♪ それがまたビル・エバンスっぽい味わいまであるのですから、もう心底シビレます。
 そして中盤からスインギーな展開に移行してくれますから、こっちの身体も揺れっぱなしですよ♪ これがジャズだと思います。
 もちろんビル・エバンスも自分のリーダートリオのような快演ですよ。
 
B-3 I'll Know (1958年1月15日録音)
 これがまた素敵な原曲メロディを活かしきった名演♪ あぁ、こんなに和んで胸キュンの演奏もないもんです。
 エディ・コスタもビル・エバンスも名演ですが、地味ながらウェンデル・マーシャルの4ビートウォーキングが印象的ですし、ポール・モチアンのブラシも存在感が強いのでした。

ということで、ジャケットもお洒落ですが、中身も非常に秀逸なアルバムです。私も含めて、正直に言えばビル・エバンスが参加している事に価値を見出される作品かもしれませんが、エディ・コスタのヴァイブラフォンも捨てがたい魅力に満ちていて、明らかにミルト・ジャソンとは一線を隔した存在でしょう。

残念ながらエディ・コスタは交通事故で1962年に他界してしまったのですが、この手の演奏をもっと残して欲しかったと繰言が止みません。

またビル・エバンス対ヴァイブラフォンといえば、デイヴ・パイクの名盤「パイクス・ピーク(Epic)」との共通点も興味深いところでしょう。

とにかくかなりシブイ名盤という感じですから、見つけたら即ゲットを強くオススメ致します。

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ビバップなゲッツ

2008-04-22 16:35:27 | Weblog

久々に風邪なんてものに……。鼻水が止まらん……。

というトホホ状態を解消するには――

Opus De Bop Complete Edition / Stan Getz (Savoy / キング)

スタン・ゲッツは間違いなく天才ですが、やはりそのスタイルは一朝一夕に完成されたものではなく、誰でも最初はコピーの世界から試行錯誤の時期を経ていたことが分かる音源集です。

その内容はサボイで製作されたSP音源、そしてその別テイクを纏めたものですが、アナログ盤では数枚のLPに分散収録されていたところを、CD時代になって我国のキングレコードが完全版として発売したものです――

1945年12月12 or 14日録音 / Kai's Crazy Cats
 01 Sweet Miss
 02 Sweet Miss
(master / Savoy 602)
 03 Loaded
 04 Loaded
(master / Savoy 602)
 05 Grab Your Axe, Max
 06 Grab Your Axe, Max (master / Savoy 590)
 07 Always (Savoy 590)
 このセッションはカイ・ウィンディングがリーダーとなったセクステットの演奏です。メンバーはショーティ・ロジャース(tp)、カイ・ウィンディング(tb)、スタン・ゲッツ(ts)、ショーテイ・アレン(p)、イギー・シーヴァック(b)、シェリー・マン(ds) ですから、一瞬、西海岸系と思い込みますが、実はニューヨーク録音! バンド名が「クレイジー・キャッツ」というのも泣かせますね♪
 演奏はアレンジを用いたモダンスイングというところで、時代的にはビバップがようやく形成されていたとはいえ、早くもウエストコーストジャズぽい響きが感じられるのは、このメンバーなればこそでしょうか。
 肝心のスタン・ゲッツはレスター・ヤングのコピーがモロ出しですが、若干18歳にしてこの完成度は流石で、特に「Grab Your Axe, Max」の本テイクは、後年の浮遊感溢れる歌心が既に表出した名演だと思います。これが最初に発売されたのも、充分に納得ですね♪
 ちなみに本テイクの4曲はオムニバスアルバム「ローデッド(Savoy)」に纏められましたが、残りの別テイクが出たのは1970年代に入ってからだったと記憶しています。

1946年7月31録音 / Stan Getz Quartet
 08 Opus De Bop (Savoy 903)
 09 And Teh Angels Swing (Savoy 909)
 10 Running Water (Savoy 954)
 11 Don't Worry About Me (Savoy 932)
 記念すべきスタン・ゲッツの初リーダーセッションですが、レコード化された時は他のミュージャンの演奏とカップリングされていたようです。例えば「Opus De Bop」は The Bebop Boys 名義でした。
 メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、ハンク・ジョーンズ(p)、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ(ds) という当時のモダンジャズ最前線! もちろん演奏はバリバリのビバップということで、スタン・ゲッツも生硬に吹きまくっていて、ちょっとデクスター・ゴードンかワーデル・グレイに近くなっています。
 ところがこれが、意外と魅力的というか、私は好きなんですねぇ♪ 特にミディアムテンポで力強くスイングした「Don't Worry About Me」は、名演だと思うのですが、いかがなものでしょうか? 一般にイメージされるスタン・ゲッツではない、ゴリ押し系のスタイルとはいえ、溢れる歌心が素晴らしい限り♪
 そしてセッション全曲におけるリズム隊の凄さは言わずもがなでしょう。
 ちなみにこの4曲は「オパス・デ・バップ(Savoy)」というオムニバスLPに纏められていましたですね。

1949年5月2日録音 / Stan Getz Octet
 12 Stan Getz Along
 13 Stan Getz Along
(master / Savoy 966)
 14 Stan's Mood
 15 Stan's Mood (master / Savoy 966)
 16 Slow
 17 Slow
(master / Savoy 967)
 18 Fast
 19 Fast
(master / Savoy 947)
 さて、これがスタン・ゲッツそのものといった演奏が聞かれるセッションです。それはウディ・ハーマン楽団で脚光を浴びた所謂フォーブラザースの再現を狙った企画であり、メンバーもスタン・ゲッツ(ts) 以下、アル・コーン(ts)、ズート・シムズ(ts)、アール・スウォープ(tb)、デューク・ジョーダン(p)、ジミー・レイニー(g)、マート・オリバー(b)、チャーリー・ペリー(ds) と役者が揃っています。
 もちろん演奏はクールスタイルの決定版! 「Stan's Mood」の甘く幽玄な世界は本・別テイクともに完璧ですし、流麗にドライヴしまくる「Fast」には血が騒ぎます。アル&ズートとの義兄弟とのコラボレーションも最高という、ある意味の全盛期を記録していると思います。
 ちなみに本テイクは「レストリアン・モード(Savoy)」というオムにパスLPに纏められ、残りの別テイクは1970年代に発掘されたものです。

ということで、以上を聞き通してみると、スタン・ゲッツの天才性が改めて実感されます。一般的にはプレスティッジに入れた1949年6月のカルテットセッション以降から、本格的な全盛期がスタートしたとされますが、それ以前にも大いに魅力的だったのですねぇ。

個人的にはマックス・ローチとの対決姿勢が強い初リーダーセッションの4曲に捨てがたい魅力を感じます。

もちろんそれは時代の流行を意識した黒人スタイルのモダンジャズでしたから、必ずしも好評を得たとは言えなかったようで、スタン・ゲッツも直ぐに自分が注目される端緒となったフォーブラザース系の流麗なサウンドに戻ってしまうのですが、このけっこうブリブリのスタイルで押していっても到達点は同じだったような気がしています。

いやぁ~、何時の時代もスタン・ゲッツは最高ですねっ♪

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レス・マッキャンのジャズど真ん中!

2008-04-21 16:19:23 | Weblog

何もかも放り投げて、どっかでひとり和みたい気分ですが、現実はそうもいきませんから、せめて好きな音楽や映画を楽しむのが、私の生き方なんでしょうか……。

ちょっと答えの出ない自問自答です。

ということで、本日は――

But Not Really / Les McCann Ltd. (Limelight)

レス・マッキャンを最初に聴いたのはロパータ・フラック(vo,p) との共演盤でしたから、私はしばらくの間、この人の事をピアノブルースかソウル畑の歌手だと思い込んでいました。

実際、ファンキーなピアノと真っ黒なボーカルの魅力は絶大♪

しかも昭和のジャズ喫茶では、ほとんど無視状態というか、ラムゼイ・ルイス(p) よりも鳴る確立は、グッと低かったと思います。

ところがそんなある日、先輩コレクター氏から聞かせていただいたのが、このアルバムでした。そして忽ち仰天瞠目! 正統派4ビートで真っ黒にスイングする素晴らしいピアノトリオが、そこにあったのです。

録音は1964年12月、メンバーはレス・マッキャン(p)、ビクター・ガスキン(b)、ポール・ハンフリー(ds) というトリオながら、Ltd. という会社組織みたいなバンド名にしているところに、リーダーの拘りが感じられますね――

A-1 But Not Really
 いきなり粘っこくてダークな雰囲気のノリがたまりません。呻くようなピアノ響き、グイノリのベースにシャープなドラムス! うっ、これはっ!?
 聴けば誰だって、我国の山本剛を連想させられるでしょう♪ 実際、この演奏に演歌味をつけたら、モロですよ♪
 ですからここでの演奏も小気味良くスイングしてグルーヴィな展開へ! トリオの一体感も申し分なく、中盤でレス・マッキャンが聞かせる無伴奏のアドリブは強烈なゴスペル風味となってベースとドラムスを呼び込み、さあ、それから後は一気に盛り上がるという美味しさです♪

A-2 A Little Three-Four
 ジワッとくる控えめなフレーズからグッと盛り上げていくテーマ部分の上手さには、忽ち惹きつけられます♪ 基本はワルツテンポなんですが、この真っ黒に粘った世界は、まさにレス・マッキャンの真骨頂かもしれません。
 蠢くベースの熱さもたまらず、グイグイと盛り上がる演奏には絶句ですねぇ♪ イヤラしさがたっぷりというピアノフレーズの楽しさは不滅だと思います。

A-3 Our Delight
 有名なビバップ曲を軽く小粋に弾いてしまうレス・マッキャンは、逆もまた真なりというスイング感が満点♪ ギシギシに軋むビクター・ガスキンの4ビートウォーキングも実に良い感じです。
 このあたりはジュニア・マンスにも通じる魅力ですが、正統派ハードバップの味わいはレス・マッキャンの方が強いという意外性で、結果オーライでしょう。

A-4 Sweetie
 原曲は良く知らないのですが、かなりスタンダードな味わいが強い演奏になっています。まあ、カクテル系でしょうか。緩やかなスイング感には、なんとも和みます♪
 しかしアドリブパートに入ると一転してファンキーな雰囲気が漂い、ちょうどエロル・ガーナーがボビー・ティモンズしたような感じです。小粋なピアノタッチの妙も素晴らしく、ジワジワと演奏全体を盛り上げていく手法も冴えていますから、これが嫌いなジャズ者はいないでしょうねぇ~~♪ 思わず身体が揺れてしまうのでした。

B-1 We're On The Move Now
 最初からガンガンに飛ばしていくレス・マッキャンのオリジナルで、こういうアップテンポの直線ノリは、純粋ハードバップとは明らかに一線を隔したものだと感じます。クセの無いホレス・パーランというか、ブレーキの壊れたホレス・シルバーというか……♪
 とにかくゴキゲン大会なんですが、ポール・ハンフリーのドラミングも冴えていますし、こういう節操の無さがレス・マッキャンの魅力でしょうか? 私は好きです、と愛の告白♪

B-2 Jack V. Schwartz
 前曲の雰囲気をそのまんま持ち込んだ、これもレス・マッキャンのオリジナルですが、ブレイクとストップタイムの上手い使い方なんかニクイほどです。
 もちろんアドリブフレーズはファンキー節がテンコ盛り! 低音域の執拗な使い方にはケレン味も強く、ポール・ハンフリーのゴスペルドラミングに正統派モダンジャズど真ん中というビクター・ガスキンの4ビートウォーキングがバッチリ合った快演だと思います。

B-3 Little Freak
 これもレス・マッキャンのオリジナルで、当時流行していたジャズロック系ヒット曲を良いとこ取りしたようなリズムパターンとメロディが、なんとも憎めません♪
 こういう分かり易さが、我国でのレス・マッキャン低評価の一因かもしれません。

B-4 Yours Is My Heart Alone
 オーラスはフランク・シナトラの名唱で有名なスタンダード曲で、レス・マッキャンの思わせぶりなスローの解釈が最高です。まあ、端的に言えば、クサイ芝居がギリギリかもしれませんが……。
 それでもレス・マッキャン本人はボーカルも巧みな人ですから、こういう歌物が本来得意なピアニストかもしれません。こういうシブイ有名曲ばかりのスタンダード集を望んでいるファンが、案外多いのではないでしょうか。

ということで、一聴して気に入った私は直ぐにこのアルバムを探したのですが、かなりのレア盤だったのでしょうか、なかなか状態の良いブツには巡り会えませんでした。もちろん件の先輩コレクター氏にお願いしてカセットコピーを頂いたのは言うまでもありません♪

それが数年前に我国で紙ジャケット仕様のCDとして再発されたのですから、長生きはするもんです。速攻でゲットして、今日まで愛聴しています。リマスターも良好♪

こういうピアノトリオの味わいは虜になると抜け出せませんが、山本剛が好きな皆様ならば、きっとこの気持ちはご理解いただけるものと思います。

ちなみにレス・マッキャンはピアノトリオ作品をかなり出していますが、我国では真っ当に扱われているとは、到底言えません。あぁ、紙ジャケット仕様でリマスターがバッチリのCD再発をしてくれませんかねぇ~。

こういう気持ちはメーカーさんや評論家の先生方に届くでしょうか……。そう思いつつ、本日はプログ書きました。

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