OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

この素晴らしき秘宝

2014-08-31 15:40:16 | Miles Davis

The Unissued Cafe Bohemia Broadcasts / Miles Davis (Domino = CD)

またまた出ましたっ!

というマイルス・デイビスの発掘音源CDで、内容はジョン・コルトレーンを擁していた1956~1958年のクインテットによるライプ演奏がメインになっています。

しかもネタ元がニューヨークにあったモダンジャズの聖地「カフェ・ボヘミア」からのラジオ中継ですから、ブツを開封する前からワクワクしてしまうのは、もはやジャズ者の宿業とばかりも言えません。

ところが、こう書いていながら、サイケおやじはバチアタリにも昨年買ったまんま、他にも買っただけで安心満足している夥しいCDやDVD等々の中に埋もれさせていたのですから、深く反省し、お詫びを申し上げる他はございません。

そして中身は、やっぱり凄いモダンジャズの神髄が堪能出来たのですから、サイケおやじの改悛の情を以下のご紹介でご理解願えれば、幸いでございます。

1956年9月15日
 01 Theme / Announcement
 02 Well You Needn't
 03 It Never Entered My Mind
 既に述べたとおり、ここから1957年4月13日までの3回のギグはマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という所謂オリジナルクインテットの演奏になっていますで、世に言うところの「プレスティッジのマラソンセッション」を経ながらのハードパップなマイルス・デイビスが楽しめますよ。
 気になる音質も全く普通に聴けるレベルというか、現在のような高音質ブートに慣れきっているお若い皆様の感覚は知る由がなくとも、ジャズという今では伝統芸能になってしまった音楽ジャンルに親しんでおられるのであれば、このメンバーによる極めて日常的なライブ演奏に接する幸せは大切な宝物と思います。
 なにしろグイノリのベースにリードされるアグレッシヴな「Well You Needn't」では、なんとかクールな素振りを保つことに腐心するマイルス・デイビスとハズシ気味のジョン・コルトレーンの対比、さらに和みのレッド・ガーランドと若さ溢れるポール・チェンバースの間に立って絶妙のクッションを作り出すフィリー・ジョーという、これが当時ののマイルス・デイビス・クインテットの終わりなき日常だったんでしょうねぇ~~♪
 その意味で続くスローな歌物「It Never Entered My Mind」が皆様ご推察のとおり、マイルス・デイビス十八番の繊細な表現に徹して演じられるのは、ファンが一番に望むところと思います。
 ちなみに録音状態ではポール・チェンバースのベースが強くミックスされているのが個人的には高得点♪♪~♪

1956年9月29日
 04 A Gril In Galico
 05 StableMates
 06 How Am I To Know (imcomplete) / Closing Announcements
 いきなりマイルス・デイビスが得意技であるミュートによるアップテンポの歌物演奏「A Gril In Galico」とあって、スピーカーの前のサイケおやじもテンションが高くなるのを抑えきれませんが、フィリー・ジョーのドラミングも冴えまくりですよ♪♪~♪
 ですからそれなりに快調なジョン・コルトレーンと定番フレーズ連発のレッド・ガーランドにはジャズ者歓喜の瞬間が満載でしょう。
 そしてご存じ、モダンジャズのスタンダード「StableMates」が続けて演奏されるとあつては、ジャズが好きで良かったぁぁぁぁ~!
 とジコマンを超えた感慨に浸る他はありません。
 音質も「9月15日」のセッションと同等ですので、素直に楽しめると思います。
 ただし残念過ぎるのが「How Am I To Know」が完奏バージョンで聴けないという……。まあ、これはラジオ中継放送ならでは事態なんでしょうが、かなり早いテンポで演じられている事からして、なにか時間を気にしていたと思えば、意想外の迫力にも納得です。

1957年4月13日
 07 The Theme
 08 Woody‘n You
 09 Walkin'
 この日もなかなか快調な演奏が聴かれるので、一説によるとバンド内部には相当に悪いクスリが蔓延していた事から、マイルス・デイビスは困っていたという逸話も???
 それほど熱いんですねぇ~、このパートは♪♪~♪
 とにかくハードボイルドな「The Theme」から爆発的な「Woody‘n You」の突撃姿勢、さらに「Walkin'」におけるグルーヴィな押し出しは、今更ながらモダンジャズが一番にヒップだった時代を再認識させられてしまいます。
 ちなみに歴史的な考察として、おそらくはこのライブギグ直後あたりにマイルス・デイビスは自己のバンド、つまりはオリジナルクインテットを解散させたと言われていますから、感慨も深いですよねぇ~。
 もちろん音質も普通に聴けるレベルなので、ご安心下さいませ。

という以上の音源は少なくともサイケおやじは初めて聴けた、素晴らしい「お宝」です。

1958年5月17日
 10 All Of You (imcomplete) / Announcement
 11 Announcement / Four
 12 Bye Bye Blackbird
 13 Walkin'
 14 Closing Announcement / Two Bass Hit
 さて、しかしこのパートは、これまでにも度々ブートやハーフオフィシャル盤で広く人気を集めた音源で、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 、ジョン・コルトレーン(ts)、ビル・エバンス(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、今では夢のクインテットなんですか、何といってもジョン・コルトレーンの急成長というか、例のシーツ・オブ・サウンドが完成間近の吹きまくりスタイルがたまりません♪♪~♪
 それは「Four」の突進力で一発明快、まさにハードパップの痛快を楽しめると思いますが、もうひとりの看板スタア(?)であるビル・エバンスの存在感も地味ながら侮れないでしょう。
 そりゃ~、確かに黒人音楽的なノリとは異なっていますが、同時にポール・チェンバースとフィリー・ジョーの名コンビによる躍動的な保守本流のジャズビートがあればこそ、今も不思議な新感覚がニクイばかりで、「Bye Bye Blackbird」における変態イントロとか、それはそれでカッコマンの親分を「その気」にさせるんじゃ~ないか?
 なぁ~んて、生意気な妄想も止まず、確かにマイルス・デイビスのミュートはジャズ者の琴線に触れるのであります。しかもジョン・コルトレーンが意図的に歌心を無視せんとするような態度!? ですから、そこに続くビル・エバンス特有の前ノリっぽいアドリブスタイルが愛おしいわけですが、当然ながら好き嫌いは十人十色ですから、ここでの「Walkin'」を前述1957年4月13日のセッションと聞き比べるのも一興かと思います。
 う~ん、マイルス・デイビスって、何時も同じようなフレーズしか吹いていないのに、それは麻薬なんですよねぇ~、実際♪♪~♪

1958年11月:ニューヨークでのテレビショウ「Art Ford Jazz Party」
 15 What Is This Things Called Love?
 さて、これはボーナストラックとはいえ、かなり問題の音源で、一応確定とされているメンバーはナット・アダレイ(cor)、ベニー・グリーン(tb)、キャノボール・アダレイ(as)、ジェリー・マリガン(bs)、レッド・ガーランド(p)、バリー・マイルス(b)、キャンディド(per) に加えて他数名というのが定説なので、マイルス・デイビスの参加は疑問が残るところ……。
 しかし演奏終了間際に入るMCでは、マイルス・デイビスも含めて、上記のメンバーの名前が飛び出しています。
 もちろん実際に聴けばジャケット記載のクレジット諸々を素直に信じる事は出来ず、気になる演奏はラテンバーカッションが効いたアップテンポのハードパップに仕上がっているわけですが、このギターは誰? このピアノは本当にレッド・ガーランド? という不思議も打ち消せず、まあ、それを推察するのも楽しいと思いましょうよ。
 そこでサイケおやじの当て推量は、キャンノンボール・アダレイじゃ~なくて、ジジ・グライス(as)、またギターはケニー・バレルかもしれないと思うんですが、いかがなものでしょうか?

1953年2月21日:ワシントンD.C.
 16 A Night In Tunisia
 そこでこれもボーナストラックながら、おそらくは初CD化の音源と思います。
 メンバーはマイルス・デイビス(tp)、アレン・イーガー(ts)、テリー・ソウプ(p)、マックス・ローチ(ds)、そして正体不明のベース奏者が繰り広げるのがモダンジャズの聖典曲で、しかもアドリブパートも含めて、ほとんどマイルス・デイビスの独り舞台という熱気は危険極まりないです。
 特にマックス・ローチのドラムスはポリリズムの恐ろしさが既に全開!
 ええぇ~ぃ、ブラウニーは出ないのか!?
 なぁ~んていう不条理な思いは、決して不遜ではないと書けば、お叱りでしょうか?
 サイケおやじは正直を貫きたいです。

以上、これは本当に素晴らしい音源集で、冒頭で書いたように、ゲットしながら聴いていなかった自らのバチアタリを深く反省後悔しているのが、サイケおやじの現況……。

どうかジャズ者の皆様には、ぜひとも聴いていただきたく、強くオススメしたい「秘宝」というわけです。

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マンネリ・マイルス対ガチンコな子分

2012-07-31 15:04:24 | Miles Davis

Miles Davis Quintet Live In Copenhagen 1964 (Domino = CD)

ちょいとした齟齬から買い逃したブツに対し、それが名作であるという評判が定着するほどに、ますますの妄執を募らせるのがサイケおやじの悪癖です。

例えば本日ご紹介するマイルス・デイビス(tp) の音源は、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) を擁していた1960年代の所謂黄金のクインテットによる音質良好なライプの傑作として、かなり以前から評判を呼んでいました。

ところが何故かサイケおやじが入手したマグネチックというレーベルからのCDは、プレスミスなんでしょうか? とにかく全く作動せず、購入店で交換してもらっても、それが再び同じ症状……。

結局は返金となって、う~ん、また何時かは買える時が来るだろう、なぁ~んて楽観してから既に幾年月!?

ほとんど再発の兆しもなく、また中古も出ないという悪循環が続きましたから、つい先日、それと同じ音源を収録した掲載CDを発見した時には、速攻でお買い上げとなった次第です。

ちなみに録音データは1964年10月4日のコペンハーゲンというのが定説ですが、これには微妙に異論もあることを付け加えておきます。

01 Aututmn Leaves / 枯葉
 マイルス・デイビスが十八番の演目の中でも人気が特に高い「枯葉」ですから、ミュートによる味わい深いメロディフェイク、それに呼応するリズム隊の緊張感が、リスナーに必要以上の期待を抱かせてくれる事は言わずもがなでしょう。
 このあたりは当時のマイルス・デイビスが残したライプ音源を聴いていくとわかるんですが、親分はほとんどの場合、最初に良く知られた歌物スタンダードをやるんですよねぇ。
 おそらくはそれでツカミはOK♪ を狙っていたんでしょう。
 もちろん、それはここでも万全であって、とにかくミディアムテンポでのグルーヴ感は如何にも黒人ジャズならではの重量感がありますし、リスナーが演目のメロディを知り抜いていることを活かしきったマイルス・デイビスのミュートの魔術♪♪~♪
 好き放題にやっている感も強いリズム隊のビシッとした意志の疎通も侮れません。
 ところがウェイン・ショーターが登場すると、これが一変!
 実質的にはバンドでの新参者ながら、最初から幹部待遇ということもあるんでしょうが、マイペースと言うにはあまりにもジコチュウなやり方には、特にトニー・ウィリアムスが若気の至り? 真っ向から逆らうようなドラミングが散見され、あぁ~、これがジャズを聴く楽しみだと痛感されますよ♪♪~♪
 ただし同時期の公式盤「ベルリン」での演奏に比べると、些か整合性に乏しい感じも……。
 まあ、それを上手く収斂させるのがハービー・ハンコックの役割でもあるのでしょう。実に素晴らしいアドリブを聞かせてくれますが、残念ながら途中でテープが終わったのかもしれません。尻切れトンボが勿体無い!?
 とはいえ、それを上手く拍手を被せることで次の演目に繋ぐ編集は結果オーライだと思います。

02 So What
 ということで、前トラックの拍手の中でスタートするのが、これまたマイルス・デイビス十八番のモード曲にして、このクインテットが最高に爆発するアップテンポの定番演奏!
 正直に言えば、マイルス親分は些か音も外していますし、アドリブもマンネリの極みに陥っていますが、トニー・ウィリアムスのメチャ煽りには熱くさせられますねぇ~♪
 かなり過激なウォーキングをやってしまうロン・カーターも凄いと思いますが、それにしてもウェイン・ショーターの自虐的なアドリブソロは今だから素直にシビれられるものでしょう。多分、リアルタイムの観客は唖然とさせられんじゃ~ないでしょうかねぇ~~?
 結局、ここでもハービー・ハンコックが上手い仲介役としての手腕が発揮されるというわけです。

03 Stella By Starlight
 そして前曲のラストテーマから万雷の拍手の中、すぅぅぅ~と弾かれるハービー・ハンコックの繊細なピアノのフレーズに導かれ、またまたマイルス・デイビスが薬籠中のメロデイフェイクを聞かせてくれるのが、この歌物スタンダードです。
 う~ん、やっぱり当時はこういうプログラム構成が普通だったんでしょうかねぇ。個人的にはアップテンポやミディアムグルーヴをガンガン乱れ撃ちにして欲しいんですが……。
 まあ、それはそれとして、実は今回の再発では収録演目を実際のライプの曲順と同じに揃えたらしく、それでもサイケおやじは冒頭に述べたとおりの事情から既発のブツは聴いていないので、ここまでしか言えません。
 しかし緩急自在にスイングしていく黄金のクインテットの演奏は流石に素晴らしく、見事な緊張と緩和に酔わされてしまいますが、意外に直線的なウェイン・ショーターにリズム隊が嬉々とした次の瞬間、お約束とはいえ、幻想の世界へ転じるあたりの周到さはニクイばかり!
 トニー・ウィリアムスのブラシも、良いですよっ!

04 Walkin'
 で、再び始まるのが原曲のブルースを全く無視した激烈モードの疾走大会!
 マイルス親分は、まあ、例のとおりなんですが、ウェイン・ショーターのブッ飛びは時代を鑑みれば、明らかに過激なスタイルであり、しかも闇雲なフリーにもならず、コルトレーンとも一味異なるアプローチは、それが未完成なだけに危険極まりないのかっ!?
 ですからトニー・ウィリアムスの大ハッスルも、またハービー・ハンコックの物分かりの良さ、さらにはロン・カーターの安定路線も、既に我々が知っている後の姿の前触れに他なりませんよねぇ~♪

05 All Of You
 そんな諸々を思いつつ、それでも虚心坦懐に聴き入ってしまうのが、マイルス・デイビスのミュートの世界でしょう。
 ここでも手慣れた手法が本当に心地良く、何がマイルス・デイビスの魅力の本質なのか、それをリスナーは再認識させられるんじゃ~ないでしょうか。
 子分達も、そうした親分の気持を無にしないというか、その場の観客を大切にしたプレイは決して媚びたわけではなく、むしろ本音で演じた結果とサイケおやじは思いたいですし、これが実に素晴らしいと思います。
 ラストテーマにおけるマイルス・デイビスの思わせぶりも秀逸♪♪~♪

06 Joshua - The Theme
 こうして迎える大団円は、個人的に大好きなモード曲♪♪~♪
 思わずワクワクさせられるテーマから観客の手拍子も良い感じですが、バンドの勢いは冷静と過熱のバランスが絶妙で、しかも自由が保証されているのでしょうか、各人のアドリブパートにはきっちり山場が提供されます。
 いゃ~、トニー・ウィリアムスの煽りも最高ですねぇ~~♪
 演奏は最後に短いバンドテーマが奏され、およそ66分のライプステージが楽しめるという仕掛です。

ということで、これはやっぱり噂どおり、なかなかの名演ライプ音源でした。

気になる音質も良好なモノラルミックスで、確かに弱音部分ではヒスノイズも目立ちますが、録音された時代を考慮すれば、贅沢は敵でしょう。ジャズ者ならば、全く問題無しに聴けるレベルだと思います。各楽器のバランスも絶妙というか、同種の音源に比べるとベースの存在感もしっかりしていますよ。

ただし以上の件は再発のリマスター効果なのか、サイケおやじは今回初めて聴いたわけですから、確実な事は言えませんので悪しからずご了解下さいませ。

それと以下は蛇足ではありますが、当時のマイルス・デイビスの発掘音源は多種多様にある中で、常に親分がマンネリ、反して子分達が意欲的という構図は、やはりファンが求めているものなんでしょうか……。

個人的にはそれで良いと思っていますし、そうした安心感こそが、マイルス・デイビスのブートを入手するキメ手になっているのは確かです。

そしてジャズが絶対的な魅力を発揮していたのは、やっぱりこの時代までなんだぁ~、という思いを強くするのでした。

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発掘されたマイルス初来日時のライブ

2011-03-14 15:29:29 | Miles Davis

The Unissued Japanese Concerts / Miles Davis Quintet (Domino = CD)


あまりにも惨い天災から、本日の1枚を更新する気力も失っていたんですが、このプログを通じて繋がっている皆様がいると信じての再開です。

とにかく今は前を向いていきましょう!

さて、そこで権利関係は、どうなっているのかっ!?

もはや分からなくなっている事が逆に大歓迎というマイルス・デイビス関連の発掘音源復刻の中でも、かなり嬉しいのが本日ご紹介の2枚組CDです。

なにしろ昭和39年というよりも、1964年に初来日した時のライプ音源ですからねぇ~♪ ご存じのとおり、この時の巡業ステージからは公式盤「マイルス・イン・トーキョー」が既に発表され、所謂フリーブローイング期の記録としても人気が高い1枚になっていました。

それはサム・リバースという、ちょいとフリー系のテナーサックス奏者が参加している事に加え、如何にも聴衆を前にしたサービス満点のプログラムとモダンジャズ最前線の意気込み、さらにマイルス・デイビスという大スタアの存在感が圧倒的に堪能出来るからでしょう。

つまりモダンジャズが、まだまだリアルタイムで最高にイカシた音楽だった証でもあり、見事な緊張と緩和が楽しめる至福の時間が提供されているのですから、ジャズ者ならば殊更、迷う必要もないと思います。

ちなみにメンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、今では夢のクインテットですから、生演奏に接したファンには嫉妬さえ覚えるのが正直な気持!

☆1964年7月12日、日比谷野外音楽堂で録音 / CD-1:約40分36秒
 01 Autumn Leaves / 枯葉
 02 So What
 03 Stella By Starlight
 04 Walkin' into The Theme
 まず、気になる音質は良好です。
 ただし、ちょいとベースが引っ込み気味ですし、ドラムスの存在感も薄めなのが残念ではありますが、そこは再生装置で低音を補強すればOKでしょう。
 そして逆にその分だけ、トランペットとテナーサックの音の強弱がクッキリと際立ち、またピアノも音源の出所を考慮すれば、なかなか綺麗に録れていると思います。
 ちなみに発売元は「Unissued」なんて商品タイトルを強調していますが、ご推察のとおり、これまで度々ブートで流通していたものが、今回はリマスターされてのハーフオフィシャル化というところでしょうか? それゆえに聴いていても、妙に安心感を覚えます。
 で、肝心の演奏は、やはり凄いの一言!
 もちろん初っ端の「枯葉」はマイルス・デイビスならではのミュートが、やっている事はハードバップでは無いにしろ、やはり嬉しい限りの思わせぶりを披露していますよ♪♪~♪ それに呼応するリズム隊も阿吽の呼吸ですが、続くサム・リバースの硬質のテナーサックスが、これまた強烈です。なによりも音色がダーク&ハードですし、ツッコミ鋭いフレーズで疑似フリーの領域に踏み込みながら、しかしアドリブ構成は新主流派という好ましさですからねぇ~~♪
 あぁ、もう、この1曲だけでアンプのボリュームをグイグイと挙げてしまう事、必定です。
 そして後は例によって激烈な「So What」から静謐で力強い「Stella By Starlight」、さらに追い撃ちとしての「Walkin'」が、まさにモダンジャズ黄金時代を今に蘇らせてくれますっ!
 毎度お馴染みのマンネリフレーズで押しまくるマイルス・デイビスは言わずもがな、アグレッシヴで深淵な企みも秘めた陰湿さが魅力のサム・リバースとリズム隊の奇妙(?)なコンビネーションも、実にジャズそのもののスリルに満ちていて、中でもこの日のハービー・ハンコックは特に冴えている感じがします。
 また現状突破を狙うが如きトニー・ウィリアムスの爆裂ドラミングには、思わず血が騒ぎますし、ルートの音に忠実でありながら、けっこうヤバイ事をやらかしているロン・カーターも流石でしょうねぇ~♪
 こういう子分達を持ったマイルス・デイビスは、幸せな親分だと羨ましくなります。

☆1964年7月15日、京都丸山音楽堂で録音 / CD-2:約45分32秒
 01 If I Were A Bell
 02 Oleo
 03 Stella By Starlight
 04 Walkin'
 05 All Of You
 06 Seven Steps To Heaven / 天国へ七つの階段
 こちらもブートとしては以前から有名音源のひとつでしたが、とにかく良好な録音状態の中にギュ~~っと凝縮されたパワフルなジャズ魂が凄まじいかぎり! それはベースの存在感が強く、また我儘な自己主張を徹底的に演じているドラムスも、相当にしっかり録音されている事にポイントがあります。
 ただし、それゆえにトランペットなテナーサックスが時折に音割する瞬間もあるんですが、それを言うのはバチアタリだと思いますし、個人的には、これほど迫力のある音で4ビート期のマイルス・デイビス・クインテットを楽しめるのは、幸せに他なりません♪♪~♪
 もちろん演奏も充実と熱血や静と動の対比が鮮やかすぎるほどの出来栄えで、「If I Were A Bell」では新感覚とはいえ、積極的な歌心を披露するマイスル・デイビスに対し、あくまでもアグレッシヴな姿勢を崩さないサム・リバースが激ヤバですよ。
 ちなみにこの音源の欠陥として、前半でピアノがオフ気味という現実があり、ここでもかなり良いアドリブを演じているハービー・ハンコックが……。
 ただし演奏が進むにつれ、それは改善していきますし、逆にベースとドラムスが何を目論んでいるかが明確になっていますよ。そして、そういうラフな質感が強い録音故に、客席の拍手歓声等々も生々しく、また演奏そのものの躍動感やエグ味がリアルに迫ってくる事実も結果オーライ!
 それはビバップからストレートに受け継いだ過激性が全開の「Oleo」、そしてトニー・ウィリアムスが大爆発する「Walkin」あたりのアップテンポ演奏に特に顕著で、中でもほとんどヤケッパチなマイルス・デイビスが凄すぎる後者のアドリブには熱くさせられますねぇ~~♪
 もちろんリズム隊の容赦無い活躍とサム・リバースの突撃精神もテンションが高いわけですが、一転してじっくり構えた「Stella By Starlight」の充実性、あるいはマイルス親分が十八番の思わせぶりが全開する「All Of You」の深い味わいと醸し出されるジャズ的な熱気は唯一無二といって過言ではありません。
 あぁ、こういう演奏に素直に夢中になれる自分に幸せを感じます。
 本当に生きている事に感謝するばかりですよっ!
 そしてオーラスには、なんと気になる「天国へ七つの階段」が配置されているんですが、ネタばれ覚悟で結論を述べれば、最高にカッコ良いテーマアンサンブルからマイルス・デイビスのアドリブとトニー・ウィリアムスのドカドカ煩いドラムソロを経た、実に短いテーマ的な演奏なのが勿体無いです。
 ただし編集疑惑も濃厚なので、このあたりの真相は次回のお楽しみでしょうか。

ということで、これは即ゲットするしかない素晴らしい音源集と断言させていただきます。

もちろん全ての面で最高の音質とは申しませんが、ジャズ者ならば充分すぎるほどに許容出来るはずですし、何よりもこれほどの演奏に接することが出来る幸せを逃すことはありません。

迫力と密度の高い演奏、沸き上がる拍手歓声、そしてマイルス・デイビスのひとつの存在証明とも言える例の指パッチン♪♪~♪

注目されるサム・リバースの参加は、この巡業前後だけのようで、ご存じのとおり9月からはウェイン・ショーターが正式加入した事により、所謂黄金のクインテットが現出するわけですが、サム・リバースの存在価値は決して穴埋め的なものに終っていません。

それはウェイン・ショーター在籍時のライプ音源と比較しても、その時は些か翻弄される瞬間も否定出来ないリズム隊が、サム・リバースとは対等の関係というか、まさに丁々発止! 時にはフリーの領域にまで発展する演奏は、そのギリギリのところで踏み留まるスリルも絶大で、まさに感度良好ですよ。

おそらくは将来、新裏名盤となることは必至だと確信しています。

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マイルス・クインテットの保守と革新

2011-02-18 16:23:29 | Miles Davis

Miles Daves Quintet  Live At The Oriental Theatre 1966 (Sunburn = CD)


全く尽きることの無いマイスル・デイビスの復刻商売の中で、いよいよ登場したのが本日ご紹介の2枚組CD♪♪~♪

実はこれ、アナログ盤時代から優良ブートのひとつとして有名なライプソースだったんですが、今回は散逸していた音源を可能なかぎり纏め、中には未発表とメーカー側が主張するテイクも含め、最新のリマスターで提供された嬉しいブツになっています。

 CD-1 01 Announcement
 CD-1 02 Autumn Leaces / 枯葉
 CD-1 03 Agitation
 CD-1 04 Stella By Starlight
 CD-1 05 Gingerbread Boy
 CD-2 01 The Tmeme
(= No Blues / incomplete)
 CD-2 02 All Blues
 CD-2 03 Who Can I Turn To
 CD-2 04 So What
 CD-2 05 My Funny Valentine

録音は1966年5月21日のオレゴン州ポートランド、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、トニー・ウィリアムス(ds) という黄金のレギュラー陣に加え、この日は何時ものロン・カーターに代わってリチャード・デイビス(b) が入っているところが珍しく、それが人気のポイントでもありました。しかし上記演目からもご推察のとおり、特段に変わった演奏が披露されているわけではありません。

むしろマイルス・デイビスの保守性が、この時期にしては色濃く滲んでいると思うほどです。

例えば冒頭の「枯葉」、あるいは同列のスタンダード曲「Stella By Starlight」や「Who Can I Turn To」、さらには今回が初登場とされる「My Funny Valentine」でのメロディフェイクの上手さは、例によっての思わせぶりが全開♪♪~♪

しかも後年のライプと異なり、この当時はラストテーマもきっちり吹いていますから、尚更にマイルス・デイビスならではの歌物解釈が楽しめるのです。

中でも「Who Can I Turn To」は良いですねぇ~♪ じっくりと原曲メロディを醸成させながら、リズム隊を思うがままに操るようなリーダーシップの強さは、それがそのまんま流石のジャズ魂だと思います。
 
しかし子分達だって、そうそう親分の操り人形にはなっていませんっ!

全篇で変幻自在、過激にプローしまくるウェイン・ショーターは言わずもがな、面従腹背的なハービー・ハンコックに激しく同意するトニー・ウィリアムス、さらには平気な顔で危険なベースワークに踏み込むリチャード・デイビス!?!

気になる録音状態も、トニー・ウィリアムスのシンバルがきっちり録られていますから、自然とその他の楽器のバランスも、時代を考慮すれば良好でしょう。と言うか、このあたりを許容しなければ、全盛期モダンジャズは楽しめないと思いますし、ジャズ者ならば、なんら問題無く楽しめるはずです。

そこでアグレッシヴな「So What」に熱狂し、じっくり構えた後に突進する「All Blues」で震え、さらに良く知られた歌物曲の解体と再構築に酔わされてしまえば、後は至福のマイルス天国♪♪~♪

個人的には「Agitation」や「Gingerbread Boy」あたりの所謂モダンジャズオリジナルが、どのようにリアルタイムで料理されていたのか? なかなか興味津々で楽しめましたが、やはり俊英リズム隊が存在してこそのマイルス流モダンジャズという感があります。

ちなみにリチャード・デイビスの参加が一番顕著に表れたのが、「So What」のテーマリードで味わえるエグ味じゃないでしょうか。このあたりは本当に聴いてのお楽しみです。

ということで、サイケおやじは例によって「Previously Unissued!」というステッカーに幻惑された弱みも否定致しませんが、こうした発掘音源集の魅力は、その度に向上しているであろう音質への期待感も第一義だと思います。

そこで今回の結果は、比較出来る私有盤が「Stone」というレーベルから出たアナログLPしか無いので、確定的なことでは無いかもしれませんが、低音部の分離が相当に良くなっていると思います。

もちろんアナログ盤には未収録だった「All Blues」や「So What」の過激な急進性にしても、こうしてCD化されたおかげで、尚更に心置きなく楽しめるというものです。

収録時間は全篇で約90分!

時期的には次なるレコーディングセッションから誕生する充実の名盤「マイルス・スマイルズ」の5ヵ月前ということで、親分の貫録と子分達の義理人情、そして新旧意地の張り合いが、とことん堪能出来ること、請け合いです。

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マイルスがワンホーンでロックジャズ

2011-02-13 16:42:25 | Miles Davis

Miles Davis Bitches Brew Live (Columbia / Legacy)

またまた出ましたっ!

何故か今頃という、例の「ビッチェズ・ブリュー」再発プロジェクト(?)の関連商品なんですが、今回のウリは3曲の公式には未発表だったライプ音源で、それを強調するためにファクトリーシールの上から強引に貼られたシール(掲載画像参照)が、サイケおやじをイチコロに参らせたのは言うまでもありません。

そして実際に聴けば、これは納得する他は無い物凄さだったんですから!?!

☆1969年7月5日、ニューポートジャズ祭でのライプ録音
 01 Miles Runs The Voodoo Down
(fade in)
 02 Sanctuary
 03 It's About That Time ~ The Theme
 既に述べたとおり、これが今回の目玉で、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、チック・コリア(key)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds) ということは、なんと珍しやっ! マイルス・デイビスのワンホーンカルテットによるライプ音源なんですねぇ~~♪
 しかもデーターを信じれば、あの「ビッチェズ・ブリュー」のスタジオレコーディングセッション直前という、極めてヤバイ時期だけに、自ずと興味が惹きつけられるのはロックジャズ愛好者の宿業というものでしょう。
 そして演奏は決して期待を裏切りませんっ!
 こんなに熱いマイルス・デイビスは久しぶりという感動さえ沸きあがるっ!
 と言っては大袈裟かもしれませんが、自分がバンマスという現実以上の解放感溢れる吹きまくりが最高ですよっ!
 さらにバックのリズム隊がジコチュウでありながら、きっちりと親分を盛り立てる姿勢も素晴らしく、ジャック・ディジョネットの大車輪ドラミングは言わずもがな、アグレッシヴに疾走するチッコ・コリア、どっしり構えたデイヴ・ホランドの意地悪さも侮れません。
 ですから結果的にメドレー形式で進んでいく演目の繋ぎ目が、マイルス・デイビスから発せられるフレーズと音の指示に従う場面での瞬間的な緊張感、さらに場面転換の鮮やかさが強烈な印象として残るのでしょう。
 ちなみに収録時間は3トラックで25分に満たないんですが、注記したようにフェードインによる途中からの始まりなので、これ以前のパートが本当に気になります。
 それと結果的にワンホーン編成での出演だとしたら、当時の相方だったウェイン・ショーターが既にレギュラーから抜けたという事実も至極重大かもしれません。
 これについては残された様々な音源から、同年秋の欧州巡業には参加という確認も出来ますから、まさに変化しつつあったマイルス・デイビスの音楽性と人間関係の記録としても、これは大きな意味を持つ演奏だと思います。
 しかし、それにしてもリズム隊の3人が作り出すロックジャズなウネリは圧巻!
 世間一般には、ど~しようもないボンクラな子分しか持てないリーダーが数多存在するわけですから、マイルス・デイビスは幸せ者でしょうねぇ。本当に羨ましくなるほどの熱い興奮が、ここに楽しめるというわけです。
 もちろん音質は良好なステレオミックス♪♪~♪
 何時の日か、完全版が登場する期待を持っています。

☆1970年8月29日、ワイト島でのライプ
 04 Directions
 05 Brew Live
 06 It's About That Time
 07 Sanctuary
 08 Spanish Key
 09 The Theme
 これはお馴染み、ワイト島フェスティバルに出演した時のライプ音源で、メンバーはマイスル・デイビス(tp) 以下、ゲイリー・バーツ(ss,as)、チック・コリア(key)、キース・ジャレット(key)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、アイアート(per) からなる7人組ですが、やはり結果的に2人のキーボート奏者が強い存在感を示しています。
 もちろん演奏そのものはジャック・ディジョネットのドドスコビートが強引に自己主張する場面が目立ったりもしますが、マイルス・デイビスが新たに確立した俺流のロックジャズに絶対の自信があると言わんばかりのトランペットは、流石!
 そして暗躍するチック・コリアとキース・ジャレットの鬩ぎ合いが、演奏全体の流れの中でクッキリとした輪郭を描き、そこに他のメンバーが彩りを添えるという目論見が、唯一無二の新しいモダンジャズを形成している感じでしょうか。ゲイリー・バーツの奮闘も良い感じ♪♪~♪
 実はご存じのとおり、この音源は既に公式の映像版も出回っていますから、特に今更の再発は無意味だと思いますが、それでも最新のリマスター効果の所為で、楽器の分離が少しばかり向上し、それゆえに不思議な混濁感が強調されるという、妙な雰囲気が味わえるように思います。

ということで、結論として新たに価値があるのは最初の3曲だけですから値段も安く、ゲットしても後悔は無いでしょう。特にワイト島の音源を持っていない皆様ならば、こんな素敵な機会はありませんよ。

既に述べたように、音質的にも全く問題無く聴けますし、こうなったらガンガン、出し惜しみせずに未発表演奏を出してもらいたいと切望しています。

毒喰らわば、なんとやら!

そんな心境は、なにもマイルス・デイビスだけに対するものではありませんがっ!!?!

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スリルとマンネリのライブ音源がマイルスの魅力!?

2010-12-24 15:28:57 | Miles Davis

■Miles Davis Live At Newport 1966 & 1967 (Domino = CD)

結局、サイケおやじは旧弊な人間なので、新譜といっても知っているミュージシャンの音源を優先してしまいます。

例えば本日ご紹介のCDも、様々な新ネタが出回っていた中で、思わずゲットしてしまった悪癖(?)の1枚かもしれませんが、やっばりこれが侮れませんでした。

ご存じ、マイルス・デイビスが1960年代後半に率いていた所謂黄金のクインテットによるライプ音源ですが、モノラルミックスながら、一応はラジオ放送用に録られたということで、音質も普通に聴けるのが嬉しいところ♪♪~♪

☆1966年7月4日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 01 introduction into Gingerbread Boy
 02 All Blues
 03 Stella By Starlight
(incomplete)
 メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という今では夢のクインテットがリアルタイムでやるだけやったっ!
 そんな感じの演奏ではありますが、今となっては微妙なマンネリ感と新鮮な息吹のバランスの良さが、ジャズを聴く楽しみに他ならないと思います。
 まず司会者の短い紹介から間髪を入れずにスタートする「Gingerbread Boy」は、最初の頃にちょいと音が悪いのですが、演奏が進むにつれて改善されていきます。ただし、全体的にベースが前に出たミックスには好き嫌いがあるかもしれません。
 肝心のクインテットは流石の安定感とでも申しましょうか、何時ものとおりのマイルス・デイビスに対し、アグレッシプでミステリアスなウェイン・ショーター、それに呼応するリズム隊は、やっぱりスリルがありますねぇ~♪ もちろんマンネリ気味の心地良さとしてではありますが、未だ伝統芸能になっていなかったモダンジャズの黄金期は確実に素晴らしいっ! 
 ですから続く「All Blues」にしても、イントロから蠢くリズム隊のジャズグルーヴから例によってワルツタイムのブルースがポリリズムに変化しつつ、アドリブパートではストレートな個人技の応酬へと展開する流れは、マイルス・デイビスの如何にも「らしい」味わいとウェイン・ショーターの無理難題が絶妙のコントラスト描き、これまたシビれさせせられますし、ハービー・ハンコックのピアノに続き、最終盤に咆哮するマイルス・デイビスのトランペットも良い感じ♪♪~♪
 しかし、このあたりを、なんだぁ……、またかよ……。
 なぁ~んで言ってはいけませんよねぇ。
 居直ってしまえば、これほどのモダンジャズを演じるバンドが、他にあるでしょうか!?
 と思わず熱くなったところで始まるのが、お待ちかねの「Stella By Starligh」ですから、そのクールな瞬間が本当に素敵です。
 とにかくマイルス・デイビスのトランペットが緊張感と歌心の巧みな融合で、素晴らしいの一言! そしてテンポアップして白熱するアドリブの本筋では、トニー・ウィリアムスの爆発も必然ならば、突進するロン・カーターの4ビートウォーキング! それに引っ張られて破天荒なショーター節を存分に披露する、このテナーサックスの異才も、流石に本領発揮というところでしょうか。
 あぁ、この暗黙の了解が、たまりませんねぇ~~♪
 しかし残念ながら、ハービー・ハンコックのパートに入ってのフェードアウトが未練を残します。

☆1967年7月2日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 04 Gingerbread Boy
 05 Footprints
 06 'Round Midnight
(incomplete)
 こちらは1年後、同じメンツによる演奏ながら、結論から言えば、自由度がグッとアップした過激な4ビートジャズが楽しめます。
 なにしろ「Gingerbread Boy」からして、前年のバージョンに比べるとツッコミが露骨になり、ブッ飛ばすマイルス・デイビス、奇々怪々なウェイン・ショーター、ドシャメシャ寸前のトニー・ウィリアムス、彷徨うロン・カーターに何んとか纏めようと奮戦するハービー・ハンコックという5人組各々の思惑が交錯している感じでしょうか。
 う~ん、熱いですねぇ~♪
 ちなみに気になる音質は、前年のソースよりは幾分良好ですから、これもジャズ者ならば普通に聴けるレベルだと思います。
 そして特筆すべきは、1960年代後半から特徴的となるマイルス・デイビスのライプならではの連続演奏が既に始まっていることで、「Gingerbread Boy」のラストテーマから瞬時に突入していく「Footprints」でのテーマアサンブルの即興的な構成力は、これまた暗黙の了解と所謂チームワークの表れでしょう。
 もちろんリズム隊の変幻自在ぶりは、さらに複雑多岐になっているようですが、フロントでアドリブを演じる主役を矢鱈に翻弄するような意地悪はやっていませんから、この時期が、もしかしたら黄金のクインテットの全盛期だったのかもしれません。
 う~ん、ハービー・ハンコックのミステリアスなフィーリンミグが、実に良いですねぇ~♪
 それゆえに続く「'Round Midnigh」は、まさに白眉の名演!
 マイルス・デイビスが十八番の不安定な思わせぶりを存分に発揮するテーマメロディのフェイクはオープントランペットによるものですが、そのサスペンス風味は些かの緩みもありません。忽ちロン・カーターの力強い4ビートを呼び込み、それに呼応するハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムスが臨機応変の伴奏ですからねぇ~♪
 もちろん「お約束」のブリッジパートではバンドが一丸となった激情、そこからグッと抜けだしていくウェイン・ショーターの狂ったようなスイング感も凄過ぎますよっ! 当然ながらクールで熱いバッキングは、このリズム隊ならではの魅力でしょう。
 しかし、残念ながら、このトラックも良いところでフェードアウト……。
 実に勿体無いかぎりです。

☆1967年11月1日、フィンランドでのライプ
 07 introduction into Footprints
 08 'Round Midnight
(incomplete)
 これはボーナストラック扱いになっていますが、もちろん黄金のクインテットによる1967年秋巡業時のライプ音源で、一応はステレオミックスという感じでしょうか。どうやらこれもラジオ用録音らしく、音質はそれなりに良好です。
 まず司会者のメンバー紹介と観客の拍手歓声から、期待感と暖かい雰囲気がいっぱい♪♪~♪ それを打ち破るが如き突撃モードの「Footprints」が始まる衝撃も、たまりませんねぇ~♪ 僅か4ヵ月前の演奏だったトラック「05」との比較では、こちらの方がギスギスしたムードが濃厚になり、加えて原曲の持つミステリアスな味わいが意味深な過激さに変換されているように感じます。特にリズム隊のツッコミが意地悪ですよねぇ。
 しかしマイスル・デイビスはともかく、ウェイン・ショーターは作者の強みというか、悠々自適に浮遊感満点のフレーズを積み重ね、リズム隊を必死の境地に追い込んでいく逆煽りが見事! まさに黄金のクインテットならではの瞬間芸じゃないでしょうか。
 実は正直、全く分からなく事さえあるサイケおやじです。
 しかしハービー・ハンコックのアドリブからは、そうした意味不明なものを翻訳し、分かったような気分にさせてくれるプロ意識を感じますねぇ~♪ ある意味では確信犯的な疑似フリーと言うべきなんでしょうが、そういう雰囲気の作り方がハービー・ハンコックの真骨頂だと思うほどです。
 そして続く「'Round Midnight」が、これまた名演!
 未練を残す前曲の最終パートから、いきなりマイルス・デイビスが例の如く思わせぶりを演じれば、流石に親分のクセを知りつくしているリズム隊が絶妙のサポートを演じてくれるあたりの阿吽の呼吸が、必ずやジャズ者の琴線に触れるでしょう。
 こうして熱いブリッジからウェイン・ショーターがトニー・ウィリアムスとの対決姿勢を鮮明にした激しいアドリブを展開する流れこそ、ファンが最も聴きたい部分のはずなんですが、残念ながら、ここでもフェードアウト……。
 う~ん、欲求不満が増幅しますっ!

ということで、どのパートも、最後は必ず満足させてくれないという、なかなか罪作りなブツではありますが、とにかく全盛期だった黄金のクインテットを楽しめる事には間違いありません。

ちなみに、このブツのウリは裏ジャケットに大きく記載された「All Tracks Previously Unissued」という事になっていますが、部分的には既出の音源も含まれています。

しかし、音質もそれなりに良好ですし、なによりも以前に出回っていたものよりは、リマスターに統一感があるんじゃないでしょうか。

あぁ、それにしても最初に書いたとおり、サイケおやじの音楽鑑賞は堂々巡りというか、何時も同じ場所に停滞しているようで、ちょいと自嘲……。もはや居直ることも出来ない境遇ではありますが、その中から少しでも優良な再発&復刻盤を発見することが、ひとつの楽しみになっているのでした。

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40年目のビッチェズ・ブリュー

2010-11-18 11:35:22 | Miles Davis

■Bitches Brew Legacy Edition / Miles Davis (Columbia / Sony)

最近恒例の所謂「レガシーエディション」という再発プロジェクトで出された「ビッチェズ・ブリュー」は、1970年に初めて世に出たアナログ盤LP2枚組をさらに発展させたCD3枚+DVD1枚という豪華版♪♪~♪

しかもジャケットが4面見開きのデジパック仕様という嬉しいものですから、それは皆様が実物を手に取られてのお楽しみ♪♪~♪

ちなみに以前に出た4枚組CDセットの「Complete Bitches Brew Session」は、何故か純粋に行われた「ビッチェズ・ブリュー」のセッション、つまり1969年8月19~21日にかけての3日間以外の音源も収められたという、些か問題の多い企画でしたから、ここに発売40周年を記念して出し直されるのも、それなりの意義があろうかと思います。

それは前述したアナログ盤のオリジナルアルバムに収められた6曲に加え、同セッションからの別テイクが2曲、そしてシングル盤用に編集された4曲が、まずは2枚のCDに収められています。

そしてアルバム「ビッチェズ・ブリュー」がリアルタイムで発売された時期という、1970年8月のライブ音源が、もう1枚のCDで存分に楽しめ、またレコーディングセッション直後の欧州巡業からのステージをカラー映像で堪能出来るのが、付属DVDの内容となっています。

 CD-1 01 Pharaoh's Dance (A-1)
 CD-1 02 Bitches Brew (B-1)
 CD-1 03 Spanish Key (C-1)
 CD-1 04 John McLaughlin (C-2)
 CD-2 01 Miles Runs The Voodoo Down (D-1)
 CD-2 02 Sancruary (D-2)
 上記の6曲がオリジナルアナログ盤LP2枚組によって世に出た演奏で、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ss)、ベニー・モウピン(bcl)、ジョー・ザピヌル(key)、チック・コリア(key)、ラリー・ヤング(key)、ジョン・マクラフリン(g)、デイヴ・ホランド(b,el-b)、ハービー・ブルックス(el-b)、ジャック・ディジョネット(ds)、レニー・ホワイト(ds)、ドン・アライアス(per)、ジム・ライリー(per) 等々が入り乱れて参加し、録音は既に述べたとおり、1969年8月19~21日に行われていますが、その詳細なメンバー編成については今回の付属解説書にきっちり纏められています。
 そして内容については、今更サイケおやじが稚拙な文章を弄するまでもなく、モダンジャズの歴史を変革させた名演として言わずもがなでしょう。そこには確かにロックやアフロのビートが混濁し、また黒人R&B~ファンクなリズムが洪水のように押し寄せるゴッタ煮状態が不滅の名盤を成立させていると思われるのですが、しかし、そこに好き嫌いがあるのも、また事実です。
 こんなの全然、ジャズじゃねぇ~~!
 こう、魂の叫びをあげてしまうジャズ者が、当時も今も、その存在感は強いものがありますし、実際、サイケおやじにしても、この歴史的名盤と言われる「ビッチェズ・ブリュー」を最初に聴いた時には、全く自分の理解の範疇を超えていました。
 なにしろA面の全てを使った「Pharaoh's Dance」からして、ベニー・モウピンのバスクラがオドロの雰囲気を強調する土人のリズムと呪いのメロディとしか思えませんでした。また、アルバムタイトル曲の「Bitches Brew」は全員が意図的にショッキングなフレーズを積み重ねる意地悪な演奏ですからねぇ……。
 まあ、一応は各人のアドリブソロパートは確かにあるんですが、リズム隊のワザとらしいフリーな絡みとか、あるいは単調なリズムの連なりがあるかぎり、それは従来のモダンジャズにあった痛快さやストレートな爆発力とは一定の距離を置くもののように感じられたのです。
 このあたりの感性を、ある人はロックに毒されたマイルス!?
 また、ある人は得体の知れない奇怪な電化ジャズ!?
 そんな云々が堂々と罷り通ったのが、特に我国でのリアルタイムのファン心理じゃなかったでしょうか。
 しかし、評論家の先生方や音楽マスコミは、挙って絶賛したんですよねぇ~、このアルバムを!?
 う~ん、何故だっ!?
 実は答えを後に知ることになるサイケおやじにしても、冗談じゃねぇ~~!
 そういう叫びは隠しようもないのですが、それでもC面の「Spanish Key」ではジョン・マクラフリンのエレキギターが比較的ストレートに暴れてくれますし、バンドが一丸となって発生させるリズムからはファンクの香りが漂ってきますから、それなりに楽しめるのです。なによりもマイルス・デイビスのアドリブが分かり易く、キメのリフのカッコ良さやエレピの存在がフィ~ル・ソ~・グッドなんですねぇ~♪ ツッコミ鋭いウェイン・ショーターのソプラノサックスも良い感じ♪♪~♪
 それは偉大なギタリストの名前をそのまんま曲名にした「John McLaughlin」においても同様で、実は演奏そのものは気持の悪い「Bitches Brew」の続篇というか、もしかしたら、その一部のような疑惑も強いのですが、あえて居直ったような収められ方で聞かされると、これがなかなか痛快なんですねぇ~♪
 ちなみにマイルス・デイビスがその頃に発売していたレコードに収録の演奏は、プロデューサーだったテオ・マセロの手によって切り貼り的な編集が施されていた事実は隠し様も無い有様でしたから、このアルバム「ビッチェズ・ブリュー」全体が同じ手法によって、尚更に凝った作りになっているのも、推して知るべしでしょう。
 ですから、これが本当に凄いアフロファンクなロックジャズという「Miles Runs The Voodoo Down」が、キメにキメまくった大名演に仕上がったのも流石! 保守的なサイケおやじにしても、このトラックだけはリアルタイムでシビれきった事を告白しておきますが、その気分は今も継続しているほどです。とにかくマイルス・デイビスのクールな熱血、リズム隊の摩訶不思議な一体感、そして各人のアドリブのエグ味と狙いの正確さは唯一無二だと思います。
 その意味でオーラスの「Sancruary」が、勿体ぶった厳かさに徹しているのは余韻の演出なのかもしれませんが、ちょいと……。
 ちなみに、このCDセットにも注意書きがあるんですが、演奏自体の再収録にあたってはオリジナルマスターテープからリミックス作業が行われたということで、最初のアナログ盤で顕著に存在していた怖いほどの混濁感が、ここでは各楽器の分離の良さや音の粒立ちのメリハリによって、スッキリとシャープな印象に変わっています。
 まあ、それゆえに当然ながらアナログ盤で最初に接した時の混乱した雰囲気が薄れてしまったのは否めませんし、果たしてこれがマイルス・デイビス本人の望んだ事だったのかは知る由もありません。
 実は、この作業は前述した4枚組のCDセット「Complete Bitches Brew Session」の発売時から行われていたらしく、それ以前のCDは聴いたことがないので断言は出来ませんが、確かに賛否両面の名盤アルバムたる「ビッチェズ・ブリュー」が、親しみ易くなったのは打ち消せないでしょう。

 CD-2 03 Spanish Key (alternate take)
 CD-2 04 John McLaughlin (alternate take)
 この2曲は今回、新発見で収録された所謂別テイクで、「Spanish Key」は本テイクよりも7分ほど短く、また「John McLaughlin」は逆に2分ほど長くなっています。
 このあたりは既に述べたように、アルバムの制作過程で堂々と行われたテープ編集の魔術を潜り抜けた成果とは、決して一概に断定は出来ません。確かに各人の演奏パートそのものは異なっているわけですし、特に「Spanish Key」の荒々しさは本テイクを凌ぐ瞬間も確かにあると思いますが、やはり継ぎ接ぎもあるんでしょうねぇ……。
 実は、この時のセッションからは案の定というか、ストレートな演奏パートや編集前のソースがブートとして幾つも流出していて、それらを聴いて分かることは、やはりテープ編集というジャズにとっては禁断の裏ワザが確かにあったという現実です。
 その意味で、ここに収められた「John McLaughlin」の別テイクは、なかなか自然体で、私は好きです♪♪~♪

 CD-2 03 Miles Runs The Voodoo Down (single edit)
 CD-2 04 Spanish Key (single edit)
 CD-2 05 Great Expectation (single edit)
 CD-2 06 Littl Blue Frog (single edit)
 以上の4トラックは45回転のシングル盤用に短く編集されたバージョンで、おそらくは販促用のプロモ盤としてラジオ局やジュークボックスで使われていたものじゃないでしょうか?
 実は当時のマイルス・デイビスはレコード会社からの要請で、白人青少年の前で演奏する事を勧められ、それはもちろんレコードの売り上げを伸ばす戦略だったわけですが、同時にこうしたプロモ盤が作られていても不思議ではないと思います。そして、それを実際に聴いてみると、確かに物足りなさは否めませんが、なかなかツボを押さえたハイライト的な編集がニクイばかりですよ。
 ちなみに「Great Expectation」と「Littl Blue Frog」は、正確に言えば「ビッチェズ・ブリュー」セッションでの録音では無く、同年11月のスタジオレコーディングからの音源ですが、もしかしたら、其々が「Miles Runs The Voodoo Down」と「Spanish Key」のリメイクと受け取れない事も無い事情から、ここに収められたのかもしれません。
 気になる演奏メンバーはウェイン・ショーターが抜け、代わってスティーヴ・グロスマン(ss) が参加する等、若干の変動があり、またシタールやタブラを操るインド音楽のプレイヤーとか、あるいはアイアート・モレイラ(per) に代表される南米系のミュージシャンの活躍も目立つという、次なるステップへの過渡期的なものになっています。

 CD-3 01 Bill Graham Intro
 CD-3 02 Directions
 CD-3 03 Bitches Brew
 CD-3 04 The Mask
 CD-3 05 It's About That Time
 CD-3 06 Sancruary
 CD-3 07 Spanish Key / The Theme
 CD-3 08 Miles Runs The Voodoo Down
 CD-3 09 Bill Graham Outro
 この3枚目のCDには、1970年8月18日のライプ音源が収められていて、ジャケットの表記では未発表とされていますが、実はこれまでブート音源としては有名なもののひとつでした。
 ただし流石にオフィシャルとして発売するだけあって、堅実でシャープなリマスターによる音質は飛躍的に向上しています♪♪~♪
 メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ゲイリー・バーツ(ss,as)、チック・コリア(el-p)、キース・ジャレット(org)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、アイアート・モレイラ(per) という、今では夢のオールスタアズですから、その凄まじいまでの勢いと集中力が名演を決定的にしています。
 それは初っ端の「Directions」からバンド全員のブチキレ具合が半端ではなく、ビシバシにキメまくるジャック・ディジョネットの大車輪ドラミングに煽られたゲイリー・バーツがド派手に暴れ、エグ味の強いデイヴ・ホランドの定型リフを頼りに好き放題というチック・コリアとキース・ジャレットの熱い掛け合い! もちろん親分のマイルス・デイビスも大ハッスルの突撃突進ですよ。
 う~ん、こんなに熱いマイルス・デイビスっ!!!
 演奏は当時の慣例として、各曲が切れ目無く、メドレー形式で進んで行きますが、その場面転換の暗黙の了解が、これまたスリル満点なんですよねぇ~♪
 もちろんバンドのテンションは上りっぱなしというか、ギリギリの緊張感とメンバー各々の自己主張がマイルス・デイビスの意図をしっかりと理解しつつ、それに逆らうような場面さえ聞かせてくれるんですから、たまりません!
 例えばポリリズムでフリー寸前の「Bitches Brew」が徐々にファンクビートの輪郭を浮き立たせながら、続く「The Mask」ではデイヴ・ホランドの怖すぎるベースソロに繋げていくあたりのジャズっぽい仕掛け、それをクールダウンさせるマイルス・デイビスのトランペットの合図の出し方から、いよいよミステリアスなファンキーロック大会を演じてしまう「It's About That Time」への流れは圧巻ですよ♪♪~♪
 既に述べたように、このライプが行われた時期は、新譜としての「ビッチェズ・ブリュー」が世に出た頃ですから、こんな激烈な生演奏に接したら、例え2枚組LPであったとしても、絶対に買ってしまうでしょうねぇ~~。
 つまりこうした強烈なライプが、プロモーションとしても大成功だったと思うんですよ。それゆえに「ビッチェズ・ブリュー」がアメリカで売れまくり、決定的な歴史的名盤となったのもムペなるかなです。
 ところが我国では、そうしたリアルタイムでイケイケのマイルス・デイビスに接する事が出来なかったのですから、レコードだけでは到底理解不能な「ビッチェズ・ブリュー」、あるいはその前後に出た作品に対し、賛否両論が渦巻くのは当然だったんじゃないでしょうか。
 そして実際、サイケおやじにしても、「ビッチェズ・ブリュー」が分かったような気分になれたのは、後に発売された「ブラック・ビューティ」や「アット・フィルモア」あたりのライプ盤を聴いてからでした。もちろん両方とも、この音源と同じ時期のものですから、聴き比べも興味深々なんですが、それにしても音質が向上した所為もあって、ここでの演奏展開には凄みと熱気で圧倒されてしまいますよ。
 それは後半、「Sancruary」から「Spanish Key / The Theme」への奔放ながらも、実は緻密に計算された流れの良さ、そしてアンコール的に演じられる「Miles Runs The Voodoo Down」での、まさに怒涛の暗黒ファンクが大爆発!! それはもう、ヘヴィな毒々しさと過激な思い入れに満ちた一期一会の瞬間芸という、これぞっ、最先端のモダンジャズだったに違いありません!
 ちなみに演じられた各曲の構成や展開は、やはりライプの現場を重視するジャズ的な方針から、スタジオレコーディングされたテイクとは異なる部分が多く、これが本当にあの曲なのか? という疑問が打ち消せないところもあると思います。
 しかしマイルス・デイビスが演じるからには、それも結果オーライというか、リスナーは心して、その世界に没入させられる事を否定してはならないでしょう。と言うよりも、これほど熱くてハイテンションの演奏であれば、聴いているうちに自ずと虚心坦懐に惹きこまれてしまうはずです。

 DVD-01 Directions
 DVD-02 Miles Runs The Voodoo Down
 DVD-03 Bitches Brew
 DVD-04 Agitation
 DVD-05 I Fall In Love Too Easily
 DVD-06 Sancruary
 DVD-07 It's About That Time / The Theme
 こちらは「ビッチェズ・ブリュー」のセッションが終了した直後の欧州巡業から、1969年11月4日のステージを収めたライプ映像で、ジャケットには未発表とクレジットされていますが、実は以前にご紹介したDVD「Live In Copenhagen & Rome 1969」のコペンハーゲンのパートと内容は同じです。
 ただし今回は、そこでカットされていた「Directions」と「Miles Runs The Voodoo Down」が入った、おそらくは完全版なのが嬉しい限り♪♪~♪
 そしてメンバーはマイスル・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ss,ts)、チック・コリア(el-p)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds) という、これまた凄いクインテットですから、ここで鑑賞することが出来た「Directions」や「Miles Runs The Voodoo Down」の大部分が4ビートを基調としたモード&フリーな展開になっているのも必然性があるんじゃないでしょうか。
 つまりマイルス・デイビスにすれば、「ビッチェズ・ブリュー」でやってしまったロックやファンクのゴッタ煮ビートの演奏をそのまんま観客の前で披露するには時期尚早という考えがあったのかもしれません。
 結局はジャズも保守的なファンを大切にしなければ営業としては成り立たない芸能ですからねぇ、それは大切なものだと思います。
 しかし中盤からの「Bitches Brew」以降は、親分以下のバンドメンバーも含めて、全く容赦無い姿勢で、それは前述した「Live In Copenhagen & Rome 1969」の項目を読んでいただきたいのですが、とにかく激ヤバの演奏を披露していくのです。
 ちなみに気になる画質は、その「Live In Copenhagen & Rome 1969」から、グッと向上したAランクのカラー映像で、音質共々、素晴らしいリマスターは感動必至!

ということで、イマイチ分からない部分も多い「ビッチェズ・ブリュー」が、何故に歴史的名盤と評価されるのか? その真相の一端に触れることが、このセットから多少は可能じゃないかと思います。

で、今回の特筆ポイントは纏めると以下のとおりです。

 ●既発の「ビッチェズ・ブリュー」音源は、1998年制作のリミックスバージョン
 ●「Spanish Key」と「John McLaughlin」の別テイクが初登場
 ●シングル用編集バージョンの初CD化
 ●「CD-3」収録のライプ音源のリマスターが良好
 ●「DVD」収録のライプ映像が画質&音質共々に過去最高

ちなみに日本盤と輸入盤がある事は当然なのですが、ちょいとした品質の問題からして、個人的には日本盤をオススメしたいと思います。

あと、繰り返しになりますが、ブートで既に流出している未編集の関連音源は、ここまで来ると近い将来に「Bitches Brew Naked」なんてコンセプトの公式盤が出るんじゃないかと思うばかりです。

それほど「ビッチェズ・ブリュー」には深い謎と不滅の価値がある事は、真実を分からないなりに、サイケおやじにも否定することが出来ません。

ですから、前述した4CDセットの「Complete Bitches Brew Session」も買い、また今回のブツも速攻で入手してしまう宿業を晒しているのです。

あぁ、本当に自嘲するばかりですが、それでも皆様には強くお楽しみいただきたいと願っております。

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マイルス&トレーンのマンネリと過激

2010-05-20 17:04:39 | Miles Davis

The 1960 German Concerts / Miles Davis With John Coltrane
                                                                   
 (Jazz Lips = CD)

最近少しずつジャズモード再突入にスピードがついておりますが、それをSJ誌の休刊やハンク・ジョーンズの死がきっかけだったなんていうことには、絶対したくありません。単なるサイケおやじの気まぐれにすぎないのです。

そこで本日ご紹介は、ちょいと前にゲットしていたマイルス・デイビスの発掘ライプCDで、裏スリーブには「All Tracks Previously Unissued!」と記載されているとおり、少なくとも私は初めて聴いた音源でした。

しかも収められている中身がマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョン・コルトーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、ジャズ者なら絶対に外せない時期のクインテットが1960年に敢行したドイツ巡業からのライプなんですから、聴かずに死ねるか!?!

1960年4月3日、ミュンヘンでのライプ
 01 So What
 02 'Round Midnight
 03 Walkin'
(imcomplete)
 04 So What (alternate)
 まず、気になる音質ですが、これが良好♪♪~♪
 しかもリアルステレオミックスなんですよねぇ!! とにかく盛大な拍手に迎えられて始まる「So What」が、真ん中にジミー・コブのクールで熱いドラムス、そして左にマイルス・デイビス、右のジョン・コルトレーンという2管が揃い踏みするテーマのカッコ良さは本当に痛快ですよ。
 ただしウイントン・ケリーのピアノが引っ込んでいるのが残念至極ですし、ポール・チェンバースのペースも再生時に低音を強調しないと、辛いものがあるかもしれません。
 肝心の演奏は、もちろん快調そのもので、マイルス・デイビスは十八番のフレーズしか吹かない潔さが安心感に繋がっていますし、このリズム隊ならではのビシッとメリハリの効いたグルーヴは、何時聴いても唯一無二の素晴らしさでしょう。
 しかしジョン・コルトレーンだけは別世界というか、いきなり初っ端の「So What」からアグレッシヴというには、あまりにも過激なノリと異次元フレーズの連発で、実に意地悪なアドリブ構成に終始しています。いや、「構成」なんていう整ったものではないでしょうねぇ。もはや「地獄」と呼んでも異論の出ないところだと思います。
 そしてそれを必死で現世に繋ぎとめようとするリズム隊の奮闘も虚しいばかりというか、マイルス・デイビスのバックでは最高にキマっていたジミー・コブのドラミングが置き去りにされる瞬間が、何度も現れては消えるのですから!?! もうリズム隊だけのパートになると、ヤケッパチ気味なのが最高に面白いです。
 ちなみにここでは最初、右チャンネルに定位していたジョン・コルトレーンのテナーサックスが、アドリブに突入するや、真ん中に移動してくるミックスも良い感じ♪♪~♪
 そして続く「'Round Midnight」が、これまた危険極まりないとでも申しましょうか、最初は例によってマイスル・デイビスのミュートがスリルとサスペンスをミステリアスに歌いあげ、あの過激なブリッジリフを導くのですが、それ以降のジョン・コルトレーンの独り舞台が、もしかしたら怒り心頭かもしれません。なにしろ最初こそ、親分が作ってくれた雰囲気を大切にしているようなんですが、すぐにジコチュウな世界に耽溺するかのような過激節の連発に移行したくて、そのウズウズしている様子が、当時としては最新のテクニックだったであろうハーモニクス吹奏の頻繁な使用に現れているように思います。
 さらに次の「Walkin'」では、そのあたりの思惑が交錯しているんでしょうか、マイルス・デイビスの先発アドリブは毎度お馴染みのパターンを踏襲する、実に心地良いマンネリに満ちていますが、ケリー、チェンバース&コブという所謂黄金のリズム隊に安心して身を任せている感じが結果オーライでしょうねぇ~♪ 中盤からは相当に思いきった過激さを聞かせてくれますよ。
 ところがジョン・コルトレーンは本当に我儘で、せっかく盛り上がったところに水を差すかのような肩すかしから、それを逆手に活かしたかのような暴虐のアドリブを展開していくのですから、当日の観客のほとんどは呆気にとられていたんじゃないでしょうか。
 実際、途中からは完全に後の「Chasin' The Trane」が予行演習されていますよ。
 あぁ、シーツ・オブ・サウンド、恐るべし!
 ビートもリズムも無視した瞬間から、ハッと我に返ってバックに合わせていく、まさにこの時期ならではジョン・コルトレーンが堪能出来ますよ。当然、観客も最後には大歓声です。
 ただし残念なことに、続くウイントン・ケリーのアドリブの途中でフェイドアウト……。演奏がコンプリートで無いことが実に惜しまれます。
 それとこれも同日に演奏されたという、ふたつめの「So What」なんですが、おそらく当時の巡業形態は幾つかのバンドがひとつの会場に出演するという、所謂パッケージショウだったと思われますから、昼夜2回のステージがあったのでしょう。付属の解説書にも、そのように記載してありますが、どっちがどっちのショウからの音源というのは、特定されていないようです。
 もちろん別テイクも音質は良好なリアルステレオで、今度はマイルス・デイビスが右チャンネル、ジョン・コルトレーンが左から真ん中へと激しく移動するミックスが何とも言えませんし、後半のウイントン・ケリーのパートになると、リズム隊全部が左チャンネルに纏められ、ちょいと勿体無い感じなんですが、当然ながら演奏は充実の極みです。
 この日の録音で全体的に良いのは、ジミー・コブのテキパキとしたドラミングが迫力満点に楽しめることも、魅力のひとつだと思います。

1960年3月30日、フランクフルトでのライプ
 05 All Of You
(imcomplete)
 06 So What
 こちらは客席からの隠密録音、もしくはラジオからのエアチェックようで、残念ながら音質がガクッと落ちるモノラルミックスです。
 しかし耳が慣れてくると各楽器のバランスはきちんとしていますから、ジャズ者ならば、それなりに聴けてしまうと思います。
 もちろん演奏そのものは充実していますよ。
 まず「All Of You」はマイルス・デイビスが十八番の歌物ですから、得意のミュートでグッと抑えた感情表現を聞かせてくれるという、ファンが最もシビレる展開がニクイばかり♪♪~♪ 切り詰めた音選びで繰り広げられる、そのテーマ変奏の上手さは流石の一言ですし、リズム隊の絶妙の伴奏も素晴らしいですねぇ~♪
 そしてこちらでもジョン・コルトレーンが大ハッスル! 神妙なアドリブへの入り方とは逆転していく音符過多症候群によるスケール練習寸前の遣り口も、所々に原曲メロディの断片や自己流スタンダード解釈のミソをきっちり入れていますから、このあたりはサイケおやじの大好きな展開になっています。
 ただし残念ながら、ここでもその途中でフェイドアウトが実に勿体無いです。
 次に、このCDでは三回目の登場となる「So What」は、当然ながら快調至極の演奏で、特にマイルス・デイビスのアドリブは、もう即興とは言えないほどにマンネリ的な完成度が認められ、そこが実にたまりません♪♪~♪
 ですからジョン・コルトレーンも右倣えではないんでしょうが、これしかないのシーツ・オブ・サウンドで大爆発のアドリブを展開すれば、バックの黄金のリズム隊も負けじと刺戟的なビートを送り出し、快楽的に異常なテンションを高めていくのです。
 う~ん、いんぷれっしょんずぅぅぅぅ~~!
 しかもこのテイクではリズム隊がバランス良く聞こえる所為もありますが、4月3日の遣り口よりもグッと纏まりの良い展開が顕著で、それにしても僅か5日ばかりで、どうしてそんなに変貌するの!? という疑問を抱かずにはいられません。
 結局、それほど日進月歩していたのが、当時のジョン・コルトレーンの勢いだったんでしょうねぇ。
 演奏は終盤になって、いよいよウイントン・ケリーの浮かれたような悦楽のアドリブ、そして黄金のトリオならではのクールなハードバップが完全披露され、そのグルーヴの快適さも毎度の「お約束」ばっかりですが、やっぱり嬉しくなってしまいますよ。

ということで、まだまだこんな凄い音源があったのか!?!?!

という歓喜驚嘆と共に、演奏そのものの凄さは圧巻ですから、本当にその場の観客は幸せの極みだと羨ましくなります。

そして素直に、この音源に接した現実にも感謝しなければならないでしょうねぇ。

既に述べたように後半2曲の音質はイマイチなんですが、これだけの演奏が聴けるのであれば贅沢は禁物です。

やっぱり、ジャズは悪魔の音楽なんでしょうか、やめられませんねぇ♪♪~♪

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尖がりファンクな1973年のマイルス

2009-12-05 11:33:55 | Miles Davis

Miles Davis Vienna 1973 (Jazz Vip = DVD)

昨夜はおやじバンド再開に備えて楽器屋へ行ったついでにソフト屋も物色していたら、いろいろと衝撃的なブツを発見してきました。

その中で、まず本日ご紹介するのは、電化期のマイルス・デイビスが一番に尖がっていた1973年当時のライプ映像! これが物凄い悶絶演奏でした。

収録されたのは1973年11月3日のオーストリア巡業から、メンバーはマイルス・デイビス(tp,key)、デイブ・リーブマン(ss,ts,fl)、レジー・ルーカス(g)、ピート・コージー(g,per)、マイケル・ヘンダーソン(b)、アル・フォスター(ds)、ムトゥーメ(per) という7人編成のバンドで、これはもちろん同年6月に来日した時と同じメンツです。

 01 Turnaroundphrase
 02 Tune In
 03 Ife
 04 Right Off
 05 Funk
 06 Calypso Frelimo

収録演目は上記のようなチャプターが入っていますが、皆様がご存じのとおり、当時のマイルス・デイビスのバンド演奏は、特にライプの現場ではブッ通しの切れ目無しでしたから、ここでも約63分間の電撃ゴッタ煮ファンクが楽しめます。

正直に言えば、このバンドが1973年に来日した時にNHKがライプの会場からテレビ中継を行い、それに接した若き日のサイケおやじは、なんだか凄いことをやっているけど、ほとんど???の世界だったのです。

なにしろマイルス・デイビスはミュートのトランペットに電気のアタッチメントとワウワウを装着し、うつむいて意味不明のフレーズしか吹きませんでしたし、それを支えるリズム隊が作り出すビートはファンクとアフロとカリブラテンとフリーのドロドロギトギトの世界でしたから、唯一の王道ジャズっぽいのがデイヴ・リーブマンの存在だけというのでは……。

しかし、それが自分なりに凄い興奮に結びついて理解出来たような気分にさせられのは、次なる来日となった1975年のステージから作られた2組のライプ盤「アガルタ」と「パンゲア」を聴いてからです。そして追々、リアルタイムでは問題作としてジャズ喫茶やイノセントなファンからは異端の扱いを受けていた「オン・ザ・コーナー」や「マイルス・イン・コンサート」あたりの先端ファンク作品が楽しめるようになったのですから、このDVDにも期待があったとはいえ、ここまで緊張感と熱気が激ヤバだったとは、最高に嬉しいプレゼント♪♪~♪

実は前述したNHKの放送もブートとしてCDやアナログビデオが1980年代から出回っていましたが、今回のブツは当然ながらカラー映像として画質も「A」ランクですし、音質もバランスが良く、低音がド迫力に出ていながら、各楽器のバランスも実に分離が明確という優れものです。ただし演奏中のクレジットで、ピート・コージーを「レジー・ルーカス」と字幕を入れているのは大間違いの減点です。

まあ、それはそれとして肝心の演奏は、いきなりドカドカうるさいゴッタ煮ファンクビートがスタートし、例によって下ばっかり向いているマイスル・デイビスがワウワウ、ピッカビカのミュートトランペットで電気増幅させたフレーズを撒き散らしますが、パックではとにかくファンキーなリズムカッティングが至芸の域に達しているレジー・ルーカス、ジャズっほいキメなんか使わないマイケル・ヘンダーソンのエレキベース、ロックジャズに邁進するアル・フォスターのドラムス、さらにアフロとカリブの汎用打撃に集中するムトゥーメのパーカッションが、とにかく強烈な存在感!

そしてモードジャズに拘り抜くデイヴ・リーブマンのソプラノサックスが痛快ですし、ピート・コージーのデタラメ寸前なスケールがハナからケツまで暴走する展開には、完全に血沸き肉踊りますよ。

このパートが最初のチャプターで示される「Turnaroundphrase」でしょうが、ちなみにマイケル・ヘンダーソンはバンド加入以前はモータウンレコードのセッションプレイヤーでしたし、レジー・ルーカスはスティーヴィー・ワンダーの巡業バンドメンバーだったと言われていますから、完全にモダンジャズとは別世界で培われたキャリアが、ここでの新風となったのでしょう。

もちろん摩訶不思議なウネリに徹したギターソロを聞かせるピート・コージーにしても、本来はシカゴのチェススタジオをメインに活動していたセッションプレイヤーでありながら、同時にフリージャズをやっていたそうですから、そのスタイルの混濁性はムペなるかな!

一方、デイヴ・リーブマンは白人ながらエルビン・ジョーンズ(ds) のバンドレギュラーも務めた若手の実力派として、正統派モダンジャズの中では特にジョン・コルトレーンを信奉するスタイルを押し通しますし、ここでは濁った8ビートを叩きまくるアル・フォスターにしても、本来は4ビート派ですから、決して妥協は許さない親分の意図を裏切りません。

またリズムとビートの立役者になっているムトゥーメも、かつてはマイルス・デイビスと一緒にハードバップをやっていたジミー・ヒース(ts,ss) の実子ですから、本来のジャズフィーリングは体に染み込んでいるんじゃないでしょうか。どんなにハチャメチャな展開になっても、実に芯のしっかりした演奏が爽快至極です。

そして、そうした子分達を率いるマイルス・デイビスは、例え電気増幅の世界に飛び込んで、しかも意味不明のフレーズを独り言的に撒き散らしても、それが完全にマイルス・デイビスでしかないという唯我独尊が、まさに帝王の証明でしょう。

そういえばマイルス・デイビスを我国で「帝王」の称号で奉ったのは、この時期以降じゃないでしょうか?

ですから、そのファッションにしても、所謂ロンドンブーツ系の踵の高い靴、白いロングスカーフにベルボトム、さらに大きなサングラスとアフロなアクセサリーが、ロックスタアにも負けないド派手なフィーリングで、このあたりは黒人フッションのロック的な表現としても若い皆様には見逃せない楽しみかと思います。

もちろんバンドメンバーのフッションと佇まいも同様に凄いですよ♪♪~♪

ほとんどがアフロファンキー、そしてサイケデリックの残滓ともいうべきセンスの塊なんですが、中でもピート・コージーの怪人的な風貌は、椅子に座りっぱなしでエレキを抱え、トンデモ系のスケールを駆使した痛烈なアドリブソロを披露しまくる全篇において、もはや天下無敵の独演会!

そんなこんなが混然一体となったステージでは、演奏そのものがハイテンションの極みとはいえ、決して全員がデタラメをやっているわけではなく、おそらくは暗黙の了解によるアドリブのやり方があるんでしょう。聴いていて圧倒されるそこには、親分の指示で突如として急ブレーキ的にストップするリズム隊、しかしそこには留まらないアドリブソロの演奏者の独り善がり、またキーボードまでも弾きながら、バンドメンバーを自在に泳がせ、締め付けるマイルス・デイビスの存在感が恐ろしいばかりに際立っていくのです。

それは終盤の「Calypso Frelimo」のパートへと収斂し、怖いほどの緊張感と不安定なカタルシスの提供によって、演奏は唐突に終了するのですから、観客は呆気にとられて拍手するのがやっと……。

これが当時、ロックをも超越していたジャズの最先端!

今にして思えば、そう納得するほかはありませんねぇ~~♪

例えリアルタイムで気がつかなくとも、こうして当時の映像と演奏が楽しめるのですから、天国のマイルス・デイビスは「してやったり」でしょうか。

最後になりましたが、レジー・ルーカス、マイケル・ヘンダーソン、そしてムトゥーメはマイルス・デイビスのバンドを辞めた後、堂々とブラコンやポップスの世界で大輪の花を咲かせていますし、デイヴ・リーブマンとアル・フォスターはモロジャズやジャズフュージョンへの拘りを強め、ピート・コージーはアングラな活動へと舞い戻って行ったのが、今日の歴史です。

その意味で、全員が尖がりまくっていた頃が実際に追体験出来るのですから、これは素敵な復刻でしょう。決して万人向けではありませんが、熱い、本当に熱い演奏は最高♪♪~♪

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キースが暴れたマイルスバンド1971&モア

2008-10-19 12:46:35 | Miles Davis

Miles Davis & Keith Jarrett The 1971 Berlin Concert (Jazz Vip = DVD)

マイルス・デイビス関連の発掘物は近年、ますます奥の細道状態に入ってきましたが、これまた強烈なブツが出ていたので、速攻でゲットしてきました。

内容は1971年のマイルス・デイビス、所謂「電化マイルス」のライブ映像で、タイトルどおりにキース・ジャレットが大活躍! しかもオマケとしてキース・ジャレットがソロピアノを演じた1974年のライブ映像までもが入っています――

マイルス・デイビス・グループ:1971年11月6日、ベルリンでのライブ映像
 01 Berlin Medley
    a) Honky Tonk
    b) What I Say
    c) Sanctuary
    d) It's About That Time
    e) Funky Tonk
 メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ゲイリー・バーツ(ss,as)、キース・ジャレット(el-p,key)、マイケル・ヘンダーソン(el-b)、レオン・チャンクラー(ds)、ドン・アライアス(per)、ムトーゥメ(per) という、時期的には例のワイト島音楽祭の直後に再編されたバンドによる欧州巡業から、音源だけは数種のブートが出回っていました。しかし今、あたらためて映像を観るとやっぱり強烈ですねぇ~。ちなみに音はモノラルミックスのカラー版です。
 マイルス・デイビスはトンボメガネのサングラスで下を向きながら、電気アタッチメントがつけられたトランペットでワウワウ、キュウキュウ、ビリビリと意味不明のラップ系フレーズしか吹きません。
 演目は一応、上記の曲名がジャケットに記載されていますが、例えば「It's About That Time」なんかは、あのサンタナみたいな嬉しい後半のリフは出てこない断片であり、他にも様々に知っているメロディやキメのリフがゴッタ煮となっています。
 そのスタイルはマイルス・デイビスのアルバムで言えば「Live=Evil」~「In Concert」のアフロファンキー、そしてサイケロックとニューソウルの混濁期ですから、このあたりが好きな皆様ならば、その怒涛のファンクピートとポリリズムの嵐に翻弄されるでしょう。実はこの時期のマイルス・デイビスのやっていたことは、好き嫌いがはっきりしているはずなのに、一度虜になるとクセになるアブナイ魅力に満ちているのです。呪術的とでも申しましょうか。
 まず冒頭からドンスコトドスコというアフロビートでマイルス・デイビスが俯いてワウワウなペットを吹くというより、独善的な独り言……。その隙間にキース・ジャレットのエレピや電子オルガン、打楽器&ドラムスがオカズを入れまくり、根底はマイケル・ヘンダーソンのペースがしっかり支えるという展開の「Honky Tonk」が激ヤバです。マイルス・デイビスも演奏が進むにつれてキュルキュルキュルキュル~、と一応はフレーズらしい熱い音も出していきますが……。
 ここはキース・ジャケットのエレピソロがモードとファンクのゴッタ煮アドリブで意味不明の凄さを聞かせてくれます。もちろん、あのオーバーアクションとニューソウルな普段着姿、自己陶酔の独り芝居みたいなところは好き嫌いもあるでしょうが、これはこれで私は許します。
 そして次のパート「What I Say」では、ようやくゲイリー・バーツが登場し、激しくテンションの上がったリズム隊をバックに熱血のソプラノサックスを垂れ流し! その直前にマイルス・デイビスと一緒にテーマらしきリフを合奏するところもカッコイイです。
 ちなみにドラムスのレオン・チャンクラーはサンタナからスライ、さらにはウェザーリポート等々でも敲きまくった人気ドラマーですが、個人的にはここでの些か小賢しいドラミングは、前任者のジャック・ディジョネットの野太いビート感に比べてイマイチと感じます。しかしドン・アライアスとムトゥーメという2人の強烈な打楽器組がいますから、結果オーライでしょうねぇ。実際、ここで発散される混濁のファンクピートと土人のリズムは唯一無二の凄さです。
 またここでもキース・ジャレットが大暴れ! それが一転して静謐な「Sanctuary」が始まると、今度は幻想的な伴奏が冴えまくりです♪ もちろんテンションの高さも素晴らしく、マイルス・デイビスも煽られ気味に緊張感溢れるところを聞かせてくれます。さらにゲイリー・バーツのアルトサックスソロの背後を彩る電子オルガンの響きも最高なんですねぇ~~~♪
 ドロドロしたリズム隊のグルーヴの中では、単調なマイケル・ヘンダーソンのペースもハッとするほど良い感じで、演奏はますますディープな展開となっていきますが、キース・ジャレットのエレピがアドリブを始めると、その場は完全にメロウファンクの世界に染まって行きます。それを許すまじと奮闘するドラムス&打楽器組の我儘な攻撃も凄すぎますから、ここは映像で観るとキース・ジャレットの自己陶酔がイヤミなほどですが、私はここも許します。
 演奏はこの後、マイルス・デイビスがスパニッシュ調のフレーズを入れたりして場面転換、これが「It's About That Time」ということになるんでしょうが、ちょいと意味不明……、。しかしバックの面々の遠慮しない自己主張には好感が持てますし、ロック色が強まっていくバンド全体のグルーヴも熱いです。う~ん、ジョン・マクラフリンのギターが出て欲しい!
 という贅沢な夢想を一気に吹き飛ばすのが、続く「Funky Tonk」です。それはキース・ジャレットの思わせぶりな独り芝居に打楽器組が執拗に絡みつく場面転換のパートから、あの快楽的なファンキーフレーズに移行するという最高の展開! オーバーアクションのキース・ジャレットと打楽器のアップという場面を細切れに見せるカメラワーク&画像編集も秀逸ですし、もちろんバンドのアンサンブルもキマッています。
 マイルス・デイビスもいよいよクライマックスとあって、ワウワウトランペットも全開の必死さには鬼気迫るものが漂います。黒と赤を基調としたファッションも、如何にも当時というムードですねっ♪
 ただしここはゲイリー・バーツが些かテンションの低い雰囲気……。まあ、逆に言えば周囲が凄すぎる結果なんでしょうが、それに煽られて後半に持ち直していくフリーキーなアルトサックスの響きが、やっぱりこれはジャズなんだなぁ~、と実感させられたりします。
 そしてついに電化アタッチメントを外したマイルス・デイビスが、あの哀切のミュートプレイを聞かせてくれるのが、本当のクライマックスかもしれません。絶妙の伴奏をつけるキース・ジャレットのエレピの響きも澄んだ世界を醸し出し、じっくりとしたファンクピートと「マイルス・デイビスの世界」が混然一体となったこの瞬間こそが、最高! やるだけやって勝手に去っていく姿にもスーパースタアの輝きがあります。
 演奏は通して、ここまで約1時間ですから、ちょいと疲れるかもしれませんが、この大団円を堪能する通過儀礼として、素敵な時間は保証付きだと思います。ちなみに映像は既に述べたようにカラーで、音質は問題ありませんが、画質は若干の滲みもある「A-」程度です。

キース・ジャレットのソロコンサート:1974年7月26日、イタリアのジャズ祭
 02 Improvisation No.1
 03 Improvisation No.2
 これは白黒映像ですが、イタリアのウンブリア・ジャズ祭でのライブ演奏で、もちろんこの時期のキース・ジャレットが一番のウリにしていたソロピアノ♪ 当然ながら、あの美メロが出まくったゴスペルファンキーな世界が楽しめます。
 しかし残念ながら、前半は約9分弱、後半は5分ほどの短いもの……。
 それでも楽器搬入のドキュメントがあったり、キース・ジャレット十八番の自己陶酔ケツ振りアクションがご覧になれますよ。
 もちろん演奏はファンならば納得して感涙のソロピアノが素敵です。大ヒット盤「Kolm (ECM)」あたりが好きな皆様ならば必見でしょう。ちなみに画質は一応「A」ですが、音質は問題無いモノラルミックスです。
 あぁ、これの完全版が出たらなぁ~。

ということで、タイトルに偽り無し!

つまりキース・ジャレットが主役の映像作品です。それはオマケのソロコンサートはもちろんの事、マイルス・デイビスのライブシーンにおいても、キース・ジャレットの大活躍が本当に顕著なんですねぇ~。

大方のジャズファンは、この時期の電化マイルスに得体の知れないものを感じて、その評価は二極分化されていると思いますが、この映像ライブのようにキース・ジャレット中心に鑑賞すれば、それも「また良し」じゃないでしょうか?

ここはひとつ、キース・ジャレットに免じて楽しむのも結果オーライかもしれません。私は、繰り返しますが、これが好きです。

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