■シマロンの薔薇 / PoCo (ABC / 日本コロムビア)
今日は妙にウエストコーストロックが恋しいということで取り出したのが、掲載のシングル盤でして、殊更A面に収録の「シマロンの薔薇 / Rose Of Cimarron」は、これが世に出た1976年から以降、世界中のラジオではカントリーロックと云えば、これっ! てなもんの定番曲となり、我が国でも当時はFENで流れまくっていた、本当に気持ちの良い傑作でありました。
そしてもちろん、今でも針を落とした瞬間から、そ~ゆ~気分は不滅であることを実感するばかりです。
あぁ~~、この軽快なリズムに哀愁が溶け込んだメロディラインの素敵なフィーリング♪♪~♪
演じているポコは説明不要かと思いますが、バンドのルーツは
バッファロー・スプリングフィールドに由来しており、そこが解散状態となった1968年にメンバーだったリッチー・フューレイ(vo,g) とジム・メッシーナ(vo,g,b) が中心となって立ち上げた業界注目の新プロジェクトで、ラスティ・ヤング(steel g,vo,etc)、ランディ・マイズナー(b,vo)、ジョージ・グランサム(ds,vo) という実力派が参集していながら、その最初のレコーディング作業時からトラブルが発生し、なんとっ! 今でも傑作と称えられているデビューアルバム発売時の1969年には既にランディ・マイズナーが脱退し、替わってティモシー・シュミット(b,vo) が参加するというゴタゴタがあったのに続き、 意欲的なライブ巡業を積み重ねて人気を確立させた1970年になると、今度はジム・メッシーナがリッチー・フューレイとの対立から身を引くという「お家騒動」が勃発!
本来であれば、ここでバンドは解散というのが筋道なんでしょうが、現実的にはマネージメント契約や上り調子の人気等々から、これまた新メンバーとしてポール・コットン(g,vo) を迎え入れて急場を乗り切ったものの、このあたりの1972年頃から活動が空回り気味に……。
この背景には前述ランディ・マイズナーが脱退後に参加した
イーグルスの大ブレイク、さらにはジム・メッシーナがケニー・ロギンス(vo,g) のプロデュースを担当した流れの中で結成された
ロギンス&メッシーナが業界から高い評価を与えられ、そのシワ寄せがポコに!? という推察は易いところでしょう。
実際、イーグルスもロギンス&メッシーナもシングルヒットを飛ばし、アルバムも売れ、ライブでの集客も良かった事に比べ、ポコは心機一転の意欲作としてリリースした2枚のアルバム「フロム・ジ・インサイド / From The Inside (Epic)」「グッド・フィーリング / A Good Feelin' To Know (同)」が何れも思惑ほど売れなかったようで、ついにはバンド創業者のリッチー・フューレイが1973年に辞めると言い出したから、もはやこれまで……。
となるはずが、残されたラスティ・ヤング(steel g,vo)、ティモシー・シュミット(b,vo)、ジョージ・グランサム(ds,vo)、ポール・コットン(g,vo) の4人はポコを存続させる道を選択し、このあたりは契約の問題もあったのかもしれませんが、とにかくレコーディングやライブの現場では適宜助っ人メンバーを起用しつつ、しぶとく活動したことから、それなりに人気も安定したようで、1975年にはレコード会社を移籍してABCと契約するや、いよいよカントリーロックに留まらず、当時流行が萌していた都会派ソウル味を取り入れた所謂AOR路線にシフトしつつ、ウエストコーストロック伝来の爽やかなコーラスやサウンド作りも忘れていないという姿勢は、新たなファン層を惹きつけたように思います。
そして翌年発表したアルバム「シマロンの薔薇 / Rose Of Cimarron (ABC)」こそは、これぞっ! ポコの魅力が全開した傑作で、それはデビュー以来の正統派カントリーロック、ポール・コットンが参加してからの力強さを感じさせるアメリカンロックの味わい、さらには洋楽最前線のAORっぽさが巧みなバランスで配置融合されていたのですから、LPド頭に収録された表題曲がシングルカットされるやヒットするのもムベなるかな!
イントロからのアコースティックな演奏パートは言わずもがな、全篇から伝わってくるおおらかな雰囲気の素晴らしさには何度でも、そして何時までも浸っていたくなるんですねぇ~~♪
ちなみにアメリカ盤のシングルは編集された短縮バージョンですが、掲載の日本盤は5分超のロングバージョンで、アルバムに収録された6分半以上のフルバージョンに近くなっている事は要注意かもしれませんが、個人的にはアルバムバージョンが最高とは思いつつ、この日本独自編集のシングルバージョンにも愛着があります。
また、この機会に書いておきたいのは途中参加メンバーのポール・コットンについてで、既に述べたとおり、ジム・メッシーナの後釜としては所謂カントリーロック風味も薄く、失礼ながら洒落たセンスにも聊か欠けたところも感じられますが、実はサイケおやじはポール・コットンのそんなこんなのイモっぽいギターワークが好きでして、そこで当時、あれやこれやと調べてみたら吃驚仰天!?!
そのプロとしてのキャリアには、
シカゴの育ての親である
ウィリアム・ガルシオがプロデュースしたアルバムを2枚ほど出しているイリノイス・スピード・プレスと名乗るバンド活動があり、どうにかこうにかその1969~1970年にレコーディングされたLP諸作を聴いてみると、フォークロックやブルースロック、あるいはビートルズ風味やバーズっぽいカントリーロック等々、それらは垢抜けないながらも不思議な人懐っこさで演じられいるという、妙に憎めない仕上がりなんですよ。
このあたりは完全に十人十色の好き嫌いとは思いますが、すでに皆様がご推察のとおり、イリノイス・スピード・プレスは、前述ウィリアム・ガルシオによってシカゴと一緒にハリウッドに連れてこられたという経緯があれば、当時はシカゴの弟分的な扱いだったのかもしれません。
そしてポール・コットンがポコに加入したのも、シカゴのピーター・セテラの紹介だったという逸話も残されているようです。
閑話休題。
ということで、季節はようやく秋の気配ともなれば、この「シマロンの薔薇 / Rose Of Cimarron」のような爽やかな哀愁カントリーロックが心に染み入るのも当然が必然でしょうか。
それはまたまたサイケおやじの強い思い込みによるものと、皆様にはご容赦お願い致しとうございます。