OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ベニー・グリーンの微温湯ファンキー

2009-03-02 08:57:25 | Jazz

Walkin' And Talkin' / Bennie Green (Blue Note)

最近のギスギスした気分も、ベニー・グリーンのトロンボーンを聴いていると、自然に和んでまきす。実際、その悠長な歌い回しや長閑な演奏姿勢、適度なスワンプフィーリングは実に好ましいですねぇ~♪

そのキャリアはモダンジャズ創成期以前からあって、しかもバリバリのビバップ時代を通過しているはずなのに、例えば J.J.ジョンソンのような急速フレーズは使いませんし、まあ、このあたりは、やりたくても出来ないという事情もあるのかもしれませんが、個人的にはベニー・グリーン本人の資質に合わないから、やらないと思いたいです。

そして何時だってファンキーなホンワカ系ハードバップを演じてくれるですから、もう最高! このアルバムは、そうしたベニー・グリーンの気取らない普段着の姿が存分に楽しめる1枚です。

録音は1959年1月25日、メンバーはベニー・グリーン(tb)、エディ・ウィリアムス(ts)、ギルド・マホネス(p)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ドレアーズ(ds) という、些かB級グルメの面々ですが、もしかしたら当時のレギュラーバンドだったかもしれないという、実に気の合ったセッションが記録されています。

A-1 The Shouter
 ピアニストのギルド・マホネスが書いたオトボケファンキーな名曲で、冒頭のカウントからして微温湯ムードがいっぱいですが、しかし、これが曲者! こういうユルユルのグルーヴこそが、黒人ファンキーのひとつの表現方法だったと思われます。
 ちなみにギルド・マホネスは一部で熱狂的なファンが存在する味わい派の名手ですから、ここでもアドリブソロ&ツボを押さえた伴奏という活躍が見事ですし、持前のホンワカ節を全開させるベニー・グリーンやR&Bスタイルのエディ・ウィリアムスも、自分達が楽しんでいるような雰囲気で高得点でしょう。

A-2 Green Leaves
 これもギルド・マホネスのオリジナルで、ルンバのリズムも楽しいテーマからドドンパ4ビートに移行するアドリブパートまで、演奏そのものが楽しさの集合体♪♪~♪
 まあ、このあたりを緊張感の欠如とか、テンションが低いと思われるのは致し方が無いところかもしれませんが、私は、こういう昼間っから温泉に浸かったようなムードも、実は大好きです。
 そこはかとない哀愁とファンキーフィーリングを巧みに活かした各人のアドリブは、完全に「味」の世界ですが、これがクセになると抜け出せないのですねぇ~♪ 特にベニー・グリーンの一芸主義というトロンボーンは絶品ですよ。この分かり易いフレーズ、ホンワカしてハートウォームな良さは唯一無二でしょう。
 それはエディ・ウィリアムスの、同じようなフレーズばっかり吹いているテナーサックスの黒っぽさにも同様にありますし、ギルド・マホネスの疑似ソニー・クラーク節にも、思わずニンマリ♪♪~♪

A-3 This Love Of Mine
 歌物スタンダード曲ですが、本当にベニー・グリーン味が濃いテーマ解釈やバンドアンサンブルを聴いていると、これしか無い! という気分にさせられるほどです。原曲に秘められたジンワリとしたせつなさ、そして和みのフィーリングを、これほど上手く表現出来るバンドも稀だと思います。
 ベニー・グリーンのトロンボーンは相変わらずのノンビリムードですが、ひとつひとつのフレーズを大切にした歌心が素晴らしく、またエディ・ウィリアムスのテナーサックスがハードな音色で黒人ジャズのひとつの側面を披露しています。
 それとミディアムテンポで強靭なビートを提供するリズム隊では、ジョージ・タッカーの堅実なペースワークが流石の存在感!

B-1 Walkin' And Talkin'
 このアルバムタイトル曲はベニー・グリーンの会心のオリジナル!
 挨拶代わりにグルーヴィな4ビートでペースを設定するリズム隊の快演は、カウント・ベイシー調の味わいがあり、シンプルなギルド・マホネスのピアノと強引な4ビートウォーキングを響かせるジョージ・タッカーのペースが良い感じ♪♪~♪
 そしてシンプルなブルースのテーマリフが出てからは、ドラムスが一気にゴスペルムードの敲き方へ転じるあたりに、なかなかの芸の細かさを感じます。
 もちろんアドリブパートでは、ベニー・グリーンがファンキーにしてトボケまくりの大熱演! まあ、これを「熱演」と言うか否かは、個人の感性の分かれ目かもしれませんが、途中で入るテナーサックスとの合の手合戦も楽しいですねぇ~♪ このあたりの雰囲気の醸し出し方は、他のトロンボーン奏者には、ちょいと真似出来ない専売特許だと思います。
 エディ・ウィリアムスの分かり易いアドリブの魅力も絶大ですし、手拍子や合の手で煽るメンバー達の気の合ったムードの良さ♪♪~♪ 続くギルド・マホネスのファンキー節も冴えまくりですよっ! これぞファンキー&グルーヴィン、そしてホンワカハードバップの真髄と、断言させて下さい。

B-2 All I Do Is Dream Of You
 多くの歌手が歌っているヒット曲を、尚更に陽気なハードバップにしてしまうベニー・グリーンの潔さ♪♪~♪ テーマ部分からの底抜けな雰囲気には、これがブルーノートか!? とさえ思うほどですが、これで良いんでしょうねぇ~♪
 とにかくベニー・グリーンのフェイクとアドリブの楽しさは保証付きですし、リズム隊の心得た付き合い方も秀逸だと思います。
 それはエディ・ウィリアムスのテナーサックスの物分かりの良さにも共通している感じで、この人は毎回、同じフレーズの使い回しさという、決して一流では無い味わいが逆に最高ですね。これもハードバップの良さかもしれません。
 そしてギルド・マホネスは、もちろんファンキー!

B-3 Hoppin' Jones
 これまたギルド・マホネスのオリジナル曲ですが、ちょっと不思議なアブナサが潜むテーマがミョウチキリンです。ファンキーなのか、新主流派なのか、本当に???
 しかしアドリブパートに入ると、ハードな黒っぽさが表出し、エディ・ウィリアムスが、これが本領と思わせる熱演は感度良好! 続くベニー・グリーンの無理したオトポケは、逆にハードバップを強く感じさせます。
 正直言えば、アルバム全体の流れの中では面白くない演奏だと思います。それがギルド・マホネスのアドリブあたりから、妙に熱気が高まっていき、ラストテーマの合奏では見事にハードな黒っぽさへと収斂するのですから、おそるべし!

ということで、けっこうマジに聴いてると飽きる演奏集かもしれません。このノタノタした雰囲気は、とても仕事前の景気づけには不向きでしょう。

しかし煮詰まった時や仕事の後の倦怠疲労に、なかなか効き目がありますよ。

個人的には決して愛聴盤ではありませんが、春風の陽気雰囲気とか、せつなくも長閑なムードが、今の状況にはジャストミートしているのでした。

コメント
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