OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

こんな夏には奈美ちゃんを

2010-08-31 16:47:15 | 歌謡曲

おそい夏 / 麻田奈美 (日本コロムビア)

8月も終わりというに、今日も暑かったですねぇ~~。

もう、これからが本番の夏!?

という感じまでしたところで、ふっと思い出したのが本日のシングル曲「おそい夏」でした。いゃ~、もう、洒落になっていないんですが、歌っている麻田奈美に免じて、ご勘弁下さい。

もちろん麻田奈美という名前に思わず反応してしまうのは、サイケおやじと同世代の皆様でしょう。

その彼女が初めて我々の前に登場したのは昭和48(1973)年、当時の青少年向け週刊誌「平凡パンチ1月29日号」で、それは衝撃的なオールヌード!

とにかく愛くるしい面立ちに豊満な肉体という、それは魅力的なギャップが鮮烈で、全くの無名だった麻田奈美が、このグラビアだけで全国の日本男児を惑わせたといって過言ではありません。

以降、同誌のグラビア&表紙ではメインとなる活躍でしたし、彼女を拝むためには平凡パンチを買う他は無かったのですから、さぞかし売り上げも伸びたんじゃないでしょうか?

実は彼女は特定のプロダクションに所属してのデビューではなく、有名写真家の青柳陽一に発見され、その契約によってグラビア中心の活動を始めたという、まさに元祖グラビアアイドルのひとりだったのです。

中でも一番有名なのが、リンゴを使ったショットでしょう。これはポスターとしても当時、最高の人気を集めています。

と、なれば当然、映画やレコードデビューの話も進展するわけですが、何故か彼女は芸能界には興味がなかったようで、なんと人気絶頂時の翌年には引退……。

いゃ~、これにはガックリされた皆様も多かったでしょうねぇ。

しかし、その頃までに青柳陽一が撮影していた多くのカットは、今日まで度々写真集に纏められ、何れも売れまくっているのですから、彼女の人気は永遠に不滅というところでしょうか。

最近では昭和歌謡曲のコンビレーションCD「dankaiパンチ」三部作のジャケットに彼女のポートレートやヌードが使われるという快挙までありました。

ちなみに彼女は引退から4年を経てグラビアの世界へ復帰していますが、正直に言えば、些か肉付きが良くなり過ぎた感じで……。

ちなみに彼女の映画出演の話としては、ロマンポルノからの誘いもあったと言われていますが、もちろん実現はしていません。しかし、「もしも」という事があったなら、大ヒットは確実だったでしょう。

個人的には「縄」を夢想したこともありました。

さて、いよいよ本日のシングル曲ですが、発売されたのは昭和48(1973)年11月という、彼女の人気が頂点を極めんとしていた頃ですから、かなりの評判になっていました。確か初回で買ってくれたファンにはポスタープレゼントもあったと記憶しています。

ただしサイケおやじは、リアルタイムでは手が出ませんでしたから、どんなポスターが貰えたのか、定かではありません。

また肝心の歌唱力が、はっきり言って、よろしくないんですねぇ……。

それでも作詞:林春生、作編曲:川口真による楽曲の出来は素晴らしく、その歌謡フォーク調の爽やかにして、一抹のメランコリーな気分が滲む仕上がりは侮れません。なによりも声域が狭く、リズム感もイマイチの麻田奈美が、ここまで歌えてしまうアレンジと曲メロの親しみ易さは、まさに川口真の真骨頂♪♪~♪

現在では前述した「dankaiパンチ / 東京に吹く風」に収録されていますから、機会があれば、お楽しみ下さいませ。

いゃ~、なんとも、おそい夏って感じです。

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留置場で哀愁のヨーロッパ

2010-08-30 16:46:43 | Rock

哀愁のヨーロッパ / Santana (Columbia / Sony)

1970年代ロックの国民的な1曲といえば、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」か、本日ご紹介するサンタナの「哀愁のヨーロッパ」でしょう。

今更説明不要という哀切のメロディを奏でるサンタナの泣きのギターは、メロディ優先主義ながらも中盤でのフィードバックや如何にもプロの過激な小技を駆使した、相当に熱いものだと思います。

また、この演奏の成立過程には一説によると、作曲者のトム・コスターがサンタナで来日した時、歌謡曲を聞いてヒントを得たという逸話があるほどですから、日本人が大好きになるのも無理からんところでしょう。

しかし、この「哀愁のヨーロッパ」は諸外国でも広く人気があって、今日の本題はそのお話です。

時代は1980年代末頃、某アフリカの国での事でした。

サイケおやじは仕事でそこへ赴いていたのですが、そんなある日、仕事を終えて根城の町まで戻る道すがら、ひとりの地元の少年がこちらの車を呼び止めました。どうやら自転車が壊れたらしく、町まで乗せていって欲しいと懇願され、こちらは当然の人助けとして快く応じたのですが……。

ちょうど目的の町の入り口付近まで来たところで、パトカーに停車を命じられ、ゴッツイ警官が職務質問をしてきました。

それは何んと、子供を同乗させていた事から、こちらを誘拐犯と決めつけるものだったんです!?!

しかも驚いたことに、件の子供までが、そういう事を訴えるのですから、絶句でした。

そして地元警察署に連行され、様々な取り調べを受けたわけですが、既に皆様がご推察のとおり、2人はグル! もしかしたら親子だったのかもしれません。

しかし、そうは気がついたものの、その時は現金が百ドル足らずしか無く、結局は最新型のウォークマンと所持金で話をつけたのですが、そうなるまでには当然、留置場に入れられてしまった次第です。

う~ん、全くこの時の不条理な気分は例え様もなく、一緒に連行された同僚は取り乱しと意気消沈の二重奏みたいな落ち込みでしたから、流石に楽天的なサイケおやじも、かなり目の前が暗くなりましたですねぇ……。

それでも留置場の檻の外に置いてあったラジオから、このサンタナの「哀愁のヨーロッパ」が流れてきた時の安堵感は、今も鮮烈です。

おぉ、こんな国のちっちゃな町にも、サンタナの演奏が受け入れられているという現実!

それはある意味で地獄に仏というか、何で話をつけようかと思案していたサイケおやじに、前述した最新型ウォークマンの存在を思い出させてくれたのですから、僥倖という以外の何物でもありません。もちろんそこには、サンタナのカセットが入っていたというわけです。

ちなみに問題の町は某国でも田舎でしたし、必然的にその警察署だって悪徳警官と事務係ぐらいしか駐在していないという、まさに職権乱用地帯だったんですよ。

いゃ~、全くそんな横暴が未だに罷り通っていたのが、その某国の低い民度というか、実は諸外国には、こういう酷い所が今でも沢山あるんじゃないでしょうか?

しかし私は運が良かったのです。

もし、これが女の子だったりすると、間違い無くレイプにまで話を持って行かれ、法外なお金を請求されるそうですよ。

クワバラクワバラ、皆様も海外旅行&出張には気をつけましょうね。

安易な親切は墓穴を掘ると言っては人間不信になりますが、そういう事も人生にはあるという教訓になったのは確かです。

ということで、サイケおやじは「哀愁のヨーロッパ」を聴くと、唯一度の留置場入りをホロ苦い気持で思い出すのでした。

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アル・クーパーと少年ギタリストの冒険

2010-08-29 16:29:41 | Rock

Kooper Session / Al Kooper introduces Shuggie Otis (Columbia)

何時の世にも必ず登場するのが、所謂天才少年って奴でしょう。

本日ご紹介のアルバムで主役を演じるのが、才人のアル・クーパーに堂々と紹介される天才少年のシャギー・オーティスです。

しかもアルバムのサブタイトルが「スーパー・セッション Vol.Ⅱ」とまでされているんですから、驚愕です。もちろん本家の「スーパー・セッション」は、アル・クーパーがマイク・ブルームフィールドスティーヴン・スティルスとガチンコをやってしまった歴史に残る名演集でしたから、聴く前からこのアルバムの本気度に期待と不安を抱くのは偽りの無い気持です。

なにしろシャギー・オーティスはリアルタイムで弱冠15歳!?!

ちなみにアルバムが制作されたのは1969年というロックの黄金時代でしたし、アル・クーパーにしても前述の「スーパー・セッション」や続篇的なライプ盤「フィルモアの奇蹟」を出していた上昇期ということで、決して安易な作品は世間が許さないという状況だったと思います。

しかしシャギー・オーティスは、黒人R&Bの世界ではゴッドファーザー的な存在だったジョニー・オーティスの息子であり、実際に父親が主催するライプショウには幼少の頃から出演し、巧みなギターばかりか様々な演芸をやっていたというキャリアは侮れません。

ちなみにジョニー・オーティスは自らドラムスや各種打楽器、ピアノやヴァイブラフォンを演奏しながら歌い踊るというスタイルをやり通したバンドリーダーであり、率いる一座にはコミックショウや猥褻スレスレの出し物までも入れていた、まさに黒人大衆芸能の王道を極めた偉人ですから、ライプ巡業だけでなく、レコードも相当数を出しています。

そしてアル・クーパーは、その中から「コールド・ショット(kent)」というアルバムを聴き、まさに天才ギタリストぶりを発揮していたシャギー・オーティスを発見したという経緯が、ジャケット裏解説にアル・クーパー本人のライナーとして掲載されているのですが……。

 A-1 Bury My Body
 A-2 Double Or Nothing
 A-3 One Room Country Shack
 A-4 Lookin' For A Home
 B-1 12:15 Slow Goonbash Blues
 B-2 Shuggie's Old Time dee-di-lee-di-leet-deet Slide Boogie
 B-3 Shuggie's Shuffle

結論から言うと、まさにサイケおやじの好みにはジャストミートの偏愛盤♪♪~♪

実は告白すると、ここまで書いてきたような経緯や裏事情は知る由もなかった昭和45(1970)年、このアルバムは日本盤が出ています。そしてその時、サイケおやじは馴染みのレコード屋でこれを聴かせてもらい、自分と年齢も変わらぬシャギー・オーティスが堂々の自信で見事なギターを弾いている現実に圧倒されたのです。

もちろんアル・クーパーの音楽性にシビレたのは言わずもがなでしょう。

しかし悲しいかな、当時は千八百円だったこのLPを買うことは例によって叶わず、唯一度だけ聴かせてもらった両面の印象を強く脳裏に焼き付けたまま、時が流れました。

そして2年後、ようやく中古で入手したのが、本日掲載の私有盤というわけですが、それでも実際に自分の手で針を落とした時のワクワク感は、今でも本当に忘れ難いものがありますし、演じられている各楽曲の「自分好み度数」も、また同様です。

セッション参加メンバーはアル・クーパー(vo,key,g,etc)、シャギー・オーティス(g) 以下、マーク・ナフタリン(p)、ストー・ウッズ(b)、ウェルス・ケリー(ds)、ザ・ハリス・ロビンソン・シンガーズ(vo) 等々と、アル・クーパー本人が裏ジャケットで解説していますが、さらにアナログ盤A面が「The Songs」、またB面が「The Blues」と明確に分類してあるところが、如何にも「らしい」と思いますねぇ~♪

で、そのA面ド頭「Bury My Body」が、全くアル・クーパーならではのゴスペルソウルで、特有の泣き節と刹那のシャウトが全開という、これぞの十八番が早くも堪能出来ますよ。思わせぶりに自演するピアノとオルガンによるイントロからゴスペルピートがグイノリで炸裂する曲展開では、ザ・ハリス・ロビンソン・シンガーズによる熱気溢れるコーラスも良い感じ♪♪~♪ そして気になるシャギー・オーティスのギターは、幾分ジャズっぽいスケールも交えながらの早弾きや細かいリズムへの対処が流石の天才性ですし、フレーズを積み重ねる毎に熱くなっていくナチュラルなノリは、場数を踏んでいることを証明していると思います。

それは続くブッカー・TとMGsでお馴染みの「Double Or Nothing」で更に表出し、温故知新のスタイルとでも申しましょうか、そのギターから弾き出されるソウルフルな歌心満点のフレーズやリズムの刻み、あるいはリフの使い方の上手さは、とても15歳の少年とは思えないキャリアを感じさせるでしょう。

実際、同じ年代のサイケおやじは、既にギターはちょっぴり弾けるようになってはいたものの、未だ「エレキは不良」という世間の常識によって手にすることは出来ず、ようやく高校生になってエレキを抱いた時でさえ、とても追いつける世界ではありませんでした。

まあ、当然の話なんですが、それにしても!!?!

ですから3曲目になって突如ニューロックに突入する「One Room Country Shack」でのジミヘン調ギタープレイが、尚更に凄みを感じせます。ちなみに、この演目はモーズ・アリソンが広めた古い伝承歌と言われていますが、それをワウワウや疑似シンセで彩るというアレンジと多重録音駆使のプロデュースは、これまたアル・クーパーでしか許されない禁じ手かもしれませんねぇ。私は好きです。

そしてこれがアルバムのハイライトになった懐メロR&Bカパーの「Lookin' For A Home」は、本当に絶品! 胸キュンの曲メロを増幅させたアレンジも秀逸なんですが、とにかく甘くせつない語り口が冴えまくりというアル・クーパーの歌いっぷりが、最高なんですねぇ~♪

ちなみにオリジナルは黒人ディープソウル歌手のエディ・リトル・バスターが代表曲として人気も高いんですが、サイケおやじはアル・クーパーのバージョンが断然好きなんですよ。それはアル・クーパーの泣き節もさることながら、シャギー・オーティスのギターが伴奏&間奏で素晴らしすぎるんですよっ! そのハードなフレーズ展開の端々から滲み出る生粋のソウルフィーリングが、たまらんですねぇ~♪ 個人的は、このギターソロをコピーすることが人生の命題と思い込んでいた時期もあったほどです。

もちろんアル・クーパーのベストカセット、あるいは私的コンビレーションを編む時には必ず入れるほど気に入っていますし、とにかくこれは全世界の皆様に、お楽しみいただきたい名唱名演!

と、思わず力が入ったところでレコードをB面にひっくり返せば、そこは副題どおりに「The Blues」のゴキゲンなインストセッション♪♪~♪ まさに当時の「お約束」というブルースロックな世界が堪能出来るわけですが、そこはアル・クーパーのプロデュースですから、一筋縄ではいきません。

裏解説にある本人の言によれば、深夜の一発録りらしいのですが、自由に弾きまくるシャギー・オーティスはそうだったとしても、アル・クーパー以下バックの面々は案外ときっちり道筋を守っている感じです。

また「Shuggie's Old Time dee-di-lee-di-leet-deet Slide Boogie」は、意図的にSPレコードのような音質とSEを駆使した「造り物」で、これは好き嫌いがあるでしょう。

しかしスローブルースがど真ん中の「12:15 Slow Goonbash Blues」では、クビグビ唸るアル・クーパーのオルガンやマーク・ナフタリンのピアノが定型を脱していないのとは逆に、それを忠実に守ろうとしつつも意想外の若さを表出してしまうシャギー・オーティスが、なかなか憎めません。

う~ん、熱いぜっ!

そして快適なシャップルビートでノリまくったオーラスの「Shuggie's Shuffle」が、これまた気持良いです♪♪~♪ まさに教則本的なフレーズを連発しながらも、そこは天才少年の面目躍如がバッキングの上手さに証明されているんじゃないでしょうか。アル・クーパーも、そのあたりを百も承知の余裕というか、所謂大人の対応が好ましです。

ということで、特にB面ばかりに期待すると、これは前述の「スーパー・セッション」や「フィルモアの奇蹟」と比べて小粒と言わざるをえません。リアルな緊張感も足りませんし、なによりもシャギー・オーティスの「青さ」が目立つと思います。

しかし繰り返しますが、当時は弱冠15歳!

それでここまでやってしまう才能は、やっぱり凄いんですよねぇ。

特にA面での歌伴プレイの上手さ、それに合わせた歌心充実のギターソロ、そして時には過激な若さの発露が、絶対に侮れないはずです。アル・クーパーも、その点には合格点を与えんたんじゃないでしょうか。

しかし、このアルバムは、その話題性とは逆に評価は高くないのが現実のようです。

さらにアル・クーパーの芸歴を鑑みれば、このLPの前後には傑作ライプ盤「フィルモアの奇蹟」と自身初のソロアルバム「アイ・スタンド・アローン」が続け様に制作され、また発売時期も立込んでいましたから、そんな相乗効果というか、今となっては聴かず嫌いにされた1枚といって過言ではないのかもしれません。

そのあたりの事情の中では、サイケおやじにしても運良く、発売当時に例え一度だけでも聴けたことがあった所為で、その後に現物をゲットしようという衝動が続いたわけですし、残念ながら我国の洋楽ファンの間では結局ブレイクしなかったシャギー・オーティスのその後を思えば、所謂運命論者になる自分を感じるほどです。

それでも、とにかくこのA面だけは、決して聴いたことを後悔しないほとです。

これは断言しても良いんですが、まさにリアルタイムのロックが記録されたドキュメントでもあり、また偏愛盤になる可能性が絶大の1枚でしょう。

皆様には、ぜひともお楽しみいただけるよう、祈念するばかりです。

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憎いあなたと危険な関係

2010-08-28 16:15:01 | 歌謡曲

憎いあなた c/w 危険な関係 / 小山ルミ (ユニオン)

昭和47(1972)年秋に発売された小山ルミの裏人気シングルが、これだと思います。

当時の彼女は前年夏にベンチャーズ歌謡の決定版「さすらいのギター」を大ヒットさせて以降、そのキュートな存在感は、キワドイ衣装でのセクシーアクションとエレガントなムードを両立させることが出来た、まさに全盛期だったのです。

ところがちょうど同じ頃、やはりハーフのアイドル歌手としては先にブレイクしていた山本リンダが、デビュー当時の可愛さ優先から見事にイメージチェンジを果たしたセクシー路線で再ブレイク! それが同年初夏に発売され、社会現象にもなった傑作大ヒット「どうにもとまらない(キャニオン)」だったことは、言うまでもないでしょう。

とにかくその勢いは圧倒的で、忽ち業界では後追いの同系歌手や楽曲が頻発するほどだったわけですから、ひと足早くセクシーアクション歌謡を演じていた小山ルミと彼女のスタッフにしてみれば、心中穏やかではなかったでしょう。

そこで敢然と発表されたのが、このシングル盤!

という経緯は完全にサイケおやじの妄想的推察に過ぎませんが、しかし実際に聴いてみれば、それを否定することが難しいほどの素晴らしい出来なんですよねぇ~♪

実は先にネタをばらしてしまえば、前述の「どうにもとまらない」を書いた都倉俊一に楽曲を依頼して作られたのが、このシングル両面というわけなのです。

まずA面「憎いあなた」は、千家和也の作詞に作編曲が都倉俊一というコンビによる、実に山本リンダ調がモロの名曲! その情熱の歌詞とメロディ展開を幾分ネチッこく歌う小山ルミの存在感は言わずもがな、ストリングスの暑苦しいまでの流麗さ、さらに疑似スパニッシュなアコースティックのリズムギターが抜群の彩りになっています。

いゃ~、正直な本音では、エレキギターによるイントロのフレーズとリズムパターンを聴いただけで、これは山本リンダ!? と確信して後、アッと呆けるのが快感というところでしょうか。

さらに言えば、これは山本リンダが翌年春に大ヒットさせる「狙いうち(キャニオン)」の予行演習みたいな感じさえ、強いんですよねぇ~♪

そしてB面の「危険な関係」が、これまた強烈なブラスロック歌謡の決定版!

作詞作曲はA面同様に千家和也と都倉俊一のゴールデンコンビなんですが、アレンジが宮川泰ですから、その洋楽流行性感度は抜群♪♪~♪

イントロから叩きつけるようなテンションの高さでブッ飛ばしていく展開は、エレキギターやエレキベースの唸り、炸裂するパーカッションにドカドカ煩いハードなドラムス、さらにオルガンのファンキーな彩りや強烈なブラスの咆哮が、明らかに当時人気絶頂だったブラスロックグループのチェイスを意識しまくっています。

そうです、あの「黒い炎」を意識過剰に翻案し、歌謡曲と見事に融合させているんですねぇ~♪

もちろん小山ルミの歌いっぷりは、ブレイクを多用した曲展開と痛烈なアレンジの中にあっての大奮闘! 失礼ながら、決して凄い歌唱力のあった人ではないのですが、そのリズム感の良さとビートに対するノリは、この頃の歌謡ポップスを愛する皆様には、ノー文句の仕上がりじゃないでしょうか。

サイケおやじにしても、このB面の方を愛でる気持が今も強いです。

また、このカラオケは永久保存でしょうねぇ~♪ とにかく分厚いサウンド作りと混濁してファンキーな味わいまでも滲む演奏が、尋常ではありません。

ということで、結果的なヒット状況では山本リンダの後塵を拝してしまったのですが、リアルタイムのテレビ歌番組では、小山ルミも負けじとセクシーな衣装でアクション全開の大ハッスル♪♪~♪ 個人的にはホットパンツ姿で、このシングル盤両面を歌っていたお姿が、今でも目に焼き付いていますから、そのあたりの映像復刻も待たれますねぇ~♪

ということで、やっぱり昭和のセクシー歌謡路線は忘れ難い魅力に満ちています。

ちなみに作編曲家の都倉俊一については説明不要と思いますが、やはり注目を集めたのは、セクシー路線転向の山本リンダに提供した楽曲のヒット以降でしょう。そして同時期からはフィンガーファイブ、ピンクレディ、山口百恵等々が放ったヒット曲の華やかな部分は、かなり担当していたのですが、それとは別次元の所謂しっとり系の曲も、様々な歌手やグループによって夥しくヒットしたのはご存じのとおりです。

そして一時は結婚生活があった大信田礼子の「同棲時代」も、都倉俊一の代表曲なんですが、実はサイケおやじの大好きだった彼女が、この天才作曲家と結婚する事を知った時の苦しい気分は、今もって何んとも言えません……。なにしろ都倉俊一は家柄も良く、ルックスも抜群で高身長&高収入でしたからねぇ。これほど恵まれた男がこの世の中にいるという現実には、不条理さえ感じたほどです。

しかし、そういう嫉妬心なんて、サイケおやじが自らを客観的に見つめるほど、滑稽になるのは当然です。

その作曲家としての天才性は洋楽をルーツにしていることが明白ながら、決して難しいことをやらずに大衆性を強調するセンスは、パクリ云々という非難以前に本人が持っている素養じゃないでしょうか。

このあたりは元ネタよりも素晴らしい曲を作ってしまう筒美京平と双璧の凄さなんですが、都倉俊一はその偉大な先人よりも後の世代ということで、尚更にニューロック&ニューソウルの感覚が自然体に発揮されていたように思います。

最後になりましたが、後付けのネタばらしというか、実は小山ルミが前述の山本リンダが大ヒットさせた「どうにもとまらない」と同時期に発売していたシングル盤「孤独の街角」のB面に収録していた「裁かれる女」が、実は都倉俊一の作編曲によるもので、そのスパニッシュロック調のメロディ展開と熱っぽいアレンジは、如何にも山本リンダが歌うことを想定したかのような雰囲気なんですよねぇ……。

ただしロック的なビートとフィーリングは、「どうにもとまらない」が完全に勝っています。

う~ん、このあたりの楽曲発注や管理システムは知る由もありませんが、結果的に山本リンダの「どうにもとまらない」が大ヒットした中でのひっそりとした扱いには、大袈裟に言えば運命のいたずらを感じるほどですし、既に述べたように、小山ルミ側の胸中は如何ばかりか……、と部外者は無責任に思ったりするのでした。

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日野晧正の真っ向勝負

2010-08-27 16:52:35 | Jazz

Now Hear This / Hal Galper (Enja)

昨日は久々にジャズモードへと帰還したことから、きっと良いことがあるに違いないと思いきや、仕事ではトラブルの続出で苦しめられ、また私的にもいろいろと……。

う~ん、これは朝からジャズなんか聴いたから……!?

とは、決して思いたくないので、今日もガチンコのジャズで行きますよ、行けるところまでっ!

そこで、本日のご紹介はフュージョンブームが真っ盛りだった1970年代後半、我国のジャズ喫茶では特別な人気盤だった王道のモダンジャスアルバムです。

録音は1977年2月15日、メンバーはハル・ギャルパー(p)、セシル・マクビー(b)、トニー・ウィリアムス(ds)、そして日野晧正(tp) という、なかなか妥協の無い面々ですが、実は当時のジャズマスコミでは、このセッションはプロデューサーが特に日野晧正を録音するために企画したという報道がなされ、実際、ジャケ写には堂々と日野晧正が登場している事が、何よりの証明になっています。

もちろん演奏も、リアルな熱さに満ちいていますよ。

A-1 Now Hear This
 アルバムのド頭に相応しい、アップテンポのハードなモード曲で、当時既にブームになっていた例のVSOPというよりも、1960年代新主流派直系の猛烈な演奏です。
 それはテンションの高いテーマ演奏からセシル・マクビーのペースが唸り、トニー・ウィリアムスのドラムスが炸裂し、フレディ・ハバードの影響を隠そうともしない日野晧正の潔いトランペットが鳴り響き、アドリブ先発のハル・ギャルパーが硬質なピアノタッチを全開せさたアドリブに突入すれば、その場はすっかりジャズ喫茶の全盛期♪♪~♪
 いやいや、あえて当時の状況を書いておけば、このアルバムが鳴りだすと、弛緩していた店内の空気がピリッとしたほどですから、まさに王道に拘っていたジャズ喫茶には救世主的なアルバムだったと思います。
 そして日野晧正のトランペットが全力疾走!
 失礼ながらリアルタイムのフレディ・ハバードには及ばないと思うのが正直な感想ですが、しかし当時、これほどバリバリに正統派ジャズをやっていた若手トランペッターはウディ・ショウ、チャールズ・トリバー、ジョン・ファディスあたりしか他にいなかったのも重大な事実だったんですよっ!
 そこで日野晧正なんですが、確かその頃はニューヨーク在住で、もちろん日本でのスタアプレイヤーという地位を捨ててまでと言われるほど、モダンジャズそのものに拘りぬいていた時期でした。もちろん盟友の菊池雅章が既に現地で活動していたこともあるでしょう。
 ですから、その迸る無心な情熱が熱気となって、ここに見事に記録されたのは幸いです。
 また共演のリズム隊が全く容赦無い姿勢なのも流石で、特にセシル・マクビーの怖さは絶品! ドカドカ煩いトニー・ウィリアムスのドラムスが、録音の所為で些か引っ込んでいるとはいえ、それは大音量で鑑賞するための方法論だと思います。
 つまりこれは、デカイ音で楽しむしかないという、まさにジャズレコードの宿命が、既にこの1曲だけで立派に提示されているように思います。

A-2 Shadow Waltz
 一転してミステリアスなムードに支配された哀切のパラード演奏で、日野晧正のハスキーな音色によるメロディ吹奏がジャストミートしています。
 しかしリズム隊は決して甘さに妥協せず、徹底的にその場を仕切ることに腐心する姿勢が強く、日野晧正の紡ぎ出すアドリブフレーズを先読みしたような展開は素晴らしいですねぇ~♪
 やはり超一流のメンツ揃いでなければ醸し出せない味わいと緊張感!
 ですからハル・ギャルパーの歌心排除型とも言うべきピアノも、自らが書いた曲メロには忠実ですから、ちょいとクール過ぎる? と感じてしまう瞬間さえも、立派なモダンジャズとして成立するんじゃないでしょうか。

A-3 Mr. Fixit
 これまた溌剌としたジャズロック系モード演奏なんですが、そのリズムパターンは定型ではなく、あくまでも自由なジャズビートを基調しているあたりが、如何にもハル・ギャルパーらしいと思います。
 実はハル・ギャルパーは、1960年代の終わり頃から既にブレッカーブラザーズを起用した過激なモダンジャズをやっていて、そのストロングスタイルは売れることがなくとも、ジャズ者には知る人ぞ知るの存在でした。
 そしてこのセッションの前には、やはりブレッカーブラザーズを正統派モダンジャズの世界に連れ戻した人気盤「リーチアウト(Steeple Chase)」をジャズ喫茶的なヒットにしていた上昇期でしたから、ここでの快演も当然だったのです。
 それに呼応する日野晧正、セシル・マクビー、トニー・ウィリアムスの面々も、ジャズを演奏することの喜びが爆発したかのような名演を披露して、痛快です。

B-1 First Song In The Day
 思わずニンマリさせられるほど、これは1970年代の真髄を堪能させられる名曲にて名演です。つまりアフリカのイメージとか、過激なモードジャズや逃げないハードな演奏姿勢が、実にジャズ者の琴線に触れるんですよねぇ~♪
 特に1960年代に在籍していたマイルス・デイビスのバンド時代とは正逆の、些か往生際の悪いドタバタしたドラミングが、逆にこの時期ならではの魅力というトニー・ウィリアムスの存在感は、流石に強いですねぇ。まあ、このあたりは好き嫌いがはっきりしていると思いますが、リアルタイムでは局地的にイモ扱いされたことを付記しておきます。
 しかも、ひたすらに基本のビートを守るべく奮闘するセシル・マクビーが、時折に怖い世界感を滲ませる小技をやってしまうあたりが、問題化寸前!?
 ですからハル・ギャルパーにしても油断は禁物ですし、それゆえに緊張感溢れる日野晧正の真摯なアドリブが侮れません。

B-2 Bemsha Swing
 ご存じ、セロニアス・モンクが書いた怖すぎる定番曲ですから、このメンツにしても神妙さが滲んでいるのでしょうか、最初はちょいと固い雰囲気が漂っている感じです。
 実はセッション全体の演目は、この「Bemsha Swing」を除いては全てがハル・ギャルパーの作曲で、しかも直言すれば、どこかで聞いたことがあるようなフックがキメになっていますから、必然的に演奏する側は気持良くやれたんじゃないでしょうか。
 ところが、この曲に関しては、既にモダンジャズの中だけでも決定的な名演が幾つも記録されていますからねぇ。
 それでも独自のスタイルを崩さないメンバーそれぞれの個人技は、流石に冴えまくり♪♪~♪ 特にハル・ギャルパーは潔いと思いますし、トニー・ウィリアムスの唯我独尊ぶりも、失礼ながら微笑ましいかぎり♪♪~♪ 初心に帰ったような日野晧正も好調ですし、ミディアムテンポでグルーヴィなスイング感を持続させるセシル・マクビーには脱帽です。

B-3 Red Eye Special
 さて、オーラスは当然ようにアップテンポのモード大会!
 全員の溌剌とした勢いは流石だと思いますが、アルバムを通して聴いていると、なんだ……、またかよ……、という苦言も禁じ得ません。
 もちろん演奏はタイトだし、アドリブパートも充実しているんですが、つまりはハル・ギャルパーのオリジナル曲に変化が乏しいというあたりが裏目なんですねぇ……。
 まあ、このあたりは、LP片面毎の鑑賞が普通だった当時では許されることなんでしょう。実際、ジャズ喫茶でも片面プレイが一般的でしたし、家庭においても、こんなハードなアルバムをぶっ続けて両面聴けるのは、相当に気力の充実が求められるんじゃないでしょうか。

ということで、ジャズを聴く充足感という点では最高の1枚かもしれません。

もちろん、このメンツがクレジットされたジャケットを見れば、そこに和みなんてものは期待されない皆様がほとんどでしょう。まさにスピーカーに対峙して、大音量での鑑賞が望ましいわけです。

ところが、今になってみると、これが何かをしながらの所謂「ながら聞き」にも心地良いんですよねぇ~。なにしろ車の運転中とか個人的なPC作業中にも、スイスイと聴けてしまうんですよ♪♪~♪

結局これは、サイケおやじのようにジャズ喫茶全盛期を体験してきた者だけの「パブロフの犬」なんでしょうか……? モードのスケールをガラガラと弾きまくるハル・ギャルパーの歌心の無さが、逆に快いと感じるあたりは屈折しているんでしょうか……?

まあ、それはそれとして、とにかく日野晧正の正統派モダンジャズが、ここまできっちり楽しめるという部分でも、 これはこれで作られた価値があったと思います。

ちなみに日野晧正が、ちょい後にフュージョンど真ん中の路線へ流れてしまったのは、ご存じのとおりですが、それを悪いと言うつもりは、毛頭ございません。全ては演じるミュージシャンの決めたことですし、リスナーは好き嫌いで判別する自由があるのですから。

その意味で、このアルバムのように、何故か今でも新鮮なムードを保ち続けている作品は貴重だと思うばかりなのでした。

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客演リー・モーガン、容赦なし!

2010-08-26 16:44:49 | Jazz

The Night Of The Cookers Vol.1 / Freddie Hubbard (Blue Note)

今日は朝っから、猛烈にジャズが聴きたくなりました。

う~ん、こんな気分は久しぶりですねぇ~~♪

いったい原因はなんなのか?

ちょいと自問自答したくなるほどです。

で、実は先日から昨夕まで、関西方面へ出張していたんですが、これが猛暑なんて言葉を超越した灼熱地獄!?! 1日に午前と午後、衣服と下着を替えねばならないほど、汗びっしょり……。仕事よりも暑さに苦しめられたんですが、おかげで少しは体が絞れたような感じなんですよ。

なんかジャズモードに入ったのも、その所為かもしれませねぇ。

ということで、取り出したのが、本日の1枚というわけです。

録音は1965年4月10日、「ラ・マーシャル」というクラブでのライプセッションで、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、リー・モーガン(tp)、ジェームズ・スポールディング(as,fl)、ハロルド・メイバーン(p)、ラリー・リドレー(b)、ピート・ラロッカ(ds)、ビッグ・ブラック(per) というガチンコの面々なんですが、実質的には当時のフレディ・ハバードが率いていたレギュラー・バンドにリー・モーガンが特別参加したものと思われます。

A-1 Pensative
 とにかく軽快にしてシャープなボサロックのビートを叩き出すピート・ラロッカが、まずは最高です。もちろんリズム隊全員の堅実さも、モダンジャズの王道でしょう。
 ですから楽しいテーマメロディから先発のアドリブをリードしていくリー・モーガンのミュートトランペットが実に快いですよ♪♪~♪ フルートでホノボノとした彩りを添えるジェームズ・スポールディングも良い感じ♪♪~♪
 いゃ~、和みますねぇ~♪
 ところが続けてフレディ・ハバードが登場すると、現場には微妙な緊張感が支配的というか、先鋭性を滲ませた駆け足的なアドリブフレーズを多用し、その合間にリラックスしたキメを入れ込むという遣り口には、大スタアを迎えながらも、バンドリーダーとしての意気地が感じられるのですが、それは決して成功とまでは言い難く……。
 個人的にはリー・モーガンの圧勝とさえ思うほどです。
 そして演奏はハロルド・メイバーンのモードなアドリブを経て、リー・モーガン対フレディ・ハバードの延々としたアドリブ対決に突入するのですが、その混濁した感情の縺れ具合は、あまり良い感じがしません。極言すれば、サイケおやじはピート・ラロッカのタイトなボサロックビートが無ければ、聴いていられないと思うほどです。
 ちなみにステレオバージョンでは真ん中からリー・モーガン、左チャンネルからフレディ・ハバードというのが基本的な定位なんですが、通常アドリブのパートも含めて、それが左右にしょっちゅう変化するんですよねぇ……。まさか演じている本人達がステージをうろうろ移動しながらということも、あまり考えられませんし、おそらくはカッティングマスターを作る段階でのミックス作業なんでしょう。最終的には右チャンネルへと定位するリー・モーガンということで、バトルの実相は更に激烈になるのですが……。
 そういうわけですから、モノラルバージョンでの団子状のミックスの方が、そのゴッタ煮風の味わいが良かったりするのでした。
  
B-1 Walkin'
 これはご存じ、マイルス・デイビスを筆頭に幾多の名演が残されているモダンジャズのブルースですから、リー・モーガンにとっては何の問題もありえない快演がお約束!
 実はこのアルバムはフレディ・ハバードのリーダー盤としての分類が一般的なんですが、驚くのは、この演奏はフレディ・ハバード抜き!?!
 ですからリー・モーガンも遠慮の無いハードバップ魂を完全披露したというわけでもなんでしょうが、とにかく初っ端からアップテンポでブッ飛ばす熱演には溜飲が下がります。
 う~ん、これが当時のリー・モーガンの日常だったんでしょうねぇ~♪ 録音データ的には「ザ・ランプローラー (Blue Note)」や「ジゴロ(Blue Note)」といった人気リーダー盤を吹き込んでいた頃ですから、十八番のトリッキーなフレーズや単独でボケとツッコミを演じてしまう独壇場の芸風が冴えまくりですよ♪♪~♪
 また、それに負けず劣らずの熱演を展開するのがジェームズ・スポールディングのアルトサックスで、その過激な勢いはエリック・ドルフィーの世界に近くなっているほどですし、当然ながらフリーにも片足を突っ込んでいるのですが、頑固なリズム隊がそれを許さない姿勢は潔いばかり! 特にピート・ラロッカは猛烈に叩きまくりながらも、絶対に基本のジャズビートを外していません。
 あぁ~、こういう安心感って、大切だと思いますねぇ~♪
 闇雲のフリーやモードよりも、ずぅ~っと難しいんじゃないでしょうか?
 まさにモダンジャズ全盛期の勢いが最高潮!
 そして演奏は打楽器の共演となり、またまたリー・モーガンとジェームズ・スポールディングの熱血バトルが展開されての大団円!
 これぞっ、ガチンコのモダンジャズです!

ということで、実に爽快なライプ盤です。

ちなみに既に述べたように、ここではリーダーのフレディ・ハバードよりも、客演したリー・モーガンが主役の様相になっていますが、実は同時に作られた「第二集」ではフレディ・ハバードが本領発揮の大活躍を聴かせてくれますので、併せてご堪能下さいませ。

あぁ、久々にジャズって最高っ!

そう思った日には、きっと良いことがあるに違いない!

そう、思い込んだのですが……。

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2nd Show はメチャ燃えのD&B

2010-08-25 16:48:55 | Rock

Fairfield Halls Sunday, December 7 - 1969 2nd Show
      / Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton (Rhino Handmade)

いよいよデラボニ「オン・ツアー箱」も最終の4枚目!

しかも付属解説書によれば、このセットからは初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されたテイクがほとんどらしいので、リラックスした熱演は間違いないんですが、実はそれゆえに様々な詐術が浮かび上がっています。

また、この巡業のレギュラーメンバーたるデラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo) に加えて、ここにはデイヴ・メイソン(g,vo) が最初から堂々の参入、また、ついにジョージ・ハリスン(g) も!

01 Intro / Tuning
02 Gimme Some Lovin'
03 Pigmy
(instrumental)
 最初は恒例、フレンズだけによる歌と演奏ですが、今回はデイヴ・メイソンが「俺が、俺が」の大ハッスル! 「Gimme Some Lovin'」でのボビー・ウィットロックとのツインボーカルは言わずもがな、ワルノリ気味の私語MCとか、自分が楽しんでいる掛け声や歌い出しのミスとか、とにかく笑ってしまうところさえありますよ。
 またインストの「Pigmy」はブッカーT&MGs がサンタナしたような、実にイカシたラテンロックのソウルジャズ♪♪~♪ ボビー・ウィットロックのオルガンが熱気を撒き散らせば、カール・レイドルのペースが余裕のウネリ! そしてジム・ゴードンの強いビートが心地良い限りですから、左チャンネルに定位するエリック・クラプトンのギターも少しジャズっぽいスケールを用いた早弾きを披露しています。それとボビー・キースが、これまたシビレるような熱血プローなんですよねぇ~♪ このあたりはストーンズが「スティッキー・フィンガーズ」で発表した「Can't You Hear Me Knocking」と共通するフィーリングが要注意かもしれません。
 あと、最終パートの左チャンネルで些か不器用なギターソロを演じているのは誰? ちなみにデイヴ・メイソンのギターは最初、真ん中でリズムを刻んでいたのが、途中から聞こえなくなるので、もしかしたらと思うのですが、明らかにスタイルが違うようにも感じます。

04 Introductios
 ここからも通例、いよいよデラニー&ポニーの本番ライプになるんですが、その前にデラニー・プラムレットからイギリス巡業の成功に対し、そして特別参加のエリック・クラプトンとジョージ・ハリスンに感謝の言葉が述べられます。
 うっ、すると前述の不器用なギターは、ジョージ!?
 う~ん……。案外とエリック・クラプトンだったかもしれませんし、もしかしたらデラニー・ブラムレット??? 謎は深まるばかりです。

05 Things Get Better
06 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson

 というモヤモヤをブッ飛ばすのが、この快演二連発!
 観客を煽るデラニー・プラムレットが導く「Things Get Better」は、ドロドロに粘っこく、これがスワンプロックの真髄を楽しませてくれますよ。ちなみに、ここでは左チャンネルにエリック・クラプトン、右チャンネルにデラニー・ブラムレット、そして真ん中にデイヴ・メイソンというギターの定位が、その弾き出されるフレーズで推察され、特にデイヴ・メイソンが十八番のワンパターン三連フレーズが美味しいオカズになっています。
 またサウンド作りというか、ミックスのキモが、他のライプ音源と異なり、団子状態になっているところはアナログ盤LPと共通しつつも、ここでは上手いリマスターによって、各楽器の分離や力強さが尚更に顕著になっています。特にカール・レイドルのペースが野太く、またジム・ゴードンのドラムスも強いですねぇ~♪
 もちろんデラニー&ポニーのボーカルも、その自然体のゴスペルフィーリングが早くも全開! 「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」ではグイグイとバックの演奏を引っ張って行くが如きノリが最高ですから、このふたつの快演が初出LP「オン・ツアー(Atco)」ではA面ド頭に採用されたのも、当然だと思います。
 
07 Only You Know I Know
 さて今回は、これが問題の歌と演奏です。
 この音源では作者のデイヴ・メイソンを特に紹介し、本人のリードボーカルで歌われるのですが、付属解説書によれば、このテイクが初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されたということで、聴き比べてみると、そこではボーカルの差し替えがあったことが明白です。つまり些か歌い損ねているポニー・プラムレットのパートを修正し、デイヴ・メイソンのボーカルを小さく絞り、デラニー・ブラムレットにリードを歌わせたようなバージョンに手直しされているんじゃないでしょうか?
 個人的には初出LP「オン・ツアー(Atco)」に馴染んでいたので、このネイキッドなテイクは雑なような気がして、ちょいと……。

08 Will The Circle Be Unbroken
09 Where There's A Will, There's A Way
 という煮え切らない気分を、またまた霧散させてくれるのが、このゴスペルスタンダード「Will The Circle Be Unbroken」を極めて自然体に歌ってくれるデラニー&ポニーの快演です。
 う~ん、この雰囲気の良さは、まさにデラニー&ポニーの素顔というか、ふたりが幼少の頃から馴染んできた世界なんでしょうねぇ~♪ これが初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されなかったのは残念でなりません。
 しかし反面、あまりにもツボを押さえ過ぎたのでしょうか、ロックっぽくないのは事実ですから、所謂スワンプロックという新しい音楽の見地からすれば、それも正解だったかもしれません。
 いずれにせよ、ここで楽しめるようになったのは僥倖でしょうねぇ~♪

10 I Don't Know Why
 さて、またまた恒例のエリック・クラプトンがワンマンショウは、結論から言うと、このボックスセットに入っている4テイクの中では、一番に出来が良いと思います。
 それは失礼ながら、下手なりに歌う事が形になってきたエリック・クラプトンの個性が表れていることで、その真摯な姿勢が、せつせつとした語り口となり、なかなか自然体なスワンプフィーリングが曲調に合っていると感じます。
 また絶対の自信があるに違いない自らのギターに、あえて頼らないところも、新生エリック・クラプトン! いゃ~、本当にこのテイクは名唱・名演と言って過言ではないかもしれませんねぇ~♪ もちろん終盤では、これしか無いの必殺ギターを炸裂させますが、イヤミになっていないんですよっ!

11 That's What My Man Is For
 こうして、すっかり良いムードになったところで、さらに追い撃ちというか、ポニー・プラムレットが素晴らし過ぎる黒っほさを披露する名唱です。
 いゃ~~~、これが白人歌手だなんて、知っていなければ仰天する他はありませんよねぇ~♪ バックの演奏が完全にリードされていくグルーヴィなノリは、全くの唯一無二! もちろん初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用された時にも、それほどの手直しは無かったと思われますが、ここでのリマスターではコーラスや各楽器の存在感が上手く浮きあがって、尚更に感動的ですよ。
 個人的にも、これを聴くと幸せを感じます。

12 Coming Home
 このセットでも疑惑があるのか?
 という先入観念で聴いてしまう演奏なんですが、今回はど真ん中から堂々とスライドギターが鳴り響きます。そして良く聴くと、そこにはもうひとつのギターが存在し、時折ツインリードを弾いているんですよねぇ。
 ちなみに左チャンネルにはエリック・クラプトンが絶対的に屹立していますし、ここまでの流れで真ん中にはデイヴ・メイソンのギターがあると思われることから、右チャンネルにはデラニー・ブラムレット? ということになるんですが……。
 う~ん、いくら唸っても謎は深まるばかりの中で、あえて真ん中のスライドギターはジョージ・ハリスンと思いたい気分が濃厚です。
 ただし、ジョージ本人が何時頃からスライドをマスターしたのかは、ちょっと定かではなく、またエリック・クラプトンが本格的にスライドを習ったのは、デラニー・ブラムレットからという説もある以上、そんな諸々を無視することも出来ません。
 まあ、それはそれとして、このテイクの粘っこいロックフィーリングは特筆物!
 いくら超一流のメンバー揃いとはいえ、リアルタイムでここまでの音を作り出したのは流石というには言葉が足りません。ただし、このCDではサウンドそのものが、ちょいと綺麗になり過ぎた感もあり、ここはアナログ盤LPの幾分モコモコした音の方が、泥沼の熱気を存分に楽しめるかもしれませんねぇ。もちろんそれは、このネイキッドなバージョンが随所で手直しされた結果ではありますが!?!

13 Little Richard Medley
    A. Tutti Frutti
    B. The Girl Can't Help It
    C. Long Tall Sally
    D. Jenny Jenny Jenny
 そして鳴りやまない拍手の中の大団円は、お待ちかねのR&R大会!
 しかし、その前に主催者からの感謝の挨拶があって、デラニー&ボニー&フレンズはもちろん、ビートルズのジョージ・ハリスン! クリームのエリック・クラプトン♪♪~♪ そしてトラフィックのデイヴ・メイソン☆▲◎~♪ なぁ~んていう特別の紹介には会場も別格の盛り上がりの中、ハッピィクリスマス! 間髪を入れずに始まるR&Rの強烈なビート&シャウトは、もう震えがくるほどにカッコイイ!!!
 もうこの瞬間だけ、何回リピートしてもシビレますよ♪♪~♪
 当然ながら歌と演奏も興奮性感度が絶大で、エリック・クラプトンの爆発的なR&Rギターは極みつきですし、豪快なジム・ゴードンに燃えまくりのホーンセクション、カール・レイドルのゴリゴリなウネリ、しぶとい彩りを添えるボビー・ウィットロックのオルガンも好ましく、それゆえにデラニー・ブラムレットのロケンローラーぶりも発狂寸前!
 あぁ、これがロックの基本姿勢でしょうねぇ~~~♪
 ちなみに、このテイクも初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用されていますが、ここは前述のMCからの流れと自然なリマスターによる抜群の臨場感ゆえに、ぜひとも、このCDでお楽しみくださいませ。

ということで、暑さもブッ飛ぶどころか、鑑賞性熱中症には要注意の物凄いライプです。もう、「1st Show」の物足りなさがウソみたいですよっ!

ご存じのとおり、デラニー&ポニー&フレンズは、この直後にレオン・ラッセルによって主要メンバーを引き抜かれたり、あるいはエリック・クラプトンがデレク&ドミノスを結成したりのあれこれがあって、二度と同じメンツで再編されることがありませんでしたから、尚更に残された音源は輝きを増しているのですが、そんな現実を抜きにしても、この「オン・ツアー箱」に収められた歌と演奏は、まさに一期一会の刹那の境地でしょう。

中でも、流石に公式テイクが多いこの日のステージは、緊張と緩和のバランスが素晴らしく、また録音そのものが如何にもスワンプロックという熱気と図太さを兼ね備えています。

しかし総括的には、4回のステージにそれぞれの楽しみと聴きどころが満載だと思います。特にエリック・クラブントンが演じる「I Don't Know Why」のトホホな感性と味わいの深さは最高に興味深く、それゆえにラストバージョンの出来栄えに不思議な感動を覚えるんじゃないでしょうか。

もちろん主役のデラニー&ポニーは最高で、とにかく、どのセットを聴いても、シビレることは請け合いです。

最後になりましたが、4枚のデジパックジャケットの中面には、初出LP「オン・ツアー(Atco)」の裏ジャケ写真の別テイクとステージ写真が、それぞれ4パターン収められていますが、ステージの狭さには、ちょいと驚きましたですね。

それは反面、小さめの会場で、これほど素晴らしいショウを堪能出来た当時のファンの幸せでもあるでしょう。

タイムマシーンが、あったら、ねぇ……。

と、思いつつ、5回連続のデラニー&ポニーをお読みいただきまして、心から御礼申しあげます。

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ちょっと物足りない、1st show のD&B

2010-08-24 16:59:53 | Rock

Fairfield Halls Sunday, December 7 - 1969 1st Show
      / Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton
(Rhino Handmade)


デラボニ「オン・ツアー箱」の3枚目は、クロイドンのフェアフィールド・ホールにおける1969年12月7日の音源で、いよいよ初出LP「オン・ツアー(Atoc)」に採用されたテイクも楽しめる快演集! と書きたいところなんですが、ここにネイキッドなソースが提示されると、実はちょいとした混乱もあったことがリアルです。

また、当日は2回公演だったらしく、まずはここに「1st Show」が収められましたが、これが「昼の部」かと思ったら、最後の最後で誰かが「グッナイ」と挨拶していることからして、実は早くても夕方からステージが始まっていたことが分かります。

う~ん、そういえば欧米では夜の2回公演なんか当たり前ですし、イギリスでは深夜の1時から2回目のステージが珍しくもなかったのが、1970年代頃の実相だったと言われています。もちろん未成年は入場禁止! そこで「昼の部」を「1st Show」に訂正致しました。

それと、その所為でしょうか、演目が少なめなんですよねぇ……。

しかし、ついに大物ゲストの参加が明らかになりました。

ちなみに主要メンバーはこれまでどおり、デラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo) ですから、バンドとしてのコンビネーションは安定しています。

01 Intro / Tuning
02 Gimme Some Lovin'

 ここは恒例、疑似デレク&ドミノスによる演奏なんですが、なんと「Gimme Some Lovin'」ではボーカルマイクが完全にオフ!? これは現場PAの不備か、あるいは録音機材のトラブルなのか、全く判断出来ませんが、その分だけカラオケパートが明確に聴かれますし、この豪華なメンツをバックに自分が歌うことも出来るわけです。
 ちなみに音質というか、各楽器のバランスが少~し不安定になる部分もあるんですが、ドラムスやベースの音の太さは、なかなか理想的じゃないでしょうか。ホーンセクションやオルガンの存在感も2枚目の音源よりは強くなっていると思います。
 
03 Introductions
04 Things Get Better
05 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson

 ここからデラニー&ポニー、そしてリタ・クーリッジが登場しての本番ステージがスタートになりますが、その最初、今度はデラニー・プラムレットのボーカルマイクが幾分不調気味……。
 しかし定番プログラムの「Things Get Better」で観客を煽る演出は熱いですし、ポニー・プラムレットが大ハッスル! また、フレーズを積み重ねる毎に、どんどん冴えていくエリック・クラプトンのギターも快感です♪♪~♪
 そして「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」では、どうにかマイクのバランスが戻ったこともあり、デラニー&ポニー本来の魅力が早くも全開! 素敵なゴスペルフィーリングに満たされた歌とコーラス、それに呼応するエリック・クラブトンのギターソロをサポートするデラニー・ブラムレットのサイドギター、さらにリズム隊とのコンビネーションの素晴らしさには、本当にゾクゾクさせられますよ♪♪~♪

06 I Don't Know Why
 これもすっかり定番化したエリック・クラプトンの主演舞台なんですが、相変わらずボーカルパートの自信喪失は???
 まあ、このあたりは始まる前にデラニー・ブラムレットが、「ニューシングル」とか「エリック・クラプトンが云々」と会場を盛り上げ過ぎることが裏目なのかもしませんねぇ。
 それでも本人は必死な開き直りというか、懸命に歌う姿勢やバンドの好サポートには好感が持てますし、このテイクではそれほど自らのギターに頼っていないところも結果オーライじゃないでしょうか。

07 Where There's A Will, There's A Way
08 That's What My Man Is For
09 I Don't Want To Discuss It

 既に述べたように、このステージは短縮版という感じで、早くもここから大団円への突進が始まります。
 それは「Where There's A Will, There's A Way」の痛快ロッキンソウルは言わずもがな、ポニー・プラムレットがブルージーに熱唱する「That's What My Man Is For」の粘っこい感動は、筆舌に尽くし難いものがありますねぇ~♪ バックコーラスの哀愁やアタックの強いホーンセクション、ハードにドライブしながら豊潤なグルーヴを提供するリズム隊も流石です。
 さらに「I Don't Want To Discuss It」のバカノリ大会も、このバンドにとっては終りなき日常かもしれませんが、ファンにとっては一期一会の快楽天国に他なりません。感謝!

10 Coming Home
 そしてこのステージのオーラスは、前のふたつの音源では不可解な3本目のギターが問題化していましたが、なんとここでは特別大物ゲストとして、ついにデイヴ・メイソン(g.vo) が登場!
 で、気になるギターの存在については、左チャンネルにエリック・クラプトンとスライドを使うギタリスト、そして右チャンネルにもうひとつのギターが聞こえるミックスになっていますが、これまでの例からすれば、右チャンネルはデラニー・ブラムレットだったものが、演奏前のチューニングやイントロのカッティングとその音色からして、これがデイヴ・メイソン?
 すると左チャンネルに入っているスライドギターはデラニー・ブラムレットとして、一応の解釈は出来るのですが、どうも、ボーカルとの兼ね合いからして??? つまりここでもオーバーダビングが行われたんでしょうか……?
 このあたりの疑問は、皆様がそれぞれに聴かれた後に判断されることなんでしょうねぇ。いずれにしても、結論から言えば、ここでは丁々発止のギターバトルなんか全然やらず、執拗なリフの応酬によって粘っこいグルーヴを作り出すことに主眼が置かれているようです。まあ、それゆえに歌とコーラスの魅力が幾分殺がれたあたりは、賛否両論でしょうか。

ということで、付属解説書によれば、この音源からは「Where There's A Will, There's A Way」だけが初出LP「オン・ツアー(Atoc)」に採用され、後は完全未発表とのことですが、個人的には肯定出来るような気がします。

それはエリック・クラプトンのギターが後半でイマイチ、控えめというか、まさか2回公演ということで、手抜きしたわけでもないんでしょうが、ここに纏められた他の3枚の音源からすれば、ちょいとテンションが低いと感じます。

またバンド全体の勢いも、短縮ステージであったことや最初の部分のPA不調等々の要因があったにしろ、物足りない雰囲気は否めません。楽しさ満点の「Little Richard Medley」も、ありませんしねぇ……。

しかし録音状態の所為でしょうか、ジム・ゴードンのドラミングの強さが尚更に圧倒的ですし、その場の自然な流れとして、ドラムスが活躍する場面も多く、特にそれが顕著な「Where There's A Will, There's A Way」が公式テイクに採用されたのも、当然が必然でしょう。

最後になりましたが、個人的には、この「1st Show」はもっと演目が多かったように推察しています。ところが既に述べたようなPAか録音機材のトラブルにより、完全にダメになったトラックもあったんじゃないでしょうか?

そのあたりは当時の興業形態として、メインアクトに前座が幾つか入る事を鑑みれば、これはこれで成り立っていたのかもしれませんが、いよいよ4枚目に収められた演目の充足度からすれば、ちょいと疑問符が打ち消せないというわけです。

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翌日はリラックスのD&B

2010-08-23 16:34:51 | Rock

Colston Hall Tuesday, December 2nd - 1969
      / Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton (Rhino Handmade)

ということで、好評のデラボニ「オン・ツアー箱」から、本日は2枚目となるブリストルはコルストン・ホールの音源で、レコーディングは昨日ご紹介した1枚目の翌日という、1969年12月2日のステージが楽しめます。

そしてメンバーはもちろん前日と同じ、デラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo) なんですが、結論から言うと、この日の演奏は前日と比べて些か緩いというか、所謂レイドバックしたムードが感じられます。

しかしそれはダレているという意味では決して無く、リラックスしてグルーヴィな演奏が提供される中で、ファンやリスナーと一体になったデラニー&ポニーならではのスワンプロックが楽しめるという、その魅力の一端が明らかにされた記録かもしれません。

01 Intro / Tuning
02 Opening Jam
03 Gimme Some Lovin'

 ここは前日と同じく、エリック・クラプトン&フレンズの演奏によるウォーミングアップなんですが、ここでのメンツが後にデレク&ドミノスになることを知っているだけに、サイケおやじは自然と姿勢を正して聴きたくもなります。
 しかし実際のプレイは実にリラックスしたもので、特にエリック・クラプトンのギターは前日に比べると相当に素直じゃないでしょうか。
 それは昨日も触れたように、何かと因縁の「Gimme Some Lovin'」におけるプレイに顕著だと思いますし、「Opening Jam」での楽しいフレーズの連発は、思わずコピーしたくなって挫折することが必至かもしれません。
 またリズム隊の余裕のあるビート感は、緩いというよりも弾力性を増したと解釈するべきなんでしょうねぇ。そのあたりのグルーヴの妙は、デラニー&ポニーが登場してからの演奏に良く表れているように思います。

04 Things Get Better
05 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson
 ここからはエリック・クラプトンのMCに導かれて、いよいよデラニー&ポニーが登場し、いきなり深南部どっぷりのロッキンソウル「Things Get Better」をぶちかましてくれます♪♪~♪ いゃ~~、これはもう、最初っからクライマックスというか、スタックスサウンド全開のホーンセクションやグイノリのリズム隊、さらに自分が楽しんでいるかのようなエリック・クラプトンのギターが鳥肌もんですよ。
 しかも既に述べたように、自由度の高いバンドのグルーヴによって、前日のテイクよりもテンポアップして突っ込んでいくような演奏が、たまりません。
 そのあたりの良い意味での場当たり的なノリは、続く「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」になると、今度はグッと重心を低くした粘っこいものに変化し、これも前日のテイクに比べると些か印象が異なっているように思いますが、もちろんどちらが良いかなんて評価よりも、好みの問題でしょう。ちなみにサイケおやじは両方好き! というのが偽りの無い気持ですが、それにしてもこの演奏におけるエリック・クラプトンとデラニー・プラムレットのギターアンサンブルは粘っこいですねぇ~♪

06 I Don't Know Why
 さて、これも前日同様、エリック・クラブントンを主役に立てた演目ですが、始める前に「エリック・クラプトンの新しいシングルの予定」と紹介されているのが、意味深です。
 ご存じのとおり、この曲は翌年秋に発売されるエリック・クラプトンの最初のソロアルバムに収録されていますが、セッションそのものは既にこの巡業前からデラニー・ブラムレットの協力よってスタートしており、前述のシングル云々の話も進んでいたと思われます。
 しかし諸事情からデラニー・ブラムレットがミックスダウンして作られたマスターは使われることが無く、新たな仕切り直しの後に完成されたのが、その最初のソロアルバム「エリック・クラプトン(Polydor)」だったのです。
 このあたりの真相はブートでの流出を経て、今日では所謂デラックスエディション版 CDで明らかになっていますから、興味がある皆様はぜひともお楽しみ下さいませ。
 で、肝心のここでのテイクは、エリック・クラプトンのボーカルに前日以上の不安定さがモロ……。しかし、ギタープレイ全般がリラックスしているので、このあたりは超一流芸人の日常というか、その日の出来具合がそれなりに楽しめてしまう魔法のようなものかもしれませんねぇ。

07 Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful
08 Where There's A Will, There's A Way

 さて、ここからが早くも本日の後半戦!
 つまり前日よりも実際のプログラムが少ないのか、あるいは録音ソースの問題か、とにかくライプのクライマックスが早々に楽しめる展開です。
 それは「Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful」での、さらにずっしりと重心の低い粘っこさが泥沼趣味を過熱させ、特に最終パートのホーンセクションのキマリ方は最高ですよ。しかもビートルズの「Hey Jude」的な雰囲気になるあたりは、盛り上がりも最高潮! ボビー・ウィットロックのオルガンも、さりげなく効いていますし、ギターリフには、これまたコピー衝動を刺激されてしまいます♪♪~♪
 そして「Where There's A Will, There's A Way」は、またまたスタックスサウンド丸出しのロッキンソウルながら、前日のテイクに顕著だったストーンズ的なノリは控えめとなり、なんとドゥーピー・ブラザーズのような痛快ギターロックになっているのが面白いところでしょう。エリック・クラプトンが燃えているんですよねぇ~♪

09 Coming Home
 これがまたまた疑惑のテイクというか、この日の音源もまた左チャンネルにエリック・クラプトン、そして右チャンネルはデラニー・ブラムレットという2本のギターが定位しているミックスなのに、何故か真ん中からスライドギターが聞こえるという謎が解明されていません。
 ただし、ここではイントロの部分だけという感じでしょうか。
 全体的にはリラックスしながらも、しつっこさを同時に表出するエリック・クラプトンのギターが秀逸ですよ。
 それとイントロからのリズムとリフの構成が、ジョージ・ハリスンの大作3枚組アルバム「オール・シングス・マスト・パス(Apple)」に収録された「Wah Wah」と酷似しているのも要注意でしょう。なにしろそのセッションのバックは、このバンドと同じメンツが務めている真相が!?

10 Little Richard Medley
    A. Tutti Frutti
    B. The Girl Can't Help It
    C. Long Tall Sally
    D. Jenny Jenny Jenny
11 I Don't Want To Discuss It
 こうして迎える大団円は、恒例のR&R大会ということで、「Little Richard Medley」では特にデラニー・ブラムレットのナチュラルなロケンロラーぶりが微笑ましいかぎり♪♪~♪ おそらく実演ステージでは、ケツ振りまくってギターを鳴らし、マイクにしがみついてシャウトする本人が見られたんじゃないでしょうか。また呼応するエリック・クラプトンのギターも前日以上のラフファイトですし、もちろん小気味良いリズム隊のビート感も最高だと思います。
 それは続く「I Don't Want To Discuss It」で尚更に熱く醸成され、鳴りやまない拍手歓声の中で暴発していくロックの魂! いゃ~、エリック・クラプトンのR&Rギターって、こんなに魅力的だったかの!?! 思わず目からウロコのサイケおやじです。

12 Crowd / Announcement
 このパートは終演のご挨拶というか、結局はもう出てこないバンドメンバーに対し、執拗にアンコールを求める観客の熱き思いが伝わってくるドキュメントです。
 う~ん、思わず感情移入してしまいますねぇ~♪
 それと面白いのが、途中でバレーボールの試合では定番の「ニッポン、チャチャチャ」みたいなコールと手拍子が出るあたりで、それはここにルーツがあったのか!? なぁ~んて、ちょいと不思議な気分でした。

以上、こなれた感じのするライプだと思います。

特にエリック・クラプトンのリラックスぶりは、クリームやブラインド・フェィスでのプレイと比較すれば、重厚さやハードなフィーリングが驚くほど軽くなり、しかしR&RやR&Bの基本に忠実ながら、まさに天才ギタリストならではのフレーズを聴かせてくれるという魅力がいっぱい♪♪~♪

黙っていても大金が転がり込んでくるブラインド・フェィスを放り出してまで飛び込んだデラニー&ポニーとの共演が、如何に素晴らしい世界だったか、そのあたりを実証する名演じゃないでしょうか。

気になる全体の音質は、もちろん公式レコーディングですから問題はありません。ただしホーンセクションやコーラスが些か引っ込み気味で、またドラムスやベースの存在感が細い雰囲気の結果は、録音現場の状態もありましょうが、ちょいと不満が……。その所為でしょうか、この日のテイクが初出LP「オン・ツアー(Atoc)」に全く採用されなかったのも、分かる気がします。、

しかし演奏の出来は決して悪いはずも無く、まあ、これは大音量で鑑賞すれば、何の問題もないでしょうねぇ。

そして本日も完全未発表だったプレゼントに感謝するのでした。

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1969年12月1日のD&B

2010-08-22 16:15:25 | Rock

Royal Albert Hall Monday, December 1st - 1969
      / Delany & Bonnie & Friends with Eric Clapton (Rhino Handmade)

ということで、昨日ご紹介の「オン・ツアー箱」から、1枚目となるロイヤル・アルバート・ホールでの音源で、付属のプックレットによれば、1曲を除いて未発表の演奏ばかりということです。

メンバーはデラニー・ブラムレット(vo,g)、ボニー・ブラムレット(vo)、エリック・クラプトン(vo,g)、ボビー・ウィットロック(vo,org)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(ts)、リタ・クーリッジ(vo)  という、今では夢の凄い顔ぶれがMCで紹介されているのですが……。

01 Intro / Tuning
02 Opening Jam
03 Gimme Some Lovin'
 まずはステージ開始のMCでライプレコーディングされていることが伝えられ、続く紹介が、エリック・クラプトン&フレンズ!?!
 これには、うっ、と唸る間もなく突入する「Opening Jam」の豪快にしてロッキンソウルなインスト大会に歓喜悶絶ですっ! 
 もちろんエリック・クラプトンのギターは意想外(?)の軽さ中に粘っこいブルースフィーリングを滲ませた、実に嬉しいスタイルを聴かせてくれますよ♪♪~♪ ちなみに本人のギターは左チャンネルに定位され、このあたりはイマイチ混濁していたアナログ盤「オン・ツアー(Atco)」のミックスとは異なる明快さが嬉しいですねぇ~♪
 それは野太いカール・レイドルのペース、ヒーヒー唸るボビー・ウィットロックのオルガン、ビートの芯が最高にがっちりキマッているジム・ゴードンのドラムスという、後にデレク&ドミノスとなるリズム隊各々の自己主張にも同様ですから、以降の熱演が既に予感され、もうこの演奏だけでワクワクしてくるでしょう。
 実は主役が登場する前に、バンドメンバーだけでウォーミングアップ的な演奏を聴かせる仕掛けは、黒人ブルースやR&Bショウの一座では常套手段ですから、このあたりも白人ながら黒人音楽をやっていたデラニー&ポニーらしい演出だと思います。
 また、この「Opening Jam」で楽しめた音楽スタイルは、後に発表されるエリック・クラプトンの最初のソロアルバムでA面冒頭に収録された「Slunky」へとダイレクトに繋がるものとして、なかなか興味深いところ!?
 そして「Gimme Some Lovin'」はご存じ、スペンサー・デイビス・グループのヒット曲なんですが、ここではボビー・ウィットロックの熱血ボーカルをメインにストレートコピーしたような憎めない演奏になっていますよ。しかし、それにしてもエリック・クラプトンとはブラインド・フェイスで因縁浅からぬスティーヴ・ウインウッドの代表曲を演じようとは、誰のアイディア? その所為でしょうか、ご当人のギターから、些か面映ゆい雰囲気が感じられたりするのは、贔屓の引き倒しでしょうか。まあ、その逆にボビー・ウィットロックの大ハッスルが、いやはやなんとも♪♪~♪

04 Band Introductions
 さて、ここで正式にバンドメンバーが紹介されますが、どうやらそれはデラニー・ブラムレットの仕事のようで、すると冒頭のMCも本人ということが、その声質から分かります。ところが、なんとカール・レイドルを紹介し忘れるというのはご愛嬌!? その後のフォローに、これまた和むんですよねぇ~♪
 そして、いよいよポニー・プラムレットとリタ・クーリッジを呼び出して、白熱のライプ本番が始まるのです。

05 Only You Know And I Know
06 Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson
07 Get Ourselves Toghtere

 まず「Only You Know And I Know」はLP「オン・ツアー(Atco)」でも聞かれた当時の定番演目なんですが、ここでは作者のデイヴ・メイソンが参加しておらず、その所為でしょうか、前述LP収録のテイクよりもネチネチしたしたグルーヴが味わい深いところです。
 ちなみに、ここから右チャンネルに入っているギターはデラニー・ブラムレットによるもので、その粘っこいフィーリングがエリック・クラプトンにも伝染したかのようなギターアンサンブルが、以降の演奏にも反映されていくポイントでしょう。特に続く「Medley: Poor Elijah / Tribute To Johnson」のイントロから演奏全体を貫くノリは、唯一無二! おそらくエリック・クラプトンにしても、こういうグルーヴに接したことは、デラニー&ポニーに邂逅して以降のことだったんじゃないでしょうか? いゃ~、全く本人が楽しんでいる風情が伝わってきて、ニンマリさせられますよ♪♪~♪
 ですから、続く「Get Ourselves Toghtere」のしなやかで粘っこい展開もムペなるかな! リラックスしつつもバンドが一丸となった歌と演奏は、所謂スワンプロックの良好なサンプルじゃないでしょうか。

08 I Don't Know Why
 そして驚くなかれ、ここで何の紹介もなく始まるのが、エレック・クラプトンが主役となった、この歌と演奏です。もちろん本人の初リーダー盤に収録の隠れ人気曲なんですが、そのバージョンよりはグッとR&Bっぽいバックの演奏と自信無さげなエリック・クラプトンのリードボーカルが絶妙のコントラストなんですねぇ。
 しかも、その反動というか、ギターソロでの幾分の力みに、なんとなく神様の人間味を感じてしまいます。歌い終えてからの「サンキュ~」という謝辞、また「フゥ~~」という安堵めいた声も良い感じ♪♪~♪ また随所で微妙に助け舟を出しているデラニー・ブラムレットやコーラス隊のハートウォームな存在も、雰囲気良好だと思います。

09 Where There's A Will, There's A Way
10 That's What My Man Is For
11 Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful
12 Everybody Loves A Winner
13 Things Get Better

 さあ、ここからはいよいよショウも後半! まさに怒涛のスワンプロック大会が存分に楽しめますよ。
 まずはツインリードのギターによるイントロからタイトなリズム&ビート、そしてスタックスサウンドがモロのホーンリフで興奮を誘う「Where There's A Will, There's A Way」の圧倒的なR&Bグルーヴが、もう最高です。もちろんポニーの熱したシャウトとデラニーの自然体に黒いボーカルという夫婦の絆も素晴らしく、またエリック・クラプトンのギターも冴えまくり♪♪~♪ しかも何故か随所で感じられるのが、当時のストーンズと同じ様な重心の低い、あのザクザクしたリズムの刻みなんですねぇ~♪
 このあたりは、まさに「鶏と卵」なんですが、個人的にはこちらを本家としたい気分です。
 しかしボニー・プラムレットが正統派R&Bの王道を歌う「That's What My Man Is For」やゴスペルロックの正体が実感される「Medley: Pour Your Love On Me / Just Plan Beautiful」、南部の夕暮れを強く滲ませる「Everybody Loves A Winner」での美しきソウルフィーリングは、明らかに白人が演じるロック寄りの黒人音楽という素晴らしき魂の折衷作業として、デラニー&ポニーならではの世界じゃないでしょうか。
 ただし、こうしたスタイルは何もデラニー&ポニーが元祖でも本家でもありません。同じことをやっていた白人バンドは、他に数多く存在していたという推察は容易です。しかしそれを世界レベルの流行にしたのは、デラニー&ポニーの「運」と「実力」でしょう。
 ちなみに「運も実力の内」という言い回しは、世間一般の常識でしょうね。
 ですから続く「Things Get Better」では、余裕の中にも真摯な勢いが侮り難く、また、ここまでの流れの中で、実に楽しそうに奮闘するエリック・クラプトンに魅せられるんだと思います。

14 Coming Home
 これがちょいと問題の演奏で、それは左チャンネルからはエリック・クラプトンのハードエッジなリフ、右チャンネルからは粘っこいデラニー・プラムレットのサイドギターが聞こえるんですから、それじゃ真ん中のスライドギターは誰? また時折、エリック・クラプトンとのツインリードのリフまで弾いているんですよねぇ……。
 う~ん、メンバー紹介では他にギタリストは参加していないことになっているんですが、するとこれはオーバーダビング? ちなみに終盤でのギターの絡みやバンドアンサンブルが面白いのは、言うまでもありません。

15 I Don't Want To Discuss It
16 Little Richard Medley
    A. Tutti Frutti
    B. The Girl Can't Help It
    C. Long Tall Sally
    D. Jenny Jenny Jenny
 そしてステージはクライマックスに突入!
 熱血のアップテンポで繰り広げられる「I Don't Want To Discuss It」は、まさにバカノリ大会という趣で、エリック・クラプトンのギターが爆発すれば、ここでもリズムの刻みがストーンズに!? またジム・ゴードンのドラミングに煽られたデラニー&ポニーのシャウトが快いですねぇ~♪ ちなみにこのテイクは、初出LP「オン・ツアー(Atco)」に採用された事になっていて、ミックスは異なっているものの、流石に納得させられる興奮度は高いです。
 それは当然ながら「Little Richard Medley」にも継続され、こういう王道R&Bを演じるエリック・クラプトンはヤードバーズ在籍時代を彷彿とさせる潔さ! 思わず、あの「ファイブ・ライブ」のLPを聴きたくなったりしますが、ボビー・キーズのサックスソロやリズム隊の楽しそうなビート感に浸っていると、全くこの時のライプに接したファンが羨ましくなりますし、演奏途中でのメンバー紹介も良い感じ♪♪~♪

17 My Baby Specializer
 さて、これがアンコールというか、演奏が始まる前にデラニー・プラムレットから感謝の挨拶と次回ライプの告知がリアルです。
 そして始まるこの曲は、デラニー&ポニーとしての公式初アルバム「ホーム(Stax)」にも収録されていた正統派南部ソウルの決定版! それをここではリラックス優先主義で歌いながら、緊張と緩和が流石に見事だと思います。う~ん、なんと言うか、祭りの後のなんとやら、ですよ。

以上、またしても独り善がりのご紹介になりましたが、それにしてもエリック・クラプトンのギターが、ここまでニューロックを脱し、R&RやR&Bに根ざした初志貫徹に弾かれているのは好ましいかぎりです。

後年、一般的な解釈になっているように、エリック・クラプトンの新たな出発となったスワンプロック趣味は、デラニー・ブラムレットからの影響があったと言われていますが、それを証明して余りある真相が、ここに記録されていると思います。

もちろんそれは決して難しいものではなく、ストレートに楽しいんですよねぇ~♪

それと既に述べたように、ここで聴かれるサウンドの要というか、リズムの刻みが部分的に当時のストーンズ、つまり「スティッキー・フィンガーズ」から「メインストリートのならず者」あたりのアルバムに収録の楽曲や同時期のライプ演奏に共通しているのも意味深でしょう。

また同じくホーンリフの仕掛けのタイミング等々が、さもありなんということは、ここに参加のジム・プライスとボビー・キーズが、やはり同時期のストーンズではサポートメンバーとして、かなり重要な役目を果たしていた事実と符合するんじゃないでしょうか。

そして一番気になるのが、後にエリック・クラプトン率いるデレク&ドミノスのメンバーとなる3人、そのボビー・ウィットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードンの存在が、このライプでは最重要な役割を演じているという点です。

実際、彼等が作り出す強いウネリと叩きつけるようなビートは、しなやかさとヘヴィな質感が同居した唯一無二の素晴らしさだと思いますし、それ無くしてはデラニー&ポニーが意図するところの歌と演奏は、これほどの熱気と感動を伝えきれなかったと確信している次第です。

最後になりましたが、初出LP「オン・ツアー(Atco)」の内容と比較して、もちろん出来は遜色がありません。しかもこちらは当時のステージが、そのまんまの流れで楽しめる収録だと思いますので、満足度も抜かりなし!

それがアナログ盤LP1枚の仕様になったのは、エレック・クラプトンの参加ゆえに権利関係の何かがあったのか、あるいは2枚組にするには演目が不足がしている事情からか、とにかく今は、そんな諸々を気にせずに楽しめる現実を感謝するばかりです。

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