OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

アルバートとスティーヴィーのブルース侠骨伝

2017-07-12 16:03:09 | Blues
Albert King with Stevie Ray Vaughan In Session (Stax = CD + DVD)

アルバート・キングは、黒人ブルースマンの中では恣意的とも思えるほどにロックやソウルに接近した音楽性で幅広い人気がありましたから、ブルースロックをやっている白人ミュージャンとの共演においても、すんなりマイペースでやっていたという証拠物件のひとつが、本日掲載のCDとDVDのセット物です。

内容は、1983年12月6日に収録されたテレビ放送用のスタジオセッションで、なんとっ!

アルバート・キング(vo,g) のバンドにスティーヴィー・レイ・ヴォーン(vo,g) が特別参加したという、これはもちろんブルース愛好家よりもロックファンが大喜びの企画でしょう。なにしろその時期は、スティーヴィー・レイ・ヴォーンがメジャーデビューして忽ち注目を集めていたわけで、しかも自らのギタースタイルに大きな影響を受けたのがアルバート・キングと公言していたのですから、願ったり叶ったり!?!

そこで、まずは本篇とも言える映像を収めたDVDからご紹介させていただきます。
 
 Act Ⅰ
  01 Introduction
  02 悪い星の下に / Born Under a Bad Sign
  03 Texas Flood (feat. Stevie Ray Vaughan - vocal)
  04 Call It Stormy Monday
  05 "Old Times" (talk)
 Act Ⅱ
  06 Match Box Blues
  07 "Pep Talk" (talk)
  08 Don't You Lie To Me
  09 "Who Is Stevie?" (talk)
  10 Pride and Joy (feat. Stevie Ray Vaughan - vocal)
 The Finale
  11 I'm Gonna Move to the Outskirts of Town
  12 Outtro

で、演奏本篇は、これぞっ!

ルーツ・オブ・ブルースロックとも言うべき、アルバート・キングの代名詞でもある大ヒット曲「悪い星の下に / Born Under a Bad Sign」が演奏されるのは、殊更スティーヴィー・レイ・ヴォーンのファンにとっては安心印ではありますが、やはり御大を前にしてのギタープレイには緊張からでしょうか、慎重に傾き過ぎたような遠慮とプレッシャーが感じられるのは、至極当然だと思います。

そして、そのあたりを懐の深さで受け止めるアルバート・キングが見事なお手本を示すのは、もちろん貫録でもマンネリでもなく、常に真摯なプレイを積み重ねてきたブルース魂のナチュラルな発露に他ならないでしょう。

ちなみに映像をご覧になれば一目瞭然、左利きのアルバート・キングは弦の張り方が右利きそのまんまなので、低音弦が下に、そして高音弦が上に位置する事から、押弦運指は全く独特であり、チョーキングにしても高音弦は押し上げるのではなく、引き下げるという変則奏法!?!

しかもピックは使わず、指弾きなんですから、以下はサイケおやじの独断と偏見による考察ではありますが、エグ味の効いたヴィブラートやダブルノートのチョーキングにおける大袈裟感は、それゆえに可能な必殺技のような気がしますし、当然ながらチューニングもレギュラーではない事が、映像を見ながらコピーするまでもなく、まさに一目瞭然でしょう。

おそらくは低い方から「C(♯)BEG(♯)BF」かと思われますが、これまた確証はございませんので、皆様からの御意見をお伺いしとうございます。

それとアルバート・キングのギタープレイの個性というか、速弾きはやらず、所謂「間」を活かした、それでいて息の長い(?)フレーズを出していくのは、それだけひとつひとつの音の強弱を大切にしている事が明白♪♪~♪

また、マイナースケールの頻繁な使用が逆にソウルやロックを強く感じさせる要因かもしれません。

ですから、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが公式デビューアルバムのタイトル曲にしていたスローブルースの「Texas Flood」では、最初っから些かカッコつけ気味のギタープレイに入ってしまう白人の若者を諫めるかの如く、最初はわざとらしくも抑えたところから、グイグイと熱く盛り上げ、しまいには座っていた椅子から立ち上がっての力演を披露するアルバート・キングに感動ですよっ!

また、そうなれば、スティーヴィー・レイ・ヴォーンだって、甘えていられるはずもなく、十八番の手癖も出せるほどリラックスしたところから、いよいよの本領発揮ですから、これには御大もニンマリと上機嫌♪♪~♪

画面の前のサイケおやじも、我知らず惹きつけられてしまいましたですよ♪♪~♪

なにしろ演奏はそのまんまの熱気で、ブルース&ブルースロックの有名曲「Call It Stormy Monday」に雪崩れ込み、グリグリのエレトクリック・ギター・ブルース大会に発展するのですからっ!

長い長い演奏が終わってから、新旧ブルースマンががっちり握手を交わすのも、演出以上の衝動があればこそでしょう。

以上が前半の「Act Ⅰ」ですが、既にここまでの40分弱で、このプログラムの真髄は堪能出来るんですが、続く「Act Ⅱ」は、それゆえに和みも好ましいパートで、軽い雰囲気の「Match Box Blues」では、律儀なスティーヴィー・レイ・ヴォーンに対し、ノリが大きいアルバート・キングが流石と思わせますよ。

それは8ビート主体のファンキーブルース「Don't You Lie To Me」にも引き継がれ、必死の表情も印象的なスティーヴィー・レイ・ヴォーンがブルースに拘れば、アルバート・キングが余裕でブルースロックなギタープレイをやってしまうあたり、いゃ~、ニクイばかりの演出とでも申しましょうか、たまりませんねぇ~~、実に♪♪~♪

こうして演奏は、いよいよ佳境へ突入、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが十八番の自作曲「Pride and Joy 」は皆様ご推察のとおり、イケイケのシャッフルビートでノリまくった演奏は、新旧両ギタリストがボケとツッコミを双方やらかす楽しさに溢れていて、こ~ゆ~リラックスした味わいこそが、ブルースロックのひとつの醍醐味かもしれません、と独り納得!

ですから「The Finale」でじっくり&じんわり演奏される「I'm Gonna Move to the Outskirts of Town」こそは、モダンブルースの盃事でしょうか、その神妙にして真摯な儀式の如き作法の伝承には、グッと惹きつけられてしまいます。

それは前向きなスティーヴィー・レイ・ヴォーンを緩急自在に翻弄するアルバート・キングの老獪さでもあり、少しずつビートを強めながら展開される魂の会話は熱くて濃密!

もちろん最終盤で、ブルース&ブルースロックのギグでは定番のアクションもご覧になれますし、演奏終了後の和んだ会話は、このセッションの雰囲気の良さをダイレクトに伝えるものだと思います。

あぁ……、これがエレクトリック・ギター・ブルースの奥儀なんでしょうねぇ~~、サイケおやじは畏敬の念を抑えきれません。

ちなみに演奏の合間に入る「語り」のパートでは、様々な内輪話っぽいところから、業界(?)の大先輩から新人への「アドバイス」と「余計なお世話」のバランスの妙が味わい深く、意味不明な言葉=スラングもあるもんですから、サイケおやじには解せないところもあるんですが、それはそれで面白いんじゃ~ないでしょうか?

書き遅れましたが、このスタジオセッションには観客が入っていませんので、尚更に両者の気持の交流がストレートに伝わってくるあるような気も致します。

以上、とにかく鑑賞する度にシビレるスタジオライブ映像には収まらなかった演奏パートがあったということで、CDには、それも含む以下のトラックが入っています。

 01 Call It Stormy Monday
 02 "Old Times" (talk)
 03 Pride and Joy
 04 Ask Me No Questions
 05 "Pep Talk" (talk)
 06 Blues at Sunrise
 07 "Turn It Over" (talk)
 08 Overall Junction
 09 Match Box Blues
 10 "Who Is Stevie?" (talk)
 11 Don't Lie to Me

上記の演奏中、DVDで楽しめる楽曲は基本的には同じテイクなんですが、幾分の編集やミックスの違いもあり、曲順が異なるのもそうですが、例えド頭「Call It Stormy Monday」は、映像パートでは「Texas Flood」からの流れの中でアルバート・キングが転調して始めていたところを、ここではそれを巧みに編集してありますが、それを知っていれば些かの物足りなさはあるものの、許せないとは申せません。

それよりも、このCDオンリーのトラックは、やはり気になるウリでありましょう。

それがまずはB.B.キングの「Ask Me No Questions」では楽しいブルースロック仕立てながらも、それゆえにリラックスしたスティーヴィー・レイ・ヴォーン、さらにお気楽なアルバート・キングという連鎖反応的なプレイは、こ~ゆ~セッションならではの結果オーライかもしれませんが、続く「Blues at Sunrise」はアルバート・キングがステージライブでは十八番にしている独白(?)のスローブルースですから、油断は禁物!?

情感溢れるアルバート・キングのギターは言わずもがな、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが本領発揮以上の凄さ全開!

ですから御大も上機嫌なのがサウンドだけからでも伝ってきますよっ!

あぁ~~、最高だあぁぁぁぁぁぁ~~~~♪

この、15分超っ!!

ちなみに、これは映像パートでも同じだったんですが、右チャンネル寄りにアルバート・キング、そして左チャンネル寄りにスティーヴィー・レイ・ヴォーンのギターが定位したミックスなんで、丁々発止のギター合戦、ボーカルに寄り添ったり、ツッコミを入れたりするオカズのフレーズ、さらには伴奏コードの様々な用い方等々がストレスを感じずに判明するのも、このセット物が高得点の証です。

そして、これまたアルバート・キングの十八番たるインストの「Overall Junction」は、ヘヴィなシャッフルビートでノリにノッた演奏ですが、前曲「Blues at Sunrise」が凄過ぎた所為か、美味しいデザート感覚と書けば、こりゃ~、不遜の極みと反省するしかございません。

特にアルバート・キングの手慣れているようで、実は深味満点のギターは、やっぱり強烈ですからっ!

ということで、今週は初っ端から仕事で苦しみましたが、そんなこんなの「気分はぶる~す」なところから立ち直るのにも、サイケおやじは大好物のブルースロックを欲してしまうわけです。

最後になりましたが、このセッションを支えたアルバート・キングの子飼いのリズム隊は流石に手堅く、時にファンキーな、あるいはロッキンソウルなリズムとビートを提供しているあたりも聴き逃せませんというよりも、自然に耳がそっちに惹きつけられる事も度々でしたねぇ~~♪

また、ここまでの拙文ではギタープレイばっかり書いてしまいましたが、アルバート・キングのボーカリストとしての魅力だって決して侮れません。ゴスペル系のシャウトやコブシはそれほど出ませんが、抑揚を大切にした哀愁フィーリングのソウルフルな節回しは、サイケおやじの好むところです。

うむ、ここで繰り広げられた名演&熱演に接しながら、思わず傍らにあった自分のギターに手を伸ばしてしまった己が恥ずかしい……。

虚心坦懐に、端座して鑑賞するべしっ!

と、自分に言い聞かせているのでした。
 
 
※追記:DVDは日本製の再生機器で全く問題無く鑑賞出来ます。画質も良好♪
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お金は天下の回りものなれど…

2016-01-29 15:49:56 | Blues

俺の借金全部でなんぼや / 上田正樹と有山淳司 (bourbon)

昨日は甘利代議士の、あまりに他人事という作文朗読に呆れかえった皆様も大勢いらっしゃるでしょう。

そりゃ~、その時点で大臣やってる人だから、頭脳明晰で言語もなんとか明瞭ではありましたが、普通に聴いてる我々に対しては、前後関係の脈略を混乱していただくような、多分に恣意的なものが強く感じられたんじゃ~ないでしょうか。

もちろん、そ~した部分は列席したマスコミ各社に配布されている会見内容と同じ文章コピーで後ほどのフォローは可能という結果は想定されているにしろ、質疑応答の部分で肝心の本人がシドロモドロになっていたのでは、説得力が薄まってしまったのも当然が必然だったと思います。

おそらく、これは本人サイドもマスコミや世間一般の大多数も、日頃から献金や口利きが常態化し、ゴリ押しも理屈もゴッタ煮で繰り返している代議士の日常茶飯事では、金銭感覚も失われているはずという常識に沿ったものかもしれません。

しかし、いずれにしろ、甘利代議士本人が金銭の授受を認め、さらには秘書が私的にお金を流用していたという実態は看過される事ではなく、辞任する意向を示したのは政治家としての矜持云々よりも、その潔さは当然ですから、褒められるわけありませんよねぇ~~♪

ほとんど涙ぐんでいた場面もあった昨日の会見でも、果たして自分自身が何を分かっていたか、それが伝わってきたと思う国民は決して大勢とは言い難いはず!

さて、そこで急に思い出したのが本日掲載のシングル盤A面曲「俺の借金全部でなんぼや」で、その歌詞には友人知人から借金をしてはギャンブルの勝ち負けで一喜一憂している男の日常が、なかなか具体的に伝えられながら、実は本人もリスナーも、積み重なっている借金の総額が瞬時には把握しかねるという……。

しかも演奏スタイルがアコースティックな古いブルース様式というあたりが、普通にコミックソングとは括れない、まさにこれもブルースの真髄!?

なにしろ演じている上田正樹(vo) と有山淳司(g) は、これが発売された昭和50(1975)年当時、関西でブルース&ソウルなファンキーバンドのサウス・トゥ・サウスを組んでいて、そのコテコテに熱い歌と演奏は「ぼちぼちいこか」「この熱い魂を伝えたいんや」という2枚のLPに残されていますが、この「俺の借金全部でなんぼや」は前者からのシングルカットであり、その軽妙洒脱の泣き笑い演歌こそがブルースのひとつの真髄であるとすれば、実はサウス・トゥ・サウスのライブステージでは最初にアコースティックなセット、後半がエレクトリックなバンドスタイルで披露されていた関西版ブルース、ここにありっ!

もちろん、当然ながら前述した2枚のアルバムは、その両パターンを意識的に分けた作りになっているわけで、その頃は洋楽でも本場のブルースが市民権(?)を得ていた我が国においても、堂々と「和製」が自作自演出来ていたという先駆けであり、後に登場する憂歌団あたりにも負けない存在感があるわけですよ。

ちなみに上田正樹は既にソロシンガーとして、今日では歌謡曲のジャンルでも有名な説明不要の存在ですが、ここで相方を務めている有山淳司はフィンガーピッキングのギター奏法に秀でた名手で、しかもここで聞かれるような、アメリカの戦前カントリーブルースとかラグタイムスタイルのジャズブルース、例えばブランド・ブレイクのようなシンコペイトした低音弦の使い方を織り交ぜた伴奏&独奏系のアコースティックギターは、一朝一夕には真似することも出来ないはずで、それを当時の日本でやっていたというだけでも、尊敬されて然るべきミュージシャンでありました。

そして肝心の「俺の借金全部でなんぼや」は当然ながら関西弁で歌われていながら、作詞したのが三上寛!?!

もう、このクレジットだけでも凄さ全開の証でしょう。

つまりはその頃、青森出身の三上寛と関西で活動していた上田&有山組が交流していて、しかも、これは実際に聴いていただくしかありませんが、歌詞の中の登場人物は前述したサウス・トゥ・サウスのバンドメンバーだとか、そんな諸々の私生活(?)や内部事情が開陳されているんですから、そこに曲を附した主役コンビの奮闘(?)自嘲も真実味があるわけでしょうか。

いゃ~、本当にここで歌われているような中途半端な借金&返済を繰り返す生活をしていたら、自分の金銭収支どころか、日々のやるべき事柄さえもブルースに彩られてしまいますよねぇ~~~♪

ということで、甘利代議士にかぎらず、永田町の先生方には、今こそ「俺の借金全部でなんぼや」を替え歌して、「俺の献金~」とやって欲しいもんです。

えっ、それで昨夕の弁明は割り切れたかって?

それこそ、割り切れない、余り素数みたいなもんです。

ダジャレのおやじギャグ、失礼致しました。

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ぶる~す、それぞれの日常

2013-10-04 13:27:12 | Blues

すんまへんのブルース / 小林万里子 (FOR LIFE)

最近、熾烈な戦い(?)をやっていた仕事に、ようやくひとつのケリがつきました。

昨日深夜、相手方から泣きを入れる電話があったわけですが、それにしても分かりきっていた事を今更なぁ~~~、という気持が本音です。

しかし関西弁で「すんまへ~ん」とか言われてしまうと、先方がフェロモン過多の熟女姐さんという事あり、ついつい……、ねぇ。

そこで突然思い出したのが、本日掲載のシングル盤A面曲「すんまへんのブルース」です。

歌っている小林万里子は曲タイトルからもご推察のとおり、関西ベースのフォークブルースシンガーで、基本的には所謂シモネタ系の心情吐露が得意技!?

それゆえに表舞台よりもアングラというか、昭和53(1978)年頃からラジオの深夜放送を中心に局地的&爆発的な人気を集めながら、結局は何時しかフェードアウトした伝説の歌手でありました。

もちろん発売されていたレコードは数枚のシングル盤だけで、この「すんまへんのブルース」にしても、昭和55(1980)年に世に出ながら……。

その内容については、ここに書いても、歌の真意は伝わらないほど、小林万里子の自作自演が際立っているんですから、たまりません。

基本的には典型的なブルースロックの手法が用いられているところが、安心印のミソであり、どうやら井上陽水のプロデュースという一点豪華主義も伝説に拍車をかける要素かもしれません。

とにかく機会があれば、聴いてみて下さいませ♪♪~♪

素直に謝罪する事の大切さ、素晴らしさを痛感させられますし、その裏側にある拭いきれない諸々が、せつなくも哀しいブルースの本質じゃ~ないかと思います。

ということで、冒頭の話に戻りますが、仕事の縺れとはいえ、あちこちに義理を借りたり、陰湿な手段を用いざるを得なかったことには、流石に後味の悪さを感じているサイケおやじです。

あぁ……、人生は誰もがぶる~~す、ですかぁ……。

恥ずかしながら、そういう悲壮感に酔ってしまいそうです。

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ロバート・ジョンソンに強迫観念

2011-02-14 16:24:26 | Blues

King Of The Delta Blues Singers / Robert Johnson (Columbia)

ブルースロック経由で本物の黒人ブルースに接したサイケおやじにとって、ロバート・ジョンソンは絶対に避けて通ることの出来ない存在でした。

なにしろエリック・クラプトンをはじめ、ほとんどのブルースロッカーが影響を受けたと語り、敬意を表しているのですから、これは聴かずに死ねるかの偉人!?

しかしロバート・ジョンソンは1930年代中頃からの2~3年間にレコーディングを残しただけで女に毒殺された(!?)と言われていますから、少なくとも昭和40年代の日本では一般的に知られた存在ではなく、実際、当時のラジオからロバート・ジョンソンの歌が聴けたという記憶はありません。

ところが前述したエリック・クラプトンが在籍するクリームの名演「Crossroads」がロバート・ジョンソンのオリジナル曲であったり、また昭和49年晩秋頃からの突如とした我国でのブルースブームにより、もしかしたらアルバート、フレディ、そしてB.B.の三大キングよりも強い存在感を示すに至ったようです。

それは今となっては信じ難い出来事かもしれませんが、なんとラジオでブルース専門の番組が放送されるまでになって、そこから流されるマディ・ウォーターズあたりの比較的知られたブルースマンさえも、ロバート・ジョンソンの影響下にあるという真相に目覚めてみれば、万難を排してレコードを買うしかないという心境に追い込まれ、そこで中古ながらゲットしたのが、本日ご紹介のLPでした。

 A-1 Crossroads Blues
 A-2 Terraplane Blues
 A-3 Come On In My Kitchen
 A-4 Walking Blues
 A-5 Last Fair Deal Gone Down
 A-6 32-20 Blues
 A-7 Kindhearted Woman Blues
 A-8 If I Has Possession Over Judgement Day
 B-1 Preaching Blues
 B-2 When You Got A Good Friend
 B-3 Rambling On My Mind
 B-4 Stones In My Passway
 B-5 Traveling Riverside Blues
 B-6 Milkcow's Calf Blues
 B-7 Me & The Devil Blues
 B-8 Hellbound On My Trail

ところが実際に針を落とし、端坐して鑑賞しても、これがさっぱり理解出来ません……。

まず活躍したのがSP時代でしたから、LPに纏められた音源にしても、基本的に音が悪く、しかもノイズがたっぷり……。

さらに個人的にはバンドサウンドのシカゴ系プルースやブルースロックの源という思い込みが強かった所為もあり、生ギターでの弾き語りと幾分甲高いロバート・ジョンソンの歌いっぷりに馴染めません。

もちろんアレンジも全くロックっぽいところなんか感じられず、う~ん……。

正直、これがどうしてエリック・クラプトンに!?

という疑問を打ち消せませんでしたねぇ。

なにしろ前述のラジオ番組で仕入れた情報によれば、革新的なスタイルだとか、唯一無二の絶対的な存在だとか、とにかく神様扱いなんですから、ますます自分の感性に疑問を持つばかりです。

まあ、今となってはロバート・ジョンソンだけを聴いていたのが間違いの第一歩と気がついているわけですが、確かに同時代に録音を残した他のブルースマンに比べれば、そのモダンなフィーリングというか、例えばギターの弾き方にしても、後年のR&Rに直結するビートが出ていると思います。

特にリズム楽器としてギターを使う、所謂リズムギターの中に低音弦によるベース音のアクセントを入れるという、ウォーキングベースのスタイルを明確にしたところは、完全にロック的なノリを出すポイントじゃないでしょうか。

またアコースティックのスライドにしても、弦を擦るタッチとリズム感が、あまり良好ではない録音でも見事に表現されているのがわかります。

そして肝心のボーカルが、ギターと相互作用という妙なスイング感に溢れているのも!?!?

このあたりは上手く文章にすることが出来ず、ちょいと悔しい気分ではありますが、それはロバート・ジョンソンの音楽が未だ、サイケおやじには理解不能な事の表れです。

このアルバムにしても、何度聴いたか知れないほどなんですが、実は心底、シビレた事が一度も無いんですよ。

しかし、それゆえに聴くという強迫観念があるのも、また事実……。

そうしたところが、ロバート・ジョンソンの魅力の一部なんでしょうか?

なんとか生きているうちに、感銘に震えたいと願っているのでした。

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お洒落でせつないリロイ・カー

2010-06-18 16:37:24 | Blues

Blues Before Sunrise / Leroy Carr (Columbia)

今はどうなっているか、ちょっと分かりませんが、とにかく我国でブルースロックではない、本物のブルースを聴こう! というブームが最初に高まったのは昭和49(1974)年だったと思います。

実はこの年、私はある幸運から6~9月までの間、アメリカに行けたんですが、それが帰国して吃驚したのは、前述したブルースの大ブーム!?

なにしろラジオではブルース専門の番組が始まったり、レコードもオリジナル音源を大切にした再発がドカッと出たり、ついには本場のブルースマンが来日公演をやったりという活況でしたから、サイケおやじも何時しかそれに導かれ、様々な本物のブルース探求へと奥の細道を辿り始めたのですが、当然ながら、ブルースはギターばかりではなく、ピアノやハーモニカ等々、いろんな楽器をメインしたジャンルが林立していることを知るのです。

そしてその中で最初に感銘を受けたのが、本日の主役たるリロイ・カーという、1930年代のピアノブルースでは代表的な人気歌手でした。

その魅力は都会的な洗練とそこはかとない哀愁の絶妙なミックス云々とガイド本では解説されるようですが、実際、聴けば全くそのとおりなんですねぇ~♪

掲載したアルバムは、リロイ・カーが1932&1934年に吹きこんだSP音源を纏めたLPです。

 A-1 Midnight Hour Blues
 A-2 Mean Misterater Mama
 A-3 Hurry Down Sunshine
 A-4 Corn Licker Blues
 A-5 Shady Lane Blues
 A-6 Blues Before Sunrise
 A-7 Take A Walk Around The Corner
 A-8 My Woman's Gone Wrong
 B-1 Southbound Blues
 B-2 Barrerhouse Woman
 B-3 I Believe Make A Change
 B-4 Bobo Stomp
 B-5 Big Four Blues
 B-6 HustLer's Blues
 B-7 Shinin' Pistol
 B-8 It's Too Short

演奏スタイルの基本はピアノの弾き語りなんですが、そこに最高の相方として彩りを添えるのが、スクラッパー・ブラックウェルというギタリストです。もちろん時代的にはアコースティックギターというのが結果オーライ♪♪~♪

これが実にメロディアスな単音弾きで、自然体の哀愁が滲み出るリロイ・カーの歌いっぷりを堅実にサポートすれば、本来がせつないブルースの歌詞と特有の都会的なブルースフィーリングが、もうこれ以上無いほどに醸し出されるのです。

このあたりは同時代のジャズやジャズボーカル、あるいはこれ以前のジャズブルースといった分野からの影響と相互作用が確実に働いていると、まあ今日では客観的に推察も出来るんでしょうが、リアルタイムでは最高にお洒落な音楽だったと思いますねぇ。

当然ながら聴いていたのは黒人層が圧倒的だったと思いますが、こういう洗練された音楽が都市で生活する黒人達のフィーリングだったのかもしれません。

ちなみに収録全曲はニューヨークでの録音とされています。

しかしリロイ・カー本人はナッシュビル生まれのインディアナポリス育ちですから、決して都会の人ではありません。まあ、そのあたりの感覚がどのように生成されたのかは、知る由もなく、ただただレコードに記録されたリロイ・カーの歌と演奏を楽しみつつ、その哀愁のブルースに浸る他はないでしょう。

いろいろと私が稚拙な筆を弄するまでもなく、これはまさに聴かなければ感じられない魅力なのです。

ちなみにリロイ・カーは、このアルバムに収められた一連の名演を残した後の翌年、過度の飲酒によって亡くなったと言われています。享年30歳……。

ということで、ブルースはなにもギターばかりが主役ではなく、またシカゴのモダンブルースやサニーボーイあたりの深南部のフィーリングばかりが真髄ではありません。

ピアノブルースというと、何故かジャズっぽいような先入観が強い所為でしょうか、あまり我国では人気が高いとは言えませんが、確かにそういう傾向があるにせよ、とにかくリロイ・カーは聴いた瞬間に魅了される、何か特別の魅力を持ったブルースマンだと思います。

このアルバムはアメリカで1962年頃に纏められて以降、ロングセラーを続けているそうですから、CDならば尚更に音質の改善もあると思われますので、機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。

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吠えるウルフと英吉利の若造達

2010-06-10 16:35:26 | Blues

The London Howlin' Wolf Sessions (Chess / Rolling Stones)

黒人ブルースマンの大御所と白人ロッカーが共演セッションという、当時の流行物のひとつですが、ブルースのなんたるかをロクに知らなかった若き日のサイケおやじには、まさに端坐して謹聴させられたアルバムです。

主役のハウリン・ウルフは、その名のとおり吠えまくりの濁声ボーカルで強烈なブルース魂を披露した偉人ですが、本格的にレコードデビューしたのは40歳を過ぎてからで、それ以前は有名なロバート・ジョンソンやサニー・ボーイ二世と一緒の巡業で南部一帯を回っていたそうですし、その後に兵役や黒人専門ラジオ放送局のDJとして数年を過ごしていたのが、そのキャリアでした。

そしてシカゴのチェスレコードと契約した1952年からは、都会的なエレキサウンドをバックにダーティ&ワイルドな南部直系のブルースを唸りまくり、ストーンズ等々の英国の若きミュージシャンにも敬愛される存在になったのですが……。

そのハウリン・ウルフとイギリスの白人ブルース小僧が一緒にレコードを作るという企画は、プロデュースを担当したノイマン・デイロンとエリック・クラプトンの世間話が本当になったという、いやはやなんとも、瓢箪から駒!?!

実はエリック・クラプトンのギタースタイルにはフレディ・キングやB.B.キングの他にヒューバート・サムリンという、ハウリン・ウルフの片腕とも言うべき凄いギタリストの影響が大きいというのは、今や定説でしょう。

そのふたりをイギリスに招いて、エリック・クラプトンが集めたバンドがバックアップするという夢の実現が、このアルバムの最初の目論見だったようです。

ちなみにノイマン・デイロンは当時、チェスレコードの嘱託して様々な仕事をやっていたことから、1969年にはマディ・ウォーターズとマイク・ブルームフィールド等々の白人ブルースロッカーを共演させた人気アルバム「ファーザーズ・アンド・サンズ」をベストセラーに仕立て上げた実績がありましたから、関係者はまんざらでもなかったでしょう。

こうして1970年5月初頭、イギリスはロンドンのオリンピックスタジオに参集したのが、エリック・クラプトン(g)、ビル・ワイマン(b)、チャーリー・ワッツ(ds)、クラウス・ヴァマン(b)、リンゴ・スター(ds)、イアン・スチュート(p) 等々、お馴染みの面々でしたが、主役のハウリン・ウルフが帯同してきたのはヒューバー・サムリン(g) とジェフリー・カープ(hmc) 等々の気心の知れた子分達だったことから、現場には緊張とプレッシャーが渦巻いていたとか!?

しかしLP1枚に収められた歌と演奏には、それゆえの強烈な刺戟とブルース本来の悪魔性が、なかなか上手く纏められています。

 A-1 Rockin' Daddy
 A-2 I Ain't Superstitious
 A-3 Sittin' On Top Of The World
 A-4 Worried About My Baby
 A-5 What A Woman!
 A-6 Poor Boy
 B-1 Bult For Comfort
 B-2 Who's Been Talking?
 B-3 The Red Rooster
(rehearsal)
 B-4 The Red Rooster
 B-5 Do The Do
 B-6 Highway 49
 B-7 Wang Dang Doodle

まずお目当てというか、当時も今も興味深々なのがエリック・クラプトン全盛期のギタープレイでしょう。そして結果は全篇で強烈なリードを弾きまくり♪♪~♪ 師匠とも言えるヒューバート・サムリンは控えめなリズムギターに徹しているようですが、おそらくはリハーサル段階で、リフやキメを伝授していたと思われます。

それでもエリック・クラプトン以下の面々は緊張と畏敬の念が頂点に達していたらしく、ガチガチになってミスを繰り返し、日頃から気難しいハウリン・ウルフを余計にイライラさせていたとか、それゆえに持病が悪化してセッションが中断したとか、とにかくヤバイ雰囲気だったのは後の関係者のインタビューから、今日では様々なエピソードになっています。

ちなみにこのセッションの時、ヒューバート・サムリンはエリック・クラプトンの大豪邸に招かれ、夥しいギターコレクションの中から1本、素晴らしいものをプレゼントされたそうですね。

まあ、それはそれとして、そんな現場の雰囲気が最高度にドキュメントされているのがB面に収録された「The Red Rooster」のリハーサルと本テイクの二連発!

まずはリハーサルで、自らアコースティックスライドを弾いて歌うハウリン・ウルフに、ど~してもタイミングとフィーリングが合わせられないエリック・クラプトンがイモを露呈!? ついに自ら御大に願い出て教えを請うところから、ハウリン・ウルフが素晴らしい本物のブルースを披露するギターは流石♪♪~♪ そしてどうにか感じを掴んだエリック・クラプトン以下の白人小僧達が必死の演奏で仕上げた本テイクの味わい深さは、まさにブル~スロックでありながら、極めて本物のブルースじゃないでしょうか。

というよりも、人種を超えてブルースに何かを感じる環境が整えられた意味合いからすれば、こういうセッションも所期の目的が達せられたわけですから、まさにアルバムの中では最高のハイライトだと思います。

もちろんエリック・クラプトンのギターは、どんな経緯があろうとも、レコードに記録された中では素晴らしいかぎり♪♪~♪

当然ながら随所で多重録音も駆使されていますが、ウキウキさせられるリフと鋭角的なアドリブソロが痛快な「Rockin' Daddy」や「What A Woman!」、ファンキーフレーズが当時としては珍しい「I Ain't Superstitious」、粘っ濃くも神妙な「Sittin' On Top Of The World」、十八番のシャッフルビートが楽しい「Worried About My Baby」、そして如何にもエレクトリックなブルースのテンションが熱い「Poor Boy」が入ったA面は聴き易く、しかもハウリン・ウルフのド迫力な歌いっぷりに圧倒されているホワイトボーイ達の奮闘が感度良好♪♪

それがB面に入ると、前述した「The Red Rooster」のドキュメントを真ん中に、見事な緊張と緩和を楽しませてくれるのですから、このアルバムは本当に良く出来ています。

実はブルースロックがど真ん中の「Who's Been Talking?」等々で冴えまくりのオルガンやピアノはスティーヴ・ウインウッドなんですが、これは後からのオーバーダビングですし、ブラスが熱い雰囲気を盛り上げる「Bult For Comfort」にしても、そういう作為が濃厚というあたりが、この人気名盤の魅力の秘密じゃないでしょうか。ブルースというよりも、なかなかソウルに近い味わいも強いハウリン・ウルフにはジャストミート!

ですから続く「The Red Rooster」のリハーサルから本テイクへの自然な流れが、ますますリアルなんだと思います。

そして以降、熱血の「Do The Do」からエルモア・ジェイムス調の「Highway 49」、そして最も日常的なハウリン・ウルフの雰囲気に近い「Wang Dang Doodle」まで、それこそ一気呵成に楽しめしてしまうんですねぇ~♪

もちろんそこにはエリック・クラプトンの奮闘だけでなく、ビル&チャーリーのストーンズ組が提供する正統派で、時にはファンキーなブルースロックのビートが強く屹立していますし、随所でハッとするほど良い感じのブルースハープを聞かせてくれるジェフリー・カープは、当時弱冠19歳!?!

また、既に述べたように、レコード化されるまでには様々なオーバーダビングも施されたわけですが、主役ハウリン・ウルフのボーカルの強さは何事にも左右されない凄みが健在! それゆえにサイケおやじのようにエリック・クラプトン以下の有名ロックスタアを目当てに聴くファンにも、本物の黒人ブルースの魅力が、そのほんの入り口ではありますが、大いに楽しめたというわけです。

ちなみにアルバムそれ自体の発売は1971年8月で、アメリカではチェスレコードから出て当然ながら、イギリスではストーンズが当時設立したばかりの自分達のレーベルだったローリングストーンズレコードからというのも全く絶妙で、これはビル&チャーリーの堂々たる参加はもちろんのこと、会社の初代社長がチェスレコード創業者の息子だったマーシャル・チェスという因縁も大きいのかもしれません。セッションに特にこれという貢献が見当たらないミック・ジャガーの名前がしっかりとクレジットされているのも、そのあたりの経緯によるものでしょう。

ということで、聴いた瞬間からブルース&ブルースロックの魅力にどっぷりと惹きつけられる名盤だと思います。

もちろんこれがブルースの真髄だなんていうことは決してありません。

むしろ黒人大衆音楽からすれば、完全なる邪道なんでしょうが、ブルースそのものの魅力は確かにここにあるわけですし、実際、サイケおやじはクリームやジョン・メイオール、フリートウッド・マック等々の英国産ブルースロックからの正統な流れの中で邂逅したこのアルバムによって、ますますブルースに魅了されたのです。

さらに嬉しいことには、この時のセッションには相当数の未発表トラック&テイクが残されていたようで、続篇盤も出ましたし、今日ではCDによってきっちりと美味しいところが楽しめるはずです。

エリック・クラプトンのファンは必聴!

最後になりましたが、このLPではリッチーと表記されているリンゴ・スターは1曲だけの参加で、その「I Ain't Superstitious」でのドラミングが相当にミスマッチ!?! ところがそれゆえに味わい深い全体のグルーヴが新鮮なファンキーフィーリングを生み出していると感じるのは、私だけでしょうか?

それともうひとつ、こういうセッションを聴いていると、そこにブライアン・ジョーンズの不在を痛切に感じざるをえません……。もし故人のスライドギターやハーモニカがここにあったら、それは……。

やっぱりなんとも罪作りなアルバムなのかもしれませんね。

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アルバート・キングのでかい顔

2009-07-24 10:35:03 | Blues

悪い星の下に / Albert King (Stax / 日本グラモフォン)

クリームを聴き、エリック・クラプトンにシビレていた昭和44(1969)年のサイケおやじが、とても気になっていたのがアルバート・キングという黒人のブルースマンでした。

どうやらエリック・クラプトンが大きな影響を受けているらしいとか、クリームのヒット曲「Strange Brew」が、アルバート・キングの某曲を元ネタにしているとか、なによりもクリームがアルバート・キングの代表的な演目「悪い星の下に / Born Under A Bad Sign」をレコーディングしていたのですから、さもありなんとご理解下さい。

しかし、実は告白すると、当時の私は黒人ブルースなんて自主的に聴いたこともなく、その本質についても、ジャズやR&Bやロックンロールの源流だろう、と思い込んでいたのですから、ブルースロックもなにも全然、分かっていなかったのですが、ただ単にエリック・クラプトンみたいなギターが聴きたいというのが、本音だったのです。

そしてレコード屋には本日ご紹介の、でっかい顔したアルバート・キングのシングル盤が売られていたんですねぇ~♪ もちろんA面はクリームにカバーされた自身の代表曲ですし、B面にも同じくヒットしたという「Crosscus Saw」が入った徳用盤!

まずA面の「悪い星の下に」は、結論から言えばクリームとは全然別のアレンジというか、本当はこっちがオリジナルなんですが、そのブラスや重いビートを強調した演奏と歌には正直、最初っから違和感がありました。

しかしギンギンにエグイ音色で歌に切り込んでいくエレキギターの響きには、確かにエリック・クラプトンがクリームで聞かせてくれたのと同じ味わいがあるのです。

う~ん、これってブラスを外したら、ほとんど「Strange Brew」だよなぁ~~♪

間奏のギターのチョーキングも、最高にイカシていますし、ヘヴィなドラムスとキメまくりのペースは、ジンジャー・ベイカーとジャック・ブルースがロックジャズに解釈した元ネタだと納得出来てくるのです。

そしてB面の「Crosscus Saw」に至っては、ゴキゲンに飛び跳ねるリズム隊のラテン系ブルースビートに乗って、合いの手のブラスとエグ味の強いチョーキングが冴えまくりのギター♪♪~♪

ただし、エリック・クラプトンのような流麗で息の長いフレーズは出ないのですが、アルバート・キングのブツ切れのブルースリック、その間合いの絶妙なフィーリングが最高! あぁ、これってブルースロックだよなぁ~~♪

と気がつくのは、もう少し後の話なんですが、しかし実に気持ち良く聴けたんですねぇ。

ちなみにアルバート・キングは1953年頃から本格的にブルースを歌い始め、左利きでエレキギターを弾くという印象深い個性は、やがてR&Bやゴスペルをも包括したエレクトリックなアーバンブルースのスタイルへと昇華され、様々な黒人音楽の専門レーベルに多くのレコーディングを残しています。

そして1966年からの十数年間ほどが、南部ソウルの名門レーベルだったスタックスに在籍し、白人にもウケたブルース&ソウルなヒット曲を連発した全盛期でしょう。エリック・クラプトンをはじめ、多くの白人ギタリストやブルースロックのミュージシャンから尊敬され、コピーされまくったのも、この時代の演奏だったと思います。

そしてサイケおやじは本質的に好きだったブルースロックの世界から、もうちょっと背伸びした本物の黒人ブルースを聴く覚悟を決めたのが、このシングル盤だったのです。

皆様がご存じのように、アルバート・キングはフレディ・キング、そして B.B.キングと並び立つ、所謂「三大キング」のひとりであり、もちろん3人はギターのスタイルから歌い方、ライブでの所作までもが、白人ロックミュージシャンに真似された偉人なのですが、その中で特にアルバート・キングのエグイ個性が、私には合っているようです。

ただし当時の日本では黒人ブルースは聴こうとしても、そもそもレコードが大して発売されておらず、それが突然、昭和50年頃に大ブームとなるのですから、世の中はわかりません。

ですから、私はこのシングル盤をかなり長い間、愛聴していたのですが、これだって、きっとクリームの人気が無かったら、発売されなかったでしょうねぇ……。

やっぱり、クリームって、凄い! というのが、本日の結論なのでした。

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