OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

実直派カーメル・ジョーンズ

2009-03-29 09:20:46 | Jazz

Jay Hawk Talk / Carmell Jones (Prestige)

ジャズ喫茶の人気盤になる条件として、ちょっと知名度の低い実力者の派手なリーダー盤といういことになれば、本日ご紹介のアルバムも、そのひとつでした。

リーダーのカーメル・ジョーンズは1960年頃から西海岸で活躍していた黒人トランペッターで、ビックバンドの一員として、あるいは自己名義のアルバムも出している実力者でしたから、ついに1964年になってホレス・シルバーのバンドレギュラーに抜擢され、ニューヨークへと進出することになったようですが、同バンドでの素晴らしい演奏は名盤「Song For My Father (Blue Note)」に、しっかりと記録されています。

で、このアルバムは、ちょうどその当時に吹き込まれたリーダー作で、録音は1965年5月8日、メンバーはカーメル・ジョーンズ(tp)、ジミー・ヒース(ts)、バリー・ハリス(p)、ジョージ・タッカー(b)、ロジャー・ハンフリーズ(ds) というバリバリの面々です。

A-1 Jay Hawk Talk
 当時流行の典型的なジャズロック演奏ですが、ジョージ・タッカーのハードエッジなペースワークを要にした、かなり硬質のグルーヴが心地良い限り!
 そしてカーメル・ジョーンズのトランペットが真っ黒なモダンジャズの真髄を聞かせてくれますよ♪♪~♪ なんというか、エグイ分かり易さなんですねぇ~♪
 するとジミー・ヒースが、これまた過激なツッコミに下品なフレーズ展開という熱血的な素晴らしさ! それに乗っかってしまったようなバリー・ハリスの戸惑いも結果オーライというか、それもこれも、ジョージ・タッカーの強烈な存在感ゆえだと思います。
 尻切れとんぼ気味のラストテーマの潔さも印象的ですね。

A-2 Willow Weep For Me
 そして、せつせつと真っ黒に演じられブルース歌謡の名曲が続きます。テーマメロディを素直にフェイクしていくカーメル・ジョーンズは、やはりクリフォード・ブラウン系の名手の自覚が見事!
 続くバリー・ハリスも本領発揮の地味~な良さが滲み出る名演ですし、ここでもエグイばかりのジョージ・タッカーが、激烈なペースワーク!
 全体はシンプルな演奏に仕上げられていますが、ハードバップの王道が楽しめます。

A-3 What Is This Thing Called Love
 これも有名なスタンダード曲にして、モダンジャズではクリフォード・ブラウンの決定的な名演がありますから、カーメル・ジョーンズも神妙に全力を尽くした快演になっています。
 ストレートなテーマアンサンブルからジミー・ヒースがジルジルと吹きまくるテナーサックスの真っ向勝負! 初っ端からハッスルしまくったリズム隊の痛快4ビート! そして懸命に前向きなアドリブを披露するカーメル・ジョーンズの果敢な挑戦!
 全てが正統派ハードバップとして、好感の持てる演奏だと思います。

B-1 Just In Time
 これまたリー・モーガンの隠れ名演が残されている軽やかなスタンダード曲ということで、カーメル・ジョーンズにしても自信に溢れたテーマ吹奏から、既に熱いものが感じられます。そしてアドリブパートに至っては、流麗なフレーズ展開で、完全なる歌心優先主義を披露するのです。
 また露払いを務めるジミー・ヒースのテナーサックスも正統派のイキイキとしたものですし、バリー・ハリスの余裕たっぷりにスイングするピアノも最高♪♪~♪

B-2 Dance Of The Night Child
 カーメル・ジョーンズが書いたマイナー調のファンキー曲で、ハードエッジなアクセントが冴えたリズム隊のキメが、テーマメロディをさらに熱いものにする快演が、これです。
 アドリブ先発のバリー・ハリスも、そのあたりは心得たハードドライヴな節回しが最高ですし、グイノリにして強靭なジョージ・タッカーのペースワークにも、グッと惹きつけられるでしょう。
 そしてカーメル・ジョーンズが渾身のファンキートランペット! クリフォード・ブラウン直系のフレーズに加え、ちょっと硝煙反応に近いような、独自の個性もしっかりと聞かれますよ。続くジミー・ヒースのダークなテナーサックスも高得点!
 さらにお待ちかね、ジョージ・タッカーの剛球ペースソロが凄いです! そのまんまの雰囲気で繋がっていくラストテーマのカッコ良さも、実にたまりませんねっ♪♪~♪

B-3 Beepdurple
 これも当時の流行だったラテン系ハードバップですが、アドリブパートはアップテンポの正統派4ビート♪♪~♪ この軽やかなノリをしっかりと熱くしていくジョージ・タッカーのペースも、一際に強い印象を残します。
 そしてカーメル・ジョーンズのトランペットが伸びやかに歌うんですねぇ~♪ ホレス・シルバーのバンドでは同僚のドラマーだったロジャー・ハンフリーズとのコンビネーションもバッチリですから、禁断のブラウニーフレーズの連発も大歓迎です。
 さらに熱烈前進のジミー・ヒース、ビバップ魂を継承しているバリー・ハリス、トドメの地響きペースソロを披露するジョージ・タッカーと続くアドリブの痛快さは、演奏全体をグングンと熱くしていくのでした。

ということで、演目の流れにメリハリの効いたA面、如何にもハードバップど真ん中のB面というアルバム構成は人気盤の必要十分条件を満たしていますから、ジャズ喫茶では鳴りだした瞬間にお客さんが飾ってあるジャケットを思わず見てしまう情景が日常茶飯事でした。

確かアナログ盤時代は日本未発売だったんじゃないでしょうか? そのあたりもジャズ喫茶の人気盤の必須条件でしょうねぇ。現在のCD化の状況は不明ですが、聴けば忽ち気のなること、請け合いです。

ちなみにカーメル・ジョーンズはこの後、欧州へと活動の拠点を移してしまい、現地でも幾つかの録音を残していますが、結局は短かったニューヨーク時代が最高の輝きだったと思います。そのあたりはブッカー・アーヴィン(ts) やチャールズ・マクファーソン(as) との共演盤等々にも鮮やかに記録されていますので、いずれは取り上げる所存ですが、こういう実直派が本場の第一線では、必ずしも満足に活動出来なかった当時の状況の厳しさは……。

後頭部ショットのジャケットも暗示的ですねぇ。

しかしそういう人こそが、ジャズ者には気になる存在として、残された演奏はいつまでも聴き継がれるものでしょう。このアルバムも、そのひとつと確信しています。

コメント
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