OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロリンズはライブの王様

2008-08-31 14:35:07 | Jazz

昨日に続いて仕入れた新ネタのご紹介です――

Tokyo 1963 / Sonny Rollins (RLR)

モダンジャズ切ってのアドリブ名人といえば、ソニー・ロリンズは外せません。しかしレコードの中には録音年代毎に様々なスタイルに変質した演奏が残されていますので、それだけ聴いていると賛否両論でしょうが、何時、如何なる時でも、実際のライブの場では普遍の「ロリンズ節」を堪能させてくれます。

ですからライブレコーディングの未発表物は常に大歓迎♪ 本日の1枚は、なんと1963年の来日公演をメインに珍しいボーナスもついた発掘CDの優れものです。

Tokyo 1963 part-1 (1963年9月19日、丸の内ホテルでのライブ録音)
 01 Moritat (Mack The Knife)
 02 The Way You Look Toneght
 03 When I Fall In Love
 04 Oleo
 メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、Reshid Kamal Ali(tp)、ポール・ブレイ(p)、ヘンリー・グライムス(b)、ロイ・マッカーディ(ds)、そしてトラック「02」と「03」にはベティ・カーター(vo) が加わっています。
 演奏はそのボーカル曲を除いては何れも20分以上の長丁場ですが、メンバーは全力疾走で気持ち良い限り! お馴染みの「Moritat」はソニー・ロリンズの爆発的でメロディを大切にしたアドリブが凄すぎます。十八番のモールス信号も冴えわたりですし、年代的には相当フリーに傾斜していた時期とはいえ、豪快にして今、どこを吹いているか分かるアドリブの天才性は圧巻でしょう。ちなみに相方の Reshid Kamal Ali はドン・チェリー(tp) の代用品という感じもしますが、出し惜しみしない熱演で、特にソニー・ロリンズとの絡みでは必死さが伝わってきて好感が持てます。
 またリズム隊の充実度も素晴らしく、過激な若気の至りというポール・プレイ、重量感あふれるヘンリー・グライムス、暴れまくりのロイ・マッカーディという布陣は背水も何もあったもんじゃありません。
 そのあたりは「Oleo」でさらに激烈となり、バンドの暴走が止まりません。Reshid Kamal Ali も新主流派というか、かなり基本に忠実なプレイも聴かせてくれますし、リズム隊が呆れるほどに暴れますから、それに引っぱられて過激な姿勢を貫いていくのに必死という感じでしょうか。けっこうニンマリさせられます。
 またポール・プレイが実に素晴らしく、流石の輝きですよっ♪ 後年の妙に気取った幻想性よりも、私はこういうノリが好みです。
 そして肝心のソニー・ロリンズは、これまた激ヤバというか、満を持して登場した瞬間から、あたりはもう修羅場のモダンジャズ天国! この時期のソニー・ロリンズは些か評価されないのが一般的ですが、とんでもない話だったと自己反省するほどです。あぁ、このドライブ感、瞬発力満点のフレーズ、豪快にしてハードな音色、やっぱり無敵の天才だと思いますし、バンド全体の纏まりも強烈ですねっ♪
 気になるベティ・カーターは可もなし不可もなしというか、個人的には……。このあたりは十人十色ということで、ご容赦下さい。
 ちなみに録音状態は各楽器のバランスも良好なので普通に聴けるレベルです。

Tokyo 1963 part-2 (同)
 05 On A Slow Boat To China
 メンバーはソニー・ロリンズ(ts) 以下、伏見哲夫(tp)、宮沢昭(ts)、前田憲男(p)、滝本達郎(b)、猪俣猛(ds) という日本人ミュージシャンが共演したジャムセッションです。曲はお馴染み、ソニー・ロリンズの十八番というのが嬉しいですね。
 もちろん我が国の精鋭達も精一杯の熱演ながら、ソニー・ロリンズと宮沢昭のスタイルが音色も含めて酷似しているので、どっちがどっちなのか? これにはソニー・ロリンズも苦笑いだったかもしれませんね。後半ではちょいとしたバトルもありますから、演奏時間の短さが残念というか、しかしそれは贅沢というもんでしょうね♪

Max Roach Quintet (1956年10月10日、カフェボヘミアでのライブ録音)
 06 Valse Hot (incomplete)
 07 I Get A Kick Out Of You
 これはボーナストラックで、ラジオ放送からのエアチェックですが、音質はなかなか良好♪ メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブライアント(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という今では夢のレギュラーバンドですから、熱い演奏は保証付きです。
 残念ながら「Valse Hot」は途中からの収録ですが、ワルツタイムで炸裂するマックス・ローチのドラムソロがポリリズムで無限のジャズビートを発散させていく様は圧巻でしょう。
 そして「I Get A Kick Out Of You」は激しいアップテンポで突進するバンドの勢い、そして怖いほどのテンションの高さに圧倒されます。なにしろケニー・ドーハムは、一般的なイブシ銀のイメージも何処へやらという早吹きを披露していますし、ソニー・ロリンズは緩急自在にウネリまくりなんですねぇ~。正直、全く和みの無い演奏なんですが、それにしてもリズム隊の激烈さにはドギモを抜かれます。ヤケクソの空中分解寸前というか!?

ということで、全曲が未発表初出らしい発掘盤です。音質も時代を考慮すれば良好ですし、当然モノラル仕様ながら、ボーナスのマックス・ローチのパートではドラムスの音が生々しく録れていて驚かされるほどです。

まさに目からウロコという嬉しいアルバムでした。

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モダンベイシーの楽しいライブ

2008-08-30 16:07:59 | Jazz

さてさて、久々にネタの仕入れで街を彷徨いました。そして硬軟、様々に収穫がありましたので、まず本日はこれを――

Count Basie Live In Berlin & Stockholm 1968 (Impro-Jazz)

カウント・ベイシー楽団が1968年秋に行った欧州巡業からの映像ですが、皆様ご存じのように、この時期のバンドはスタジオ録音アルバムにイマイチ精彩が感じられず、しかしサミー・ネスティコという俊英のアレンジャーを起用した名盤「Straight Ahead (Dot)」を作って息を吹き返した頃ですから、その勢いを最新リマスターのDVDで鑑賞出来るとあれば、本当にワクワクしてきますね。

内容はタイトルどおり、ベルリンとストックホルムでのコンサートを収録したもので、両方ともモノクロ映像&モノラル音声です。ちなみにベルリンの映像は、これまでにもビデオでパッケージ化されていましたが、それよりは多少の画質向上が嬉しいところ♪

メンバーはカウント・ベイシー(p) 以下、フレディ・グリーン(g)、ノーマン・キーナン(b)、ハロルド・ジョーンズ(ds) という鉄壁のリズム隊を軸に、Gene Goe(tp)、ソニー・コーン(tp)、オスカー・ブラッシャー(tp)、アル・アーロンズ(tp)、グロパー・ミッチェル(tb)、リチャード・ブーン(tb)、ビル・ヒューズ(tb)、マーシャル・ロイヤル(as)、ボビー・プレター(as,fl)、エリック・ディクソン(ts,fl)、エディ・ロックジョー・デイビス(ts)、チャーリー・フォークス(bs) という超一流が揃い踏みです。しかも専属歌手が、あのマリーナ・ショウですからねぇ――

Live in Berlin (1968年11月9日)
 01 All Of Me
 02 Hittin' Twelve
 03 Blues For Ilean
 04 Bill Bailey
 05 On A Clear Day
 06 Cherokee
 07 Good Time Blues
 08 A Night In Tunisia
 09 Muddy Water Blues
 10 Whirly Bird
 11 Lonely Street
 12 The Magic Flea
 13 One O'clock Jump
 まず特筆すべきはフレディ・グリーンのギターが鮮明に聞こえることです♪ 天才的なコードカッティングの細部まで感じ取れるのは嬉しくて涙が滲みます。ただし映像では、それほど手元が映っていないのは残念……。しかしバンド全体を強烈にスイングさせているのは、この人の功労によるものだと実感されるでしょう。どんなにバンドが咆哮しようとも、常に聞こえ続けるリズムギターの基本はアコースティックというのも最高です♪
 それと名人ドラマーのハロルド・ジョーンズが映像でたっぷり観られるのも感動です。あぁ、あのリックはこうやって敲いていたのか! と目からウロコの歓喜悶絶♪
 肝心の演奏は安定感があって、なおかつスリルとサスペンス、グルーヴィなモダンビックバンドが堪能出来ますし、ペイシー楽団ならではの、ゆったりしたノリと厚みのあるアンサンブル、黒っぽいリズム的興奮が楽しめるのはジャズ者の幸せというところでしょう。
 例えば初っ端からカウント・ベイシーの隙間の芸術に震えてしまう「All Of Me」は、このゆったり感が唯一無二の素晴らしさです。さらにグルーヴィな「Hittin' Twelve」やエリック・ディクソンのフルートが味わい深い「Blues For Ilean」、オスカー・ブラッシャーが火の出るようなトランペットで演じる「A Night In Tunisia」には、ゾクゾクさせられますよ。
 気になるマリーナ・ショウは、この当時からアクの強いメイクで登場し、独特の黒い節回しが冴えた「Bill Bailey」とボサノバアレンジの「On A Clear Day」、さらに熱っぽい「Muddy Water Blues」で粘っこい個性を発揮しています。
 そして後半はお待ちかね、エディ・ロックジョー・デイビスの大爆発がお約束という「Cherokee」「Whirly Bird」そして「The Magic Flea」が強烈過ぎます! こういうのを聞いてるとコルトレーンやブレッカーなんて……、と不遜な事を感じてしまいますねぇ。いや、これはサイケおやじの本音ということで、ご容赦下さい。ハロルド・ジョーンズの大車輪ドラムソロとキメのカッコ良さにも感涙するばかりです。
 そんな中で、やっぱり楽しいのが御大のツボを刺激するだけという短音ピアノです。特に「Good Time Blues」あたりは、もはや芸術というか、人間国宝でしょうねっ♪ ノーマン・キーナンのペースとフレディ・グリーンのギターも良い感じ♪
 それと忘れてならないのが、現場監督として楽団を仕切っているマーシャル・ロイヤルの存在で、映像では要所でメンバーに合図を出したりする姿が散見されますし、自身が主役となった「Lonely Street」では甘い忍び泣きを存分に聞かせてくれます。
 さて、問題となる画質は正直「B」クラスだと思います。しかしこれだけの演奏を楽しめるとなれば、文句などバチあたりかもしれません。音質に関しては問題なく聴けると思いますので。

Live in Stockholm (1968年11月12日)
 14 Splanky
 15 All Of Me
 16 Hittin' Twelve
 17 Blues For Ilean
 18 Cherokee
 こちらも基本的には同じ雰囲気の演奏ですが、フレディ・グリーンのギターが、ここでは益々生々しく、強烈に響いてきてシビレます♪
 そしてベルリンには入っていなかったド頭の「Splanky」が最高にグルーヴィ! 何気なくアドリブに入って、グイグイと盛り上げていくエディ・ロックジョー・デイビスの至芸が存分に楽しめる大名演で、これを観るだけでもこのDVDの価値があると思います。まさにタフテナーの真髄でしょうね♪ リズム隊のノリも最高ですし、バンドアンサンブルも強烈で、あぁ、何度観ても腰が浮きます。
 ちなみに画質は、これも「B」クラスですが、問題無く楽しめるのではないでしょうか。ただし音質は僅かな部分でドロップする箇所があります。

ということで、なかなかモダンで迫力のあるフルバンの醍醐味が楽しめます。カメラワークもきちんと考えられていて、メンバー各々の見せ場を逃さないのは流石です。特にハロルド・ジョーンズのキメ、ニンマリしながらリズムを刻むフレディ・グリーン、黒人芸能の本質を感じさせる御大ペイシーの存在感が実に良い佇まいなのでした。

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ヤンシー・キョロシーのハードスイング♪

2008-08-29 13:18:19 | Jazz

ジャズ喫茶の人気盤の条件として、硬派なスイング感が求められるのは言わずもがな、ほとんど知らないミュージシャンがそれを演じていたら、これはもう決定的でしょう。そして演目に有名スタンダード曲があったりしたら、たまりません。

本日はそうした中の1枚を――

Identification / Yancy Korossy (MPS)


ヤンシー・キョロシーは多分、ルーマニア人のピアニストで、はっきり言えばジャズ後進地域の出身ということで、モダンジャズ本流の活動はなかったと思われますが、それが全く独特の個性に繋がったようです。

というのは、結論から言うと、スタンダード曲中心に収録されたこのアルバムの演奏には、ビバップ以前のスイングスタイルにセロニアス・モンクの語法やモード系の手法を強引に混ぜ合わせたアブナイ雰囲気が横溢しているからで、これが実にジャズ喫茶全盛期の雰囲気にジャストミート!

個人的には昭和52(1977)年頃に初めて聴いたんですが、その瞬間から歓喜悶絶させられた記憶が今も鮮明です。

録音は1969年9月9日、メンバーはヤンシー・キョロシー(p)、J.A.レッテンバッハー(b)、チャリー・アントリーニ(ds) という正統派ピアノトリオで、有名曲がズラリ――

A-1 All The Things Your Are
 極めて正統派のグルーヴながら、テーマ解釈からアドリブの展開まで全く硬派というか、セロニアス・モンクがチック・コリアしたようなゾクゾクする演奏になっています。さらにそれでいてファンキーな感覚も滲んでくるのですねぇ~♪ ベースとドラムスもシャープな感性を聞かせてくれます。

A-2 Bye Bye Blackbird
 これまた楽しいグルーヴが横溢しながら、決してそこに留まらないユニークな個性が溢れ出た演奏です。もちろん歌心という部分も侮れず、しかも前向きな感性が素敵ですねっ♪

A-3 Sorrow
 これが曲タイトルとは裏腹に楽しいジャズロック♪ う~ん、こういうものを堂々と演じてしまう潔さに乾杯です!
 ドラムスの頑張りも微笑ましく、しかしベースは頑固に新主流派のノリなんですから、グッと歓喜悶絶です。もちろんヤンシー・キョロシーのピアノは歯切れ最高! ブロックコードと低音域主体で盛り上げる終盤の勢いにもシビレます。往年の東宝スパイアクションのサントラの如き輝きがたまりませんですね♪

A-4 Stella by Starlight / 星影のステラ
 これもジャズ者には良く知られた曲ですから、そのテーマメロディを楽しみつつもヤンシー・キョロシーのハードスイングにシビレる快演です。豪快に突進するアップテンポの重量感溢れる展開が素晴らしいと思います。
 このあたりはチック・コリアにも通じるような、しかしトリオが一丸となった過激な個性は、如何にもジャズ喫茶黄金期の音がしています。
 終盤はフリー地獄に陥りそうになりながら、自然体でテーマメロディに戻っていくという上手い展開にヤミツキです。
 
B-1 Identification
 アルバムタイトル曲はヤンシー・キョロシーのオリジナルで、エキゾチックなラテンビートに幾何学的なテーマメロディ、さらに強烈な先進性に震えがくるほどの名演だと、私は聞く度に悶絶します。
 当然ながら中盤以降はフリーの嵐というのは、録音当時の「お約束」なんですが、ちっともイヤミになっていません。と言うよりも、シャープなピアノタッチとツッコミ鋭いトリオの纏まりがギリギリの模索を繰り返すという黄金の展開が♪♪~♪

B-2 I Can't Give You Anything But Love / 捧ぐるは愛のみ
 前曲とは一転して楽しい和みの時間♪ ヤンシー・キョロシーはストライド奏法で楽しくテーマを演じ、ドラムスはバタバタとオトポケに徹し、ベースは些か呆れ顔のサポートながら、それが痛快なアップテンポで凄いスイング感を発散させていきます。
 このあたりはオスカー・ピーターソンが過激に変身したような趣も感じられる、似て非なるハチャメチャ度が最高だと思います。
 あぁ、これもジャズの真髄でしょうねぇ~♪ ジャズって本当に素敵です♪

B-3 I'm On My Way
 ベースのJ.A.レッテンバッハーが書いた楽しいゴスペルファンキーなジャズロック♪ ほとんどキース・ジャレット(p) が演じても違和感が無い雰囲気をお楽しみ下さい。
 う~ん、それにしてもグッとシビレますが、ヤンシー・キョロシー恐るべし!

B-4 Stompin' At The Savoy
 これも良く知られたスタンダード曲を豪快なアップテンポで解釈し、もちろんアドリブはフリーへ突入するという展開が潔い限り! しかしフリーといってもデタラメ感は希薄で、放出される「音」の迫力、トリオ3者の思惑がしっかりと体感出来ると思います。
 これは発売会社「MPS」特有の録音の良さが大きな要因かもしれません。このアルバムでは左にドラムスとピアノの低音域、真ん中にピアノ、右にベースとピアノの高音域が定位したステレオミックスで、非常に分離が良くて厚みのある音作りが流石!
 ですからそれがこのセッション全体の意図を確実に引き出しているようですし、フリーな演奏でさえ、素直に楽しめるのでした。

しかしこんな凄い演奏を残したヤンシー・キョロシーは以降、消息不明のようです。なんでも渡米したとか、近年カムバックしたとか、いろいろと言われているようですが、私には確かなことがわかりません。

もちろんこのアルバム以前に吹き込んだ演奏にしても聴いた事がありませんから、そのスタイルや出来栄えは知る由もなく……。本当に現実って厳しいですね。

ということで、アルバムを通してはアップテンポの演奏ばかりなので、聴き通すと些か疲れたりしますが、しかし痛快度数は満点! 若かりし頃はもちろん、中年者となった現在でも夢中にさせられる私は、未だに「若い」と自分に言い聞かせています。

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再開は景気良く♪

2008-08-28 10:24:55 | Jazz

諸般の事情から休止していたブログを再開致しました。その間のお話は追々書いていくことにして、まず本日は――

Dizzy Atmosphere (Specialty / JAZZBEAT)

最もジャズらしいジャズといえば、やっぱりハードバップでしょう。それは黒人特有のビートと粘ったフィーリング、俗にファンキーと称される感覚とイケイケなノリ、そしてジンワリと気持ち良くなる哀愁♪ たまりませんね、少なくともサイケおやじは、そう思います。

で、そのハードバップの発生については諸説あるものの、やっぱり黒人ミュージシャンの常日的演奏から自然に生まれたものでしょう。誰かの発明なんてことは、決してないと思います。

さて、本日の1枚はそんな証拠物件とでも申しましょうか、結論から言えばジャムセッション盤のひとつなんですが、参加メンバーが物凄く熱い面々ばかり! 全編にキメが入ったアレンジも施されていますが、決して「作り物」ではない爽快なアルバムです。

録音は1957年2月27日、メンバーはリー・モーガン(tp)、アル・グレイ(tb)、ビリー・ミッチェル(ts)、ビリー・ルート(bs)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・ウェスト(b)、チャーリー・パーシップ(ds)、さらにアレンジャーとしてロジャー・スポッツとべーニー・ゴルソンも参加していますが、彼らは全員、当時のディジー・ガレスピー(tp)楽団のレギュラーでした。アルバムタイトルもそれに所以するものです。

そしてちょうどロスに巡演してきたところで吹き込まれたのが、このセッションというわけですが、原盤会社のスペシャリティは黒人R&Bやゴスペルを主に作っていたので、こうしたモダンジャズ物は少なく、もちろん内容の良さもあって、ある時期までは幻の名盤として崇められていました。

それが昭和50(1975)年に我が国で発売され、後にCD化もされましたが、今回のご紹介はその最新リマスター盤で、しかも嬉しいボーナストラックがついています――――

Dizzy Atmosphere (1957年2月18日録音)
 01 Dishwater (arr.Roger Spotts)
 02 Someone I Know (arr.Roger Spotts)
 03 D.D.T. (arr.Roger Spotts)
 04 Whisper Not (arr.Benny Golson)
 05 About Time (arr.Roger Spotts)
 06 Day By Day (arr.Benny Golson)
 07 Rite Of Spring (arr.Roger Spotts)
 08 Over The Rainbow (arr.Roger Spotts)
 09 Whisper Not (alt. take / arr.Benny Golson)
 前述したメンバーによる快演セッションで、まずド頭の「Dishwater」からしてゴリゴリにブッ飛ばしたハードバップの真髄が楽しめます。まずウイントン・ケリーのイントロから成り行き任せのアドリブでツカミはOK! テーマリフに続き、当時18歳のリー・モーガンが怖いもの知らずの突進を聞かせれば、ビリー・ルートがその場を揺るがすバリトンの咆哮で応戦します。さらにアル・グレイとビリー・ミッチェルが血管ブチキレの爆裂アドリブ! これはもうハードバップ天国への直行便ですねっ♪ 要所を締めるアレンジも効果満点だと思います。
 また同様に熱いのが「D.D.T.」で、エキサイティングなラテンビートも内包した調子の良いノリノリの演奏♪ ビリー・ミッチェルの白熱したテナーサックスがどうにもとまない、山本リンダ現象です。
 一方、スロー哀愁路線では、なんといっても「Whisper Not」でしょう♪ ベニー・ゴルソンが書いたこの名曲は前年12月にリー・モーガンのリーダーセッションで既に吹き込まれていますが、そのブルーノート盤「Lee Morgan Vol.2」に勝るとも劣らないのがここでの演奏です。もちろんリー・モーガンが主役となり、あのゴルソンハーモニーが彩を添えるという黄金の展開♪ あぁ、泣きのミュートトランペットが心に染み入りますねぇ~~~♪ ちなみにオマケの別テイクはオープンでグルーヴィに吹いていますが、もちろん素晴らしく、ウイントン・ケリーのファンキー節も良い味出しまくりです。
 他にもアル・グレイが哀愁トロンボーンの味わいを聞かせる「Day By Day」、ビリー・ミッチェルがソフトな情感を滲ませる「Over The Rainbow」と、有名スタンダード曲の演奏解釈も抜かりはありません。
 とにかく全編が素晴らしいモダンジャズ全盛期のセッションになっています。特にリー・モーガンが、やっぱり溌剌としていますねっ♪
 そして今回のリマスターはステレオミックス! 左にホーン陣、右にリズム隊が定位した所謂「泣き別れ」ですが、音圧のメリハリが効いたリマスターですから、結果オーライでしょう。個人的にはリズム隊3者の音の構成が良く聞こえるので満足しています。本当に凄いリズム隊ですよ!
 ただし残念なのは、この時のセッションから「Someone I Know」と「Over The Rainbow」の別テイクが未収録だった事ですが、まあ、いいか……。

Charlie Persip's Jazz Statesmen (1957年2月27日録音)
 10 Reggie Of Chester
 11 Blues After Dark
 これも前述「Dizzy Atmosphere」のセッションと同時期にロスで録られたセッションです。メンバーはリー・モーガン(tp)、ペニー・ゴルソン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、チャーリー・パーシップ(ds)、そしてレッド・ミッチェル(b) と Wilfred Middlebrooks(b) が交代で参加していますが、アルバムとしては当時の西海岸では大勢力だったハワード・ラムゼイが率いるライトハウス組との共演オムニバス盤「Double Or Nothin' (Liberty)」に収録されていたものです。
 そして2曲ともベニー・ゴルソンのオリジナルということで、琴線に触れるメロディは「お約束」ですが、リー・モーガンの卓越したアドリブ能力は流石! 
 まずアップテンポの「Reggie Of Chester」では例のトリッキーなフレーズで颯爽と吹きまくり、続くブルースの「Blues After Dark」では粘っこいファンキー節の連発です。
 もちろんベニー・ゴルソンも例のモゴモゴブリブリの語り口で熱く迫っていますし、ウイントン・ケリーの飛び跳ねグルーヴも見事♪ チャーリー・パーシップも的確なドラミングで好感が持てます。気になる西海岸のベーシスト2人も気合の入った熱演だと思います。
 ちなみに今回のリマスターはモノラルミックスながら、低音域もしっかりと出ています。

Lee Morgan Quintet (1960年7月録音)
 12 A Bit For Sid
 13 Suspended Sentence
 14 Menor Strain
 こちらはリー・モーガンのリーダーセッションで、メンバーはリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・ロウサー(b)、アート・テイラー(ds) という疑似メッセンジャーズ! もちろんリー・モーガンも本家ジャズメッセンジャーズのスタアとしてバリバリに突っ走っていた頃ですから、悪いわけがありません。
 まず「A Bit For Sid」では奇々怪々なフレーズで周囲を戸惑わせるウェイン・ショーターに対し、弾ける若さのリー・モーガンが痛快! ボビー・ティモンズのゴスペル節も良い感じです。
 そして続く「Suspended Sentence」は如何にもウェイン・ショーター作曲らしいスピード感満点の演奏ですから、尺取り虫の背中のようにウネウネと俊敏に動く作者のテナーサックスが最高です。もちろんリー・モーガンも大熱演! さらに素晴らしいのがテンションの高いリズム隊で、本当に悶絶させられますよっ♪
 またオーラスの「Menor Strain」も痛快至極な名演で、ここでもリズム隊が大ハッスル! ボビー・ティモンズの硬派なスイング感は最高ですし、アート・テイラーのハイハットも鮮やかなんですが、このあたりはモノラルミックスの特性を活かしたリマスターの良さも堪能出来ます。
 ちなみにこの3曲はオムニバス盤「The Best Of Birdland (Roulette)」に収録されていたんですが、初CD化でしょうか? アナログ盤は日本プレスで私有していましたが、音質にキレが無く、ここまで気持ち良く楽しめませんでしたので、実はこのセッションがお目当てで、このリマスター盤を買ったというわけです。ズバリ正解♪♪~♪

ということで、不満も無いわけではありませんが、とにかく音が良くなっていますし、リー・モーガンに的を絞った編集としては結果オーライだと思います。デジパック仕様のジャケットも良い感じ♪

そして何よりもモダンジャズ本流の輝きが日常的に記録された名演集として、素直に楽しめると思います。

やっぱりジャズは良いですねっ♪

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