OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バレルとトレーンの最後の邂逅

2009-03-24 11:11:38 | Jazz

Kenny Burrell & John Coltrane (New Jazz)

この、そのものズバリのアルバムタイトルも潔い名盤!

野球でも、ここ一番の速球勝負は、例え打たれたとしても気持ちの良いものですが、この作品にも同様の醍醐味があって、私は大好きです。

ケニー・バレルが打ってみろ! と投げた速球を、ウネウネクネクネしながらも豪快なスイングで迎え撃つジョン・コルトレーンという構図は、キモの据わった仲間達に支えられながら、凄いハードバップ大会を作り上げてしまいましたですね。

録音は1958年3月7日、メンバーはジョン・コルトレーン(ts)、ケニー・バレル(g)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、これで名演が生まれなかったら世の中終わりというクインテットです。

A-1 Fright Trane
 トミー・フラナガンのオリジナル曲で、タイトルどおりに疾走するジョン・コルトレーンの魅力がいっぱいという、アップテンポのハードバップです。例の音符過多症候群「シーツ・オブ・サウンド」が完成直前にまで到達していたトレーン節が、存分に披露されていますよ。
 しかし実は、けっこう手探りの部分もあったのかもしれませんね。それがスリルとスピード、アブナサを表現出来たと言ってしまえばミもフタもありませんが、好感が持てるのは確かです。
 そしてそれを支える強靭なリズム隊とケニー・バレルの凄いアドリブ! 実にスカッといる名演だと思います。トミー・フラナガンのスイングしまくったピアノも痛快ですよっ♪♪~♪

A-2 I Never Knew
 有名スタンダードの素敵なメロディをシンプルに弾いていくケニー・バレル、タイトでク―ルなジミー・コブのドラミング、さらにピアノとベースの素晴らしいコードワーク♪♪~♪ まさにモダンジャズの基本が最初っから楽しめます。
 そしてジョン・コルトレーンがクネクネと屈折しながら、それでも実直なテナーサックスを聞かせてくれるとなれば、トミー・フラナガンのセンスの良さが尚更に輝くという、いやはやなんともの名演だと思います。
 あぁ、こういうジャズが好きです!

A-3 Lyresto
 ケニー・バレルが書いた溌剌として楽しいバードバップのオリジナル♪♪~♪ このテーマメロディとガサツなアンサンブルが、なかなかクセになる魅力です。
 そしてアドリブ先発のジョン・コルトレーンの、何の迷いもないテナーサックスが実に痛快! 十八番のウネウネ節と新しいスピード感が融合しています。
 またケニー・バレルの安定感は言わずもがな、トミー・フラナガンにポール・チェンバースというデトロイト時代からの仲間に加え、ジミー・コブという名手が入ったリズム隊の素晴らしさ! これぞっ、ハードバップの醍醐味がリズム隊から追及された終盤のソロチェンジは圧巻ですよっ!

B-1 Why Was I Born
 さて、これがアルバムの目玉演奏として、今日でも決定的な名演とされるトラックです。
 それはスタンダード曲を素材に、ケニー・バレルとジョン・コルトレーンがデュオを演じた、まさにアルバムタイトルどおりの存在証明!
 じっくりしたテンポで素直な情感を表現するジョン・コルトレーンのメロディフェイクは、神妙にしてハートウォームな響きが素晴らしく、寄り添うケニー・バレルのギターが、これまた小技と目立ちたがりのバランスが、最高に秀逸です。
 ちなみにジョン・コルトレーンが完全なデュオを演じたのは、これから後にエルビン・ジョーンズのドラムスと直接対決したものだけだと思いますから、わずか3分10秒ほどの演奏が、たまらなく愛おしくなるのでした。

B-2 Big Paul
 オーラスはリラックスしたブルースセッションで、ミディアムテンポで幾分ギスギスしたリズム隊のグルーヴが絶妙です。初っ端の独白からグイノリの4ビートをリードするポール・チェンバース、ゆるゆると入ってくるトミー・フラナガンのピアノ、さらに妥協しないジミー・コブのドラミングが、そうした雰囲気を強くしているようです。
 そしてジンワリとしてセンスの良いブルースを演じていくトミー・フラナガンのしぶといピアノは「お約束」ながら、このリズム隊ならばマイルス・デイビスが出そうで出ないのが、良い感じ♪♪~♪
 逆にジョン・コルトレーンが自分勝手に煮詰まっていくのも、この時代ならでは魅力でしょうねぇ~♪ ダークで重厚なテナーサックスの音色も凄いと思います。
 その点、ケニー・バレルは既に完成されたスタイルの中で、独自のブルースの美学を見事に表現しているようです。この、けっして先走らない沈着さは、如何にも自分のリーダーセッションだという自負があるんでしょうねぇ。意図的にブルースというよりは、新しいハードバップっぽいフレーズを多用しているあたりにも、それが感じられます。
 演奏はこの後、ポール・チェンバースの豪胆なペースソロから再びトミー・フラナガンのピアノがアドリブに入りますが、ジミー・コブのヘヴィにしてタイトなドラミングも私は大好き♪♪~♪
 いゃ~、ハードバップって本当に良いですねっ♪♪~♪

ということで、実は従来のハードバップから一歩先に進んだグルーヴが強く感じられるセッションでもあります。それはリズム隊に特に顕著だと思うんですが、いかがなもんでしょう。
 
そしてそこに炸裂するジョン・コルトレーンの未完成にして上昇期の音符過多症候群! これにはケニー・バレルも些かタジタジという感があります。しかし、如何にもハードバップど真ん中のピッキングは大いに魅力♪♪~♪

典型的なハードバップの中に新しい息吹も強く感じられるのは、私だけでしょうか。やはり人気盤の風格が、意味不明なジャケットのデザインと共に強い印象として残ります。

そして正直に言えば、コルトレーン&バレルのデュオ演奏を、もっと聴きたかったですねぇ……。

コメント
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