OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ニック・グレイヴナイツの梅雨時のブル~ス

2010-06-30 17:09:36 | Rock

My Labors / Nick Gravenites (Columbia / Sony = CD)

ブルースロックはイギリス人の発明かもしれませんが、どっこい、アメリカにだって本物の黒人ブルースに深く帰依し、少しでも迫ろうとしていた白人ミュージシャンが大勢存在しています。

そして結果的にブルースロックというジャンルを生み出したのは、決して偶然では無いと思います。

サイケデリックロックやニューロックと称された1960年代中頃からのブームに、そのブルースロックが保守本流として流れているのは無視出来ず、しかもそれらを聴き進めていく中で頻繁に登場するのがニック・グレイヴナイツという、ちょいとスターとは思えない人物でした。

というのも、ルックスは冴えないし、シングルヒットも無く、さらにソングライターなんだか、歌手なんだか、当時はシンガーソングライターなんていう便利な言葉がありませんでしたから、如何にも中途半端なイメージが強かったと思います。

ところがその実績は強烈で、まずポール・バターフィールドやジャニス・ジョンプリン等々への曲提供! マイク・ブルームフィールドと組んだエリクトリック・フラッグや様々なライプセッション活動! サンフランシスコを代表するサイケデリックバンドだったクイックシルバー・メッセンジャー・サービスのプロデュース等々、まさに当時のアメリカで胎動していた新しいロックの形態を実践していたのです。

さて、本日ご紹介の1枚は、そんなニック・グレイヴナイツが1969年に出した傑作リーダーアルバムで、もちろん本人のボーカルと曲作りは味わい深いのですが、本当のお目当は全盛期だったマイク・ブルームフィールドの素晴らしいギターが存分に楽しめること♪♪~♪

もうこれは筆舌に尽くし難く、高校生だったサイケおやじは先輩から譲り受けたLPを今日まで死ぬほど愛聴してきたんですが、なんと驚いたことに我国で復刻された紙ジャケット仕様のCDには、2曲のライヴ音源がボーナストラックで入っていたのです。しかもマイク・ブルームフィールドがっ!!!

 01 Killing My Love (A-1)
 02 Gypsy Good Time (A-2)
 03 Holy Moel (A-3)
 04 Moon Tune (A-4)
 05 My Labors (B-1)
 06 Throw Your Gog A Bone (B-2)
 07 As Good As You've Been To This World (B-3)
 08 Wintry Country Side (B-4)

まず、ここまでがオリジナルLPに収録された歌と演奏で、それはズバリ、ブルースとソウルに彩られたニューロック♪♪~♪ しかも基本はライプレコーディングで、それをスタジオ加工したような仕上がりゆえに、なかなか自然発生的なブルースフィーリングが楽しめますよ。

まずは初っ端の「Killing My Love」がファンキーソウルな味付けも嬉しいヘヴィロックならば、「Gypsy Good Time」は丸っきり全盛期のB.B.キングがやってくれそうな正統派アーバンブルース♪♪~♪ どちらもマイク・ブルームフィールドのギターが泣きじゃく、歌いまくっていますが、特に後者は本人にとっても代表的な名演になるんじゃないでしょうか。これほど情感豊かなブルースギターって、ちょっとありませんよ。もう左右の手と指のコンビネーションは憎たらしいほどですし、ピックの当て方で弦の振動そのものを加減し、強弱をつけているであろう奏法は、コピー不可能の世界でしょうねぇ。

とにかく「Gypsy Good Time」を聴けただけで、このアルバムに巡り合ったことを神様に感謝! ほどよいラテンビートのグルーヴはアルバート・キングの「Crosscut Saw」的でもありますね♪♪~♪

そして期待のスローブルースでは「Wintry Country Side」が、なんと13分を超す圧巻の演奏で、シミジミとしたピアノソロをイントロにジワジワと盛り上がっていく展開には、本当に身も心も揺さぶられてしまいます。とにかくマイク・ブルームフィールドのギターが絶妙の思わせぶりから血の涙が滲むような苦闘の心情吐露! ボーカルに呼応した絡みのフレーズも、その持ち前の天才性を存分に発揮していると思います。

ちなみに演奏メンバーには他にマーク・ナフタリン(p,org)、ジョン・カーン(b)、ボブ・ジョーンズ(ds) 等々、ニック・グレイヴナイツ所縁の面々が参加していますが、ホーンアレンジも含めた各曲の纏め方は、やっぱりリーダーの手腕でしょうねぇ~♪ 収録トラックの全てが自らのオリジナルという強みもありますが、ブルースやR&Bの狭義に拘らない姿勢も潔いと思います。

そのあたりの面白さがシカゴソウル風の「Holy Moel」、ちょっとBS&Tを想起させられる「Moon Tune」、スワンプ~レイドバックを先取りしたような「My Labors」に強く感じられ、う~ん、これってアル・クーパー!? とさえ思う瞬間が絶対にありますよ。

結局、マイク・ブルームフィールドもアル・クーパーも、ニック・グレイヴナイツと一蓮托生のサークルということなんでしょうかねぇ。サイケおやじにとっては、もちろん嬉しいわけですが、つまりはニック・グレイヴナイツのソングライターとしての実力証明に違いありません。

それはジャニス・ジョプリンにも提供された「As Good As You've Been To This World」で楽しめる、まさにノンジャンルなゴッタ煮ソングにも表れていると思います。

また肝心のボーカリストとしてのニック・グレイヴナイツは、ストレートなハードロックの「Throw Your Gog A Bone」で、その一本調子な楽曲を様々な味わいで歌いこなすところに独得の個性が感じられますし、アルバム全篇を通しての歌いっぷりにも迷いは無いでしょう。もちろん、であればこそ、マイク・ブルームフィールドのギターと妥協の無い協調関係が構築されたのです。

いゃ~、初めて聴いてから既に40年近く経っていますが、全く飽きないですねぇ~♪

 09 Work Me Lord
 10 Bone In Chicago

さて、いよいよ復刻CDの本命という上記ボーナストラックですが、どうやら名盤「Live At Bill Graham's Fillmore West」からのアウトテイクのようです。ということはノー文句の決定的な名演!

まず「Work Me Lord」がゴスペルロックの王道路線ということで、またまたBS&T風のアレンジも面映ゆいんですが、マイク・ブルームフィールドの繊細なバッキングは流石に上手く、そして後半のクライマックスに向けて爆発していく圧巻のギターソロ!

いゃ~、こんなん生で聴かされたら悶絶して発狂するかもしれませんよ。

そしてさらに激ヤバなのが、おそらくはニック・グレイヴナイツのオリジナル曲では一番に有名であろう「Bone In Chicago」が、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドのやった正調ブルースロックとは大きく異なるファンキーロックで展開され、重厚なホーンアレンジや粘っこいリズム隊の活躍もさることながら、やっぱりマイク・ブルームフィールドのギターやテナーサックスのアドリブが暑苦しいほどの興奮を誘います♪♪~♪

う~ん、モードやフリーもがっちり導入された、これは真性ロックジャズ!?!

ニック・グレイヴナイツの歌いまわしも本領発揮の鬱陶しさが全開です。

ということで、ブルースロック周辺がお好みの皆様は、ぜひともゲットしていただきたい秀逸な復刻です。気になる音質も私有のアメリカ盤LPに比べて、なかなか厚みのあるマスタリングが良い感じですよ。また、ニック・グレイヴナイツのプロフィール等々についても、付属解説書が丁寧です。

もしかしたら蒸し暑い時期には封印すべきアルバムかもしれませんが、夏場の我慢大会という趣向もあり、またツンツンにカラシの効いた冷やし中華は梅雨時にも美味い♪♪~♪ という嗜好性からしても、避けているのは勿体無いと思うばかりです。

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ホラージャケットのイエスは爽やか

2010-06-29 16:35:49 | Rock Jazz

The Yes Album / Yes (Atlantic)

今日も蒸し暑く、朝から鬱陶しいですねぇ。

まあ、それは気候や湿度なんていう自然条件ばかりではなく、不景気やバカ政治、あるいは煮え切らない某協会、正義ぶったマスコミ等々の所為もあるんですが、そんな時こそ、本日ご紹介のアルバムのような、スカッと爽快な1枚が聴きたくなります。

それはデビューから3作目となる、イエスにとっては初めてのヒット盤♪♪~♪

 A-1 Yours Is No Disgrace
 A-2 Clap
 A-3 Starship Trooper
       a. Life Seeker
       b. Disillusion
       c. Wurm
 B-1 I've Seen All Good People
       a. Your Move
       b. All Good People
 B-2 A Venture
 B-3 Perpetual Change

ご存じのとおり、このアルバムからはギタリストがピーター・バンクスからスティーヴ・ハウ(g,vo) に交代し、それゆえにイエスというグループが本来持っていた広範な音楽性が尚更に活かせるようになったとは、評論家の先生方やコアなファンからの常識的な見解になっていますが、確かにピーター・バンクスの正統派ロックジャズ系のプレイに比べ、もっと柔軟なスタイルとテクニックを併せ持つスティーヴ・ハウのギターが、このアルバムでは目立ちまくり!

また同時にジョン・アンダーソン(vo,per)、トニー・ケイ(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) の先輩メンバー達を立てることも疎かにせず、その充実したコンビネーションから確立されるバンドアンサンブルはスピード感とタイトなリズム感に溢れ、本当にスカッとさせられます。

それはA面ド頭の「Yours Is No Disgrace」からして、曲調やキメの使い方は明らかにピーター・バンクス時代を引き継いでいますが、多重録も使いながら披露されるスティーヴ・ハウのギターは、様々なジャンルに立脚する多彩なスタイルを場面に応じて弾き分けるという、なかなか頭脳的なものです。

なにより決定的に違うとサイケおやじが思うのは、ピーター・バンクスが汗だらだらの熱血スタイルだったのに対し、スティーヴ・ハウは冷静でスマート!?

ですからビル・ブラッフォードのドラミングは尚更にシャープさを増し、クリス・スクワイアのベースワークが暴虐を極めつつも、絶対にバンドとしての纏まりは崩れません。

またトニー・ケイのキーボードの些かイナタイ雰囲気が、ここではかえって効果的でしょう。つまり後のイエスには失われしまう絶妙の暖か味が、このアルバムを親しみ易くしたポイントじゃないでしょうか。

そのあたりは凝った組曲形式の「Starship Trooper」や「I've Seen All Good People」においてもなかなか効果的で、それゆえにその中の構成曲を編集し、「Life Seeker」と「Your Move」をシングル盤にカップリングしての発売もムベなるかな! 残念ながらヒットはしませんでしたが、それは時代が既にアルバム中心主義に以降していた1971年の事でしたし、結果的にアルバムそのものが各方面から絶賛され、売れまくったのですから、役割はきっとりと果たしたんじゃないでしょうか。

もちろん強い印象を残すのは演奏パートだけではなく、ジョン・アンダーソンの力強くて透明感がいっぱいのボーカル、また新加入のスティーヴ・ハウも最高の働きを聞かせるコーラスワークが、さらに進化していると思います。

中でも「Disillusion」はスティーヴ・ハウの高速フィンガービッキングだけをバックにアコースティックなコーラス&ハーモニーが冴えまくり♪♪~♪ これが如何にも英国風プログレの王道へと突き進む「Wurm」、そして最終盤の余韻は、なんとなく「マジカルミステリー」な展開となって、実にたまりませんねぇ~♪ というかスティーヴ・ハウのひとりギターバトルが「ジ・エンド」? いやはや、ニンマリですよ。

う~ん、もうこのあたりになるとイエスというグループが当時、新参者のスティーヴ・ハウを直ぐに信じ切っていた証なんでしょうか? それは特にスティーヴ・ハウの独り舞台というライプ録音の「Clap」をLP片面の流れの中で絶妙の場面展開に使っていることにも表れているようですが、それにしてもこのアコースティックギターのインストは凄すぎるテクニックとインスピレーションの賜物だと思います。

そしてB面は、これまで述べてきたことの集大成というか、美しいコーラスハーモニーと爽やかなアコースティックギターのイントロに導かれ、なんとも爽やかな曲メロが印象的な「I've Seen All Good People」は言わずもがな、トニー・ケイのハートウォームな資質が全開のピアノが良い味出しまくりという「A Venture」、以降のイエス全盛期の序曲とも言える「Perpetual Change」でのモザイク的な構成の美学が、スティーヴ・ハウの流麗なギターワークを水先案内人として繰り広げられるんですから、既に刻まれた歴史を知っていれば、尚更に楽しめると思います。

とにかく爽快無比なロックジャズ!

1960年代末にデビューしたバンドの中では、特にブルースロックっぽさが希薄だったにしろ、ここまで颯爽とした演奏を披露されると、そのアクの無さがイヤミになりかねない危険性もあるんですが、こんな蒸し暑い時期にはかえって効果的でしょう。

まあ、正直言えば、ベースとドラムスの存在感がデビュー盤セカンドアルバムに比べるとイマイチ、引っ込んだ感じもするんですが、その分だけバンド全体の纏まりやオリジナル曲を中心に据えたグループとしての主張が明確になったように思います。

さらに如何にも1970年代ロック的な録音とステレオミックスが、良いんですよ♪♪~♪

ちなみに歌詞の内容は時代的に反戦や人間の普遍的な幸福、さらに宗教や宇宙観までも含んだ、些かの夢と現実のギャップを表現するべく狙ったものかもしれませんが、我々日本人にとっては、あまりピンッとくる世界ではなく、英語がそれほどリアルに伝わってこないところを大切にしながら、イエス特有のハーモニーコーラスやジョン・アンダーソンの透明感溢れる歌声を楽しめば、結果オーライじゃないでしょうか。

またイエスの中心人物と自任するクリス・スクワイアは、数多い自分達のアルバムの中で、この作品が一番好きだと公言し、実際、後々までのライプステージでは定番となる演目が多数入っているのも高得点♪♪~♪

つまりこれを突き詰めて楽しむことが、イエスのライプをさらに身近に感じる道だということでしょう。

蒸し暑さにはイエスが効く!?

その答えは……、ちょいとホラー映画っぽいジャケットが、邪魔しているのかもしれませんね。

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コテコテばかりがオルガンじゃない

2010-06-28 16:38:35 | Pops

Summer Samba / Walter Wanderley (Verve / 日本グラモフォン)

オルガン=コテコテ、という公式が現在では一般的なってしまいましたが、サイケおやじがオルガンという楽器を最初に意識したのは小学校の音楽の時間であり、次いでビートルズの「Mr. Moonlight」、さらに本日ご紹介のワルター・ワンダレイが演じる「Summer Samba」でした。

おそらくは誰しも、一度は耳にしたことがあるメロディでしょう。

その爽やかに躍動するクールなオルガンは、所謂ボサノバのビートを従えていますが、同時にポップスとしても超一流の味わいは、ジャズだとかブラジル音楽だといかいう、マニアックな色分けよりも、その出来過ぎとも言えるメロディ優先主義のアドリブ、また曲メロそのものの素敵な魅力が僅か3分のシングル盤片面に凝縮されているんですねぇ~♪

これを優良ポップスと言わずして、ど~なりますか!?!

ちなみにワルター・ワンダレイはブラジル出身のキーボード奏者で、当然ながら母国での活動も華やかだったと思われますが、この「Summer Samba」は1966年5月にアメリカで吹きこまれたもので、バックにもアメリカのジャズ系ミュージシャンが参加しています。

ですから、商業主義が丸出しという批判もあるかもしれませんが、ポップスはそれが本来の姿でしょう。売れたものが優れているという結果が常識であり、しかし売れるものを作ることが至難という現実を忘れてはなりません。

ということで、この「Summer Samba」は昭和40年代の日本では商店街のBGMであり、ホテルのラウンジや洒落たお店のムードミュージックでもあり、また洋楽ヒットのエバーグリーンだったのです。また電子オルガンのデモ演奏でも定番曲だったことは言うまでもありません。

そしてオルガンとは本来、こういう爽やかな使われ方が自然と思っていたのが、当時の大半の日本人じゃなかったでしょうか。

しかし時代は同時にサイケデリックやハードロックのブームの中で、混濁した演出を担当するのが、例えばバニラ・ファッジのようなオルガンロックであり、またボブ・ディランの「Like A Rolling Stones」を決定的にロックさせていたのも、アル・クーパーが弾いたバカでっかい音のオルガンでした。もちろんその後に流行るエマーソン・レイク&パーマーディープパープルでのキース・エマーソンやジョン・ロードの存在感の強さも、またしかりでしょう。

さらにモダンジャズではジミー・スミスという偉人も屹立しています。

ただし告白すれば、サイケおやじがそうした演奏に接したのは、ワルター・ワンダレイの「Summer Samba」が大好きになった後のことですから、そんな毒々しいオルガンの魅力は「もうひとつの」という感じ方でした。

賛否両論があることは承知しているつもりですが、コテコテばかりがオルガンの魅力では無いし、鬱陶しい梅雨時や真夏の太陽の下で聴けるオルガンって、ワルター・ワンダレィが一番だと思います。

と書きながら、このメタボなムードが充満したジャケットデザインは、苦笑……。

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ちょっと蒸し暑いビーチボーイズ

2010-06-27 16:43:02 | Beach Boys

Summer Days / The Beach Boys (Capitol)

グループのイメージとしても、またアルバムタイトルやジャケ写からしても、全くの夏向きと思われがちな本日の1枚ですが、天の邪鬼なサイケおやじとしては、ちょうど今の時期、梅雨時から夏直前になると聴きたくなる偏愛盤です。

 A-1 The Girl From New York City
 A-2 Amusment Park U.S.A
 A-3 Then I Kissed Her
 A-4 Salt Lake City
 A-5 Girl Don't Tell Me
 A-6 Help Me, Rhonda
(single version)
 B-1 California Girl
 B-2 Let Him Run Wild
 B-3 You're So Good To Me
 B-4 Summer Means New Love
 B-5 I'm Bugged At My Ol' Man
 B-6 And Your Dreams Come True

ご存じのように1965年7月に発売されたこのアルバムは、「トゥデイ!」と「ペットサウンズ」というビーチボーイズ畢生の名盤に挟まれた、些か纏まりのない作品集というのがマニアや評論家の先生方から押された烙印なんですが、同時に様々な思惑や軋轢の中で奮闘していたブライアン・ウィルソンの天才性とビーチボーイズそのものの存在感が多角的に浮き彫りになった問題作かもしれません。

もちろんサイケおやじが初めて聴いたのは以前にも書きましたが、「カール&パッションズ」という徳用2枚組アルバムで、そのオマケ扱いだった「ペットサウンズ」に邂逅した昭和47(1972)年以降、つまり1970年代に入ってのことですから、既にロックの歴史をある程度は知っていた客観的なリスナーとしての感想や考察なわけですが……。

さて、その中で一番に言われているのは、当時のブライアン・ウィルソンが意識しないではいられなかったフィル・スペクターとビートルズに対する複雑な思いが、このアルバムの大きな「柱」でしょう。

まずフィル・スペクターに対しては尊敬の念から、何んとか追いつき追い越せというブライアン・ウィルソンにとっての大きな目標であり、書きあげた楽曲を送ったり、懇意になろうと必死だった現実があったわけですが、フィル・スペクターからは冷たい反応が多かったとか……。

それでも前作アルバム「トゥデイ!」は、演奏パートにハリウッドの超一流スタジオミュージシャンを総動員し、全篇をフィル・スペクター流儀の所謂「音の壁」サウンドで仕上げ、尚且つビーチボーイズならではのコーラスワークとブライアン・ウィルソンが絶頂期の名曲揃いという充実作でしたから、ある部分までの達成感があったのかもしれません。

そして後は、それをビーチボーイズの個性に変換せさることを課題とするるわけですが、ここではなんとフィル・スペクターが自らの最高作のひとつと公言して憚らないクリスタルズの大ヒット「Then He Kissed Me」を翻案し、全くビーチボーイズ風味を強く打ち出した「Then I Kissed Her」としてリメイクするという禁じ的を使っています。

しかしこれが実に素晴らしいんですよねぇ~♪

なによりも基本が当時流行のビートグループ的なバンドサウンドでありながら、ビーチボーイズが十八番のコーラスワークをストリングの代わりに使ったようなサウンドプロダクトの厚み、さらにカスタネットを意図的に使うことでフィル・スペクターやモータウンサウンドの魅力の秘訣をがっちり継承し、さらにリードを歌うアル・ジャーディンの力強いスタイルが、なかなかジャストミートの快感です。

う~ん、こういう可愛くないことをするから、フィル・スペクターにしてもブライアン・ウィルソンの才能は分かっていたはずなのに、生意気な奴と思ったりしたんでしょうねぇ……。

あと、サビのメロディ展開は大滝詠一が常日頃からパクッてしまう極みつき!?

まあ、それはそれとして、フィル・スペクターを特徴づけるもうひとつの得意技が、曲メロに付随する覚えやすいキメのリフを演奏パートで終始用いるという部分が、この「Then I Kissed Her」でも、また前作アルバムに収録しながら、わざわざシングル用にバンドサウンドでリメイクした「Help Me, Rhonda」において、実に的確に楽しめます。

そして気になるビートルズへの対抗意識は、特にリアルタイムで流行っていた「涙の乗車券」を意図的にパクッたとされる「Girl Don't Tell Me」が有名でしょう。しかもあえてスタジオミュージシャンを起用せず、ビーチボーイズだけの歌と演奏でバンドサウンドを狙っているんですねぇ。しかし結果はカール・ウィルソンのボーカルを前面に出し、コーラスも封印しながら、ビートルズの持つ強固なビート感も出せず、もうこれはパロディ!?

ちなみに「涙の乗車券」がアメリカで発売されたのは1965年4月14日、そしてビーチボーイズが「Girl Don't Tell Me」を録音したのが同年4月30日とされていますから、同じキャピトルレコードに所属している事で逸早くブライアン・ウィルソンが「涙の乗車券」のプロモ盤を聴いていたにしろ、これは流石の速攻!

今となっては「涙の乗車券」「Help!」「Yesterdat」と続くビートルズのウルトラヒットの三連発、さらにアルバム「ヘルプ」によって、ビーチボーイズは「Help Me, Rhonda」をなんとか大ヒットにはしたものの、肝心のアルバム「Summer Days」や関連音源レコード等々が、その比較においてぺしゃんこにされた印象です……。

しかし収められた楽曲のひとつひとつは決して劣るものではなく、如何にもアメリカの白人がノーテンキにR&Rポップスを演じました的な「The Girl From New York City」や「Amusment Park U.S.A」の楽しさ、普遍的なビーチボーイズの魅力を今に伝える「Salt Lake City」、そしてB面初っ端からの「California Girl」「Let Him Run Wild」「You're So Good To Me」は明らかに「ペットサウンズ」の萌芽が確認出来る、まさに神秘的な完成度は圧巻!

実際、そのB面の3曲はコピーしようと思っても、ギターではなかなかコードが取れないと思いますよ。もちろんコーラスワークや曲の構造に合わせた演奏パートの充実は言わずもがな、メロディと和声のどちらが先にあったのか、完全に鶏と卵の関係のような組み立てが確信犯だとしたら、まさにブライアン・ウィルソンは天才です。

そしてロマンチックで、ちょいとせつないメロディが琴線に触れまくりというギターインストの「Summer Means New Love」が、もう最高に素敵なんですねぇ~~♪ ちょっと余談になりますが、サイケおやじが学生時代に入れてもらっていたバンドでは、演奏のラストテーマにこのメロディを弾くこともありましたですよ。

さらにビーチボーイズのアルバムでは恒例のお遊び的なトラック「I'm Bugged At My Ol' Man」は、ブライアン・ウィルソンがピアノで弾き語る時代遅れのR&B調ながら、その歌詞の内容は無理解な父親をバカにした内容という、当時としては社会的にも非常に反抗的な歌なんですが、そんな歌の内容とビーチボーイズの内幕をサイケおやじが知るのは、このアルバムを最初に聴いた時から相当に後のことゆえに、オトボケ気味のコーラスも含めて、なにやら楽しい息抜きに思えたものです。

なにしろ続くオーラス曲「And Your Dreams Come True」が、もうビーチボーイズならではのアカペラコーラスの真骨頂ですからねぇ~♪ 本当にこのアルバムB面の流れは絶妙です。

しかしそれとは対照的にA面は、とてもバラけた雰囲気です。

当時のブライアン・ウィルソンは巡業には参加せず、曲作りとスタジオワークに没頭しながら、悪いクスリを常用していたことが今日の歴史になっています。

で、ここからはサイケおやじの完全なる妄想ですが、それゆえにブライアン・ウィルソンはアイディアが纏まった楽曲から順次、レコーディング作業に入っていたのでしょう。もちろんレコード会社からは新作の要求が苛烈であり、前述したクスリの作用が良い方向へと働いている時には、例えば「California Girl」や「Let Him Run Wild」、そして「You're So Good To Me」といったインスピレーションが冴えまくりの名曲が作れるんだと思います。

一方、ビートルズへの意識過剰がそうした創作意欲を刺激したかは、ちょいと微妙でしょう。なにしろ「Girl Don't Tell Me」は、ブライアン・ウィルソン&ビーチボーイズが何んと言おうとも、些かのトホホ感は免れませんし、現実的にはビートルズが年末に出した傑作アルバム「ラバーソウル」を聴いたブライアン・ウィルソンは、それまでの自分達の作品を恥じたとまで……。

正直に言わせていただけるのなら、このアルバムは楽曲の流れが良くありません。それは様々にバラエティに富んだ歌と演奏が各々、非常に完成度が高すぎる所為でもあるんですが、流れが絶妙と書いたB面にしても、頭からの3曲の存在感が上手くリンクされていないのが感じられると思います。

ちなみに当時は所謂「トータルアルバム」という観念は非常に希薄で、LPは単にシングル曲とその他のオマケの詰め合わせという作り方が主流でしたが、ビートルズが1964年7月に出した「ハード・デイズ・ナイト」がLPという特性を活かしつつ、それなりの意味合いを強く打ち出したものとすれば、ビーチボーイズだって、それより1年近く前の「サーファー・ガール」、そして「リトル・デュース・クーペ」「シャットダウン」「オール・サマー・ロング」と続くアルバムにおいて、海や車や女の子をトータル的に歌う制作方針にプレは無かったのですから、殊更に自己嫌悪する必要は無いでしょう。

また楽曲の大充実を逆手に活かし、LP片面毎にアップテンポの曲とパラードを特徴的に分けた「トゥデイ!」にしても、今日ではビーチボーイズの最高傑作とするファンもいるほどです。

それがこの「サマー・デイズ」になると一転、冷たい扱いになるんですから、いやはやなんとも……。

まあ、確かにアルバムタイトルに期待する清涼感はイマイチなんですけどねぇ……。

しかしリアルタイムのブライアン・ウィルソンは、やっぱり唯一無二!

聴くほどに分かってくるんですが、このアルバムセッションにはスタジオプレイヤーを多用したトラックとビーチボーイズが主体となった歌と演奏が混在しています。それは既に述べたように、ブライアン・ウィルソンが時代の流れの中で急かされるように表現していった才能の証明だと思いますが、常に巡業を優先させていたバンドとの思惑の乖離も決定的で、なんとジャケットにはアル・ジャーディンが写っていないという4人組のビーチボーイズが!?!

しかも巡業に参加しなくなったブライアン・ウィルソンに代わって、この頃にレギュラーメンバー入りしたブルース・ジョンストンが、きっちりとこのアルバムではコーラスを歌っているそうですから、もはやビーチボーイズそのものが、ブライアン・ウィルソンの才能の一部と化した感もありますよねぇ……。

ですからアルバム全体の纏まりが散漫だと言われても、ブライアン・ウィルソンには平気だったのかもしれません。何故ならば、この天才にとっては、ひとつひとつの楽曲が命だと思われるんですから、なんとか格好をつけた仕上がりも、ビートルズの「ラバーソウル」が出るまでは、それほど気にもしていなかったのかもしれません。

ということで、些かの煮え切らなさと如何にもの爽快感が並立した、ちょいと蒸し暑い名盤だと思います。尤もカリフォルニアの生活者に「梅雨」なんてものが理解出来るか否かは知る由もありませんが……。

CDやベスト盤で、好きな曲だけ楽しむという手も、OKだと思います。

最後になりましたが、掲載した私有盤は疑似ステレオ仕様なんですが、ブライアン・ウィルソンが希望していたのはモノラルミックスという事は、今や常識でしょう。しかし1970年代の我国では、なかなかモノラル盤は入手が難しく、その意味で現在流通している2in1のリマスターCDで鑑賞するのは、正道なのでしょうね。

う~ん、ボーナストラックも入っているし、買おうかなぁ♪♪~♪

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梅雨時にアソシエイション

2010-06-26 16:40:43 | Pops

かなわぬ恋c/wWindy / The Assoceation (Warner Bros. / 東芝)

今日ではソフトロックの王者とまで崇められているアソシエイションも、しかしリアルタイムで全盛期だった1960年代後半の日本では、それほどの人気グループではありませんでした。なにしろ時代はサイケデリック&ハードロック、あるいはブルースロックが主流でしたから、爽やかで幻想的なコーラスワークを活かした美メロ曲を歌うグループは、アソシエイションに限らず、次第に片隅へ……。

ただしアソシエイションは丸っきり忘れられた存在では決してなく、例えば我国の歌謡フォークでは不滅の人気を誇るチェリッシュは、アソシエイションの大ヒット曲「Cherish」からグループ名を頂戴したエピソードは有名でしょう。

そしてサイケおやじがアソシエイションに注目したのは、ウェス・モンゴメリーが1967年に出した、所謂イージーリスニングジャズのメガヒットアルバム「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」に収録されていた「Windy」という、実に楽しい楽曲のオリジナルバージョンがアソシエイションの大ヒットだという事実を知ったからです。

そして中古でゲットしたのが、本日ご紹介の1枚というわけですが、これはアソシエイションを代表するヒット曲として1967年に出した「かなわぬ恋 / Never My Love」と「Windy」をカップリングした徳用再発シングル盤♪♪~♪

両曲ともメロディの美味しさは言わずもがな、それを彩るコーラスワークの完成度、また決して甘く流されない演奏パートの躍動感は、まさにハリウッドポップスの真髄でしょう。

特に「かなわぬ恋」はスローな展開ながら、タメのあるリズム処理が絶妙のビート感を生み出し、それをバックに従えた浮遊感満点のコーラスは、ビーチボーイズやフォーフレッシュメンの影響をサイケデリック的に再構成したが如き、実に深みのあるものですし、演奏パートで絶妙の合の手を入れてくるキーボードのフレーズが、なんとも素敵です。

また、お目当ての「Windy」は、ウェス・モンゴメリーが聞かせてくれたとおり、ラテンリズムを内包した楽しいビートが躍動し、美しいコーラスワークが冴えまくりの名曲名演♪♪~♪

もう、この2曲で完全にアソシエイションの虜になったサイケおやじは、真剣になってレコードを集め、また少しでも情報を得ようとしたのですが、時代は既に1970年代とあって、それは困難を極めました。なにしろインターネットがありませんでしたから、今ほど簡単に情報が得られる時代ではなかったですし、中古でもアソシエイションのアルバム&シングルに邂逅することは、なかなか稀でしたからねぇ……。

ちなみにアソシエイションは最初、フォークソングのグループとして出発し、徐々にスタイルをフォークロックからポップスの領域へと発展させた、なかなか時流に敏感なバンドでした。

メンバーはゲイリー・アレクサンダー(vo,g)、ラス・ギグアー(vo,g)、テリー・カークマン(vo,key)、ジム・イエスター(vo,key,g)、ブライアン・コール(vo,b,g)、デッド・ブルーチェル(vo,ds) という6人組で、各々がボーカリストとしても優れ、しかも演奏が上手いという理想的なグループだったんですが、スタジオレコーディングには当時の超一流セッションプレイヤーが起用されていたことから、ちょうどこの2曲が制作されていた時期にはゲイリー・アレクサンダーが脱退していたという裏話もあるようです。

ちなみにアソシエイションの歌と演奏の実力は、後に発売されるライプ盤でしっかりと証明されていますから、彼等にしてもレコーディングに外部の者が携わるのは屈辱だったのかもしれませんね。しかし実はアソシエイションだけで制作された楽曲がこの二大ヒット曲の前に発売されていたんですが、それは残念ながら大きな成功には至らず、そこで仕切り直しとしてハリウッド伝来の手法が再び用いられたというわけです。

尤も、そうした経緯や事実を知ったのは、決してサイケおやじの努力によるものではなく、1970年代のある日、某大学のポップス研究会の集まりに参加した折、ゲストとしてお話をされた有名コレクター&評論家の先生に教えられたものです。

実際、そこでは名前だけは知っていた気になる人物達の業績やプロフィール、またハリウッド芸能界やレコード会社の仕組み等々、本当に目からウロコの真相ばかりに触れることが出来て、大変に勉強になりました。

しかしそれは当時、あくまでも好事家の狭い世界の話であって、まさかソフトロックのブームがやって来るなんて、想像も出来ませんでした。だいたい「ソフトロック」なんていう言葉そのものが当時は一般的ではなく、しいて言えば洋楽ポップスという、至極当たり前で無意識なジャンルだったのですから、時の流れは偉大です。

ということで、梅雨の鬱陶しさと晴れ間の蒸し暑さが混在する今日この頃には、アソシエイションのハーモニーに彩られた美メロのヒット曲が似あいます。

リアルタイムで幾枚か作られたアルバムが現在、きっちりCD化されているかは不明ですが、当時からベスト盤の類は今日まで途切れたことがありませんから、爽やかにお楽しみ下さいませ。

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メンフィス・ハイ・サウンドのフェイセズ

2010-06-25 16:57:42 | Rock

You Can Make Me Dance, Sing Of Anything / Faces (Warner Bros.)

W杯サッカー、ついに日本が予選リーグを突破しましたねっ!

昨夜は久々に早く寝られたんで、今朝は4時に起きてのテレビ観戦でしたが、もう3点目が入った場面の高揚感は最高でした♪♪~♪

まあ、正直、今大会の日本は2敗1弾き分け……、と悲観的に予想していたんですが、全く嬉しい裏切りに感謝するばかりですし、暗い話題が多すぎる昨今の我国にも、ちょっとは明るい光が射した雰囲気じゃないでしょうか。

さて、サッカーといえば、ロック界ではロッド・スチュアートが大好き人間として有名ですよね。なにしろステージのクライマックスでは、自らロックのビートに合わせてサッカーボールを客席に蹴り飛ばす大サービスが、完全なる「お約束」になっていた時期もあったほどです。

そして今、フェイセズ時代のアルバムが紙ジャケット仕様で復刻されたようですが、最新リマスター音源を使いながら、実はボーナストラックが無いことから、私は買いません。

もちろん発売中のものは全て、アナログ盤LPで持っていることもありますし、未発表音源は以前出たボックス物で楽しんでいればOKというわけです。

しかし、せっかく最新リマスターを施すなら、例えばそのボックス物に収録されていた、フェイセズ畢生の泣きのパラード「Open To Ideas」とか、素晴らしいお宝をボーナスに入れる太っ腹を期待するんですけどねぇ……。

ちなみに「Open To Ideas」は、1975年1月という、本当にフェイセズ末期の録音なんですが、そこに濃厚なソウルフィーリングは当時流行のアメリカは南部R&Bの本拠地メンフィスのレーベル「Hi Record」で作られていた味わいと同じものです。

おそらくロッド・スチュアートは、例えばオーティス・クレイあたりの大御所ソウルシンガーの影響をモロに開陳したつもりだったんじゃないでしょうか。

で、そのあたりが最初に露わになったのが、1974年晩秋に発売された本日ご紹介のシングル曲「メイク・ミー・ダンス / You Can Make Me Dance, Sing Of Anything」でしょう。とにかくドラムスのビートの出し方、ギターとベースのコンビネーションが、モロに所謂「ハイ・サウンド」なんですねぇ~♪ そして曲メロに絡んでくるストリングの存在感と全体のグルーヴそのものが、ロッド・スチュアートならではのビターテイストな歌い回しとジャストミート♪♪~♪

このあたりは、例えば前述したオーティス・クレイならば1972年の大名盤「愛なき世界で」と聴き比べれば、尚更に顕著だと思います。特にアルバムタイトル曲「Trying To Live My Life Wihtout You」は本当にゾクゾクするほどで、これはロッド・スチュアートがフェイセズ解散後の1975年に出した大ヒットアルバム「アトランティック・クロッシング」の初っ端に収録された「Three Time Loser」へと直結する魅力がいっぱいですよ♪♪~♪

そして結果的に「メイク・ミー・ダンス」はフェイセズが出した最後のシングル曲になったわけですが、今日でもフェイセズの解散を惜しむ声、もっと長く続けて欲しかったという願いは当然あるものの、サイケおやじは以降のロッド・スチュアートの活動を鑑みれば、この「メイク・ミー・ダンス」の味わい、そしてフェイセズならではのファジーなR&Rの楽しさは継承されていると思います。

またロン・ウッドが翌年からストーンズのサポートメンバーとなり、今ではレギュラーとしての存在感を示しているのですから、とやかく言うのは愚の骨頂かもしまれせんね。

ということで、サッカーの話がメンフィス・ハイ・サウンドに繋がったという、本日は落語のようなオチで失礼致しました。

頑張れっ、ニッポン!

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ポールのウイングスな意地っ張り

2010-06-24 16:39:50 | Beatles

Band On The Run / Paul McCartney & Wings (Capitol)

ポール・マッカートニーという偉大な音楽家の芸歴を振り返ると、ウイングスを率いていた1970年代は「意地っ張り期」というのが、サイケおやじの分類になっています。

まあ、これも毎度お馴染みの独断と偏見として、皆様は失笑と噴飯でしょう。

しかし結論から言えば、その時期のポールは明らかにビートルズとは違った自分だけの個性を追求するべく奮闘していたのであり、つまりはビートルズっぽさを意図的に封印していたと思うのです。

そのあたりがビートルズ以来の頑なファンを落胆させ、実際にウイングス名義で出される諸作がイマイチどころか、子供向け!? とさえ酷評されたことは決して局地的ではありませんでした。

それはビートルズの仲間だったジョンにしても、またジョージやリンゴにしても、各々が発表する楽曲が例の「ホワイト・アルバム」の延長にあるような個人的音楽性をそれほど変えていないことに比較して、ポールはあえてウイングスという自分の思い通りになるバンドまで結成し、ビートルズを捨て去る方向へとシフトしたが如き活動を……。

ですから、ウイングス名義の最初のアルバム「ワイルドライフ」が急造という側面はあったにしろ、その未完成と言うのも憚られる駄作のレッテルを貼られ、続く「レッド・ローズ・スピードウェイ」にしても、その発売当初は決して評判の良いものではありませんでした。

しかし同時期に発表していたシングル曲、例えば「Hi Hi Hi」や「My Love」等々の分かり易いポップロックなフィーリングは捨て難く、当然ながら大ヒットしていましたから、本日ご紹介のアルバムも新作として登場する以前から、相当な話題になっていました。

それは単に音楽性だけではなく、レコーディングがアフリカで行われていること、またウイングスが解散状態となり、現実の演奏はボールと子分のデニー・レインが中心となっていること等々!?

実はこの情報を知り得た当時のサイケおやじは、もしかして最初のソロアルバム「マッカートニー」のような、ほとんどデモテープと大差の無いチープなもの? という悪い予感に満たされていました。

ところが先行シングルとして1973年秋に出た「愛しのヘレン」の爽快さ、そしてついに同年末に姿を現したこのアルバムは、今に至るもウイングス名義では最高レベルの傑作だったのです。

 A-1 Band On The Run
 A-2 Jet
 A-3 Bluebird
 A-4 Mrs. Vandebilt
 A-5 Let Me Roll It
 B-1 Mamunia
 B-2 No Words
 B-3 Helen Wheels / 愛しのヘレン
 B-4 Pecasso's Last Words
 B-5 Ninteen Hundred And Eighty Five

まず、お断りしておきたいのは、掲載した私有LPはオリジナルのイギリス盤とは異なり、B面に「愛しのヘレン」が入ったアメリカ盤ということです。

実は前述した「愛しのヘレン」のシングル盤が我国で発売されたのは昭和48(1973)年12月20日のことでしたが、楽曲そのものは待望の新曲扱いとして、既に11月末頃からラジオで流れていました。

ですからサイケおやじが翌年の正月早々に某デパートで開催された輸入盤セールで、この未だ日本では出ていない新作アルバム「バンド・オン・ザ・ラン」を勇んでゲットしたのは、神様の思し召しでした。なにしろ日本盤が出たのは、それより更に遅れた2月初旬でしたからねぇ。もちろんその時点でイギリス盤は見たことありませんでしたから、「愛しのヘレン」は入っていて当然というのが、今に至るもサイケおやじの強い思い込みになっているのです。

さて、肝心の中身は説明不要と思いますが、とにかくA面ド頭の「Band On The Run」から「Jet」というドラマチックな二連発、さらに続く和みの「Bluebird」という流れが、楽曲の充実もあって、抜群です。特に「Bluebird」は、まさにポールでなければ書けないメロディと歌いまくりのベースワークが良い感じ♪ また既に述べたように、このアルバムのレコーディングセッションは基本的にボール(vo,g,b,ds,key) とデニー・レイン(g,b,key,vo) だけで行われ、ポールの当時の愛妻だったリンダ(vo,key) は、失礼ながら、まあ、そこに居るだけという役割でしたから、「Band On The Run」や「Jet」で聴かれる多重層的なメロディの繋がりや各種楽器の使い方は、緻密なオーバーダビングや熟練したテープ編集の魔法によるものというプロデュースが見事過ぎます。

特に幾つもの小さなメロディを継ぎ接ぎし、ひとつの曲に仕立て上げる手法は、ビートルズ時代の「アビーロード」のB面から連綿と受け継がれたポールならではの十八番ですが、それがこの時期、例えばこのアルバムより以前に出したシングル曲の007映画主題歌「死ぬのは奴らだ / Live And Let Die」、そしてここに収録された「Band On The Run」や「Pecasso's Last Words」で、相当な境地にまで到達しています。特に「Pecasso's Last Words」はアルバム収録曲の様々なパーツをモザイクのように用いた目論見があり、それゆえにB面ラス前という絶妙の位置付けがニクイばかり!

しかし、そうした部分が逆にビートルズ以来のファンの心理を逆なでしていることも、また事実で、あざとさばかりが目立っていることは否定出来ません。極言すれば分かり易さと裏腹のカッコ悪さがあるんじゃないでしょうか。

今日の歴史では、折しもビートルズで同僚だったリンゴが友人関係を総動員した珠玉のポップスアルバム「リンゴ」を、またジョンは人生の機微と夢を綴った傑作盤「ヌートピア宣言」を同時期に発売していますし、ジョージにしても、それに先駆けてソフト&メロウと精神世界の安逸を見事にリンクさせた「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」をヒットさせていましたから、ポールにしても当時は尚更に負けん気が強かったでしょう。

率先してビートルズを辞めた自分は、もう後戻りは出来ないという意地、それでもビートルズを牽引していたのも、また自分というプライドが確かにあったと思います。

それゆえに他の3人がやっていなかったバンド形態に拘ったのも充分に納得出来るのですが、結果的に結成したウイングスはポールのワンマンバンドであり、ビートルズが存在していたリアルタイムからのファンにとっては、共に歳月を積み重ねた分だけ、それは子供向け……。

ですから、この秀逸なアルバムも最初はそれほど勢い良く売れたわけではないようです。

しかしLP収録曲を積極的にシングルカットし、先行した「愛しのヘレン」から「Jet」、そして「Band On The Run」を3連続大ヒットさせたことにより、アルバムもロングセラーとなり、ビートルズ活動停止後のメンバーのソロ作品中では、この時点で最高の売り上げを記録し、ついにはグラミー賞まで獲得するのです。

客観的に聴けば、この「バンド・オン・ザ・ラン」は最高のポップスアルバムのひとつでしょうが、何故か「1970年代ロックの名盤」として認知されることは、未だに無いと思います。

実は告白すると当時、私は周囲の仲間に「このアルバム、良いよねぇ~♪」とか言ったが為に、「おまえ、まだ、そんなの聴いてんの!?」と完全に呆れられた過去があります。

結局、ポールはジョンのような社会を先導する立場にもなれず、ジョージのように内省的な精神性を逆手にとることも出来ず、あるいはリンゴのようなフレンドリーなタレント性も周囲が許しませんから、必然的にプロ意識の強さが金儲け主義と受け取られる損な役割を引き受けてしまったんじゃないでしょうか……。

人類の歴史の中で、この先もポールは偉大な作曲家という地位は揺るぐはずもありませんが、さて、それでは残されたビートルズ以外のレコードは? という問いが、常につきまとう宿命も携えています。

そんなところからでしょうか、1976年頃からウイングスのライプステージでは、ついにビートルズ時代の歌を自ら解禁し、近年では伝統芸能としてのビートルズに邁進するポールの姿が居直りどころか、なにやらせつないものに感じられます。

おいおい、「バンド・オン・ザ・ラン」を出していた頃の意地っ張りは、どうしたんですか?

なんていう些か無礼な質問をしたくなるほどなんですよ……。

もちろんサイケおやじにしても、近年のポールの懐メロライプには、やっぱり嬉しいものを否定致しません。

しかし時折、この当時のレコードを取り出して聴いてみると、ポールならではのツッパリが妙に心地良かったりするのです。

最後になりましたが、このアルバムの如何にもロックな音作りは、ビートルズ時代からのエンジニアだったジェフ・エメリックの手腕であり、なぁ~んだ、結局はポールってビートルズから離れられないのねぇ~♪ と目が覚めてしまうんですが、そこに普遍性が強く打ち出されていることを付記しておきます。

そして個人的にはB面のアコースティックな「Mamunia」や夢見るような「No Words」におけるコーラスワーク全開のハートウォームなトラックから、アメリカ盤だけの「愛しのヘレン」へと続く流れが好きでたまらないのでした。

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これだけはLPに拘るローラ・ニーロ

2010-06-23 16:54:50 | Laura Nyro

Season Of Lights / Laura Nyro In Concert (Columbia)

家庭用ビデオもDVDも、ましてやネットなんていう文明の利器が無かった1970年代は、それゆえに好きなミュージシャンのステージに気軽に接することが出来るライプ盤が、なかなか重宝されていたと思います。

それは主人公のリアルな近況報告であり、またある意味ではベスト盤的な位置づけもありましたから、それを出すことが、すなわち人気のバロメーターでもあったのです。

さて、本日ご紹介の1枚は、私の大好きなローラ・ニーロが1977年6月に出した、待望のライプレコーディングによる新作! というのも、前年春に出した前作「スマイル」が当時流行のフュージョンサウンドを如何にもローラ・ニーロ的に活かした、全くのサイケおやじ好みでしたから、その直後のプロモーションも兼ねた全米ツアーから作られたというこのアルバムに期待するなというのが、無理というものです。

メンバーはローラ・ニーロ(vo,p,g) 以下、ジョン・トロペイ(g)、リチャード・デイビス(b)、マイク・マニエリ(vib,per,key)、アンディ・ニューマーク(ds)、ニディア・マタ(per)、カーター・コリンズ(per)、エレン・シーリング(tp)、ジーニー・ファインバーグ(fl,sax)、ジェフ・キング(sax) という、モダンジャズ~フュージョンやスタジオセッションの世界では超一流の面々ばかり!

ちなみにエレン・シーリング、ジーニー・ファインバーグ、ニディ・マタといった女性ミュージャンの起用も注目されますが、確かこの3人は女性がメインのブラスロックバンドだったアイシスの中心メンバーだったと記憶しています。

 A-1 The Confession (from Eli & The 13th Confession)
 A-2 And When I Die (from More Than A New Diccovery)
 A-3 Upstairs By A Chinese Lamp (from Christmas And The Beads Of Sweet)
 A-4 Sweet Blindness (from Eli & The 13th Confession)
 A-5 Captain St. Lucifer (from New York Tenderberry)
 B-1 Money (from Smile)
 B-2 The Cat Song (from Smile)
 B-3 Freeport (from Christmas And The Beads Of Sweet)
 B-4 Timer (from Eli & The 13th Confession)
 B-5 Emmie (from Eli & The 13th Confession)

とにかく全篇にローラ・ニーロ節が、ぎっしり凝縮されているのは言わずもがな、バックの演奏も素晴らしいの一言♪♪~♪

ジョン・トロペイのソリッドなギターワーク、意外なほど若々しく躍動するリチャード・デイビスのペース、ヘヴィなファンクビートを内包したアンディ・ニューマークのタイトなドラミング、浮遊感とシャープな感性を併せ持つマイク・マニエリのヴァイブラフォン等々、とにかく文句のつけようがありません。またエレン・シーリングのマイルスっほいミュートも良い感じ♪♪~♪ それとジェフ・キングのマイケル・ブレッカーとウェンイ・ショーターの折衷スタイルも憎めないんじゃないでしょうか。

しかし何んと言ってもローラ・ニーロの存在感は、その自然体と些かの人見知り、それでいて強い意志を感じさせる歌いっぷりにグッと惹きつけられるという、実に印象深い余韻を残します。

肝心の演目構成は、まず収録曲中で一番に知られているであろう「And When I Die」がアシッドフォークとファンキーロックが上手く融合したハードなAORという趣になっていますし、続くバンドメンバー紹介から「Upstairs By A Chinese Lamp」へと続く流れは、そのミステリアスなアレンジが一転して十八番のメロウな展開へと入っていく、その声質や歌の節まわしも含めて、吉田美奈子への影響力を露骨に提示してくれるという、ファンにとっては実に嬉しいものです♪♪~♪

いゃ~、本当に吉田美奈子を聴きたくなるんですよっ!

そういう本音は続く「Sweet Blindness」ではさらにミエミエとなり、今度は矢野顕子という「Captain St. Lucifer」へ見事に収斂していくのです。

あぁ、こんなことばっかり書いていて、良いんでしょうか?

もちろんこれはリアルタイムではそれほどでもなく、後々になって聴けば聴くほどの心情吐露なんですよ。当然ながら、吉田美奈子も矢野顕子も私は大好きです。だって、彼女達の歌を聴くほどに、アッ、ローラ・ニーロ! とニンマリさせられる事が多々あったのですから♪♪~♪

そしてB面に針を落とせば、このバンドの演奏力が存分に堪能出来る「Money」が心地良く、そのあたりはA面ド頭の「The Confession」にも共通している魅力なんですが、バンドアンサンブルと縦横無尽な各人のアドリブソロは、演じている方が楽しいという雰囲気がたまりません。

ですからゆったりとした「The Cat Song」でも、その基本のグルーヴは決して弛緩することがありません。

しかし、このアルバムのクライマックスはローラ・ニーロがピアノで弾き語る「Freeport」「Timer」「Emmie」の三連発における自作の歌に対する真摯な姿勢です。これが観客も共感しての心からの拍手によって、実にリアルな良いムード♪♪~♪

ということですから、サイケおやじは当時、連日連夜、このアルバムを聴き狂っていましたですねぇ。それは今でも全く変わらない気持です。

ところが残念ながら、このアルバムは評論家の先生方からはケチョンケチョンに糾弾され、また現実的にも売れませんでした。

というのも、実はこのアルバムは当初、2枚組として企画され、サンプル盤までも業界に出回りながら、一説によれば会社側の意向によって編集を施され、1枚物に変更された経緯があったとか……。

しかしそれはライプ盤には当然つきまとう宿命であり、当たり前の詐術でしょう。

そんな裏事情を知らない多くのファンは、これはこれで楽しんでいたと思います。

まあ、正直言えば、多くの歌手やバンドにカパーされた有名曲が「And When I Die」だけなのが物足りず、また演目の後に注釈を入れたとおり、これまでのアルバムからバランス良く選ばれたわりには、ちょいと地味……。

そして1980年代になって、件の2枚組LPのサンプル盤からパイレートされたカセットコピーが局地的に出回り、サイケおやじも勇んで聴いたところ、確かに曲数も増え、演奏パートも未編集(?)のロングバージョンだったり、ミックスやテイクそのものが異なるトラックが幾つ入っていしまたから、相当に驚愕させられました。

ところが同時に、一般向けに世に出たオリジナルアルバムに馴染んだ耳には、どうにも散漫で……。

なによりもクライマックスだった弾き語りの「Timer」と「Emmie」がバンドバージョン&別テイク!?

また曲順が異なるために、「And When I Die」から「Upstairs By A Chinese Lamp」へと続くバンドメンバー紹介も含んだ心地良い流れが、無残にも蔑に……。

ですから、それは嬉しい反面、聴いていて馴染むものではありませんでした。

こうして月日が流れた1993年、その未発表2枚組アルバムが我国優先でCD化されるという快挙があったんですが、天の邪鬼なサイケおやじはもちろ即ゲットはしたものの、なんだかなぁ……。収録時間に余裕のある2枚組でありながら、アナログ盤LPでしか聴けないテイクが入っていなかったのも減点でした。

そして現在では紙ジャケット仕様のCDとなって、最初の企画どおりの音源に加え、前回のCD化では見送られたアナログ盤オンリーの「Timer」と「Emmie」も、しっかりと1枚のディスクに纏められています。

しかし、それだったら今日流行のデラックスエディションとして、1枚にはアナログ盤と同じ音源のリマスター、もう1枚にはサンプル盤だけで幻となった企画音源を入れるのが、最良じゃないかと思います。

ファンの中には、初めてこのアルバムに接する時、いきなり真オリジナルの2枚組用音源を聴き、楽しまれている皆様もいらっしゃるでしょう。確かにそれはローラ・ニーロやバンドメンバー、そしてスタッフの望んだものだったかもしれませんが、決して正しい歴史ではありません。

その点を鑑みれば、後追いで聴くほどに、最初の公式盤LPを大切に聴かなければならないのです。そして実際、そこに凝縮されたローラ・ニーロの素晴らしき歌の世界に感動しなければ勿体無いですよ。

とにかくLP片面毎の流れと盛り上がりは最高!

と、そんなことを思うのは、頑固なサイケおやじの独断と偏見にしか過ぎないことも、私には分かっているつもりなんですが、どうにも、ねぇ……。

結局は自分に馴染んだ「昔」を捨てきれないという、今日も偏屈な独り言で失礼致しました。

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もしかしてユーミンの岡崎友紀

2010-06-22 17:03:36 | 歌謡曲

海岸通りの喫茶店 / 岡崎友紀 (東芝)

音楽好きにとって、自分の好きなアーティストのスタイルと同系の楽曲が気になるのは自然の流れだと思います。

例えばビートルズが好きならば、必然的にバッドフィンガーチューリップ、パイロット等々は言うに及ばず、それらしき音作りや歌を演じているシンガー&グループは星の数ほど存在していますから、全く尽きない楽しみでしょう。

さて、そういう点からすれば、本日ご紹介する岡崎友紀の楽曲はシングルB面扱いですが、なんと疑似ユーミンなんですねぇ~♪

実は告白すると、私はユーミン好きが高じて、それらしきものまで集めた過去があるんですが、この「海岸通りの喫茶店」は、てっきりユーミンが岡崎友紀に書き下ろした楽曲だと思い込んだほどです。

しかし実際は作詞:阿久悠、作編曲:三木たかし!?!

ご存じのように岡崎友紀はユーミンから提供をされた「グッドラック・アンド・グッドバイ」と「ハートをたべて」のカップリングシングルを昭和51(1976)年に出していますし、他にユーミンがアルバム「コバルトアワー」で発表した「何もきかないで」もカパーしていますが、このシングル盤の発売は昭和49(1974)年11月です。

ちなみに当時のユーミンはと言えば、ちょうど同年10月にアルバム「ミスリム」とシングル「12月の雨」を発売し、いよいよブレイク寸前という時期でしたから、これは恐ろしい偶然なんでしょうか……。

とにかく岡崎友紀の「海岸通りの喫茶店」を聴けば、これはユーミンだよなぁ、と私は思わざるをえませんでした。

とはいえ、書き遅れましたが、私が「海岸通りの喫茶店」に気がついたのは決してリアルタイムではなく、昭和51(1976)年になってのことですし、アレンジそのものは歌謡フォーク味が強く、当時のユーミンがやっていたキャラメル・ママ~ティンパンアレイ風の演奏にはなっていません。

しかしイントロ前の波のSEからスローテンポで柔らかなサウンドメイキング、歌詞の雰囲気とメロディ展開は、絶対にユーミン味が強く、それゆえに中古で件のシングルをゲットしてソングライターのクレジットを確認した時の驚きは、まさに絶句でした。

例えばユーミンがブレイクした後に、プロの作家がこれを作ったのならば、それは職業としての実力の証だと納得も出来るのですが、このあたりの謎は解けるのでしょうか。

ちなみにユーミンは公式デビュー前からソングライターとして村井邦彦の傘下にあり、その指導を受けていましたし、自ら楽曲を作る場合のプロ意識は相当に高いことは、皆様がご存じのとおりです。それゆえに当時第一線の職業作家を研究していたことは推察に易いでしょう。

ユーミンが昭和48(1973)年に最初のアルバム「ひうこき雲」を出した頃、歌謡曲っぽいと言われていたのも意味深です。

ちなみにA面は、まあ、それなりということでふれませんが、このシングル盤はB面に絶対の価値があるんじゃないかと、私は思うばかりです。

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ハービー・マン対デュアン・オールマン

2010-06-21 17:00:19 | Soul Jazz

Push Push / Herbie Mann (Embryo)

常に流行に敏感なゆえに、イノセントなジャズファンからは軽視されるハービー・マンも、しかし実際には充実したアルバムを幾つも出しています。

そしてこれは中でも、私が愛聴して止まない1971年に発売されたLPなんですが、実は告白すると、早世した天才ギタリストのデュアン・オールマンが全面的に参加しているのが、大きな魅力♪♪~♪

ご存じのように、デュアン・オールマンはオールマン・ブラザーズ・バンドでブレイクする以前の下積み時代にスタジオミュージシャンとしての実績があり、その腕前は業界でもトップクラスでしたから、例えハービー・マンがジャズに傾いた演奏をやってしまおうが、なんの問題もありません。

しかも同じセッションに参加したのが、コーネル・デュプリー(g)、デイヴッド・スピノザ(g)、リチャード・ティー(key)、チャック・レイニー(b)、ジェリー・ジェモット(b)、ドナルド・ダック・ダン(b)、バーナード・パーディー(ds)、アル・ジャクソン(ds)、ラルフ・マクドナルド(per) 等々の錚々たる面々!

ですから、これは当時流行のソウルジャズ~クロスオーバーの路線を狙ったことはミエミエなんですが、そこに尚且つスワンプロックの注目スタアだったデュアン・オールマン(g) をメインゲストに迎えるという目論見は、商魂を超えた嬉しいプレゼントでした。

尤も、私がこのアルバムの存在を知り、実際に聴いたのは1974年初頭のことで、それは楽器や集う諸先輩方からの情報によるものでしたが、リアルタイムでプロのミュージシャンを目指していた先輩達は、既にチャック・レイニーやバーナード・パーディーあたりの作り出すカッコ良いグルーヴに以前から注目していたらしく、デュアン・オールマンよりも、そっちを聴くことが第一義のようでした。

まあ、それはそれとして、やっぱり私はデュアン・オールマンですよっ!

しかも演目が、これまた素晴らしく魅力的なんですねぇ~♪

ちなみにアナログ盤は通常と異なり、片面毎に「Side One」と「Side A」に表記するという些か力の入った稚気が憎めないところで、それだけこのアルバムセッションに思い入れが強かったのかもしれません。、

One-1 Push Push
 ハービー・マンが作ったアルバムタイトル曲は、もうグッと重心の低いソウルジャズの典型で、全篇を貫くソリッドなキメのリフを弾くリチャード・ティーのピアノに導かれ、祭り囃子のようなフルートが流れてくれば、リスナーは浮かれてしまうこと、必定です。
 もちろんチャック・レイニー&バーナード・パーディ-、さらにラルフ・マクドナルドが加わったリズム隊のブリブリのビートは絶好調ですし、コーネル・デュプリーのチャラチャラしたリズムギターも最高!
 そして気になるデュアン・オールマンは全くのマイペースで臆することなく、切れ味鋭いアドリブを存分に聞かせてくれますよ♪♪~♪
 これはサイケおやじの完全なる妄想ですが、こういう演奏を聴いていると、もしもデュアン・オールマンが生きていたら、オールマンズはこの方向へと進んだような気がしています。

One-2 What's Goin' On
 ご存じ、マーヴィン・ゲイのウルトラメガヒットにして、当時流行のニューソウルでは代名詞ともなった名曲なんですが、なんとハービー・マンはハープまで導入した甘々のアレンジでメロウに演じるという、実に禁断の裏ワザを使っています。
 もちろんそれは原曲とオリジナルバージョンに秘められた魅力ではありますが、ハープの響きが格調というよりは、些か陳腐な感じがしないでもありません。
 しかしスローテンポながら、エグ味の強いソウルグルーヴでバックアップする名手達の存在感はやはり抜群で、特にリチャード・ティーのチープなオルガンが良い感じ♪♪~♪
 そこに救われてと言っては失礼かもしれませんが、結果的に侮れない魅力が横溢しています。

One-3 Spirit In The Dark
 これまたアレサ・フランクリンのニューソウル期を代表する名曲で、そのゴスペル&ソウルフルなオリジナルバージョンの魅力を大切にしたここでの演奏は感度良好♪♪~♪
 まずは最初のパートで展開されるハービー・マンのフルート、デュアン・オールマンのギター、リチャード・ティーのエレピによる、厳かにして神聖なムードさえ滲む会話的なアドリブイントロが素晴らしいです!
 そしていよいよ本題に入るというか、じっくり構えたリズム隊が提供する粘っこいグルーヴの中、ツボを押さえたハービー・マンのフルートがシンプルに歌えば、そこはまさにソウルジャズのゴールデンタイム♪♪~♪
 当然ながら演奏は徐々に白熱し、如何にもバーナード・バーディーなドラミングがビシバシと存分に楽しめますし、ここで参加しているジェリー・ジェモットのペースが暗く蠢けば、リチャード・ティーのエレピがメロウな黒っぽさを見事に表出していきます。
 ちなみに左チャンネルで鋭い合の手を入れるサイドギターはデイヴィッド・スピノザだと思われますが、すると右チャンネルから控えめなアドリブソロに入るのがデュアン・オールマンだとしても、このふたりのスタイルには微妙な共通点も浮かび上がるあたりが興味深いところだと思います。

A-1 Man's Hope
 で、そのデイヴィッド・スピノザの大活躍を堪能出来るのが、このヘヴィなゴスペルソウルのジャジーな演奏で、なかなかシンプルな間合いを活かしたリズム隊のグルーヴもモダンジャズ的ではありますが、醸し出されるビートは間違いなくニューソウルのフィーリングが濃厚です。
 そしてデイヴィッド・スピノザのギターワークにはオクターブ奏法やテンションコードの多用によるジャズっぽいフレーズが散見されるものの、それもまた当時の流行のひとつだったと思われます。
 実際、同時期のグラント・グリーンあたりの諸作と聴き比べるのも楽しいでしょう。
 肝心のハービー・マンは可も無し不可も無し……。デュアン・オールマンは休憩中のようです。

A-2 If
 これまたご存じ、ソフトロックの人気グループとして今日でも根強い人気があるブレッドの代表的な美メロパラードを演じてしまうハービー・マンには、全くニクイほど隙がありません。そのメロディフェイクの上手さは絶品♪♪~♪
 またこういう曲調になると威力を発揮するのが、リチャード・ティーのメロウなエレピなんですねぇ~♪ デュアン・オールマンの神妙なアドリブと後半で暴れるハービー・マンのフルートがエグイだけに、尚更に味わい深く思えます。

A-3 Never Can Say Goodbye
 今やスタンダード化したメロウなソウルパラードですから、ここでのスローで懐の深い演奏にしても、決して甘いだけではありません。
 再び魅力的なリチャード・ティーのエレピ、ほとんど鈴木茂なデイヴィッド・スピノザのサイドギターが殊更に素晴らしく、ですからハービー・マンも実は聴き逃されている歌心優先主義を全開♪♪~♪ 演奏時間の短さが勿体無いですねぇ。

A-4 What'd I Say
 そしてオーラスは、これまた誰もが知っているレイ・チャールズの楽しいゴスペルソウルなヒット曲♪♪~♪ もうここでのグイノリ&ブリブリの演奏の歓喜悶絶具合は筆舌に尽くし難いですよっ!
 なにしろデュアン・オールマンがアタックの強いピッキングで十八番のフレーズを弾きまくれば、ジェリー・ジェモットのペースが饒舌に蠢き、ハービー・マンは祭囃子がど真ん中状態というテンションの高さなんですねぇ~♪
 そしてクライマックスには、ちゃ~んと、例の掛け合いがフルートとギターで演じられるという、実に楽しい「お約束」が用意されていますから、本当に身も心もウキウキさせられますよ♪♪~♪ 終盤でついつい自己主張してしまうデイヴィッド・スピノザが憎めません。

ということで、サイケおやじには、何度聴いても飽きない、大好きなアルバムです。

ただし今日的な聴き方では、例のフリーソウルなんていう意味不明のブームや所謂DJ達の崇拝が面映ゆい感じじゃないでしょうか。

つまり必要以上の期待を持って聴いてしまうと、物足りなさがあるんように思います。

と言うのも、これはリアルタイムのジャズ喫茶では、ほとんど無視状態のアルバムでしたし、フュージョンブームの時でさえ、白眼視されていた事実が確かにあります、

それはロックスタアのデュアン・オールマンの参加以上に、そういうところに色目を使ってしまうハービー・マン特有のシャリコマ体質が、ジャズ者には堪えられない存在の軽さ!? だったんですねぇ、局地的かもしれませんが。

ですから虚心坦懐に1970年代初頭のソウル&ロックジャズに接する姿勢が自然に無いと、些か辛い部分があるように思うのです。

しかし、まあ、それも「時代の音」ということで、好きな人に絶対のアルバム!

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